三人称視点。
では本編どうぞ。
侠と霊夢は外界の町に足を運んでいた。侠は着替えずに学生服のままだが、霊夢は普段の巫女服ではない。彼女の後ろ髪をまとめている赤いリボンのポーニーテールはそのままで、服は陽花のコーディネートだが……簡単に、赤い長袖パーカーに白のロングスカート。至って浮かない格好だ。
しかし……彼女は落ち着きが無いように見える。
「……何かこの服装、落ち着かないわねぇ……」
自身が来ている服を見て霊夢は言う。普段着慣れている巫女服とは違うファッションにまだ戸惑っているようだった。
「一応、家には和服はあるにはあるけど……外界だと目立つんだよね。今の時代は和服じゃなくて洋服が主体だし。霊夢は普段和服である(謎の脇の空いた)巫女服だから落ち着かないんだろうね」
「……和服で外出れないとか止めて欲しいわー」
「かなり昔は和服を着ている日本人が多数だったけどね。でも、時代が進んでいくウチに……着ている人はいるにはいるんだろうけど、特別な用事が無い限り和服で出かけることは無くなったから」
「……よくよく考えてみれば人里に住んでいる人間達は和服が多く占めているわ。こうして外界で忘れられたモノが幻想郷に流れてくるのね……」
二人は歩きながら足を進めていく。家から出た時、霊夢が「飛んでいけば良いじゃない」と行動しかけたおかげで侠の苦労は多少増えてしまったが。彼の説明により最初は渋々だったが歩くことに同意することに。
歩いている途中……侠は二十四時間営業している【コンビニ】を見つけ、霊夢に行動を促しておく。
「霊夢、適当にこのお店の中を見て回ったり、雑誌を適当に読んでて。自分はATMでお金下ろしてくるから。それと勝手にお店の物を持ち出さない事」
「……? わかったわ」
霊夢は一先ず侠の言葉に頷いておき、彼の後を着いていく。そのコンビニに入っての霊夢の感想が漏れる。
「え……何この異様な物がたくさん売っているお店? 変な筒状の物やら、新聞やら、食べ物に本って、変な機械まで置いてあって──何なのよこの店!?」
「霊夢、落ち着いて。周りのお客さんの視線を集めているから。この場合だと雑誌を読んで貰った方が良いかな……? 霊夢、あの雑誌コーナーで適当に見てて。なるべく早くお金は下ろすから」
霊夢の発言に驚いて周りの客が視線を霊夢に集めている中、侠は冷静に彼女に指示しては離れて、機械を弄り始める。霊夢は腑に落ちないものの、彼の言う通りに雑誌コーナーで置かれている物を見始めた。
「……何かこの本の女の人の顔、不自然ね……まるで顔の一部分が直されているかのようだわ……」
霊夢は適当に雑誌を手に取り、パラパラと捲る。どうやらファッション雑誌のようだ。本の中では色々な服を着た人物の写真が多数ある。
「……外界の服っていろんな物が売られているのねぇ……。幻想郷だとそんな種類が少ないし。男の方でも──ってっ!?」
彼女はページを捲っているウチに雑誌の中である人物を見つけた。男物のファッションページに変わったのだが……男の着こなしコーナーというページで彼女が知っている──本堂静雅の写真を見つけたのだ。
「(静雅がこの雑誌にいる!? 何で平然と写真を撮られているの!? 普段の執事服や侠みたいな学生服は見慣れて、今日は何か変わった服装を着ていたけど……)」
霊夢は手にしていた雑誌を元の場所にもどし、今度は男性のファッション誌を片手に取る。その雑誌の表紙を改めて見てみると──静雅が表紙を飾っている雑誌だった。
「(外界では静雅が本に載っている事が一般常識なの!? 幻想郷だとあまり知名度がないのに!? むしろ何で侠が載っていないのよ!?)」
彼女は目の前にある変わった事に頭を悩ませていたが──客で来ていたのだろう。女子高生の会話が霊夢の耳に入ってきた。
『ねぇー知ってる? しばらく静雅ってモデルと芸能界休むんだって』
『えぇー!? 何で急にそんなの!? 私欠かさず出てる番組や雑誌のくりぬきしているのにーっ!!』
『何か通ってるガッコが修学旅行中に事故ったんだって。静雅は別のクラスで大丈夫だったんだけど……別クラスに幼馴染みが巻き込まれて。幸いに死傷者はいないみたいだけど、幼馴染みが心配でしょうがないって事で休むんだって。さっき事務所のネット掲示板で書かれてた』
『ないわ〜。私の楽しみが減るわ〜……その幼馴染みって女子だったりしないよね?』
『怪しいよね〜。実は恋人が事故って仕事に身が入らない……これが本当だったらかなりのスキャンダルものだよね。ただでさえ本堂静雅は一度も異性の関係を持ってないってのが売りなのに』
『皆の本堂静雅だからね。恋人がいたりしたらマジショックだわー……』
様々な考察を含めてその女子高生はコンビニから出て行った。知らない静雅の一面を知った霊夢は改めて思う。
「(……あいつって本当に外界では有名人なのね)」
「──おーい霊夢ー。お金下ろしたからそろそろ出るよー」
霊夢に掛かる声。それはもちろん侠であり、店から出ることを促していたのだが……彼に確認するように、改めて知った事を侠に話した。
「……静雅って有名人なのね。さっき違う人が静雅について話してた」
「だろうね。静雅は本当に有名だし、女子受けは良いからね。その分、男子に理解してもらうのは時間がかかるんだけど……」
「それと……『お金を下ろす』って言ってたけど何なの? さっきまでスルーしてたけど……」
「うーん……幻想郷では使われない言葉の使い方だったか……」
彼女の疑問に答えるようにして、侠はある手帳のような物を霊夢に見せながら説明することに。
「外界ではお金を貯金する際に、個人によって機械を利用して預けるんだよ。防犯──まぁ、家からお金を盗まれるのを少しでも減らす為に。一応この預金通帳──この手帳は自分が貯金している額が記載されているものなんだ。この手帳と付属のカード──本人か確認するための証明書を使ってお金を預けたり引き出したりするんだ」
「それって、所謂貯金箱みたいなものなの?」
「一応類似しているね」
「そうなの……侠はどれくらい貯金しているの? 最初で会った時の一万ぐらい?」
「残念ながら外れ。見てみると良いよ」
侠は自身の預金通帳を霊夢に渡し、貯金額が記載されているページを開けて霊夢は見ていたが──彼女は目を見開いては、表情が驚愕へと変わる。
「………………私の知ってる貯金とは違う………………」
「額については過去の守矢神社の宴会で話した通り、『流れない涙』での印税が結構あるんだよね。霊夢の服を買うとしても、まったく支障は無いよ。さ、さっさと行こう」
彼は霊夢から通帳を回収し、彼を先導にしてコンビニを出る中……霊夢は思う。
「(……何十年経てば使い切るのかしら……?)」
侠達が移動している道中、霊夢が町中を見て疑問に思った事を侠が答えたりなどをして時間が進んでいく。その一つの質問として、霊夢のある質問を侠が答えていた。
「侠、このやけに背の高い建物は何?」
「それはマンションだね。この一つの建物にいろんな人が住んでいるんだ。えっと、確かこのマンションの名前は【メゾン・ド・
「……高級まんしょん、ねぇ……」
彼の説明を聞いた霊夢だが、疑うような視線でマンションに視線を送り続けている。侠は自分の説明で不手際があったのかと思い、彼女に尋ねたのだが──
「どうしたの? 何か気になる事でも──」
「この【まんしょん】から、多数の妖力を感じるのよ」
彼女が答えた事柄。それは彼にとっても驚愕する内容でもあり、さらに情報を彼女に求める。
「……妖力? それはこのマンションに妖怪が住み込んでいるって事?」
「んー……。何ていうのかしら? 妖怪のようで妖怪じゃないような、言葉に表せないのよね……。誰かに似たような感じなんだけど……」
「(……そういえば、一部の噂でこのマンションは【お化け屋敷】って揶揄されていたような……?)」
彼も一部の情報を思い出したが、特に幻想郷的な意味では珍しくない事柄だと思い、霊夢に行動を促そうとしていた時。
「……特に悪い噂は無いはずだし、放っておこう──」
『はーい♪ そこのお二人さーん!』
二人に声がかかる。二人は聞いたことが無い声色だったのか音源のした方向に体を向けると、目が細く、スーツを着ては右の片目が隠れるぐらいの髪の毛を伸ばしては、包帯が巻いている男。そして──頭上には黒いウサ耳のようなモノが。
「(……どうしよう、変質者が現れた)」
「(? 鈴仙の親戚か何か? この人から──! この人からも妖力を感じる……!?)」
侠は外界基準の考え方で対処法を考えていたのだが、霊夢は警戒色を表して一歩後退。彼女の様子に気づいた侠は遅れながらも、警戒しながら目の前の男に話しかけた。
「……何か用ですか?」
『いや~。ちょっとボクの【目】で見る事が出来ないお二人さんが気になったんだよね。そこのお嬢さんは人間だと思うんだけど──男の子の君はボク達の【同類】でしょ?』
「……【同類】?」
謎の男が侠に言った【同類】。言葉の意味を測りかねているのか復唱している侠だが、代表するように霊夢が強い声色で牽制する。
「あんた……ただの人間じゃないわね」
「大正解~! お察しの通り、ただの人間じゃないんだボクは。ただ、厳密な分類としては【人間】だけどね♪」
男はどこから取り出したのか、スケッチブックに簡略されて描かれたウサギが【○】のプラカードを持っている絵を見せてきた。
どこかふざけているような答え方に霊夢はイラつきを見せていたが、彼の言葉に意味が多数あると考えては情報を求める。
「……少なくとも自分とあなたは初対面です。同類と呼ばれる理由がいまいちわからないのですが……?」
「嘘。少なくとも君はボクがどういう存在かは察しがついているはずだよ」
スケッチブックのページを捲っては、今度はどこか寂しそうな表情をした【×】のプラカードを持ったウサギが描かれた絵が現れる。そして、目の前の男はスケッチブックをどこかにしまうと、自身が付けていた黒い手袋を外しながら──ある事を告げる。
「ボクは君と同じ、妖怪の血が混ざった──先祖返りだ」
手袋をとった手から、【目】がある。それは霊夢と侠にとっても初めて見る光景でもあったが……確かに、侠は霊夢の妖力云々の話を聞いてから推察はしていた。
「(妖怪のようで妖怪じゃないような事。それで妖力を持っている。まるで最初の自分と同じ存在ではないかと思ったけど……ご先祖様。これはやっぱり──)」
『「そうだろうの。こやつも主と同じ、遠縁で妖怪などと交わってはその血を最も濃く受け継いだ──【百目】の先祖返りだ」』
心の中で先祖であるティアーと話す侠。自身の推察が正しかった事を元に、まだ考えていた仮説を目の前の男に問いただす。
「……このマンションの住人も先祖返りが多数いるんですかね?」
「そうだね~。やっぱり、どこかボク達同類は惹かれあうんだよ。でも、君は同じ先祖返りの中でも【特別】な分類だと思うけど。隣にいるお嬢さんとは別の意味で君の事が全く【見えない】から」
侠の質問に答えては男は手袋をはめ直す。そしてそのまま侠達を通り過ぎていくようにしては、マンションの中に入ろうとしたところで霊夢が警戒を含めた声色で話しかけた。
「……何の為に私達に声をかけたのよ?」
「ん? それは至って単純だよ? 【興味を持った】から。特に変わった同類の男の君にね。まぁ、またどこかで縁があったらまた会おうね~」
背を見せながら片手を振りながら男はマンションに入っていく。その様子を見届けた二人だが、霊夢は言葉を漏らす。
「……先祖返りって変人が多いのかしら?」
「それって自分の事を示しているの? 霊夢?」
「あんたは別の意味で【変人】よ。もしも攻撃的な態度だったら退治してやろうかと思ったけど……勘で【悪い人物】ではない事がわかるわ」
「……そうだね」
謎の男を見送った後、侠と霊夢は止まっていた足を進める事にした……。
『──たっだいま、そーたん~! 会いたかったよ~!』
『僕も夏目さんと会えて嬉しいです』
『相変わらずの温度差だな、君達は……』
『あ、ちよたん。もちろんちよたんにも会えてボクは嬉しいよ♪』
『さっき適当に出かけては帰ってきたばかりだろうに──? 何だかいつもより嬉しそうだな、夏目君?』
『いや~、ボクの性質上、見えないモノはかなりの興味があるんだよね~』
『何を言っているんだ君は』
過去の感想欄で要望的なもので書かれたのもありますが、一部のキャラクターが登場。侠の性質の元ネタの作品のキャラ。……ただ、この作者様の作品をもっと読みたかったんですけどね……。
ではまた。