幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 現在彼の本名よりも【辰上侠】の方が浸透しています。
 三人称視点。
 では本編どうぞ。


三話 『戻ってきた【彼】』

 聖白蓮が呼んだ名前。それは幻想郷に大きな影響を与えた人物の一人でもあった。始めは寺子屋で教師をしていたが、後に起こる日食異変で名乗りを上げた外界の異変解決者。そしてその異変解決者は、この幻想郷を創った龍神の先祖返りでもあり。以前では博麗神社を拠点に活動していたという──【辰上侠】。

 

 彼に着いてきている人物達は順に、彼より少し年下で義妹である辰上陽花。十歳ほど年齢が離れていては実妹である縫ノ宮縁。彼の式神である五徳である。

 

 聖の言った名前に、驚愕の表情を浮かべながら情報を整理するナズーリン。

 

「これは驚いた……!? 静雅の情報が正しければ、幻想郷の創造神の先祖返りであり、諸事情で外界にいたはずの龍神の子孫である辰上侠だったとは──いや、でしたとは……!」

 

「別にそこまで偉いものじゃないけどね。あくまで子孫であるだけだし」

 

「いやいや……聞いた話によると、君の心には初代龍神がいるのでしょう? それはある意味君は龍神と同じようなモノではないでしょうか?」

 

「自分は確かに龍神の血は引いてご先祖様もいるけど……自分は【人間】。誰かの上に立とうとは全然思っていないし、もっと気楽に接して良いよ。さっき縁と話していた態度で全然構わないから」

 

「し、しかし──」

 

「良いのよ、ナズーリン。侠さんの言う通り自分らしい喋り方で彼と話しなさい」

 

 目上という印象があったのだろう。ナズーリンは敬語で侠と話しているが、彼女の行動を指摘したのは聖白蓮。ナズーリンはそれでも疑問符を浮かべているようだが、白蓮は話を続ける。

 

「人里の人達の話によると、侠さんはあまり目上の態度で接してもらいたくないらしいわ。人里でも彼の事は敬意を持って接している人物は確かに多くいるのだけど……それはあくまで心意気だけ。多少口調を乱していたとしても、お互いに悪い印象を与えない喋り方じゃなければ大丈夫みたい」

 

「……差別しないというのは、自身も含めていたとは……」

 

 新しい侠の情報を聞くとどこか感心しながらナズーリンは頷く。彼の評価が上がったと感じた義妹である陽花は胸を張りながら誇らしげに発言。

 

「あたしの自慢のお兄ちゃんだからねー♪」

 

「ねー♪」

 

 陽花の言葉に縁も賛同し、お互いに両手を合わせながら喜んでいる彼女達。侠はどこか気まずそうにしている表情を白蓮は微笑ましい笑みを送っていたり。

 

 話題を変えるように五徳はナズーリンに話を振っている最中に──

 

「それはともかくとして……まだメンバーはいるだろう? 特に星あたりはどうした?」

 

「あぁ、御主人は──」

 

『ナズ〜……私の宝塔、見つかりましたか〜……?』

 

 部屋に控えめな声と共に一人の人物が入ってきた。その人物の黒と金のメッシュの髪はまるで虎のよう。額の上には変わったオレンジ色の髪飾りをしていている。愛称から判断するならば彼女はナズーリンを呼んでいるのであろう。自分を呼んでいると自覚したナズーリンは溜息をつきながらも彼女に説明した。

 

「御主人……宝塔ならこの方達が見つけてくれたよ。御主人からもお礼の言葉を言った方が良いんじゃないかい?」

 

「そ、そうなのですか……! 私は寅丸星と言います。この度は宝塔を見つけていただきありがとうございます! どうか貴方達に毘沙門天様のご加護を……!」

 

 少し涙目で感謝の意を示したながら彼女は深く頭を下げる。五徳は慣れているような感じで呆れているが、彼女の言葉に疑問を覚えたのか侠はある事を尋ねる。

 

「ん? 毘沙門天って……君は毘沙門天の関係者? というよりは宝塔の持ち主は君だったのか……」

 

「あ、はい。私は毘沙門天の弟子なので」

 

「…………最近は何となく力の素養で大雑把な種族の判別が出来るようになったけど、まさか毘沙門天が妖怪を弟子にしていた事が驚きだよ……」

 

 新たに得た毘沙門天の知識に感心している様子の侠だが、星は五徳の存在に気づくと驚愕を含めた、どこか嬉しそうな声で話し掛ける。

 

「あっ!? 五徳じゃないですか!? 久しぶりですねっ」

 

「あぁ、久しぶり。それで……だろうと思ったさ。宝塔を落とす奴なんてお前しかいない。持ち物を落とす癖は相変わらずか」

 

「き、気をつけてはいるんですよ!? ただ、気がついたら無くなっているんです!」

 

「財宝が集まる体質なのにも関わらず、どうしてそんな手癖がついたんだろうな。なぁ、ナズーリン?」

 

「それは常々私も疑問に思っている……」

 

「…………ごめんなさい」

 

 五徳とナズーリンのジト目の視線にバツを悪くしたように星は謝罪。三人の様子を見てか妹達はそれぞれの言葉を。

 

「……弟子なのに何か……偉くない雰囲気が漂っているような……?」

 

「鼠さん、くろーしているの?」

 

「あぁ。よく御主人は出かける度に手持ちのモノを何か必ず落とすんだ。落とし物を捜すために私は能力を使って頼まれる度に探しにいくのさ」

 

「うっ……」

 

 一般的な力関係では寅と鼠を比べると体系的な事も含めて寅の方が大きいのだが、今の畏縮している星の態度と普段のナズーリンの力関係が出ているのか、星よりもナズーリンの方が気のせいか大きく見える。

 

 それでも心から申し訳なく思っている事はナズーリンは知っているので話は打ち切り、彼女は侠にこれからの行動について尋ねた。

 

「それで……君たちはこれからどうするんだ?」

 

「これから? それはやっぱり博麗神社に向かうとするよ。挨拶も済んだことだし、霊夢と顔を会わせないと」

 

 彼の予定を聞き、改めて気になる事があったのだろう。命連寺の住職である白蓮がある事を問いかける。

 

「霊夢さんですか……。それはやっぱり、以前幻想郷にいた時は居候していた事も含めて、ですか?」

 

「それもありますが──」

 

 帰り支度をしながら侠は笠を被り直し、自身が思っていた事を素直に伝える。

 

「──彼女は自分の中でも大切な存在ですからね」

 

「まぁ……♪」

 

「……もしかすると、君は──」

 

「? ナズ、もしかするとなんですか?」

 

「御主人、流石にそれは察してくれ」

 

 星の中では侠の言葉の意味を計りかねたのか従者であるナズーリンに聞くものの、少しきつい言葉で言われた事に少し落ち込んでいた。

 

 侠の言葉の意味を理解している白蓮は片手を頬に当てながら笑顔を浮かべ、送りの言葉を。

 

「そうですか……ならば、早く彼女に会った方が良いでしょうね。侠さん、陽花さん、縁ちゃん、五徳。時間のある時は何時でも命連寺にいらしてください」

 

「はい、その時は」

 

「まったねー!」

 

「……バイバイ」

 

「あぁ、時間が空いたときは行くさ」

 

 一通り挨拶を終えた四人は、命連寺から出ていった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……龍神の先祖返り、辰上侠……確かに只者ではない雰囲気が漂っていた。人間でありながら、妖怪にも感じる不思議な違和感がある……」

 

「あ、やっぱりナズもそう思っていたんですか。私も複数の種族を感じていたんです」

 

「それがきっと龍神の性質の一部なんだろう。ところで……ぬえ、彼女はどこに行っているんだい? 五徳もいることだし、興味がありそうな事柄だったのに……」

 

「ぬえですか? 彼女は『打倒静雅!』と意気込んで紅魔館へ向かいましたよ?」

 

「……静雅が滑稽に笑いながら相手にしている事が目に浮かぶよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──うぅ~、最近驚かせていないからお腹空いてきた~……』

 

 人里と博麗神社の間にある道中。そこには顔の着いた、顔の模様が付いているうえに大きな舌が出ている紫色の傘(傘の持ち手付近に下駄まである)。ショートカットの髪に水色主体の服。幻想郷では珍しく素足で下駄をはいた、赤と青のオッドアイを持つ──多々良小傘。

 

 先ほどの彼女の発言は、実は人間を驚かした際が一種の食糧だという。ただ……彼女は驚かす事はあまり得意ではない。

 

「……この前の異変もなぁ……。あの三人組を驚かそうとしたら──」

 

 時たま彼女が移動していた際、とある三人組が呑気に移動しながら話していたのを彼女が見かけた時。彼女の主観では三人とも人間に見えたので驚かせようとしたのだが──

 

『驚け──』

 

『【かさ を もった しょうじょ が あらわれた!

 

 どうする?

 

 たたかう めでる

 イタズラ ○○る】」

 

『そんなもん異変っぽいんだから戦うに決まってるぜ。道中で出てくる奴らは全員吹っ飛ばす』

 

『ポケ○ンですねわかります! ……ところで○○るって普通【逃げる】じゃないですかね?』

 

『そこは自由枠。幻想郷では常識に囚われてはいけないらしいからな』

 

『ならば私は【退治する】を選択します!』

 

『あの少女に救いは無いんですか!?(迫真)』

 

『(あ、関わっちゃいけない人達に関わっちゃったかも……)』

 

 仮に男がいなければ驚かす事は成功した(かもしれない)。だが彼がいきなりふざけた発言により彼女の言葉が遮られ。男はどこか悲しそうな視線を小傘に送りながら、無慈悲に白黒少女と変わった巫女服の少女に彼女は退治された。

 

 それでも彼女は諦めきれなかったのか、異変が終結した後日に男が散歩しているのを見かけ、再び驚かせようとするものの──

 

『お、驚け──』

 

『黙れ小僧っ! お前に○○が救えるのかっ!!』

 

『ひゃあっ!? わ、わきち小僧じゃないよ!? しかもその人誰!?』

 

『……露骨に隠れて、驚かそうとした側が驚かされるのは少々問題があるぞ……』

 

『あ……』

 

 どうやら彼には基本的に驚かす事が出来ないと小傘は知った。逆に彼は小傘に一度協力し、幻想郷で有名な人物達を驚かせに回った事がある。その時の小傘は満たされたのか満足な表情を浮かべていたが、以降は彼無しで驚かそうと努力はしている。しかし……彼と一緒に行動した後は、成果はよろしくない。

 

「……一度、静雅に相談してみようかぁ……」

 

 そう思い、悩み歩いていたところ──目の前に見知った人物が現れる。その人物は背中に妙な翼があり、少々疲れ気味の少女。

 

「……あれ? ぬえ? どうしたの?」

 

「あぁ、唐笠の……。静雅を倒すのってどうしたらいいと思う?」

 

「……無理、じゃないかな……」

 

「それは無し! 絶対アイツの鼻を明かしてやる!」

 

 命連寺に居座っているという、封獣ぬえ。先ほどは疲労を見せていた彼女だが、小傘の発言を否定するように拳を握りながら表情を変える。小傘も含めて一部の人物達は静雅に戦いを挑んでいるという事を知っているが、彼女の様子をから察すると負けたらしい。

 

 自分の目的を達成できない事にイラついているのか、恨めしそうにある事を呟く。

 

「あぁー……久しぶりに人間を驚かそうかな。ストレス発散しないとやってらんない」

 

「! 驚かすの! だったらわきちも一緒にして良い!?」

 

「そういえばアンタは驚かす事について勉強中なんだっけ? だったら──この大妖怪の鵺の驚かし方を勉強すると良いわ!」

 

「やった!」

 

「さてとと──ん? 前方に複数人の人影ありっと。じゃあアンタはちょっと隠れていなさい。私が人間の驚かせかたを教えてあげる!」

 

 意気込んで語るぬえだったが──今回に限っては驚かせる相手を間違った事を知る事になるのはもう少し後の話。

 

 

 

 

 




 おそらくどうなるかどうかはお察しだと思います。

 ではまた。
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