幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 前編の続きです。読まれていない方は前編を読むことを推奨します。
 引き続き三人称。
 では特別番外編どうぞ。

 ※この話は本編と関係ありません。もしもの世界のIFstoryです。しかし、本編を読んでいただけると内容が理解しやすいと思いますので、初めての方は読んでみることを推奨します。


特別番外編『メイドと執事の過ごし方』②

 咲夜と静雅は人里で偶々やっていた大道芸を見たり、適当な食事処で昼食をとったり。周りの注目は気にしないで二人は楽しんでいた。主に咲夜が。

 

 静雅が考えていたプランが機能していなく、さらには珍しく咲夜に弄られて主導権を握られている本人は複雑そうだったり。

 

 少し時間がたち、咲夜は静雅に話しかけ始める。

 

「ちょうど人気のある大判焼きのお店があるけど……食べてみる?」

 

「いいんじゃないか? 帰り道を進みながら食べれば」

 

「じゃあ私が買ってくるわ。静雅は待っていて頂戴」

 

「了解した」

 

 咲夜は静雅と離れて大判焼きのお店の中に入り、二つ同じ種類のを買おうとしたが──

 

「……お土産に買っていくのもいいかもね」

 

 咲夜は自分達の分だけではなく、留守番してくれている紅魔館の仲間の分、咲夜の代理である侠の分、おまけに霊夢の分も購入した。

 

 大判焼きの入った袋を持って静雅が待っているであろう場所についたのだが。

 

「……? いない?」

 

 そう。いなくなっていた。さっきまで『待っていて』と頼んでいたのも関わらずいなくなっている。

 

 咲夜は辺りを見渡す。すると、見覚えのある物が落ちていた。咲夜はそこまで歩いて行って【ある物】を拾い確かめる。

 

「これは……静雅が元々持っていた白いヘアピン? でもどうして一つだけ──」

 

 

 

『──?』

 

『──!』

 

 

 

 近くから口喧嘩みたいなことが聞こえてくる。受け流している口と、一方的な口。咲夜は音源を頼りに近づいて行った。

 

 物陰に隠れて咲夜は耳を澄ますと──

 

「あのさぁ……お前さん達はオレを捕まえて何をしたいわけ? お前さんたちが乱暴にここまで来させるから落し物をしたんだから探したいんだが? それに咲夜のこと待っていないといけないのに」

 

『ごたごた五月蝿いんだよお前。少し静かにしろ』

 

『お前がどんな立場かわかってんのか?』

 

『人が来ないような路地裏で俺達三人、お前一人。ここまで言ったらわかるよな!?』

 

「客観的に見てお前さん達が悪者だろうな」

 

『そういう事を言っているんじゃねぇよ!? 馬鹿なのかお前!?』

 

 ……どうやら絡まれているらしい。男三人組は喧嘩腰で話しかけているが、静雅は冷静におちょくっている。ここまで来て普通挑発みたいなことはしないだろう。

 

「(……静雅なら話し合いで何とかなるはず。ここは様子を見た方がいいわね)」

 

 静雅は口が回る。それに能力もあるし、挑発もしていたため冷静に対処をしているのだろう。咲夜は静雅を信用して、もしものために待機した。

 

 目の前にいる男三人組に対して静雅は話しかける。

 

「で? 要件は何だ? 咲夜を待たせているから三分間で頼む」

 

『はっきり言う。お前、咲夜さんに近づくな』

 

「(え……? 私の話題?)」

 

 咲夜は困惑した。何故自分の話題が出てくるのかわからなかったからだ。

 

 それを聞いた静雅は改めて話題を持ちかけた青年に話を聞く。

 

「そんなことを言われてもな。納得する理由を言ってくれないか?」

 

『お前は俺達から見たらうざいんだよ。特に理由もなく人里の女から好かれやがって。それをお前はご機嫌取りか何かで話を進めたり。好きでもない女と仲良くなるなよ!』

 

『それで俺が好きだった女がお前のことを好きになってな! どうしてくれんだよ!?』

 

『俺なんか付き合っていた彼女が別れ話持ち掛けてきたんだぞ!? そのきっかけがお前だったって!【彼に振り向いてもらいたい】って言ってきたんだぞ!? どうしてくれんだよ!』

 

「…………うわぁ。くだらねぇ」

 

『何がくだらないだ! 咲夜さんに対しても目的もないのに突っかかってるんだろ! 彼女がだらしないお前に本気になったらどうするつもりだ!』

 

「(……必然的に私は静雅と毎日話しているんだけど……?)」

 

 しかし咲夜の心からの突っ込みは届くことがなかった。

 

 静雅は引いていたが、話を始めていた青年が静雅の襟元をつかもうとしたが……普通に静雅は避けた。

 

 避けた静雅は後ろで怒りの表情で見ている二人を見て──告げる。

 

「……まず好きな女がオレのことを好きになったお前さん。それは単に自分のせいだろう?」

 

『はっ!? どこが悪いっていうんだよ!?』

 

「おそらくその女はオレが人里に来たとき積極的に話してきた奴だと思う。元々その娘はオレに興味があって話しかけてきているはずだ。それともなんだ? お前さんは積極的にその娘に話しかけたりとかしたのか?」

 

『うっ……!?』

 

「単にお前さんが臆病だけだっただけだろう? 話そうと思うが話題が見つからない。ましてや【好き】と思っているだけ。その思いを口にしたり恋文なり伝えない限りお前さんに振り向くことがないとわかっているはずだ。ただの八つ当たりにしか過ぎないぞ、お前さんの言い分は。ましてや一人でオレに話すことすらできないなんて臆病者のチキンだ。そんなような奴が振り返ってもらうなんて永久にないな」

 

『…………』

 

 確信を突かれてのか、後すざりしてその男は黙った。

 

 次に静雅は目線を変えて違う男に話しかける。

 

「次に別れ話を言われたお前さん。おそらくその娘は『彼氏が仕事を理由にして時間を作ってくれない』という相談を持ちかけられただけだ。オレが客観的に見て『別れればいいんじゃないか?』と言ってみただけだ」

 

『お前が悪いんじゃねぇか!』

 

 静雅の言葉に話しかけられた男は激昂した。しかし、静雅は話を続ける。

 

「その娘から聞いたお前さんは……『付き合い始めていたときは優しかった。でも、時間が経つにつれて一緒にいる時間が少なくなっていった』。その娘視点だとお前さんは恋人より職場の関係を優先していたみたいだな。もう単なる飾りだけの【恋人関係】となっていってしまった。おまけに一緒にいる時間があったとしても仕事の話ばかり。恋人より仕事を優先したお前さんに愛想が尽きたんだよ」

 

『!? そんな事俺は聞いていたないぞ!? 一方的に『別れましょう』って言われただけだっ!』

 

「その信用をお前さん自身が落としたんだよ。その結果、オレの勇気をもって相談し、オレはその娘のために良い【道】をすすめた結果だ。オレに惚れたのは予想外だが……全てはお前さんの行動が招いた結果だ。お前さんが恋人優先にして行動していなかったからこうなったんだ。オレが関与していなくてもそうなっていただろうな。全てお前さんが悪い。恋人に目を向けず、無視したお前さんが悪い。恋人の心を傷つけたお前さんが悪い。全てのお前さんの行動が悪い」

 

『う、嘘だろ……俺の所為、なのか……!?』

 

 男は動揺しながら後すざりをし、頭を抱え始める。

 

「(……争い事にはならなそうだけど、思いっきり一人の人にトラウマを植え付けなくても……荒人神は精神攻撃が強いわね……)」

 

 二人の青年が動揺しているのを見て、先導を切っていた青年が焦りながら二人に話しかける。

 

『お、おい! あんな男の言うことなんて信じるなよ! お前はともかく、お前は悪くないって! あいつが悪い!』

 

「じゃあ聞こう。オレのどこが悪かった?」

 

『……お、お前が【別れればいい】なんて言わなければよかったんだ!』

 

「愚問だ。何一つ知らないお前さんに何がわかる。そもそもお前さんがそいつを連れてこなかったらそこまで深い傷がつかなかった。だから──お前さんが悪い」

 

『は、はぁっ!? 俺は関係ないだろうっ!? そんなの屁理屈だ!』

 

「関係あるじゃないか。お前さんがそいつを連れてきてしまったから真実を知ってしまった。知らなければよかった真実を。知りたくもなかった真実を。だから──」

 

 言葉を区切り、反論していた青年を見据えていった。

 

「──オレは悪くない」

 

「(……確かに、静雅は何も悪くない。前者の人はともかく、後者の恋人のためを考えてそう言ってあげただけ。だけど……言葉だけでこんなに追い詰めることができるものなの……?)」

 

 咲夜は思った、静雅は【心】を理解しようとする。それは人によっては希望となる。それが紅魔館の姉妹であるレミリアとフランだ。

 

 だが、静雅自身に敵意を持っている人物の場合、絶望となる。【心】を理解したうえで、慈悲もなく追いつめる。人によって静雅の言葉は薬になるが、時には毒にもなる。

 

 ──本人は理解していないが、それが荒人神の本質なのだ。人の心を荒らし、綺麗(希望)にするか、汚く(絶望)させる神様。それが静雅の種族――荒人神なのだ。

 

 静雅の言葉に青年は押されたが、悪あがきの如く話を吹っ掛ける。

 

『! だ、だったら咲夜さんの事はどう思っているんだよ!? それだけじゃない! 紅魔館にいる異性とかよ! どうせ汚い目でみているんだろ!』

 

「……お前さんさ、さっきから咲夜の事を強調しているが……好きなのか? 咲夜の事」

 

『なっ!?』

 

「(…………え?)」

 

 静雅の言葉で咲夜は耳を疑った。目の前にいる人里の男が私のことを好き?

 

 青年は動揺しながらも──自分の言葉を口にする。

 

『……そうだよ! 文句でもあるのか!?』

 

「いや、特に」

 

「(反応が軽い!?)」

 

「別にさ、お前さんが咲夜の事を好きでもオレは構わないんだけどさ。人は誰に対しても好きになる権利がある。だけどな──」

 

 青年の目をまっすぐ見ながら──静雅は告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──オレだって咲夜の事が異性として好きだし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(──えっ!?)」

 

 咲夜は静雅の言葉が意外すぎた。呼吸をするかのように告白した。その言葉に咲夜は顔が赤くなっていくのがわかる。

 

「(し、静雅が……私の事を異性として、す、好き!? そ、それじゃあ、この静雅曰くの【デート】って……!?)」

 

 咲夜は──こう頭の中で考えついた。

 

「(この【デート】で私との距離感を縮めるため? 意識してもらうため!? 今までそんな反応がなかったはずなのに……隠してたの!?)」

 

 そう考えてしまうと……咲夜は静雅に意識が向いていく。同年代の異性、一緒に同じ屋根の下で生活している身だ。咲夜は静雅のことを信頼している。無論、静雅も咲夜の事を信頼している。その異性が自分に異性として好意を向けていると知ったら気になってしまうのは当然だ。

 

 その言葉を聞いた目の前の青年は動揺しながら静雅に言葉を返す。

 

『な、何でそんなはっきり言えるんだよ!?』

 

「え? だって本人いないし」

 

「(い、いますよ!?)」

 

「それにオレは咲夜にフラグを立てるためにこの【デート】を決行して、意識を向けてもらおうとしたが……どうも難航でな。何故か咲夜にオレは弄られているし、大人の様な反応で返される。オレの予想なら顔を少しでも赤くして意識を向けてもらえるはずだったんだが……中々の強敵だ。どのくらいフラグを建築させればいいのかわからない」

 

 悩むようにして目の前の青年に言う静雅。当然咲夜が聞いていることを知らない。当の本人は……聞くことしかできない。

 

 静雅は青年に話を続ける。

 

「結局、相手に意識してもらうためには自分から行動しないといけないんだ。お前さんが紅魔館での風評でびくついているだけじゃ咲夜に振り向いてくれる事はない。誰だって【好き】と言えるのは簡単だ。でも、本人その言葉を聞かせることができない。断られるのが怖いからな。だが──オレは咲夜の事が好きだ。今日の【デート】で見た咲夜の笑顔をもっと見たい。自分のものにしたい。振り向いてもらうために機会を見つけては話しかけているし、一緒にいる時間も作っている。まぁ、単にオレが紅魔館のレミリア嬢に拾われたという運もあるんだろうが……オレはこの運を生かして、咲夜に異性として意識してもらいたい。そして、時期を見定めて告白する──その予定だ」

 

『…………』

 

 青年は黙っていることしかできない。目の前の男は自分以上に、想い人の事が本気だ。自分が臆病で、相手は勇敢。そう思い知らされた。

 

 青年の様子を見てか、静雅は歩きながら喋る。

 

「……話は終わったな。オレはさっさと咲夜のところに向かいに行く。今頃もしかしたら探しているかもしれないからな。まぁ、お互い同じ異性の事が好きなんだ。可能性は低くても、お前さんに振り向いてくれる可能性もある。だが、お前さんが咲夜とそういう関係になる前に──オレがなる。それだけだ」

 

 呆然としている三人組を置いて静雅は大通りに向かって行く。咲夜は我に返る。

 

「(──! 戻らないと!)」

 

 咲夜は能力で時を止めて、本来会うはずの場所まで向かって行った……。

 

 

 

 

 

 

 

 先回りして咲夜は着いた。しかし……落ち着きがない。

 

「(……これからどうやって静雅と過ごせばいいの……!?)」

 

 咲夜は静雅の言葉を聞いて……ものすごく意識していた。彼女は異性の関係が非常に少ない。いたとしても香霖堂の店主か、静雅の親友である侠ぐらいなのだ。そしてその静雅が──【自分の事を異性として好き】。その言葉が頭の中でぐるぐると回っていた。

 

「(……落ち着くのよ、私。静雅が来るまで平常心を──)」

 

『咲夜ー! ちょっと瓦屋に行ってた! すまない!』

 

「(もう来てしまったの!?)」

 

 本当の事を隠しながら静雅は戻ってきた。

 

 そして静雅は咲夜を見てこういう。

 

「……あら? 待たせすぎて怒ってる?」

 

「ち、違うわよ!? 静雅の事で怒っていないから!」

 

「? そうか……?」

 

 少し顔に赤みがあったせいか疑われたが、少し必死になって否定した咲夜。静雅は不思議そうにしていたが、話題を変えて話しかけてくる。

 

「ちょっとさ……オレがさっきまで付け替えてポケットの中に入れていた一つの白いヘアピンを落としてな……道中探しても見つからないんだ……」

 

「そ、そうそう。これじゃないかしら?」

 

 咲夜はポケットから白いヘアピンを取り出して静雅に見せる。それを見た静雅は……両手で包み込むように咲夜の手に触った。

 

「──っ!?」

 

 当然咲夜は動揺し顔を赤く染め上げ、体が一瞬震えた。だが、静雅は感情的になって話をし始める。

 

「このヘアピンはオレの誕生日に侠が送ってくれたものなんだ。いわばこのヘアピンはオレ達の友情の証でもあるんだよ。いや〜本当に見つかって良かった! ありがとうな、咲夜!」

 

「え、えぇ……ど、どうも、いたしまして……」

 

 静雅は咲夜から白いヘアピンを受け取ると笑顔を見せながら喜ぶ静雅。咲夜は手に残っていた静雅のぬくもりと、子供のような笑顔の静雅を見て照れながら言葉を返した。

 

 静雅は元々持っていたヘアピンと合わせてポケットに挟んだ。そして咲夜が大判焼きが入っている袋を見て言う。

 

「お? うまそうな大判焼きじゃないか! 帰り道喰いながら紅魔館に帰ろうぜ!」

 

「え、えぇ……そうね。そうしましょう」

 

 咲夜は表情を隠そうとはするが、照れているのが隠しきれていない。それでも静雅は大判焼きを口に含み始めているが。

 

 ……こうして、予想外のアクシデントがありつつも、咲夜と静雅の【デート】は終わった……。

 

 

 

 

 

 

 

 紅魔館に戻ったものの……咲夜は静雅に視線を合わせられないでいた。お土産で買った大判焼きをみんなで食べたが、咲夜は静雅の顔を見れないでいた。見れたとしても、静雅がこちらに視線を向けたとき、反らしてしまう。そういう循環の中にいた。

 

 役目を終えて侠と霊夢(ただ居ただけだが)は神社に帰っていき、時間も夕刻に迫っていたので咲夜はおゆはんを作る。作り終えてみんなで食べていたときも、無意識で静雅を見てしまう。

 

「(……あの話を聞いてから……ずっと静雅の事を考えてる……)」

 

 当本人の静雅は食べて口元を汚してしまったフランのためにナプキンで拭いてあげている。

 

「(……確かに静雅の事は人として【好き】だけど……異性として私は……どう見ているのかしら?)」

 

 咲夜は考えていたとき、何かに気付いたフランは静雅に話しかける。

 

「ねー静雅? いつも付けている白いヘアピンじゃないけどどうしたの? 色が赤いけど?」

 

「あぁ、これか? この赤いヘアピンは咲夜がオレにプレゼントしてくれたものなんだ」

 

「そうなんだー!」

 

「あっ……」

 

 さらっと言った静雅の発言に、ほとんどの人物は咲夜に注目が集まる。だが、紅魔館の主であるレミリアは静雅に問いかける。

 

「良かったじゃない。それで静雅は咲夜に何かプレゼントしたのかしら?」

 

「お? このタイミングで聞くか? もちろん、咲夜のためのプレゼントを用意している!」

 

「えっ……!?」

 

「? 何を驚いているんだ? 人里に着いたて買い物した後に『後でのお楽しみだ』って言ったじゃん。本当は二人きりの時に渡したかったんだけどな……ま、今でもいいか」

 

 静雅は座席から立ち上がり、ポケットから何かが入った袋を持って、咲夜に近づき渡す。

 

「……開けてみてくれ」

 

「え、えぇ……」

 

 咲夜は袋を開けて中身を取り出してみる。

 

 そこに入っていたのは――

 

「――二つの赤い、リボン……?」

 

「そ。咲夜も三つ編みにリボンをしているだろ? それで色がかぶっていない色――というより、咲夜がくれたヘアピンみたく紅魔館カラーになったけどな」

 

「そ、そうなの……ありがとう……」

 

 咲夜はもらったリボンを手に持つと、美鈴が咲夜に話しかけてくる。

 

「あ、咲夜さん。どうせなら今この場で付けてみたらどうですか?」

 

「え……? さすがにみんながいる中で付け替えるのは恥ずかしい──」

 

『私も見てみたいです。咲夜さんなら絶対似合っていますよ!』

 

 美鈴の言葉に小悪魔が同調してくる。それに乗っかって吸血鬼姉妹、その友人も乗っかる。

 

「いいじゃない咲夜。この場で見せてみなさい」

 

「私も見てみたーい!」

 

「付けてみた方が良いんじゃない? 最も、彼が一番見たそうだけど」

 

 パチュリーに指摘された人物、静雅はというと……手を口に当てて愉快そうに笑っている。

 

「何というデジャヴ」

 

「……付けないわよ?」

 

「了解した。とりあえずみんな咲夜に背を向けるぞ。咲夜が許可するまで見るのは厳禁だからな」

 

 静雅の言葉を聞いた全員は咲夜に背を向けた。

 

「(……静雅の立場になるなんて思ってもいなかったわ……)」

 

 咲夜は黙々と三つ編みのリボンを付け替える。

 

 …………。

 

「……終わりました」

 

 咲夜の声で全員咲夜を見る。レミリア、フラン、パチュリー、小悪魔、美鈴の順に少し照れながら、反応に困っている咲夜にそれぞれの言葉を口にした。

 

「あら。似合っているじゃない」

 

「うん! 似合ってるよ!」

 

「レミィの従者でもあるせいか……装飾品の色が赤でも似合うわね」

 

「とってもお似合いですよ!」

 

「なんだかいつもの雰囲気と違って新鮮ですよ!」

 

「あ、ありがとう……ございます……」

 

 賞賛の嵐に咲夜は声を小さくしながらも、返事をした。

 

 そしてパチュリーはまだ声を変えていない静雅に話しかける。

 

「ほら、あなたがあのリボンを買ってきたんだから何か言いなさい」

 

「……リボンの色が違うだけで印象が違うなぁ。可愛い」

 

「か、可愛いっ!?」

 

「おう。言っているオレ自身も恥ずかしいが……結婚したいぐらい」

 

「──っ!? な、ななな……」

 

 突然の爆弾発言。咲夜は顔一面赤く染め上げてあからさまに動揺し、それを聞いた他の人物も呆然とする。

 

 当本人の静雅は──いい笑顔で笑っていた。

 

「その顔が見たかった! 普段そういう表情の咲夜を見るのは極稀だからな! 【デート】の際にその表情を見るためにいろいろ仕掛けてきたんだが……ここでようやく見ることができた! ごちそうさん!」

 

「──静雅ぁーっ!」

 

「ははっ。でもオレ達はあいにくそんな関係じゃないからな。そういうのはお互いの想いが成立していたらの話だ! とりあえず今日はじゃあな!」

 

 静雅は逃げるようにその場から能力で消えた。

 

 咲夜は心で思った……。

 

「(まだ、続いていたなんて……油断していたわ……。本当に人の心を荒らしていく……)」

 

 そして咲夜は──心で同時にこう思う。

 

「(でも……静雅に……異性として見られているのが……嬉しかった。もしかして私は静雅の事を──)」

 

 最後に……咲夜は心で決心した。

 

「(……いいわ。あなたの気持ちを知っているからといって待っていることをしない。私が早く行動して静雅の──面白い顔を見てあげる!)」

 

 顔を少し赤く染め上げながら、咲夜は心からそう決めた……。

 

 

 

 

 

 

 

 ──そして、数週間が経過し──

 

 

 

 

 

 

 

『──来たぜ! パチュリー、静雅はいるか!?』

 

『魔理沙……静雅はいないわよ。ちょっと咲夜に呼び出されているわ』

 

『そうなのか……? どこに呼ばれているんだ?』

 

『さぁ? 知らないわ。紅魔館は広いから』

 

『……それにしても最近、静雅は咲夜と一緒にいる時が多いような気がするんだが……?』

 

『最近そうね。人里で咲夜と静雅が【デート】として以来、それが多いわね』

 

『……デート!? あいつらそんな仲だったのか!?』

 

『そんな関係じゃないと思うけど……いや、もしかすると──』

 

『もしかすると……何だ?』

 

『──いいえ、何でもないわ』

 

『え~? そこは教えてくれよパチュリー……ん? そういえば最近咲夜のリボンと静雅のヘアピンが同じ色だったような……?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──今ごろ、青春をしているんでしょうねぇ……あの二人は──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 以上、特別番外編『メイドと執事の過ごし方』でした。そして文字数が本気について。この文量だと一章執筆できるレベル。特別番外編での裏主人公の咲夜ルートを二話にまとめました。

 また前回の同じような終わり方です。この場合は明らかに──まぁ、察しればわかると思います。

 次回は主人公たちのスペル詳細。

 ではまた。
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