幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

255 / 267
 終わりが見えてきました。
 三人称視点。
 では本編どうぞ。


四話 『博麗神社への帰還』

 博麗神社へ向かう道中の道。そこには四人の少年少女が居た。陽花は歩きながらご機嫌そうに義兄である辰上侠──本名は縫ノ宮千里だが、彼に思った事をそのまま話していた。

 

「ねぇ、お兄ちゃん。幻想郷って本当にあたし達の世界の機械とか無いんだね。本当に昔の時代にタイムスリップしたみたい!」

 

「妖怪の山にでも行けば機械があったりするよ。何しろ幻想郷では河童がエンジニアらしいからね。光学迷彩を開発して持っている知人がいるし」

 

「光学迷彩!? 逆に発展し過ぎじゃない!?」

 

 変わった幻想郷の情報に驚きを隠せない陽花を余所に、彼の言葉に疑問を持った縁が五徳にある事を尋ねる。

 

「河童ってキュウリが大好きな、お皿を被ったよーかい?」

 

「胡瓜が好きな事は確かだが……皿は被っていないぞ。見た目は本当に人間に近い」

 

「……ぶー。よーかいみたいなよーかいを見てみたいー……」

 

「……目の前で喋っているアタシも妖怪だろう? この頭にある猫耳といい、下半身にある尻尾といい」

 

「五徳は猫ー!」

 

「いや、まぁ、確かに猫にもなれるし、猫妖怪なんだが……」

 

 どうやら縁の中では五徳は妖怪というより猫の印象が強いらしい。……もっとも、縁は身内以外での妖怪を見てみたいというのが本音だ。命連寺で会ったナズーリンや星や妖怪なのだが……五徳と同じように人間に近い外見だ。見た目のまま表現したのか、彼女はナズーリンの事を【鼠さん】と呼んでいたが。

 

 

 

 

 

 

 

『──そこまで妖怪を見たいのなら、私が見せてあげるわ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 急に響く、靄の掛かった声。その声にすぐに警戒したのは千里と五徳だ。千里は陽花の目の前に庇うように移動し、五徳は縁の前に出る。

 

 

 

 

 

 そこに現れたのは──頭は猿、体は狸、尾は蛇、手足は虎という妖怪だった。

 

 

 

 

 

 すぐさま情報を整理するのは千里と五徳。二人は脳内で考えをめぐらせる。

 

「(……この外見は──正体不明で有名な妖怪の鵺!? 今まで幻想郷で暮らしていた時は見かけなかったのに……!)」

 

「(……【ぬえ】か? ぬえが突発的に襲うとかは考えられないんだが……)」

 

 二人はこの出来事を真剣に考え、どうするか考えていたのだが──

 

「すっごーい!! 初めて幻想郷に来て妖怪らしい妖怪を見た! かっくいーっ!」

 

「よーかいさん、かっくいーっ!」

 

 ──全く危機感を覚えていない妹達は何故か感激していた。恐怖するどころか、目をキラキラさせながら【鵺】に視線を送っている。

 

 気の抜ける発言に少し困ったような態度をする千里と五徳だが、一番困っているのは【封獣ぬえ】だ。彼女は驚かす為に出てきたのだが……百八十度変わった発言にうろたえを見せている。

 

「え、何その反応……!? そこの二人みたいに警戒しなさいよ!?」

 

「えー、だってお兄ちゃんがいるから心配ないし」

 

「五徳もいるしねー」

 

「……五徳? まさか、その頭に被っている【五徳】で、その五徳!?」

 

 縁の言った名前に反応し驚きを隠しきれないぬえ。彼女の言葉に応えるように五徳はため息をつきながら、ぬえに質問を。

 

「はぁ……やっぱり【ぬえ】か。急にどうした?」

 

「ちが、違うし! 私は【ぬえ】何かじゃないし! 大妖怪なめんな!」

 

「……タイミングが悪かったな。千里がいる時に襲い掛かろうとして」

 

 どこか慈悲深い視線を五徳は彼女に送る。それがぬえの癪に障ったのか、反論をしようとした言葉は遮られる事になる──

 

 

 

 

 

 

 

「──要するに俺の妹達に害を与えようとしている存在か? なら──慈 悲 は 無 い」

 

 

 

 

 

 

 

 空気が変わった。威圧する言葉ともに、近くに居た男の雰囲気が変わっていく。被っていた笠を取りながら、その言葉はとても相手にとっては重苦しいものであり──彼の右の瞳が黒い色から赤い色の瞳に変わっている。

 

 急に得体のしれない人物が現れ、ぬえも彼に対して言葉を発しようとしたのだが──

 

「な、何よ! 別に妖怪なんだから人間を──」

 

「……成程。名前は【封獣ぬえ】。やっぱり【鵺】の妖怪か。そして普段の姿というかはあれだが……黒い服を纏った、変わった赤と青の羽らしきものが背中から生えているのか」

 

「ちょ、まっ!? 何言っているのよ!? そんなの知らないし!」

 

 何故か彼女自身の情報が男に漏れている。それに伴い、普段の格好の彼女まで。正体不明の売りの彼女が正体が暴かれていっているという状況になっている事に疑問しか思わない。

 

 未だ否定する彼女に、侠は自身の左目を手で隠し、赤く瞳だけを彼女に見せては行動を起こす。

 

「別に隠したって変わらない。この眼がお前の正体を暴くまで!」

 

 彼の言葉に呼応するかのように、赤い瞳から光が放たれる。その眩しさにぬえは目を覆うようにして彼女自身の目を隠す。

 

 光が無くなっていくのを感じ、目を開けて自身の姿を確認すると──男が先ほど喋った通りの、彼女本来の姿に戻っている。

 

「……はぁ!? な、何で変化した姿じゃ、無くなっている……!?」

 

「例え姿を変えようと、俺の目はそういう幻覚もどきは効かないんだよ。それとも……まだ俺達を、俺の妹に何かするっていうのなら、手加減は出来なくなる」

 

「フ、フン! ちょっと変な事が使えるからって、あの異変解決者達みたいな人間じゃなかったら全然余裕──」

 

 警告する男の言葉に、どこか挑発するかのように言葉を返した彼女だが──男と目が合う。彼は隠していた左目までも赤く染め上げ、赤い二つの瞳に吸い込まれるように見た彼女は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前には赤く巨大な鱗と翼を持つ、ドラゴンと対峙するような感覚に襲われた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──っ⁉」

 

 ぬえは急に寒気に襲われた。夏だというのに、冬だと錯覚させられるぐらいの寒さを感じた。そして彼女の頭の中では激しく警戒の鐘を鳴らしている。

 

 ──駄目だ、逆らってはいけない……!

 

 体が無意識に縮こまっている彼女を見てか、男はどこか優しげな口調で言葉を掛ける。

 

「……『ぬえよ。別に驚かせるのは別に構わないからの。しかし……主、この男には妹達を対象にするのは話が別。その時の主はお主に容赦しなくなる。それは覚えておくといい。危害を与えないつもりなら、せめて主の目の届かないところでやるといい』」

 

 先ほどの男の口調とは打って変わって、どこか年季を感じさせるような話し方で諭す男。急な変わりようにぬえは困惑していたものの、陽花と縁の反応が変わる。

 

「あ、今はお爺ちゃんなんだ。何か久しぶりー」

 

「じぃじ、久しぶりー」

 

「子孫達は陽気は変わらぬで何よりだの。このぬえという妖怪はただ驚かせたかっただけみたいだ。それだけはわかっておくれ」

 

「ううん! あたしは妖怪らしい妖怪を見れて楽しかったよ!」

 

「がぉー!」

 

「……肝っ玉が本当に凄いの、お主ら」

 

 普通の人間とは正反対の反応を返す二人の少女に少し困り気味に反応を返す男。実はこの【今】の男は、【辰上侠──縫ノ宮千里】の心の中にいる幻想郷を創った創造神【ティアー・ドラゴニル・アウセレーゼ】である。

 

 当然、目の前にいる封獣ぬえは知る由もない。未だ混乱していた彼女だが、ティアーは五徳を共に少女を先導して進みながら、通り過ぎる際にティアーは囁くようにして声をかけた。

 

「……何、ようやく主が落ち着いた頃だ。主の事を知っておくならば、本堂の者に聞くと良い」

 

「…………」

 

 言葉では返事をしなかったが、遅い動きであるがゆっくりと頷く彼女。その後は何もなかったかのように足を進め始めた……。

 

 

 

 

 

『「主よ。確かに妹達は大事であろうが、もう少し柔らかく反応するべきだ」』

 

「(外界では本家に迷惑を被った人たちの謝罪が終わった後は、【辰上】の信用を取り戻すために世界中を回っては戦争・紛争地域に駆け回っていましたからね。……どうも神経質になってて)」

 

『「よりその地域で貧しい童達の支援を行っていたり、守っていたりしていたからのう……。童を対象とする危機感が強いままだったのは確かに仕方なかったかもしれん。まぁ……それよりも博麗神社に向かっては──霊夢に会わなければな」』

 

 

 

 

 

 

 ぬえにとっては謎の四人組が通り過ぎた後。彼女の茂みの近くで揺れる草陰があり、そこから出てくる人物。それはぬえと先ほどまで話していた多々良小傘である。彼女はどこか怯えた様子を見せている。彼女にある事を教訓の一つとしてぬえは告げる。

 

「……さっきのおかしな人間(かどうか怪しい奴)の関係者は絶対に驚かせちゃダメだからね」

 

「うん……わきちも良くわかった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 博麗神社。そこの居間の卓袱台では呑気にお茶を飲みながら時間が過ぎるのを暇している巫女が一人。この神社の巫女であり、外界と幻想郷を分ける結界を管理している博麗霊夢。対面する形で座りながらお茶菓子として出されている大福を食べているのは友人でもあり、普段は頭に被っている三角の形をした黒く大きい帽子を外している霧雨魔理沙だ。

 

 大福を咀嚼して飲み込んだ魔理沙は、他愛のない会話を霊夢に振る。

 

「何か最近、ぬえだったか? あいつも静雅に挑むようになったんだぜ」

 

「それは知っているわ。たまに紅魔館で静雅と話している時に乱入してきた覚えがあるもの」

 

「……それって間接的には霊夢の所為だよな? お前が異変解決をサボったから静雅に変な奴が絡まれるようになったのは」

 

「別に私は悪くないでしょ。大方静雅がその正体不明だかに変な事をしたから絡まれただけよ。それに静雅は特に問題は無いように見えるし、別に問題無いんじゃない?」

 

 持論を展開しながら魔理沙に言葉を返しながらお茶を啜る霊夢。しかし肝心の話を持ちかけた魔理沙はどこか複雑そうだ。

 

「いや、まぁ……確かに静雅にも悪いところがあるんだが……。それじゃあ、私との時間が──それはともかくっ! 侠からの連絡はないのかっ」

 

「……千里の連絡ねぇ。今日、千里に連絡をしたんだけど、何故か反応が無いのよね……」

 

 どこか不自然に会話を打ち切った魔理沙に一瞬霊夢は怪しんだものの、スルーしては彼女の質問に答える。

 

 何が何でも昨日までは繋がっていた八雲紫製の携帯電話だが、本日で急に繋がらなくなったというのだ。

 

「繋がらない? それって故障か何かか?」

 

「機械的な問題なのか、紫の能力的な問題かわからないし……。後で会いやすい静雅か、にとりにでも確かめてもらうわ」

 

「今じゃ疑似スキマ妖怪──いや、スキマ神? 確かに外界の人物である静雅に頼むか、機械に詳しいにとりなら妥当だろうな。後でって何時だ?」

 

「このお茶を飲み終わってからー」

 

「……微妙な時間の長さだな」

 

 

 

 

 

 ──チャリーン──

 

 

 

 

 

 本音で言えばついでに霊夢と行動してすぐに動きたかった魔理沙だが、ここ博麗神社では珍しい音が聞こえた。それは二人とも意外な音でもあり、魔理沙に続いて霊夢も驚愕しながら現状の推察する。

 

「この音って──まさか賽銭されたのか!?」

 

「ありえない……!? 人里に行った時に千里の名残で食べ物とかを貢物をもらう時はあるけど、賽銭された事はほとんど無いのに……!」

 

 賽銭される事はもちろん霊夢にとっても嬉しい出来事だ。博麗神社までの道中は整備されていなく、人里の人間が直接賽銭してくるという事はない。ましてや霊夢の知る限りの幻想郷で関わりのある人物達などは知らない。

 

 賽銭してくれた人物を確かめるべく、霊夢は飲みかけたお茶を中断して卓袱台に置き、境内へと続く襖を開けては挨拶と同時にお礼を言おうとしたのだが──言葉を発せなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 最初の出会いは、外界の人物が大金はたいて賽銭してくれた事。後で聞いたのだが彼は賽銭は二択しかなく、一万円を賽銭してくれた。それは彼女へのこれからの事を関わりを持つきっかけとして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、前回に選択しなかった、もう一つの選択肢──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「定番だけど、【御縁】に掛けて五円を賽銭してもらったよ──霊夢」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 確かに【縁】があった。被っていた笠を上げ、多少は髪が長くなった男。そしてその男の周りの人物は彼女の記憶にもちろんある。

 

 

 

 

 

 一人は男の家族でもあり、式神でもある──五徳。

 一人は【兄】の事がずっと好きだった義妹──辰上陽花。

 一人は離ればなれになった家族の一人である妹──縫ノ宮縁。

 

 

 

 

 

 そして目の前にいる男。霊夢は無意識に体が動き、真正面から男を抱きしめる。彼の名前を呼びながら、涙声で【言葉】を。

 

「──千里、【お帰り】!」

 

「うん、霊夢。【ただいま】」

 

 彼女の行動に合わせて彼──辰上侠であり、縫ノ宮千里は霊夢の事を優しく抱きしめる。

 

 霊夢は場合によっては半年、数年。もしくは最悪数十年は覚悟していた。彼が外界でやるべき事が一般から見てもやる事が多すぎたからだ。

 

 一つ目は、前の本家が行った行動を謝罪し、世間からの辰上の信用を取り戻すこと。

 二つ目は、自身の学を無理やりにでも外界基準で認められる学歴を身につける事。

 三つ目は──これは彼の自己満足かもしれない。彼自身と同じ境遇の子供たちを助ける、もしくは世界中で起こっている争いを収める事。この三つ目の行動は一つ目の目的に評価される事になった。

 

 ただの人間ならばこの目的は果たせずに、幻想郷に来る事が出来なかっただろう。しかし、彼はやってみせた。全ては──幻想郷でずっと待っていてくれた博麗霊夢の為。

 

 早く帰ってきてくれた事について、彼女は特に考えをしないでそのまま尋ねる。

 

「ねぇ、千里っ! どうしてこんな早く帰ってこれたの!? 私はずっと、もっと長い時間が掛かると思っていたのに……!」

 

「理由? それはやっぱり早く霊夢に会いたかったから。それで迅速に目的を果たしてきたからね」

 

「うぇっ!?」

 

 ストレートに答えた千里に顔を赤く染め上げては若干彼から離れた霊夢。まだ幻想郷にいた頃の千里は、恥ずかしいセリフはどこかぼかしながら話していた。しかし、彼は霊夢と話している最中に学んだ。彼女は──直球な言葉じゃないと理解が遅い。

 

 しかし直球で一見恥ずかしいセリフを言った千里は恥ずかしいのかというと、そうでもない。彼はまだ知らないが、すでに幻想郷中では霊夢と自身が付き合っていると広まっていると勘違いしている。……もっとも、家族や静雅に関係を報告している分、霊夢の報告なり情報が好きなある烏天狗にも伝わっていると思っているのだ。

 

 ……彼の思惑とは違い、霊夢は千里との関係を暴露するのはとても恥ずかしい事だと思い喋っていない。静雅にあたっては「これって秘密にしていたら面白くね?」という事で広めていないのが現実である。

 

 その中で、一番身近にいた三人とはというと。

 

「霊夢さんずるーい! だったらあたしも抱き着くもんっ」

 

「五徳はしないのー?」

 

「すでにやっている縁達がいるからアタシは気にしなくてもいいさ。……単純にアタシは恥ずかしいっていうのもあるが」

 

 何時の間にかに背面には陽花、彼の左側に抱き着いているのが縁である。五徳はそのような行動をとらず、まるで保護者のように温かい目で見守っている。

 

 神社の外で起こっている騒ぎにようやく魔理沙が襖の奥から出てくる。彼女が見た光景を一言で表現。

 

「……侠がいるのに驚きだが、何だこのカオス……」

 

 魔理沙の呟いた言葉で気付いたのであろう霊夢が、まだ頬に赤みが残っているものの、現状を説明する。

 

「ま、まぁいつも通りでしょっ。千里が妹達に抱き着かれている事なんてっ」

 

「初めて見たぞ。それに陽花はともかくとして……もしかして過去に霊夢の言っていた、その小さい女の子が侠の実の妹か?」

 

 観察するかのようにして魔理沙は改めて縁に近づき、話を。魔理沙を初めて会った彼女は、思った事をすぐに発言に変える。

 

「? 誰ー?」

 

「私か? 私はいずれ大魔法使いになる人間の霧雨魔理沙だ。気軽に師匠って呼んでも良いぞ」

 

「! それってまほーが使えるの!? プ○キュアみたいに!?」

 

「その特有の単語はわからないが、魔法はちゃんと使えるぜ! 使いたかったら私に弟子入りすると良いぜっ」

 

「ししょー! ししょー!」

 

「……弟子がいるのってこんな感じだったのかな、魅魔様は……」

 

 本物の魔法使いに会えた事が嬉しいのか、無邪気に笑顔を見せながら喜んでいる縁。純粋な縁の様子にどこか魔理沙は満更でもなさそうだ。

 

 しかし、妹の教育も兼ねているのか、千里は魔理沙に注意の言葉を。

 

「魔理沙、縁を変な道へと誘導しないでくれるかな?」

 

「別に良いじゃねぇか。普通の人間だったら魔法には憧れるもんだろ? 外界で暮らしているのなら尚更だ」

 

「縁も陽花もだけど、妹達はまだ外界でやるべき事が残っているんだから。陽花は高校に入れて大学とかに進学させて、縁は色んな事を学ばせないといけないし。幼い頃からちゃんとした事を教えないと、将来が不安になるし」

 

「……なぁ、侠。お前ってもしかするとシスコンなのか? さすがにそれは過保護な気がするんだが……」

 

「シスコンも何も、大事な家族だから心配するに決まっているじゃないか」

 

「(……そういえば侠は自分のことを知るまでは誰も肉親はいないと思っていたんだもんな。ちゃんと肉親がいるとなれば、気遣うようになるのは当たり前か)」

 

 少し千里の対応にどこか不安を感じた魔理沙だが、次第に彼の情報を整理すると納得し始めた。彼にとってはやっと見つけられた繋がりなのだから、大切にするのは当然だろう。

 

 千里の言葉に陽花は「勉強したくない〜……」と自身の胸中を呟いているが、それは五徳にしか聞こえず。そして千里は妹達に行動を促す。

 

「陽花、縁。とりあえず霊夢達と色々話す事があるから博麗神社の居間で休んでて良いよ。ずっと慣れない道を歩いて疲れただろうし」

 

「あたしは別に大丈夫だけど……縁ちゃん、どう?」

 

「……少し、お昼寝したい」

 

「あ〜……縁ちゃんは海外暮らしだから時差ボケがあるんだったね。だったらちょうど良いか! あたしも縁ちゃんとお昼寝しよう!」

 

 陽花は縁を気遣ったところ、彼女は多少はしゃいだのも含めて疲労と眠気に襲われているようで片目をこすっている。

 

 彼女達の様子にどこか微笑ましい表情を浮かべながら五徳は、霊夢に会釈してから博麗神社へと入っていった。彼女も一時期博麗神社に居候していた身なので間取りは把握している。

 

 五徳達が博麗神社へ入った頃には──千里達の目の前に現れる【スキマ】という空間。そこからは幻想郷の管理人をしているという妖怪が現れた。

 

「──随分早い帰還よね、千里。でもまぁ、やることを良く終えてきたわね……。普通の人間じゃ絶対無理な事柄なのに」

 

「もう自分は普通の人間じゃないってことは自覚していますからね。後はもう慣れです」

 

「本当に幻想郷に染まってきているわね、あなた……」

 

「侠、ナチュラルに現れた紫によくナチュラルで会話出来るよな……?」

 

 少し困った様子を見せていた八雲紫だが、当本人の千里は気にする様子はなく。呼吸するかのように彼女と会話する千里に魔理沙は疑問にしか思わない。

 

 千里本人の理由としては「幻想郷であったこととかの連絡はしてくれたし」と返事をしたところで、霊夢は紫に疑問があるのか、溜息をして腰に手を当てながら彼女に問う。

 

「紫……もしかしてあんた、千里が帰ってくる日って知ってた?」

 

「そうよ。彼とは一応お互いの情報交換はしていたし。私だけじゃなくて静雅も知っていると思うわよ」

 

「……親友だからでしょうね。それであいつはあんたみたいによく隠し事はするし。別に変な事じゃないわ」

 

「あら、怒らないの? 真っ先に誰よりも千里が幻想郷を来るのを願っていたのは霊夢なのに」

 

 紫は多少霊夢の叱責は受けると思っていた。彼女は数少ない、霊夢と千里の関係を知っている人物でもある。

 

 しかし彼女は紫の質問に逆に疑問に思っていたようで、言葉を返す。

 

「? 別に怒る事はないでしょ? 私としたら千里は帰ってくるのはどんなに遅くてもしょうがない事だったし。逆に千里が帰ってくると伝えられて待つ時間とか嫌だし」

 

「…………丸くなったわねぇ。以前の霊夢だったら『何でさっさと教えてなかったのよ』云々は言うかと思ったんだけど?」

 

 紫の言葉に同調するかのように、魔理沙も拳を顎に付けながらこれまでの事を振り返る。

 

「紫の言う通りだよなー。何て言うか、霊夢は若干短気なとこもあったし。何て言うか……あれだ。侠がよく理不尽な事を入れても簡単に受け入れていたみたいな、侠の長所的なのが移ったのか? それで霊夢も少し温厚になったというか……。それで逆に侠は霊夢みたいな度胸がついたというか。お前ら案外お似合いなんじゃねぇの?」

 

 魔理沙としては冗談を含めていたのだろう。軽く笑いながらからかいを含めて霊夢に発言したのだが──当本人というと。

 

「うぇっ!? いや、その、そんな、お似合いだなんて──」

 

「……? 霊夢? どうしたんだぜ? 冗談にそこまで反応するなんてよ?」

 

「あれ? もしかして魔理沙、知らないの?」

 

 顔を赤く染め上げ、紅潮する頬を自身の両手で隠している霊夢。魔理沙としては冷静な返し文句が来ると思ってたのだが、当てが外れた。疑問に思っている彼女に、千里は魔理沙に【関係】についての事を話そうとする。

 

「言うのも何だけど、自分と霊夢は──」

 

「だぁー!! 何言おうとしているのよーっ!!」

 

「ゑっ!? ちょ、痛い⁉ どうして自分を叩くの!?」

 

 顔が赤いままの霊夢は何故か持っていた大幣で、ガムシャラに彼の頭を叩いて口を封じようとしている。

 

 ……先ほども記述した通り、あくまで霊夢と千里の関係を知っているのは一部の人物だけである。すでに広まっていると勘違いしている千里の口を封じるための行動である。

 

 見慣れない腐れ縁の行動に驚いている魔理沙だが、紫は愉快そうに笑っている。

 

 まだ霊夢が千里を叩いている時に、急にそこに現れる人物。その人物は二本の白いヘアピンをしている男だが……。

 

「……何だ? 千里(センリ)が帰ってきてるだろうから来たのに……痴話喧嘩か?」

 

「お、静雅。お前も来たんだな。それで二人は……何故か侠の言いかけた言葉に霊夢が怒っているんだぜ。どうしてか」

 

「……さすがにそれだけの情報だけではわからないが……痴話喧嘩をやめさせるか」

 

 

 

 

 

 少年説得中……

 

 

 

 

 

「──まぁ、何故喧嘩し始めた理由は聞かないとして──千里(センリ)。お帰り」

 

「うん、ただいま。仲裁してくれてありがとう」

 

 珍しく場を荒らすわけでもなく、縫ノ宮千里の親友でもある本堂静雅は迅速に争い事を終結させた。霊夢はまだ若干頬を染めて不機嫌そうにしていて、千里(ちさと)は納得しきれていないが。

 

「それで事前に聞いた話だと、猫妖怪と五徳と義妹の陽花、実の妹である縁も連れてきているんだよな?」

 

「そうだよ。それで今は縁の時差ボケに合わせてくれてか、陽花と五徳が一緒に寝てあげているんじゃないかな」

 

「平和な世界で何よりだ。それで……八雲紫。誰にこの事を知らせればいい?」

 

 聞きたいことは終えたのか、体の向きを変えて紫へと対面する形に。

 

「そうね……。以前、千里の家に集まった人物関係でやりましょう。さすがにそこまでの大人数は呼べないし。一回目はそれでよしとして、以降は事前に知らせてやればいいと思うわ」

 

「了解した。じゃあオレは知らせに回ってくる。まずは……アリスから誘ってみるか。咲夜はもうすでに知っているし、準備を手伝い次第、咲夜と一緒に戻ってくる。……レミリア嬢とフラン嬢はどうすっかな……」

 

 紫と会話を終えた静雅は、能力を使いその場から消える。霊夢と千里は考えが少し遅れたが、紫と静雅の会話で察した魔理沙は覇気のある声で何をするかを言う。

 

「侠の家に集まった人物で一回目──わかったぜ! つまりこれから侠の幻想郷への帰還を祝って宴会するんだなっ!」

 

「えぇ。彼の幻想郷の帰還はその内広がっては、宴会が開かれるでしょうけど」

 

「幻想郷特有の【何かしらの出来事が起こったらとりあえず宴会】だね……。何だか随分久しぶりに感じる」

 

 二人の会話で何をするのか知った千里は、どこか懐かしむように遠くを見ながら言う。薄々霊夢は雰囲気で察していたのか、そこまでは驚いてはいないが……どこか、彼女も乗り気だ。

 

「千里、それほど長い時間を待たせなかったのは褒めてあげるけど──宴会が始まったら、まず私にお酌しないさいよ?」

 

「そりゃね。待たせた事実には変わりはないし」

 

 千里の言葉に満足げに頷く霊夢。一先ずの会話が区切りがついたと判断した紫は、スキマによる空間を作りながら言葉を残す。

 

「じゃあ私は幽々子の所にでも行っているわ。後は準備お願いね。後、まだ千里が幻想郷にいるという情報は広めない方が良いから、千里は神社で待機していて頂戴」

 

「わかりました、紫さん」

 

 返事を聞いた彼女はスキマの中に入り、空間が閉じていく。そしてこれから宴会への準備が始まるのだが──その前に、魔理沙は千里に指をさしては堂々とした態度で、ある事を申し込む。

 

「侠っ! 宴会の前に弾幕ごっこを申し込むぜ! いくらなんでも私が負けっぱなしにはいかないからな! 本気で私と戦え!」

 

「弾幕ごっこ、か。懐かしい……。霊夢、少し魔理沙と弾幕ごっこしてもいい?」

 

 普段の千里ならば断わっていただろう。だが、彼も時間が過ぎる度に変わって──否、元の人格に戻っているのか、許可を霊夢に求める。霊夢と魔理沙は乗り気の千里に少し驚いたものの、霊夢は彼の言葉に肯定することに。

 

「……良いわ。私も千里の弾幕ごっこを久しぶりに見たいし。魔理沙をコテンパンにしちゃいなさいっ!」

 

「了解。やりすぎないようにするよ」

 

「ほう? 霊夢には後で話をするとして……私はもう、油断は一切しない。私の力で──静雅を超えるための踏み台になってもらうぜ!!」

 

 魔理沙は箒に跨り、千里は赤い竜の翼を出して二人は飛翔をし。そして二人は──スペルカードを宣言する。

 

 

 

 

 

 

「恋符【マスタースパーク】!」

「龍撃【ドラゴンバスター】!」

 

 

 

 

 

 

 

 お互いの高火力のスペルカードがぶつかり合った……。

 

 

 

 

 




 次話、最終話。

 ではまた。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。