三人称視点。
では本編どうぞ。
その後は、千里は月白にとある場所に案内してもらっていた。とある場所といっても、月白の書庫なのだが。霊夢も含めた女性陣は仲良く縁の相手をしている。
実はこうなった事は、本当の両親に会いに行く前日に柊史にある事を言われたためである。
『侠君。月白に会って一先ず話が終わったのならば、彼に家系図を見せて貰いなさい』
『家系図、ですか? 確かに辰上家は【辰上】通しで結婚しているぶん、何も面白くないですが……本当の父親の【縫ノ宮】の家系図を見て何か面白い事でも?』
『あぁ。面白い事が待っているとも。僕もこの事実は今日知ったばかりだけどね』
『?』
疑問に思うものの、月白にそう言って案内してもらい。書庫についたところで物珍しそうに月白は千里に確認をとった。
「私の家系図が見たいとは……しかもそれは柊史の差し金か。まぁ、あいつなりには【辰上】以外の名字を見せてやりたいと思っているのかもしれないな。じゃあ見せるぞ」
「……はい」
本棚に手を伸ばしては一冊の本の中に、一枚の紙切れを取り出す月白。それを受け取った千里は近くにあった机に紙を広げ、【縫ノ宮】から逆算していくように家系図を見始めた。
「……こうして見ると、本当に色んな名字があって面白いですね。辰上家のも見た事はあるんですが、同じ名字ばかりでつまらなくて」
「そいつについては同感だ。だが、柊史の家が本家になった事で、あの忌まわしき習わしは無くなる。良いことだ」
「……ですね。良いことでしょう──ゑっ!?」
家系図を見ながら会話していた千里なのだが、途中で奇妙な声をあげては、とある名字に焦点がいっている。何を見て驚いたのか月白は気になったものの──千里の呟くような声に反応を。
「──も、【洩矢】……!? しかも、その洩矢の祖が──【洩矢諏訪子】!?」
「……ん? 縫ノ宮の祖先でもある【洩矢】にどうかしたのか?」
月白の考えとしたら、偶々知っている知人がいるのだろうと思い、気楽に声を掛けたが……千里は軽く驚愕しながらも、月白の疑問に応える。
「洩矢諏訪子って、幻想郷で会った事があるんですよ! しかも同姓同名で!」
「……何? 同姓同名で、だと……?」
千里の言葉に、月白は考える。そして彼が頭に浮かんだことを、そのまま千里に問いかけた。
「……実はな、どうして今は無くなった疑問に思っていたんだが……守る矢と書いて【守矢神社】があったんだ。柊史の町では確か隣町にあった神社だ。それでだ……何十年前の話になるだろうな? 私も偶然知っていたんだ。自分の家系を調べてこの【洩矢諏訪子】が持っていた神社。確か……【諏訪大戦】というので、軍神に神社を奪われた。だが……その神社は基本的には軍神を祀っているが、祟り神も祀っているという。祟り神が【洩矢諏訪子】……そのような文献が残っている」
眼鏡の位置を正しながら解説をする月白。
「それでだ。紅音に連れて行かれるようにして偶然守矢神社に……恋愛祈願だったか? その参拝している時に私は見た。紅音は何も聞こえない、見えていないようだったが──変な目玉を付けている帽子を被っている少女と、大きなしめ縄を背負った大人の女がいた事を」
「…………」
「私が凝視するあまりか、その二人の女は私の視線に気づいては、何時の間にか消えていった。確かに幻だったかもしれない。だが……私はその光景を忘れることはなかった……」
縫ノ宮千里は、父親の話を聞いて確信した。縫ノ宮の血筋は、洩矢の血筋も含む。
すなわち──自分は洩矢諏訪子の遠縁の子孫という事だ。
最後の質問なのか、千里は月白に意見を。
「その二人は……何だと思いますか?」
「……おそらく、文献通りならどちらがどうか知らないが、片方は私の祖先だったのかもしれないな。後にその神社が無くなるとは思っていなかったが……。そもそも、私の家系での洩矢は辰上に例えるならば【分家】だ。そこまで詳しい事実を知っているわけではない。本家の【洩矢】なら別だが……大して今の時代、信仰などといった、神様の存在を信じる事などしないだろう。だが……千里の中には、辰上の祖先がいるらしいが」
「(……ご先祖様)」
一言。心の内で思った事を察したティアーは彼の疑問に答え合わせをするかのように言う。
『「察しの通りだ。我は何時か、主が知るまで黙っておったのだ。お主は──洩矢諏訪子の子孫でもある。偶然にも片方は我のような龍神、片方は祟り神が祖先の存在が、お主と、縁だの」』
「(わけわからないですよ……。龍神の子孫に加えて、幻想郷で対面した祟り神も自分の祖先だなんて……?)」
『「まだまだ主が知らない事はあるがの。時に、今更話すのだが……何故、【風】の力を手に入れる際に守矢神社に向かうと言った事について話そうか」』
「(……?)」
心の中で疑問符を浮かべている千里だが、ティアーはその理由について述べる。
『「そもそも【風】の力を持つ人物は他にもいたのだ。特に烏天狗である射命丸文だの。ストレートに行動するのなら、文と戦って手に入れれば終わった事だったのだよ。しかし……我は人里で信仰を集めている時に、東風谷早苗の気配を感じたのだ」』
「(早苗の気配? 確かに早苗も風を操る力は持っていますけど……まさか、過去に会った人物だからという理由で守矢神社に?)」
『「それも一つの理由として含まれるの」』
「(……それでも、まだ納得できない事があるんですけど……)」
『「詳しくは何時か洩矢諏訪子に聞いたら良い。そうすれば意外な事がわかるだろうの」』
「(……まだ自分の知らない秘密がいっぱいあるんですね……)」
千里は喜んで良いのか、複雑な気持ちだった……。
千里と月白はリビングへ帰り。女性組の様子を見てみると──平和そうに、和やかに時間が過ぎていっているようだった。
「……縁のほっぺはぷにぷにね。ずっと触っていられる心地よさだわ。それそれ〜」
「あーうー……」
「餅みたいに良く伸びる。それがあたい達の娘でもある縁さ」
二人して縁の頬を触っていた。頬を触られている所為か縁は情けない声を出しているが。
千里はその光景を微笑ましく思っているものの、先ほど知った事実をどうしようか悩んでいる。
「(……伝えたら伝えたらで厄介事になりそうな気がする)」
そして、彼が出した答え。
「(……まだ伝えないでおこう)」
彼がそう決めた矢先──現れる、特異な空間。急な事に千里の両親は驚きはしたが、その光景は霊夢と千里にとっては何度も見た光景。特異な空間から──八雲紫が出てきた。
彼女の存在を初めて見た月白は、改めて事前に持っていた情報と合わせて彼女に話し掛ける。
「……君が、柊史達の言っていた……幻想郷の妖怪でもある──八雲紫か?」
「えぇ、その通りですわ月白さん。私が八雲紫です」
「本当に奇妙な空間から現れるんだな……。それで、何のようだ?」
「簡単なことですわ。博麗霊夢のお迎えにあがりましたの」
霊夢の名指しに彼女は驚きはしたものの、次第に彼女は納得、どこか惜しむようにして現実を確認。
「……時間、なのね」
「さすがにもう幻想郷に帰って貰わないとね。侠──いえ、千里も外界でやるべき事は残っているでしょうし。彼はその事に没頭しなければならない」
「れーむ、どこに行くの?」
二人の会話に素直な疑問に思ったのか、間の延びた言い方で縁は霊夢に問いかけた。彼女は縁の視線に合わせるようにして姿勢を落とし、柔らかい言い方で彼女の疑問に答える。
「……私はね、元に居た場所に帰らなくちゃいけないの。縁が遠くに遊びに行って、家に帰るのと同じ事よ」
「……遠いの?」
「……そうね、遠いわ」
幼いウチに幻想郷などと言っても彼女にはわからないだろう。伝えるべき事だけを縁に教える。
「また、会える?」
「……きっと、会えると良いわね。その時には──いえ、何でもないわ」
言葉を途中で句切った霊夢だが、縁の頭に手を置いて撫でると、どこか彼女は気持ちよさそうに目を細めていた。
縁の傍に寄ったのは紅音。彼女もまた縁の頭に手を置きながら霊夢に別れの挨拶を。
「……短い時間だったけど、良かったよ。また機会があればウチにおいで」
「はい、その時には」
紅音に続いて霊夢は月白にも挨拶をした後、最後に千里へと振り返る。彼女はハミカミながら──彼に言葉を。
「──何時までも、待ってるから」
「……うん」
言葉はそれぐらい。紫は幻想郷へのスキマを作り、度々千里の方へ顔を振り返りながらだったが……彼女は足を進めていく。
八雲紫と共に──博麗霊夢は、幻想郷へと帰って行った……。
『……行ってしまったか。千里はこれで良かったのか?』
『……しょうがありませんよ。自分にはまだやるべき事が残っているんですから』
『千里? 何が残っているっていうんだい? やるべき事って?』
『その事について父さん達、柊史父さん達にも話しておきたいと思います。……縁はつまらないだろうから好きな風に過ごして良いよ?』
『にぃにの話聞くー!』
『……まぁ、いいや。それで本題なのですが──』
諏訪子云々もフラグだったのだ……(遠目)
次話でこの章は終わり。次の章は……お察しだと思います。
ではまた。