幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

266 / 267
 久しぶりの更新。結構リアルが佳境に入っている中、休みの繰り返して書いていました。時間にもっと余裕が出来たら活動報告のリクエスト板も書きたい……。
 三人称視点。
 ではどうぞ。

 
 ※この話は本編と直接は関係ありませんが、本編の設定を受け継いでいる箇所があったりします。もしもの世界のIFstoryです。本編を読んでいただけると内容が理解しやすいと思いますので、初めての方は読んでみることを推奨します。
 後、『秘封の非【日常】』辰上陽花の日常』と多少リンクしています。


特別番外編『縫ノ宮縁の野望』

 縫ノ宮縁は【ある事】を知るまでは彼女のままだった。本当の兄と一緒に暮らせるようになり、海外から日本へと戻ってきた。加え、親戚という関係だが【姉】の位置づけとなる辰上陽花とも一緒に。まだ幼い彼女にとって詳しい理由はわからなかったが、嬉しかったことには間違いない。

 

 そこから数年が経ち。周りの環境は変わっていった。具体的に言うならば兄は学生から社会人となり、日本や場合によっては世界各地まで足を運んでいる事。陽花は女子高生となっては、人生を満喫しつつあり。自分の親も、陽花の親も良好で、人生を楽しく過ごしているようにも感じる。補足としてだが、今では世間的に知らない人はいないまでに成長した本堂静雅との関係も持っている。

 中でも縁は兄の事を会う前から【好き】だった。一種の刷り込みなのか、離れた地で暮らす兄を知ってもらうために、彼の成長記録を本当の両親宛てのモノを一緒に見た記憶がある。縁の両親でもある縫ノ宮月白も辰上朱音も自然に兄をして覚えさせるように努めてきた。その結果、縁は幼いながらもずっと会いたかった。そして――その願いは叶ったのだ。

 

 実際に兄である辰上侠――縫ノ宮千里は優しかった。忙しい時間もあったはずなのに、妹である彼女の為の時間も作っており。彼女の誕生日には喜ぶようなモノもプレゼントしてくれていた。その当時の縁は純粋に彼の事を【好き】だったのだ。こんなにも理想の兄がいてくれて、優しくしてくれて。嫌いになる理由なんてどこにもない。

 

 そして――彼女が変わってしまった発端がある。それは小学生低学年の中学年の境目で、【夢】を語る作文の発表会の時に。彼女の幼い夢は――

 

 

 

 

 

「――わたしの夢は、にぃにの【およめさん】になる事ーっ!」

 

 

 

 

 

 ――純粋が故に、残酷な事を教えられた日でもあった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――お邪魔するぞー」

 

『あら。静雅君いらっしゃい。今日はどうしたの~?』

 

 辰上家に一人の訪問者が訪れた。その人物は黒いサングラスと帽子を被っては、丈の長いロングコートを着ており、何か自身の正体を隠している服装の人物は縫ノ宮千里の親友である――本堂静雅。

 

 彼を出迎えたのは彼の育ての親でもあり、陽花の母親でもある、おっとりとした口調が特徴の辰上佳織だ。彼女は彼に来た要件を聞いていた。

 

「ちょっくら寄ったもんだから遊びに。千里に連絡とったら両親と外出しているらしいが。……それ千里(センリ)からも言われて同時に気になって来たんだが、縁が一緒に行くのを拒否したみたいだな? 兄大好き二号の縁に何かあったのか?」

 

「そうなのよ~……。帰ってきたらすぐに自分の部屋に閉じこもっちゃってね。何か学校で嫌な事でもあったのかしら……? 静雅君、もしよかったらカウセリングをお願いしても良いかしら? 侠が問いかけても答えてくれないのよ。おまけにドアの鍵は閉めちゃうし……」

 

「まぁ、身内以外に話せる事はあるかもしれないからな……よし、任された」

 

 頼みごとを改めて受けた静雅は家に上がっては縁の部屋の前へ。彼は所在を確かめるために彼女の部屋をノックしながら話しかけた。

 

「縁ー? 応答しろー。皆大好き本堂静雅がやって来たぞー」

 

「……静にぃ?」

 

 部屋から小さい声ながらも、彼に反応する縁の声が。どうやら彼女にとっては【静にぃ】というのは静雅を呼ぶ呼称らしい。

 

 所在を確認できた彼は、改めて彼女に用件を言う。

 

「何か嫌な事があったのか? だったらオレに相談すると良い! 何せオレはメンタルカウセリングのプロだからな! 伊達に番組のレギュラーを持っているわけではない! さぁ、お前さんが抱えている闇をオレにぶつけるといい!」

 

「……本当に何とか、してくれる?」

 

「可能な限りはな」

 

 最後の言葉は一種の保険のようなものだが、彼の言葉を信じたのか。縁はドアの鍵を開け。ドアも開けては静雅を手招きした。

 

 心の中でガッツポーズしながらも、彼は縁の部屋に入って行く。彼女の部屋には兄から贈られたものが多数ある中で、縁は自分のベッドに座って枕を抱きしめるように持ち始めた。彼は『萌えポイント3』と評価しつつ、彼女の勉強机の傍にある椅子へと腰を下ろして話を振る。

 

「ふむ……泣いた後が若干みられるな。余程嫌な事があったと見受けられる。心なしか侠が贈ったオタマジャクシの髪飾りで出来たサイドテールも何か元気がない。さぁ、この本堂静雅に打ち明けると良い」

 

 クラスメイトと単なる喧嘩でもして、仲直りが出来なくて困っているというのが静雅の軽い推測だ。この年でそこまで重くない悩みではないだろうと彼は考える。

 

 先ほどまで口を閉ざしていた縁だがようやく口を開き――彼女が抱えている問題を発言した。

 

 

 

 

 

 

 

「――兄妹って、結婚できないの……?」

 

 

 

 

 

 

 

「……What`s? Repeat please?」

 

 聞き間違えたとでも思ったのか、静雅は動揺して何故か英語で聞き返した。意外にも縁は千里達と一緒に暮らすまでは海外に住んでいたのもあり、彼の英語の意味は理解しており。彼女は言葉の種類は違えど、発言を繰り返した。

 

「えっと……にぃにの【およめさん】に、わたしはなれないの……?」

 

「おっふ……聞き間違えではなかったか……」

 

 純粋な、涙が含んだ目のままで真直ぐに静雅を見続ける縁。その視線は静雅にとっても、この場に千里でもいたらとても耐えがたいものだった。

 

 しかし、彼は陽花の母親からといえど、役目を任された身。まずは冷静に事の発端について情報を集めることにした。

 

「OK。ならどうしてそこから現在までの状況を説明を頼む」

 

「……【将来の夢】についての作文があってね? それでわたしはね、【にぃにのおよめさんになる】って発表したの。せんせぇーはどこか笑っていたんだけど……クラスの男の子が言うの。『兄妹じゃ結婚出来ないぞ』って」

 

 純粋な夢を汚した罪は重い。と、静雅は余計な事を口走った男子について心で呪っていたが、彼女のどこかこらえるような声色なままで話は続いていく。

 

「それで、ね? 友達の女の、子も味方してくれたんだけどね、先生が言うの。『国が定めた法律で兄妹は結婚出来ない』って……。わたしは、それを信じたくなくて泣いてたの……!」

 

「……ふむ」

 

 ついにこらえなくなったのか、縁の瞳からボロボロと涙がこぼれ出した。

 

 静雅は考える。どうしたらこの子の悩みは解決するか? 今まで受けた相談を切り抜けた彼だ。複数の解決策を頭に模索していく。

 

 順に考えた答えを静雅はしばらくの間、提案を続けていった。

 

「じゃああれだ。嫁さんになる相手をクラスの男子にすれば良い――」

 

「やだ」

 

「……じゃあ次。千里より好きな相手を作るんだ。縁はまだまだ若いんだからさ、もしかしたら千里以上の男の子も存在しているかもしれない――」

 

「やだ」

 

「…………夢を変えるのは?」

 

「やだ!」

 

「(やべぇ、詰んだ)」

 

 すでに静雅の心が折れかけていた。この妹、もしかしたら陽花より重度のブラコンではないのだろうか? ここまである意味マインドコントロールをした本当の両親が恐ろしい。

 

 次々と案がつぶれていく中で、彼が何となく呟いた一言。

 

「……いっその事、法律を変えることが出来たらこんな苦労はしないんだよな……なんつって――」

 

「……ほーりつを、変える? 変えたらにぃにの【およめさん】になれるの!?」

 

「(……地雷を踏んだかもしれん)」

 

 何気に呟いた一言が泣いていた縁を止めた事によって、何時の間にか後戻りできない状況に静雅は陥っていた。まるで知らずに踏み込んでいた底なし沼のようにゆっくりと落ちていく感じを体感していた。

 

 いくらなんでもそれは無理だろうと思いつつも、借りの縁の夢が叶うルートを示す静雅。

 

「良いか。根本的に兄妹云々が結婚できないのは国の法律がそう定めているからだ。なら簡単な事――縁が法律を変えれば千里と結婚出来る。……が、これは成功する確率が万が一、億が一の可能性だ。世の中いろんな事が起きている分、無いとは言い切れないが……これは一般人には無理――」

 

「決めたー!」

 

「……はい?」

 

 急に何かを思いついたかのようにして、ベッドに座っていた縁は元気よく立ち上がる。そして続けた彼女の言葉が、彼を悩ます事になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたし、ほーりつを変える人になるー! それでにぃにの【およめさん】になれるほーりつを作るーっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁお。さらに夢が膨大になったな。もう何も怖くない」

 

 ついに縁から顔を反らすように、現実から目を背き始めた。悩みの種が成長し、芽を吹き出してしまった事に片手で頭を支えて後悔し始める。何故思いつきでこんな発言してしまったのだろうと。

 

 ある意味では悩みは解決したが、事態が深刻化したのにも関わらず縁はこれからの事について尋ねた。

 

「それで、にぃにの【およめさん】になるためにはどうしたらいいーっ?」

 

「……まぁ、千里の事だし大丈夫だと思うが……。縁、まずは大事な事の一つとして、兄貴から【異性】的な意味で好きになってもらうようになる必要がある」

 

 親友は常識的な思考は出来るだろうと投げやりになりつつも、【仮】の成立するルートを示す静雅。

 

「? いせい的な意味で?」

 

「そうだ。特にお前さんの兄貴は外見と雰囲気での好みは――胸がでかく、年上の雰囲気があるタイプだ。長年傍にいるオレが言うんだから間違いない」

 

 さらっと親友の性癖まで晒す静雅だが、当本人の縁は彼の言葉を受けて気持ちが沈んでしまっている。

 

「……年、にぃにのと10歳ぐらい離れてる……年上になれない。もしかして……ダメ?」

 

「実際の年の差は気にするな。だったら縁が千里の理想とする【年上の女性】を演じればいい」

 

「……どのように、なればいいの?」

 

「そうだな……例えばこの本で出てくる妹のキャラを参考にすればいい」

 

 そう言いながら静雅はある漫画を取り出し、シーンを抜粋して縁に見せた。その場面を要約すると次のとおりである。

 

 

 

 

 

 

 

『兄さん、もう学校に行く時間ですよ。起きてください』

『まだぁ~後5分~……』

『そう言って遅刻しかけたのは最近ですよ。私まで間に合わないかもしれないと思ったんですから。布団は剥がしますよ』

『マイ布団が!? 妹よ、いっそ俺のことは放っておいてくれ。堕落している兄に付き合う必要はない。せっかくお前は頭が良いんだ。朝の登校ぐらい、別々に構わないってのに……』

『兄さんは何時からそんなにめんどくさがりになってしまったんですかね……? 兄さんは私が面倒みないと学校に行く身支度すらしないじゃないですか。お父さんもお母さんも呆れていますよ』

『それで結構! 俺は堕落した生活を送るのが夢なんだ! 俺の面倒ごとをすべて片づけてくれる伴侶を捕まえるのが夢だ!』

『……現状の兄さんを好いてくれる女性なんていませんよ。そんな事より朝食の準備が出来ているので、さっさと顔洗ってください。今回のも私が作りましたから』

『外に出たくないんだけどなぁ……。仕方ない。動くかぁ。一時間目の授業はなんだっけな……?』

『(……それはそれで好都合なんですけどね。兄さんがそのような女性を望むならば私が……ポッ)』

『? 妹よ、何故頬を赤らめては両手を頬に置いているんだ?』

『なんでもありませんよ。ちょっと頬の状態を確かめていただけです』

『まぁ、いいけどよ……それにしても妹の料理か。俺は正直に言って母さんの料理よりも妹の料理が好きだなぁ……』

『!? 恥ずかしいことを言わないでくださいっ!』ビュン

『枕投げぶっ!?』顔面衝突

 

 

 

 

 

 

 

「――さて、最後のオチはともかくとしてだ。縁、この漫画に出てくる妹は兄と比べてどう思った?」

 

 漫画をとじては疑問をぶつける静雅。縁は年相応の直観からか、すぐに思った事を口にしていた。

 

「なんか、にぃにが弟のようで、妹がねぇねのようだった……」

 

「正解だ。十中八九、立場が逆転している兄妹に見えるはず。そこでオレが取り上げる課題としては――千里の姉さんのように振舞うんだ。つまりしっかり者にな」

 

「しっかり、者……」

 

 静雅の言葉を復唱しながら、自身の胸に手を置いて確認をとる。彼女の目にはどこか希望が見えるようになったと感じた静雅は現状の注意点を補足。

 

「ぶっちゃけ陽花が一般的なブラコンの妹だ。あれほどお兄ちゃんっ子が似合う奴はいない。でもな、千里の深層心理は妹より――頼りになる女性を欲している。その人物になれば千里はお前さんを意識する(かも)」

 

 最後の言葉は意図的に小さくしながら言う静雅だが、縁は目標が明確したのか羨望の眼差しで静雅を見つめていた。その視線は一般的に考えれば辛いものだったが、もう乗りかかった船だ。もうどうにでもなれ。

 

 何だかんだ楽しんできた静雅は次すべき行動を示し始める。

 

「じゃあだ。縁の夢を叶える一歩として、まずは口調・性格から変える必要がある。千里の理想は大人の女性だからな。大人な女性の喋り方を伝授してやろう」

 

「静にぃ、喋り方わかるの?」

 

「無論。オレを誰だと思っている? 今ではTV番組の引っ張りだこ、俳優なんてお茶の子さいさいの本堂静雅だ! ドラマや声優をやっている分、演技している女性の言葉遣いは記憶しているからな!」

 

「ありがとう静にぃ! 静にぃの事大好きっ」

 

「お? 好感度が急上昇か。それならオレに乗り換えても「嫌」……静雅さん、即答に悲しくなっちゃうな……」

 

 好感度の壁は果てしなく高い壁があるということを再確認した静雅はどこか悲しげな表情を浮かべたものの、表情を切り替えては本題に入っていく。

 

「じゃあまずはアレだ。大人の女性っぽくなる喋り方だ。千里達が帰ってくるまでに伝授してやる。言い方はこの漫画の妹キャラのように――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 静雅が持てる知識を縁に注ぎ、彼が帰っては千里達が家に帰ってきては――

 

「――ただいまー。縁ー、これお土産だよ」

「えっと、にぃ――ゴホン。兄さん、お帰りなさい」

「……縁? いつもの喋り方と違うようだけど、どうかしたの?」

「何のことですか? 私はいつも通りじゃないですか」

「ちょっ!? どうしてそんな他人行儀な喋り方なの!? いつもの縁はどこに行った!?」

「(縁ちゃん、もしかしてお兄ちゃんの言葉遣いを使い分けを真似してる……?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現在の縫ノ宮縁の野望、それは【兄弟姉妹で結婚出来る】法律を作ることである。

 

 

 

 

 

 

 




 陽花の特別番外編後半で縁が勉強云々のことを言っていたのはこの野望のためです。

 では、また。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。