設定としては【特別番外編『秘封の非【日常】』】とリンクしていたりします。なので今回の話は前回の話の特別番外編を読んでもらえればよろしいかと。
三人称視点です。では、どうぞ。
※この話は本編と直接は関係ありませんが、本編の設定を受け継いでいる箇所があったりします。もしもの世界のIFstoryです。本編を読んでいただけると内容が理解しやすいと思いますので、初めての方は読んでみることを推奨します。
辰上陽花は【花】のある女子高生である。以前は義兄のある問題があり悩まして事があったのだが、数年前に解決した。その後、他人には冷たかった義兄だが、かつての義兄の性格に戻りつつある事に歓喜した。その後の補足として、義兄の本当の家族と共同生活を送る事になり。陽花自身も義兄の縫ノ宮千里の家族といれるのも好ましく思った。彼女にとって特に、年が離れた義兄の実の妹と一緒にいれるのも嬉しい。それは自分にも妹ができたようなものだった。彼女は常に天真爛漫があてはまる性格だが、義兄が幸せになった事で彼女も連鎖するように幸せと感じ、性格に拍車を掛けるようになった。
話を戻そう。彼女は誰とでも仲良くなろうという心を持っている。その事は高校に通う人達は知っている。彼女は容姿も整っており、性格も他者に受け入れやすく。それ故、男女共に好かれやすい。中には彼女との【関係】を持とうとする男子がいるのだが――
『辰上さんっ! どうか俺と付き合ってくだ――』
「あたしよりも良い人が見つかるって! 気持ちは嬉しいけど、その気持ちをその人に伝えてあげてよっ!」
『そ、そんなぁ……!?』
――ある意味無邪気に、ある意味では残酷に振られているのが現状である。
彼女、辰上陽花は――影では【憎めない人タラし】と呼ばれている。
『――よかちん、これで何度目? 告られるの』
愛称を呼びながら目の前にいる人物――辰上陽花に話しかける人物が一人。彼女は多少気さくなのか、規定の制服のリボンのゴムが緩くなっており、心なしかスカートの丈が短い。癖っ毛が目立つショートヘアをしているこの人物は陽花の友人だ。学生生活を送るにあたって、仲の良い人物達はグループを作って休み時間、昼休み、放課後など一緒にいる時間が多い。陽花は彼女の性格上誰でものグループに入る事ができるが、主に時間が多いのは目の前にいる人物を含め四人が多い。
現在昼休みの中で彼女からの疑問にしばらく考えていたのだが――途中でオーバーヒートでも起きたのか、目を丸くしながら彼女の名前を呼びながら一言。
「…………
「よかちん、その発言知らない人にとっては敵を作る発言だからね? 本当によかちんは脳筋なんだから……」
「あはは……面目ない……。何時も課題を手伝っているから首があがらないよ」
「頭があがらないよ、それ」
冗談でごまかしているのでは無いと、陽花に良美と呼ばれた人物は溜め息混じりに昼食の市販サンドイッチをかじる。返しの言葉に陽花は苦笑いを浮かべた。
しかしその彼女をフォローするかのように、同席していたメガネを掛けたおかっぱの長髪、少し小さめの身長の女生徒が言葉を。
『で、でも、陽花ちゃんは運動能力は本当に凄いよねっ。い、色々な部活の助っ人で呼ばれるしっ!』
「ありがとう
「ファ、ファイ!?」
都と呼ばれる女生徒に助け舟を出されたのが嬉しかったのか、陽花は席を立って座っている都に抱きついた。その様子を見た良美は一言。
「……勉強」
「よ、良美も味方だよー……」
「おいコラ」
……会話から察するとすれば、勉強関連だと良美に世話になっているようだ。良美の言った単語に複数の意味が含まれていると察した陽花は、抱きつくのを止めて苦笑いを浮かべながら同じ言葉を発するのを見て良美は軽い怒りの声。
『――全く、何故ワタクシが【日直】という名の雑用を……』
愚痴を言いながら流れるように陽花達の空いている席座る一人の女生徒。その女生徒は表現する言葉があるとしたら【お嬢様】。流れるような腰まで伸ばした髪。両耳付近にある髪は縦ロール。脳天の場所には白いフリルがついたカチューシャ。労るようにして彼女の名前を呼んで話し掛けたのは陽花だ。
「おかえりー
「! そうですわよね陽花さん! ワタクシも常日頃考えています! あぁ、やはりワタクシと陽花さんは運命共同体――」
「何でも自分の良いように考えるなよ【ピー】」
陽花の同調が余程嬉しかったのだが、希沙と呼ばれた少女はご機嫌そうに頬を染め上げて何かを言いかけたのだが、良美が遮ってはとても普通の人物に聞かせる事ができない単語を。
……ちなみに陽花と希沙が話し始めて不機嫌になっていた良美を察していたのか、都は慌てながら陽花の耳を塞いでおり。陽花は何が起こったのかわからない表情を浮かべている。
喧嘩腰とも感じる言葉に反応したのはもちろん希沙と呼ばれた少女だ。
「な、な……ワタクシはそういうモノではありませんことよっ!? そのような誤解を招く言い方をしないでくださる
「あんたがそういう雰囲気を醸し出しているんだよ
「あぁ、アレはワタクシがこのクラスに馴染めていなかった頃。暴漢に襲われそうになって絶体絶命の窮地に陥っていまい、じいやが駆けつけて前に――ワタクシは陽花さんの雄志を忘れませんわ! 滑らかに踊るようにして不届き者を撃退する、美しい姿! その時、ワタクシは思いましたわ……『この方こそが、ワタクシの白馬の王子様……!』」
「……よかちん、やっぱりあの場面では虎空院を放っておくのが正解だったと思う」
「ダメだよ良美! それじゃその時の私が許さなかった! クラスメイトの危機に駆けつけるのは当然でしょっ!」
「(その結果、虎空院さんが道を踏み外したと思うんですけど……。虎空院さんの付き人とタッチの差で、陽花ちゃんの思っている感情以外のを絶対持ってる……)」
……ここにいるグループのメンバーは、陽花を中心にして集まったグループである。各々のきっかけを順にすると、このような感じだ。
・榊原良美……高校入学時の出席番号で隣になり。勉強関連でわからない問題を陽花が彼女に聞いたのが始まり(それ以降彼女は学校で陽花の保護者役になっている)
・
・虎空院希沙……元ぼっちその2。高飛車な性格があった所為か、まともな友人がいなかった。陽花もその当時に気にかけていたが、希沙には全く相手にされなかった時期があった(後に暴漢から救った陽花にある意味では特別な感情を抱くようになり、彼女を見習って他人と触れ合うようになった)
この場にいるグループは各々の個性が溢れており、第三者から見れば充実しているように見えているらしい。現在良美と希沙は口喧嘩をしているが。
二人の様子を見ていた陽花は常日頃思っている事を都に話を。
「都ちゃん。なんだかんだ良美と希沙って良いコンビだよね! 何て言うかって……何だっけ?」
「え、えっと……陽花ちゃんが言いたい事は『喧嘩するほど仲がいい』かな……?」
「そうそれっ!」
「「目が悪いの(かしら)!?」」
真っ先に否定されたのは言うまでもない。
放課後。この日は四人とも時間が空いていたのでゲームセンターで娯楽を楽しんでいた。このような光景も一種の青春だろう。
陽花は特に得意なモノも苦手なものは無いが、他の三人はあったりする。
ガンシューティング。
「――よし、ノーダメクリア!」
「はわわわ、榊原さんみたく上手く照準が合わせられないよ~!?」
リズムゲーム
『フルコンプだメ!』
「やりましたっ! パーフェクトですっ!」
「お、おかしいですわ……。真宮さんのあの体で、あの手の動きの俊敏さ……?」
ダンスゲーム
「フッ……ダンスは淑女の嗜みですわ、さ・か・き・ば・ら・さ・ん?」
「うわぁ、どや顔ウザイ……」
こうして時間が過ぎていき。最後は四人でプリクラを撮る時は陽花が落書きを三人は止めに入っていたりしたが、四人は笑顔を浮かべていたところで撮られていたという。
時間も暮れていき、街灯に灯りが灯ろうとし。別れをしなければならないと悟った陽花は残念そうに言う。
「あ~あ……楽しい時間って本当に早く終わるよね……」
彼女の言葉にすぐに反応したのは希沙だ。希沙はどこか頬を染め上げて提案しようとするが、その言葉は良美に遮られる。
「そ、それはつまり、もっとワタクシと一緒にいたいという事ですわね……! ならば陽花さん、ワタクシの屋敷に宿泊されては――」
「言わせねぇよ?」
彼女の目論見が看破されたのもあるのか、希沙はさらに頬を赤く染め上げて否定の言葉を混じえながら日常会話を。彼女の提案に少し悩むようにして陽花は考える様子を見せるところに、都は問いかける。
「? 陽花ちゃん?」
「うーん……明日から土日で連続の休みがあるから、お泊まり会も良いと思ったんだけど……希沙の家は良美も都も遠いからね。それに急に押しかけるのも悪いし……」
悩む一方希沙は「ならば陽花さんだけでも大歓迎――」と言いかけたところで良美から口封じという事なのか希沙の頭にアイアンクローを。「頭が……割れますわ……!?」と苦痛の声をあげているが、これも日常の一部だと訓練されている都は陽花の言葉に応えた。
「が、学校から一番近いのは陽花ちゃん、次に榊原さん。それで次は私で、虎空院さんは一番遠いよね……」
「なんだよねー……。はぁ……こんな時、お兄ちゃんが仕事から帰ってきてくれたら――」
ちょうど陽花がそう言いかけた時。彼女達の近くに一つの赤い車が止まった。車が来た時の反応はそれぞれ違い。陽花は歓喜の表情を浮かべ、良美は私刑執行を取り止め。都は頭上に疑問符を浮かべ、良美から解放された希沙は痛みを感じる場所のケアを簡単にした後、彼女だけが警戒色を見せている。
そして、車の運転席の扉が開かれ。その人物は――辰上陽花が望んでいた人物でもあった。
『ちょうど見かけたと思ったけど――友達と遊んでいたのかな? 陽花』
その男はスーツを着ているのだが――男にしては腰まで伸ばされているポニーテールが特徴的だ。見た目の容姿も声による判別が無ければ難しい。
この場で一番密接な関係を持っているのは陽花だが、彼を見て一番驚いているのは希沙だ。
「!? まさか陽花さんの【兄】であり、【辰上】グループのトップである辰上侠さんなのでして!?」
「え、えぇ!? あの陽花ちゃんのお兄さん!?」
釣られて驚いているのは都。それぞれ驚愕しているには変わりないのだが、前者と後者では意味が違う。
前者の意味にまず反応したのは侠であり、顎に手を着けながら縦ロールの少女について思い出す。
「ん……? 希沙か。こんなところで会うなんて奇遇だね。プライベートで会うのは久しぶりな感じがする」
「は、はい! この度はワタクシ達の発展に協力していただいて、感謝の言葉で――」
「ははっ。別に仕事じゃないだから畏まらなくて良いよ。ほら、あの時の君みたいに――」
「よ、陽花さん達の前で言わないでくださいましっ!?」
侠の言う【あの時】に心当たりがありすぎたのだろうか、希沙は顔一面を瞬時に沸騰させて困惑の様子を見せている。
彼女の面識があるような言い方に、【妹】である陽花は目を丸くしながら希沙に問いかけていた。
「あれ? 希沙って、お兄ちゃんと会った事があるの? あたしが知らない場所で?」
「……そうですわ陽花さん。【虎空院】として私が学んでいる時、貴女の【辰上】と仕事で何度もお会いしています。御父様と侠さんとの会談に参加していますし」
「ほぇ~……そうだったんだ。お兄ちゃーん、それだったらあたしに教えてくれてもいーじゃん」
「あくまで【仕事】で触れ合っていたからね。本来プライベートな話が出来るような話じゃないし」
「(……あれ? 陽花ちゃんが好きな虎空院さんだったら、逆にお兄さんと会っている云々を言うと思うんだけどな……?)」
ふと会話に疑問を覚えた都は希沙に視線を向けると――彼女は片手を自身の胸に置いては、辰上兄妹に視線を向いているように見える。
そう見えたのは良美も同じなのだが――侠は彼女に体の向きを変えては話し掛けた。
「君は以前家であった事があるね。偶々陽花に家に来るかと誘われて、偶々自分が休みの日に会ったんだったはずだけど……」
「よく覚えていますね、よかちんのおにーさん。一度だけの対面だったはずなんだけど……」
「君の事は陽花から良く聞いてるよ。時折の言葉はきついけど、面倒見が良い友達って。迷惑を掛ける――現在進行形で掛けているかな? これからも【妹】をよろしく」
「りょーかい。お任せあれっと」
「良美~……そこは了解しないでよ~……」
肝っ玉があるのか、目の前の有名人がいても変わらない態度で侠の言葉に応える良美にタジタジの表情を見せている陽花。
陽花のこの二人の友人は大してあがらなかったが、都はそうはいかない。頬を少し染めながら彼に話しかけようとする。
「あ、あの……! 少し聞いても、良いでしょうかっ」
「? 何だい?」
「ほ、本堂静雅さんの、サインってお願い出来るでしょうか……!」
「君、静雅のファン? それだったら――」
『ここにいるぞ!』
彼女の質問に答えかけたその時、止めていた侠の車の後ろの席から現れる男。そのパンク系ファッションで黒いワイシャツを着ては丈のジーンズの上着にダメージジーンズのズボン。黒い帽子にサングラスをしている男が現れた。一瞬にして出てきた所為か都は「ヒャアッ!?」と怯え、希沙は変質者と勘違いしたのか顔を引きつりながら一歩後退。良美に至っては冷静に男を注視している。
彼がどのような人物かわかったのか、陽花は少し驚きながら男に話し掛けた。
「あれ!? もしかして――しずまっちゃん!? 珍しいね。ここ数日会ってなかったけど」
「おう。皆大好き本堂静雅だ。何、簡単な事だ。偶々仕事先が千里――侠と一緒だったからな。それで今帰還したところだ」
「そういえばお兄ちゃん、警察の仕事で出張してたね……」
途中で他社が複数いる事を含めてなのか言い直した静雅に、納得したようでウンウンと頷く陽花。彼の正体が明らかになったところで、反応が強かったのは良美と都であり、興奮しながら確認をとっている。
「マジ!? 今じゃ人気俳優の本堂静雅がここに!?」
「そ、それだけじゃありませんっ。深夜アニメで【この世界には色々な物語がある】、通称【この色】で主人公の親友役の声優もやっている方です! 他にも子供から大人まで有名な漫画【ドライヴリンカー】の映画化が決定した時に、オリジナルの映画限定重要敵役もこなしている、俳優でありながら声優もこなせる人物だと注目度が高いんですっ!」
「今時のJK風の女子高生はともかく、お前さんの熱意は凄いな……ところでお嬢風のお前さんは何故オレから離れているんだ?」
ある意味では都に感心していた静雅だが、まるで二人と正反対の反応を希沙はしている。彼女は苦虫を噛み潰したかのように、彼女は一言。
「……ワタクシは貴男みたいなチャラチャラした殿方は苦手ですの」
「おっふ。そいつぁ残念だ」
「あ~……しずまっちゃん。希沙はしずまっちゃんじゃないとしても、チャラチャラした人に襲われそうになった事があるからそれで苦手意識があるんだと思うの。だからあまり気にしないで、ね?」
陽花のフォローに安堵を見せる静雅と、「部署で女子高生が撃退という話が確か……あっ」と侠は察し。後で詳しい事情を聞こうと彼は決心したところで、陽花は何かを思いついたようで義兄にある事を頼み込む。
「あ、そうだお兄ちゃん! もしも良かったらウチでお泊まり会しても良い?」
「「「えっ(はいっ)!?」」」
本当に唐突な提案だったようで、良美達は陽花の発言には驚いているようだ。許可を求められた侠は冷静に話を進めていく。
「お泊まり会? 来客用の身支度もあるし個人としては構わないけど……その様子だと陽花の友達にとって急な発言だったみたいだね。こっちは母さん達に連絡してみるから、友達の親御さん達の許可を確認してからね」
そのまま該当する人物達は連絡端末機器を取り出し、電話やメールなどを使って親に連絡を。
連絡をし終わった四人は順に結果を報告。
「母さん達は大丈夫みたいだ」
「私の父親もOKだね」
「パ、パパも楽しんできなさいと言ってくれたので大丈夫です!」
「……御父様に連絡をとったところ、二つ返事で返ってきましたわ……」
どうやら話は進んだようだ。便乗するかのように静雅も発言したのだが――
「オレも大丈夫だってよ――」
「君は今回の報告書の提出と、今日は声優の仕事がまだあるでしょ。車で一旦陽花達を自宅に送り届けた後に、事務所まで送ってあげるから」
「JK達のお泊まり会(意味深)に参加できないのか!?」
「それ以上踏み込むなら警察として君を豚箱に入れなきゃいけないけど」
「イエッサー。了解……した……!」
「しずまっちゃん……凄い血涙を流しそうな勢いだね……」
ある意味では三人にとって日常の一部だが、陽花の友人達は仲が良さそうにも見えたという……。
車で辰上家に向かう途中、静雅は車の中で希望者にサインをしたりなどで時間が過ぎていき。着いて車を降りた時は――屋敷の門がそこにあった。
侠の車から降りた陽花達はともかく、車に残っている侠と静雅のウチ、義兄が陽花に伝言を残す。
「じゃあ陽花。自分は静雅を送り届けた後、少し買い物をして父さん達を迎えに行くから」
「わかったー!」
「じゃ、また」
返事を確認した侠は車を走らせて去っていった。見えなくなるまで陽花は侠達に手を降った後、持っていた鍵を制服のブレザーから取り出しては門を開ける。門を開けた先には――広い緑色の庭、鹿威しに池には鮮やかな色をした鯉が泳いでいる。花壇もあるようで、そこには色とりどりの花が彼女達を出迎えた。
初めて辰上家に訪れては各々の感想を口にしたのは都と希沙だ。
「はわわ……!? アニメでよくある和風屋敷……!」
「あら……西洋的のワタクシの屋敷とはまるっきり正反対ですわね。このワタクシ達を出迎える花は心を癒やしてくれる……良いセンスですわ」
二人の印象は好評。門の鍵を閉めている陽花にある事に確認をとったのは良美。
「相変わらず綺麗ね……。ガーデニングは母親達がやっているんだっけ?」
「そだよー。せっかく広い土地なんだからって事で植えているんだって」
鍵を閉めた後に陽花を先導して進んでいく。そして玄関前までたどり着いて別の鍵を取り出して開けながら挨拶を。
「たっだいまー!」
『……姉さん、ですね。迎えに行きます』
彼女の声に反応した、一人の幼い少女の声。その声の主はどこか落ち着いており、広い玄関の先から現れる少女。その少女は十歳ほどの年齢だと思われ、肩まで伸びたオタマジャクシの飾りがついたサイドテール。部屋着でもあるのか、紫のパーカーをチャックしており、七分丈のようなズボンを履いている。
幼い少女は陽花だけかと思ったのか、陽花の後ろにいる人物達に視線を動かし、彼女に情報を求める。
「……姉さん、この人達は?」
「あたしの友達! 今日はお泊まり会する事になったの!」
「……そうですか」
事情を知ると少女は三人に再び視線を送り。その中で面識があったのだろう。良美へと体の向きを変えてはお辞儀しながら挨拶を。
「……良美さん。お久しぶりです」
「……覚えていてくれていて嬉しいけど……よかちん、あんたの【妹】ってこんなキャラだっけ? もっとこう前は、よかちんみたく元気っ子だった気がしたんだけど……」
「あはは……強いていうなら【早過ぎる思春期】かな……?」
「あんたの【妹】に一体何があったのよ」
苦笑いを浮かべて陽花なりに簡略化して伝えたが、逆に謎が深まるだけであった。
「……姉さんとは直接ではなく間接的ですが【妹】の縫ノ宮縁です」
良美との挨拶が済み、少女――縫ノ宮縁は挨拶をしていない都と希沙にお辞儀しながら自己紹介をすると、釣られるように都と希沙も自己紹介をした。
「え、えっと、真宮都です!(間接的……?)」
「……虎空院希沙ですわ」
「はい、わかりました。……ところで姉さん、にぃに――兄さんはまだ帰って来ないのですか? 今日、【出張】から帰ってくるはずですが……」
名前を知った後、縁は兄の所在を尋ねる。その様子は先程まで大人しかった彼女とは違い、玄関先に視線を送ったりなどで落ち着きがない。
「お兄ちゃんは買い物し終わった後、お父さん達を迎えに行くんだって。だから帰ってくるのは多分一時間後だと思うよ?」
「……そうですか。ありがとうございます」
欲しい情報は手には入ったのか縁は玄関から奥へ歩き、近くにあった襖を開けて部屋に入っていった。
縫ノ宮縁という少女と触れ合い、率直に思った事を都は口に出していく。
「す、凄い大人びた妹さんだったね……ちょっとびっくりしちゃった」
「……昔はあんな感じじゃなかったんだけどね、縁ちゃん」
「だよな。縁の口調がここらであんな性格になるとは思わないんだけどな。よかちん、思い当たるのが早過ぎる思春期ってどういう事だよ?」
「う~……その言葉はしずまっちゃんの受け売りだから深い意味はわからない~……」
頭を抱えながら陽花は語るも、まだ悩ましく唸っている。
縁の事に疑問に思っていた三人だが――唯一希沙だけがどこか複雑そうに指を顎に当てながら納得している様子が。彼女に気にかけた良美は彼女に質問を。
「……虎空院、何かわかったの?」
「わかりましたと言えば喋ると思いまして?」
どこか嫌みな言い方に聞こえたのだろう。良美は額に筋を浮かべていたものの――先程の自信があったはずの希沙の表情が曇る。それは、儚くては悲しそうな顔で。
「……意地悪で言っているわけじゃありませんわ。あの縁さんの事を尊重してですの」
「あんた紛らわしいんだよ……。それで縁ちゃんを尊重して?」
「希沙! 縁が何であんなクールになっちゃったかわかったの?」
今度は詰め寄るように陽花が希沙に急接近。普段の希沙なら陽花の距離に喜びそうなのだが、彼女は冷静に話を。
「ワタクシは縁さんと会ったのは本日が初めてですし、性格云々の事はわかりませんわ。ただ……彼女の【気持ち】についての推測を立てただけです」
「【気持ち】……? 希沙、それって何なの……?」
陽花と希沙は身長差がある所為か、第三者から見ても約頭一つ分の差で陽花が上目遣いにも見えなくもない。希沙は苦悶の表情を浮かべていたが――首を横に振った。
「くぅ……! それでも、駄目ですわ! 強いて言うなら陽花さんと同じか以上か、ある人物にある感情を寄せているっ。それだけはヒントを出してあげますから勘弁してくださいまし!」
「私と同じ……? 良美、何だと思う?」
「いや、何を言いたいのかサッパリ」
どうやら二人にとっては情報の整理が出来ていないらしい。二人は暫くの間考察していたが――都は感づいた。
「(陽花ちゃんと同じ感情を寄せていて。さっき縁ちゃんは陽花ちゃんのお兄さんの呼び方を言い直して、本堂静雅さんの言う【早過ぎる思春期】って――あっ)」
ここで都はある仮説に気付いたが、その答えは縁の事を尊重してここで言わない方が良いだろう。彼女はそっと答えは胸の中に閉まった……。
それから以降は四人は陽花の母親達に挨拶する事に。詳しい事情を知る良美は除いて、同じ歳ぐらいの大人の女性が二人もいる事に。彼女達の疑問に母親達は簡略して複雑な事情を伝えた。
順に紹介すると、柔らかい印象が強くおっとりしている方が辰上佳織といって陽花の親。強気な雰囲気で如何にも活動系に見える女性は、縁の母親でもある縫ノ宮紅音(旧姓は辰上らしい)。ややこしい事情があって侠は名前が二つあり、生みの親は紅音で育て親が佳織だという。
その後は夕飯まで自由に遊んでも良いと母親達に言われ、現在女子高生組は陽花の部屋でゲームを楽しんでいる。
……ちなみにゲーム機を主に使う時は都が高確率で勝っている。あまりにも一方的な展開で希沙は他に遊ぶモノはないかと陽花に尋ねたところ、少しの間部屋を出て戻ってくると、複数の紙束を持ってきた。これらは侠と置いていっている静雅の私物であり、半端静雅の誘いでたまに集めているカードゲームだと言う。陽花も影響で少し持っており、この手にも詳しい都も陽花と一緒に良美と希沙に教える事に。
初めて通しでもあり、陽花は希沙に良美と対戦するように促したのだが、彼女は拒否。普段良美と敵対関係でもある希沙だが、ゲーム機でコテンパンに負けてしまった都へリベンジだという。
……ここでの対戦で、希沙が都に対してトラウマを持ってしまったが。
都に一種のトラウマを植えつけられた希沙だが、その後は平和に過ごし。部屋に戻って適当な雑談をするなり過ごしていた頃に――インターホンが鳴る音が家中に広がった。この音に真っ先に反応したのは陽花であり、彼女の表情は喜びに満ち溢れている。
「! お兄ちゃん達が帰って来た!」
「よかちん、わかるの?」
「うん! フィーリングでね!」
「一種のブラコンも、ここまでくれば末期だな……」
良美の意地悪な言い方でも、陽花にとっては褒め言葉の一種である。
おそらく彼女の勘は確実なモノだろうと考えた希沙は、立ち上がりスカートの皺をのばしながら自分の意見を。
「ならば、迎えに出向いた方が良いでしょう。確か侠さんは御父様方を迎えに行くと言っていましたし。今夜はお世話になることですし、挨拶をしておかなくては」
「そ、そうですね! 挨拶をしなくちゃ!」
同調しながら立ち上がったのは都。続くように良美、陽花も立ち上がっては玄関先へと急いだ……。
最後に語られたカードゲーム云々は次の話の後書きにて記載する予定です。
では、また。