幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ……ようやく。
 三人称視点。
 では本編どうぞ。


十話 『下剋上』②

 そこからはもう一方的な展開だった。本家から繰り出されていく人物は多種多様のスポーツのプロが出てきている。それに関わらず侠は──無傷で何十人も勝ち抜いているのだ。

 

 剣道に柔道。フェンシングにサバット。メジャーからマイナーのスポーツで本家側が有利になるはずだった。加え、侠は初めて実践するスポーツもある。プロはその道を究めた達人とも言えるのだが──侠は一般常識から外れている。

 

 親友の静雅曰く、『辰上侠は見ただけで相手の技術を得る』。それは若干心の中に居るティアーの能力である【力を手に入れる程度の能力】がにじみ出ているのもあるが……侠の本質の能力は【力を発展させる程度の能力】である。

 

 単純に表すのならば、【相手より技術的ステータスが常に上回っている】状態なのだ。

 

 加えて彼は天然の先祖返りでもあり、本家の【実験】によって肉体活性されている。さらには最低限の【力】も集め終えた。肉体的なステータスも、人間以上の実力だ。彼がもしもオリンピックに出るとしたら、誰にも記録を抜かすことの出来ないギネス記録が出されるだろう。大幅なカテゴリーから考えれば彼は人間なのだが──幻想郷的に言うのならば、どちらかというと妖怪のカテゴリーの方がしっくりとくるのだ。厳密に言えば【龍】というカテゴリーだが。

 

 その侠に、特別な力を持たない人間達が彼に敵うはずがなかった。次々と侠は勝ち抜き、息切れさえ見せていない。霊夢と静雅はただ様子を見守っているが──彼の義妹はそうはいかない。

 

「…………お兄ちゃん、もしかして人間から卒業しているの…………?」

 

 ……本人としては冗談のつもりだろうが、実際には半分ほど的を射ている事は知らないだろう。

 

 しかし……一番焦燥に駆られているのは本家の人物達だ。本家の当主から、その息子の崇也まで。侠は難なく突破すると、体の向きを変えて崇也に痺れを切らすかのように話し掛けた。

 

「もう何十人と勝ち抜いているんだが……まだお前は出ないのか?」

 

「……う、うるさい! 大体なんでお前涼しそうな顔で勝てるんだよ!? それともドーピングでもしているんだろう! そうに違いないっ!」

 

「そんなことをするか。俺は正々堂々と戦っている。そんなに気になるのなら公共機関を通して検査でもすれば良い」

 

「巫山戯るなっ!! そうじゃなかったらこんな状況は──」

 

「もう良い、崇也」

 

 彼の言葉を遮ったのは辰上家の本家の当主だった。侠は彼に視線の向きを変えて、言葉を投げかける。

 

「……当主さん。それはもう下克上成功として捉えて良いのか?」

 

「そんなわけあるか。あくまで下克上を達成させる条件は私の息子に勝つこと。それまでに出てくる相手をお前の人望で突破しなければならない。それに……一人一人相手にするのは単純作業でつまらないだろう?」

 

 どこか意味深な問いかけ。その言葉に侠と霊夢、陽花は疑問符を浮かべていたが──静雅は彼の言葉を察する事になる。

 

「っ! あいつ、まさか──」

 

「本堂の奴は察しが良い。そら──構えろ!」

 

 当主の言葉に──待機している何十人以上もの本家が用意していた人物がそれぞれ構え始めた。その行動にはさすがに予想外だったのか、非難の言葉をぶつける侠。

 

「!? まさか、一斉に袋叩き……!? 霊夢達も標的にして!?」

 

「お前には本当に驚かせられた。ある事を疑ってしまうぐらいにな。だが、ここまで並外れた運動能力はお前の連れてきた人物はいないはずだ。それならば──そいつらを狙えば、お前は防戦一方にならざるを得ない」

 

 癪に障るような、嫌悪感を催すような笑顔を浮かべる当主。それは本家の息子も同様である。

 

 さすがの暴挙に霊夢と陽花も納得がいかないだろう。怒りの感情を顕わにしながら抗議の言葉を掛けたが──

 

「! 侠に勝てないからって複数でやろうって事!? 汚いわよ!」

 

「お兄ちゃん、何もズルしてないじゃん! それって卑怯だよ!?」

 

「フハハッ! 勝った方が正義だ!」

 

 開き直って高笑いする本家達。侠はすぐさま霊夢達の元へ駆け寄り、体勢を立て直しながら状況の再確認。

 

「これは予想外だった……! こんな暴挙に出るなんて!」

 

「大方、今までの【下克上】で突破出来なかったのはコレが原因なんだろうな……。外をシャットアウトして、真実を隠すような事を」

 

 冷静に考察を述べながら静雅も構えを取るが、単純に数えて敵は五十人前後いる状況に霊夢と陽花はまだ困惑するばかりだ。

 

「どうすんのよ侠! 外界では弾幕とかしないようにしなきゃいけないのに……!」

 

「お兄ちゃん……!」

 

 どうしたらこの場を切り抜けられるか、侠は頭をフル回転させていた時──

 

 

 

 

 

 

 

『はーい♪ ご機嫌はいかがかしら?』

 

 

 

 

 

 

 

 急に聞こえた声と共に、現れた謎の空間。その空間は多数の目が見えており、人が通れるような空間が出来ている。そして、その空間から出てきたのは──幻想郷の神隠しの主犯、八雲紫である。

 

 謎の空間で現れたことに驚きを隠せない本家達。それは侠達も同様なのだが……すぐに我に返った侠と霊夢は驚愕しながら話し掛けた。

 

「紫さん!? どうして外界に……!?」

 

「何であんたはこんな時に現れるの!?」

 

「仕事が終わったのよ。この外界で、私がやるべき事を。そして──もしもの時の作戦を決行する時が来たの」

 

 微笑みながら侠の言葉に応えた後、紫は扇子を取り出して口元を隠す。そして彼女は本家の当主に当然ながら声を掛けられた。

 

「だ、誰なんだお前は!? その目玉の空間は何だ!?」

 

「あら、こんにちは。本家の当主さん。清々しいゲスで何よりですわ」

 

「ゲス……!? お前、私が誰だかわかっているのか──」

 

「そんな御託は良いわ。私は──いえ、私達は侠達を助けるために来たんだから」

 

 ばっさりと言葉を切る紫。急な第三者の出現に陽花は戸惑うばかりだ。何故、義兄達が彼女の存在を知っているか不思議だったが……彼女に情報を求める。

 

「えっと……お兄ちゃんの知り合い?」

 

「えぇ、そうよ。私は八雲紫。私達は貴方達の味方だから安心して頂戴──静雅!」

 

「了解した! 侠、ちょっくらお前さんの能力を借りるぞ!」

 

 安心させるように言葉を返した後、紫は静雅に指示を仰ぐ。彼女の言葉に応えるように静雅は行動に移し、侠の手を片手に触れては、もう片方の手で──

 

 

 

 

 

 

 

 ──八雲紫と同じ【スキマ】を作り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「「──スキマ!?」」

 

「ゑっ!? しずまっちゃんの手から変なのが出た!?」

 

 何故侠の能力を借りると八雲紫のスキマが出現するのか。博麗の巫女も、龍神の先祖返りもその義妹も驚きを隠せない。

 

 外界での本堂静雅を知っている本家の人々も驚きを隠せないが、静雅は簡潔に説明。

 

「単純に言うとな、侠の発展能力でオレの能力は【境界を操る程度の能力】になるんだ! それはもちろん、種族が荒人神、【事象を操る程度の能力】は──八雲紫がそもそもの原因でもあったんだよ! 幻想郷に連れてこられた理由を知った時に初めて知ったが!」

 

「それじゃあ……!? 静雅が荒人神になったのは紫さんが【種族の境界】を弄った事で──」

 

「静雅の能力はいわば、紫の能力の劣化版……!?」

 

 まさかの明かされる真実。話のついていけない陽花は困惑したままだが、紫も片手にスキマを作りながら話す。

 

「そうではないと、侠を安心させることは出来ないでしょう? 人間を超える種族と能力を持てば、彼は幻想郷で生き残る事が出来る。でも──彼はいずれ、神様になれる資格はあったけどね──話はそれでお終い。じゃあ──」

 

 そして紫の言葉の切れ目に、紫と静雅のスキマから──人がどんどんと現れていった。

 

 

 

 

 

『ほう〜? これが外界か。それで見たことのない服装の奴がいっぱいいるな』

 

『……予想していたよりも人数が多いけど……』

 

『それにしても……私達が本当に外界に来て良いのかまだ疑問に思うけど……』

 

『おそらく、紫様の判断ですから何かしらの良案がありますから大丈夫ですよ、アリスさん』

 

『侠君! 助けに来ましたよ!』

 

 

 

 

 

 次々と現れてくる人物達は、誰も視線を集めるような格好をしている。

 

 

 

 

 

 三角形の形をした黒い帽子を被った、白いエプロンをしては箒を持っている──霧雨魔理沙。

 

 

 

 

 

 両耳の傍には三つ編みをしてメイド服を着ては、太ももにはナイフを入れているホルスターを付けている──十六夜咲夜。

 

 

 

 

 

 赤いカチューシャをしては、彼女の周りに複数の人形を浮かせている──アリス・マーガトロイド。

 

 

 

 

 

 黒いリボンがついたカチューシャに、腰にはそれぞれ違う長さの日本刀を携帯しており、人魂を従えている──魂魄妖夢。

 

 

 

 

 

 蛙と蛇の髪飾りをし、青白い巫女服を来てはお祓い棒を持っている──東風谷早苗。

 

 

 

 

 

 いずれの人物も──幻想郷の住人が外界に現れた。

 

 

 

 

 

 事態がまだ把握しきれていない本家の人物達。そして目を丸くしている侠と霊夢。いち早く我に返った反応を示したのは霊夢だ。

 

「──はっ!? 何で魔理沙達が外界に来ているのよ!?」

 

「お、外界の服ヴァージョンの霊夢か。色々話は聞きたいが……後だな。それで霊夢達が知らないのも無理は無いぜ。私達は元々【保険】として待機されていたからな」

 

「……保険?」

 

 彼女の疑問に答えるように、咲夜とアリスが説明する。

 

「本当に侠達だけで突破出来るのなら私達は呼ばれなかったわ。でも……静雅の言っていた事態が起きてしまった」

 

「何かしらの卑怯な手段を使ってきた場合には、私達が加勢する事になったのよ。私は厳密には妖怪だけど……私は人間に限りなく近いし。幻想郷の人間側に近い人物が紫の判断で送られる事になったの」

 

 補足するように説明を付け足したのは妖夢。

 

「そして紫様の指示により、侠さんと静雅さんとそれなりに親交があった私達が招集されたんです。私も……侠さんの力になりたいですから」

 

 最後の言葉に近づくにつれ妖夢の声の大きさは小さくなっていたが、スキマからある現れた人物を見て、陽花は何か思い出したかのようにして早苗に確認をとった。

 

「あぁーっ! あなたは守矢神社の巫女さんだ! それで過去にお兄ちゃんが神社に送り届けてあげた人!」

 

「陽花さん、でしたね。その通りです。あの時は本当にお世話になりました……侠くーん、やっぱり義妹さんは私に会った事を明確に覚えているじゃないですか。本当に思い出さないようにしていたことに激オコプンプン丸ですよ」

 

「……すまん」

 

 早苗からの声にバツが悪そうな反応する侠。彼女は「でもまぁ」と言っては言葉を繋げる。

 

「この騒動が終わり次第、侠君のご両親にちょっとした挨拶を──」

 

「さ〜な〜え〜? あんたは一体何を言っているつもりなのかしら? こんな事態にも関わらず?」

 

 ドスの利いた霊夢の声が早苗を牽制。しかし負けじと早苗は反論。

 

「良いじゃないですかそれぐらい! この際、私と侠君との関わった事を話しても!」

 

「却下! あんたのいう話はどこか邪な感じがするわ! だからダメよ!」

 

「はいはい、喧嘩はそれぐらいまでにしなさい」

 

 緊張感の感じられない会話のためか、紫は呆れるように二人の話を打ち切った。当本人達は納得がいかないような態度を見せているが。

 

 この不思議な状況に尤も意見したいのは本家の方だろう。当主も含めては彼らはこの事態について追求を。

 

「な、何なんだこのコスプレ集団は……!? 巫山戯ているのか!?」

 

「巫山戯てはいませんわ。尤も、運動能力においてはあなたが用意した人間達の方が上でしょう。だから──」

 

 紫は広げていた扇子を閉じては、扇子を前に突き出しながら指示する。

 

 

 

 

 

 

 

「──スペルカードはダメだけど、弾幕の使用は許可するわ。だからこの人間達を──懲らしめてやりなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の言った【弾幕】。本家の人物達は困惑するばかりだが……その事に侠は確かめるように、どこか焦燥に駆られながら彼女に確認をとった。

 

「紫さん!? 弾幕って……あの弾幕ですか!?」

 

「大丈夫よ侠。どうせ私達が弾幕を出して、抗議したとしても世間に知られる事はないわ。それは、外界の人物達によっては証明されないもの。霊夢も日頃の怒りを込めて弾幕を繰り出すと良いわ」

 

「……そうね。侠をよってたかって苦しめた奴らを許すわけにはいかないわ!」

 

「……こうなったら霊夢は止められそうにないな……」

 

 溜息をつきながら、侠もまた手を突きだしては構える。そんな彼を気遣うように話し掛けたのは静雅。

 

「侠。お前さんは当主の息子を狙え。残りの奴らはオレ達に任せろ」

 

 彼の言葉に便乗するかのように、幻想郷から連れてこられた人物も静雅と同様に構えながら、侠に言葉を掛ける。

 

「そうだぜ侠! ここでお前の因縁を終わらせた後には宴会だ!」

 

「外界の料理も気になるわね……お嬢様達の口に合うような料理があれば良いけど」

 

「……折角外界に来たんだもの。静雅の言う【ろぼっと】の人形も見てみたいわね」

 

「侠さん達の力に私はなります! だから侠さんは、前に進んでください!」

 

「侠君との奇跡の力で解決させて見せますよ!」

 

 魔理沙、咲夜、アリス、妖夢、早苗はそれぞれの武器を持ちながら、片手に弾幕の力を集約される。それは博麗の巫女である霊夢も同様。彼女は片手に御札を構えながら──彼女が指示を。

 

「皆──行くわよ!」

 

 多種多様の人物の手などから放たれたもの。それは御札だったり、白い光だったり、ナイフに似た弾幕。人形から放たれた七色の弾幕に、斬撃の弾幕、星形の弾幕や槍の形をした弾幕が繰り出されては無作為に敵に当たっていった。

 

 何も知らない本家の人物達は信じられない光景だろう。崇也の言葉を代表に戸惑いの言葉が聞こえてくる。

 

「はぁっ!? 何なんだよ今の!? CGでも何でもない、実体のある遠距離攻撃ってどういう……事だ!?」

 

「……一応謝罪はしておこう。お前達のとれない攻撃手段を使った事は謝る。だが──俺の大切な友人達を傷つけるような真似は、絶対に許さない」

 

 警告するような侠の言葉。彼の言葉に本家の人物達は後すざりをし始める。

 

 その中、弾幕を放つ事の出来ない陽花に侠は行動を促す。

 

「……陽花。君は下がっていてくれ。無理に俺達に合わせる必要はない。ここはお兄ちゃんと友達に任せてくれ」

 

「……ううん、お兄ちゃん。あたしは逃げないよ」

 

 彼の予想の言葉を違ったのか、信じられないような目をしながら陽花を見るも。彼女は堂々を言葉を発する。

 

「あたしだってやれるもん! 折角お兄ちゃんがしずまっちゃん以外の友達が頑張ってくれるのに、協力しないなんてあたしには出来ない! もちろん、状況を判断しながら戦う!」

 

「……そうか」

 

 彼女の意思を確認した後、侠は真っ先に前へ駆け出しながら──自分の中の思いを、言葉にしながら走り出した。

 

 

 

 

 

「これで──終わらせる!」

 

 

 

 

 




 過去に感想欄で問われていた静雅の発展能力については紫の能力でした。

 ではまた。
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