ではどうぞ。
『あら? もう帰ってきたの?』
「おい。勝手にリュックの中を漁んな。そして不法侵入にも程があるだろ」
自室に帰ってくると八雲紫がオレのベッドの上でリュックを漁っていた。八雲紫はオレのMP3プレイヤーを取り出して音楽を聴きながら。
「……中身は全部英歌詞なのね。日本語のやつが聞きたいわ」
「普段学校にいない分それで英語は補っているんだ。日本語歌詞は入れていない」
「それにしても……何でこの音楽再生機器は充電中って表示されているのかしら? 空気充電?」
「ある意味それは正解かもしれんが……能力でやったらできた。携帯の充電はまだ必要ないが、切れかけたらするつもりだ」
「……私でもこんな事はしないわよ。ちゃんとコンセントに繋ぐわ」
「基本この幻想郷には電気がないだろうが。妖怪の山の一部は使えると聞いているが……」
そうか……こいつは外界とつなげる能力があるから電気には困らないんだ。
八雲紫は耳からイヤホンを取り、ちゃんとオレの方へ体を向けて話を始める。
「まずあなた……一週間もたたないのにこの紅魔館に完全に馴染んでいるわけ? 確かに私は住民と触れ合いなさいとは言ったけど……ここが抱えている問題まで解決するとは思わなかったわ」
「オレも思っていなかった」
「まぁ、そのおかげで連携は取りやすいでしょう……。魔理沙と文が良い具合に情報を拡散させているわ。あなたの能力も名前も完全に分かっていない」
急に話題を変えてきたのでオレも合わせる。そして、今まで疑問に思っていたことを聞いてみた。
「なぁ……どうしてわざわざオレの名前や能力を偽る必要がある? 能力はまだしも、名前までは意味が分からん」
「ちょっとあなたの名前が伝わると不都合なことがあるのよ。だからそこは気にしないでちょうだい」
少し頬を掻くように説明する八雲紫。まぁ、嘘ではないだろうが気になるところだ。
そして八雲紫から──ついに発せられる言葉。
「──機は熟したわ。異変を起こしなさい」
「は? 熟すんの早くね? 言われてまだ一日しかたっていないぞ?」
種を植えて数時間後に実が実るぐらいの早さだろう。
「早いせいはあなたのことで関係があるの。じっくり紅魔館住民と信頼を得る必要があったのだけど、一日で最低限は達成してしまったのよ」
「……あながち間違いではないな」
「だから、もう異変は起こしても構わないわ。異変解決者に解決できない異変を起こしてちょうだい。あなたが幻想郷の異変解決者に倒されちゃ駄目よ」
……しかし何故『異変解決者』に限定するのだろう? 要はオレは博麗霊夢と霧雨魔理沙には負けてはならないと言うことだ。
「で? 具体的にはどんな異変を起こせばいいんだ?」
「──過去に幻想郷に紅い霧が現れ、太陽の光を遮った」
急に意味深なことを言い始めた。それは過去にレミリア嬢が起こした異変だ。
「……何が言いたい?」
「あなたなりの事ですれば良いのよ。あなたの能力は【事象】なのだから……」
そう八雲紫は言うと気味の悪い空間を作って去っていった……。
オレは言われた情報を整理する。太陽の光を紅い霧で遮る。オレの能力。事象。ある可能性が起こりうるのを可能にするのがオレの能力──
「──! そういうことか……!」
オレはあることに考えついた。八雲紫が言いたかったのはこう言うことか!
……確かに外界でも起こりうる可能性はある! というよりは起きたことがある!
オレはすぐさま図書館に向かい、あることを調べ始めた……。
少年調べ物中……
『静雅さーん、咲夜さんがおゆはんの準備ができたそうですー』
オレは能力をフル活用し、あることを調べていたが小悪魔に夕飯ができたと言われ作業を終える……というより調べ終わった。
本を片付けている中、小悪魔はオレに近づいて本を見てくる。
「……天気の本ですか? 何をお調べに?」
「それは秘密だ。夕飯を食べ終わった頃に話すつもりだ──? そういえばパチュリーがいないような気がするんだが……」
基本的にはこの図書館に引きこもっているパチュリーがいないのは珍しい。
オレの疑問に小悪魔が簡潔に答えてくれる。
「パチュリー様ですか? 今日はお嬢様が皆様を集めています。おそらく『家族』でのお食事をしたいそうで……パチュリー様も頷いていました。門番の美鈴さんももういますし、妹様もお待ちです」
「ほう……微笑ましい。じゃあ行くとするか」
紅魔館主要メンバーが集まっているのは好都合だ。話もしやすい。
オレは小悪魔と一緒に食堂へ向かった……。
『しーずーまーさー、遅いよー!』
小悪魔と共に食堂に向かうとふくれっ面をしたフラン嬢に怒られた。テーブルの上にはさまざまな料理が置かれている。おそらくレミリア嬢が全員そろうまで待っていたんだろう。
「すまないな。ちょっと調べ物をしていたら遅れてしまった」
「咲夜みたいに現れれば良いじゃない。静雅も同じ事ができるんだしさー」
「いや、普段からそればっかりに頼っていると体がなまるからさ。しょうが無いんだ」
「まぁまぁ……妹様も、静雅さんもそれぐらいにしましょう。せっかくの咲夜さんの料理は冷めてしまいますよ」
オレとフラン嬢の会話に美鈴が仲裁してくれる。小悪魔はパチュリーの前へ座り始めたので、オレはとりあえず空いている席へ座ることにした。
……ちなみに席順はレミリア嬢が世間で言うお誕生日席、フラン嬢はレミリアから見て左。反対側は咲夜で、咲夜の隣の順番ずつで美鈴、小悪魔。美鈴の正面はオレ、小悪魔の正面はパチュリーだ。
……どうやらレミリア嬢の従者である咲夜は近くであり、オレもフラン嬢の近くになっているみたいだ。
そしてレミリア嬢は当たりを見渡す。そして確認したかのようにレミリア嬢はしゃべり始めた。
「さて、皆集まってくれたわね……まず、私から謝ることがあるわ──いろいろ、私とフランで迷惑をかけていたわ。そこはその……ごめんなさい」
「レミィ……」
再びレミリアは、今度は皆の前で謝った。パチュリーもその言葉を聞いて安心そうにしていた。
「フランと理解し合えたきっかけは新しく雇った新米執事、本堂静雅。それで私達のことを心配していてくれた咲夜、パチュリー、美鈴、小悪魔。妖精メイドも含めて皆のおかげだと思っている。私だけだったらずっとすれ違っていたかもしれない……」
「お嬢様……」
レミリア嬢の言葉を聞いて咲夜はある意味戸惑っているように見えた。多分、今まで見たことのないレミリア嬢に見えたのだろう。
「でも……私達はここにいる。間違っていると思ったら指摘してくれる『家族』がいる。今日は新しく迎えた『家族』歓迎しましょう!」
レミリア嬢がそう言った瞬間、オレに視線が集まってくる……これはオレは何か言った方が良いのか?
そう思い、立ち上がりオレは言葉をつなげる。
「……新しく家族として迎えられた本堂静雅だ。オレは基本めんどくさがりだ。やるべき所を能力で片付けてしまうが──『家族』のためなら全力を尽くそうと思う」
そしてオレは、胸の前に拳を作り、気さくに笑いながらこう言う。
「──紅魔館最高ぉっ!」
そう言い切るとちらほら拍手が聞こえてきた。
レミリア嬢は改めて挨拶をし始める。
「では、皆……乾杯!」
「「「「「「乾杯(です!)」」」」」」
それぞれ近くにあったグラスを片手に、突き上げた。
「ふふふ……咲夜の作る料理はおいしいわね」
「ありがとうございます……ですが、お皿の端にあるピーマンも食べていただけると嬉しいのですが」
「──うー☆ 何でピーマンを使うのよーっ!? こんなの苦いだけじゃないのよーっ!?」
「はっはっは。レミリア嬢は子供だなぁ」
「? 静雅ー、どうしてプチトマトをお姉様みたいにお皿の端に寄せてるの?」
「フラン嬢、オレはトマトアレルギーなんだ。だからこのトマト達を食べてくれないか?」
「そうなんだ! じゃあ食べ──」
「騙されちゃ駄目よ妹様。静雅はレミィみたくトマトが嫌いみたいなのよ」
「ふんっ! そういう静雅も子供じゃない! そんな大きな体格でありながら!」
「実際オレはまだまだ子供だ! 外界で大人と認められていないからな!」
「ひ、卑怯よ! その体格でまだ子供だなんて!」
「あの〜お嬢様? 静雅さんもそうですが、そういう問題ではない気が……」
「(……何か、こういう光景って楽しく感じますね……)」
ガヤガヤワイワイと過ごした夕飯。皆で食べて喋っておかずを横取りし合って。久しぶりに有意義な時間を過ごせた。そして皆は食後のデザート(プリン)を食べている。
──そして、話すなら今か。
「皆! ちょっくら聞いてもらいたいことがある! オレのこれから言うことはお前さん達の協力が必要なんだ! というよりは──オレの勝手なワガママを聞いてもらいたい!」
──皆に話した結果、全員参加してもらえることになった。オレのやることを許してもらえた。
そして……次の日、異変は始まった。
裏・第三章終了。次回はようやく共通の話に入ります。
ちなみに席順はこんな感じ。
フ 静 パ
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レ| 長いテーブル
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咲 美 小
そして……今日から学校……うぼぁー。更新速度が週1か週2になってしまう……ちゃんと更新できるようにしないとなぁ……。
ではまた。