幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ……何も言うまい。
 途中で三人称視点に変わります。
 ではどうぞ。


表・第三章
一話 『表主人公の謎』


 翌朝。自分が寝ている布団の中で少女が一緒に眠っている。

 

 

 

 

 

 ……うん。朝っぱらから意味が分からないね。とりあえず自分は上半身だけ起こして現在の状況と昨日のことを整理する。

 

 自分の布団の中に潜り込んで未だにすやすや眠っている──鬼の伊吹萃香。いつの間にか枕をひったくって頭に乗せている。まぁ、そのおかげで角による微力なダメージはなかったけど。そして地味に酒臭い。そして寝言なのか「お酒お酒〜……」と言っている。

 

 まぁ、寝顔は可愛らしいものだ。きっと年では上なんだろうけど、外見的はずいぶんと年下に見える……潜り込まれるのは陽花だけだと思ったんだけどなぁ。

 

 とは言え、この状況を博麗に見られるのはまずい──

 

「(ガラッ)侠ーちょっと起きてるー? 萃香がどこに行ったか知らな──」

 

 おう……まさか博麗が起きて見られてしまった。少し状況を理解したのか、それとも誤解しているのか。

 

 表面上は取り繕いながらも自分は博麗に向き直る。

 

「おはよう博麗。自分が起きたら何故か伊吹が布団に潜り込んでいたんだけどね、詳しい理由は知らない?」

 

「…………あぁ。やっぱりそうなの。通りで萃香に貸した布団にいないと思ったのよ。大方、トイレ起きかなんかで寝ぼけて入ったんでしょ」

 

 ちょっとした沈黙は気になったが、どうやら誤解は解けたみたいだ──

 

「──あんたはヘタレだからいかがわしいこと何てしてないでしょうから」

 

「……えぇーっ? 自分ってそう思われてるの?」

 

「名前で呼ぶこともできない、弾幕ごっこはしたくない、お酒は飲もうともしないヘタレじゃないの?」

 

「ちょっとそれは異議を申し立てたいなぁ……今までヘタレとかいわれたことはなかったんだけど」

 

「ま、それだけあんたは変なことをしないってのはわかってんのよ。もししたらピチュらせて追い出すけど。起きたならさっさと朝食の準備を手伝いなさい」

 

 そう告げると部屋から出て行く博麗。なんか変な印象を持たれてるなぁ……。

 

 自分と博麗の会話で目を覚ましたのか、伊吹はゆっくりと上半身を起こす。

 

「ふぁ〜よく寝た〜……ん?」

 

 起きて自分の存在に気づいたのか、じろじろと見た後、こう言う。

 

「へぇ〜……鬼に夜這いならぬ朝這いか。良い度胸だね、お前」

 

「ふざけろ」

 

 冗談か勘違いか分からないが、少しドスのきいた声で言い返した。

 

 そんな風に言われると思っていなかったのか,少し押されながらも話しかけてくる。

 

「お、おう……もしかして私が侠の布団に入り込んでた?」

 

「それ以外何があると?」

 

「私の魅力にやられて──」

 

「はいはい魅力魅力」

 

「うわっ。素っ気な。隣に女の子が寝てるんだよ? 男なら欲情とかするもんだろ?」

 

「知り合ったばかりの奴に欲情なんてできないよ。生憎、性欲については親友のお墨付きで曰く、枯れてるらしいからね」

 

「……言ってて悲しくならない? それ?」

 

「別に今のところそういうことには興味が無いし。どうでも良い」

 

 ……そういうことは元の世界でループが終わることができたら考えよう。今はそういうことを考えるのは無駄だ。

 

 布団から出て、自分は博麗の手伝いに向かった。

 

 

 

 

 

「……なんか侠、少し霊夢に似てるなぁ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝食を食べ終え片付けをし終えた後、寺子屋に向かおうとしたが伊吹が神社前に立っていた。

 

「伊吹……? どうかした?」

 

「いや、別に大したことじゃないんだけどね。どうでも良いかもしれない質問をするけど良いかな?」

 

「事によるけど」

 

 そう受け答えすると、伊吹はこう言う。

 

 

 

 

 

「──何時まで仮面を被ってるつもり?」

 

 

 

 

 

「仮面? そんな物付けないんだけど?」

 

「比喩的表現だよ。侠の生活態度やましてや口調……どうも私には作られているような感じがしてね。手っ取り早く言えば、誰にも心開かないようにして、距離を作っている」

 

「……別にそんなつもりはないんだけどね。ただ、これも今の自分の【素】。素を状況において何個かあるんだよ。ただ、それだけのこと」

 

「──そうか。だったら私はその仮面が早く外れるように願うしかないね。早く幻想郷に慣れておくれよ。そして私達と一緒に酒で語り合おう」

 

「台無しだよ、その言葉」

 

 どこまで酒好きなんだ。この幼女。

 

 伊吹を通り過ぎて自分は寺子屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

  〜side out〜

 

 

 

「霊夢〜……正直にさ、侠の事をどう思う?」

 

 神社の中に戻った萃香は侠の評価を聞いている。それを聞いては霊夢はこう答えた。

 

「融通の利く男版咲夜」

 

「……まぁ。ある意味的確かもしれないけどね」

 

 萃香は昨夜の侠の行動を思い返してみる。料理もできて、ちょっとした気遣いもできる。聞いた話によるとその他の家事もできると萃香は聞いていた。酒を飲んでいたとき、ちょっとしたおつまみも作ってくれた。侠の布団に潜り込む前の布団は侠が敷いた。その他で霊夢に色々頼まれていたが、嫌な顔せず肯定的だったことを思い出す。

 

 話が反れそうだったので萃香は話を戻した。

 

「私が聞きたいのはそういうことじゃないんだよ。幻想郷での侠の事を知りたいんだ」

 

「……どういう意味よ」

 

「紫が何の目的でわざわざ外来人である侠を連れてきたのかは分からないけど──妖怪にとっては、侠の力は驚異的なものを隠し持っている」

 

「……それは何? 実は侠が妖怪でしたってオチ?」

 

「いや、あいつは体は人間だよ。もしかしたら人間には気づきにくくて、私や紫だと違和感を感じるんだと思う」

 

「……人間には気づきにくくて、妖怪には気づきやすい? 何を言いたいのかはっきりさせなさいよ」

 

 少しいらついた声で霊夢は萃香に問いかける。

 

「わかりやすいとしたら侠が戦っている時じゃない? ここ数日で今日は戦ったりした? 弾幕ごっことか」

 

「……私は弾幕ごっことしては成り立っていない弾幕ごっこで魔理沙と戦ったことぐらいね……まぁ、違和感は感じたわね。魔理沙相手に動きが機敏に動きすぎている」

 

 霊夢はあの日を思い出す。順応性が高すぎる。いきなり攻撃されて避けてはすぐに行動できるように体勢を立て直していた。

 

 ……そして、霊夢が一番感じた違和感。

 

「……侠の弾幕は確かに違和感を感じた。私の霊力的でもない。魔理沙の魔力的でもない。そして、早苗の神力的でもない。侠の力は……妖力に近いように気がした」

 

 初めての弾幕を見たとき、感じた違和感。霊夢は人間の侠から妖力に近い力を感じた。

 

「やっぱりそんな気がするんだよね。侠は人間だけど、妖力的な物を感じるんだろ? しかも、結構妖力の量が並みじゃない。でも、私が感じたのはそれだけじゃないような感じがするんだ」

 

「……萃香の違和感は分からないけど、昨日侠が帰ってきて感じたことはあるわ。数日前と比べて侠の力が強くなっていた」

 

「おおっ!? そうなのかい!? てっきりアレが侠のデフォルトの力量だと思っていたけど? 数日前の比べて潜在的能力が上がっていたのか?」

 

「……昨日出かける前はいつも通りだった。でも、帰ってきたときは力が大きくなっていたのよ。短時間であそこまであがるとは思えないのだけど……」

 

 

 

『へぇ。私の知らないときにそんなことがあったの』

 

 

 

 会話の中、急に現れるスキマ。そこから出てくるのはもちろん、侠達を連れてきた張本人の八雲紫。

 

 霊夢は紫に問いかける。

 

「……やっぱり何かあんた侠の事を知っているの?」

 

「いえ。まだ調べている最中ですわ。私の貴重な睡眠時間を削って」

 

「紫が睡眠時間を削るほどなのか? それほどあの人間に興味があったの?」

 

 紫の言葉に萃香は驚いた。

 

 紫の一日の半分は睡眠に費やすらしい。それを知る萃香は予想外だった。

 

「偶然、スキマで外界に行こうとしたらね。その世界の興味本位で覗いてみたら、侠の違和感を感じたから連れてきたのよ」

 

「紫……それはやっぱり妖怪に気づきやすい物なのかい?」

 

「あなたの違和感は私と同じ感じ方。侠には妖力がある。だから彼は弾幕を放つことができる。私達にとって侠はかなりの量の妖力が強く感じるのよ」

 

 萃香の予想は当たっていた。侠は実際に妖力を持っていた。

 

 しかし……紫は自信の少ない声で話を続ける。

 

「ただ……わずかに妖力以外にも感じるのよね。具体的にはまだ分からないのだけど」

 

「……侠が妖力を持っているということは妖怪なワケ? それとも霖之助さんみたいなハーフ?」

 

「彼は人間よ。体つきから見てもそこら辺の人間と変わりは無いわ」

 

「紫、それだとおかしくないか? 私達妖怪達にあんなにはっきり妖力を感じ取られる。半妖だったらまだわかるんだけど……?」

 

 当然の萃香からの疑問。人間と妖力は相容れないもの。それなのに弾幕はマスターし、魔理沙とも戦えるのだろうか? ましてや彼はチルノと戦い、勝利している、そう考えると妖力があるのは不自然だ。

 

 紫は目を閉じながら、こう呟く。

 

「……体は人間でありながら、それなりの妖力を持つことのできる可能性はあるの」

 

「……どんな可能性よ」

 

「まだ確信的ではないので言えないわ」

 

「えー? 紫ー別に教えてくれても良いじゃん〜」

 

「確信的になったらちゃんと教えるわよ。ちなみに妖力のことは侠には言わないでおいてちょうだい。あー……どこかで侠の力がはかれる異変が起きてくれないかしら?」

 

「それは私に喧嘩売ってんのかしら?」

 

 ……さすがに異変解決者の前で異変が起きて欲しいということをいうのはどうなのだろうか?

 

 しかし……霊夢はあることを思い出し、紫に尋ねる。

 

「後、侠達を幻想入りさせたって言っていたわよね? どんな奴を連れてきたのよ?」

 

「あぁ……もう眠いわね。帰って私はもう寝るわ」

 

 霊夢の言葉を無視して欠伸をしながらスキマを作り、それに入っていく。

 

「待ちなさい紫! ちゃんと喋ってけ!」

 

「それなら魔理沙にでも聞きなさいよ。もう会っているから詳しく聞いときなさい」

 

 そう告げると紫はスキマに入ったまま隙間を閉じ、帰って行った。

 

 閉じられたスキマを見て、疲れたようにしてため息をつく霊夢。

 

「はぁ……別にこの場で喋っても良いでしょうに」

 

「(……あれはきっと何かを企んでいるね、紫……)」

 




 表主人公考察記その1。また表主人公について考察するかも知れません。
 萃香の洞察力。見た目はロリでも頭脳は大人。心情には敏感。
 まさか表主人公に人外疑惑。皆さんは何だと思いますか?
 ではまた。







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