最初は裏主人公視点。
では本編どうぞ。
一話 『各々の行動』
異変が解決された翌日の朝。オレは美鈴に親友のことを話していた。まぁ、昨日は大ざっぱに話したのだが、今回は詳しく。
「じゃあ私があの時通さなければ異変は達成していたかも知れませんね……」
「逆に通したことでオレは満足だったけどな。この世界に侠がいるのは心強い」
「……本当に仲がよろしいんですね」
「あぁ。仲がよろしいぞ?」
そんなこんなで美鈴と話していると……黒い影が目の前に現れる。小さな赤いずきんをしており、烏の翼ということはあれか。
「ようやくここに来られましたよ! フィルムを返してください!」
射命丸文。烏天狗で【文々。】の新聞を書いている記者だったか? まぁそれを利用して偽情報を流させたのだが。
「お、文じゃないか。てっきり昨日の内に来ると思ったんだが……」
「来ようも何も、昨日は幻想郷が暗くなる異変が起こったじゃないですか! それで妖怪の山は厳戒態勢で出入り禁止になっていたのですよ!? 異変を撮影としても予備のフィルムもありませんし! 侠さんの予想が正しければ能力か何かで奪い取ったはずです! なので返してください!」
「あはは……」
美鈴は知っているので苦笑しているが、オレは右手を前に出し、能力を使ってフィルムを出現させる。
「え……っ!? 急にフィルムが!?」
「あぁ。返すさ。あの時はオレの情報を漏らすわけにはいかなかったからな。ちょっと預かっていただけだ。フィルム自体は何にも手を加えていないから安心すると良い」
バックアップは取っているけどな。
文はフィルムを一個ずつカメラに入れてデータを確かめる。総てのフィルムを確信し終えた後、ため息をついた。
「フィルムが無事なのは良いですけどこの間の異変の写真が撮れなかったのは痛いですね……あとで霊夢さん達に異変のことについて聞いてみますか……」
「あぁ、その異変のことについて何だが」
オレはあることは思いつき、文を引き留める。
「あの異変を起こしたのはオレだ」
「…………はい?」
「あの、静雅さん? それって言っても良いんですか?」
「いつかはバレるだろ。こう言うのは早めに言っておいた方が良いんだ」
美鈴に心配されるが、文の目が好奇心に満ちた目に変わり、興奮したように話しかけてくる。
「あなたが起こしたんですか!? 幻想郷を暗くさせる異変を!? それと美鈴さんが言った名前が本当の名前ですか!?」
「あぁ。改めて自己紹介だ。異変のために自己を偽って偽情報を流した本人、本堂静雅だ」
いつの間にか文は写真を数回撮った後、メモ帳を開き片手にはペンを持っている。よりいっそう新聞記者みたいだ。
「異変を起こすために偽情報をあえて流したのですか! これはまた新しいやり方ですね! でも、異変はどうやら終わったみたいですし……大方、霊夢さんか魔理沙さんに解決されたんですよね?」
……異変解決は二人が代表的らしい。
「違うんだよな〜これが。その二人はオレを倒せなかったんだ」
「…………えぇっ!? 異変解決者として代表するお二人が解決できなかった!? じゃあ誰が!?」
「気になるだろ? 幻想郷の常識としている異変解決者が解決できなかった異変を、違う人物が解決したんだ。これはもう号外ものだろ?」
「確かに……これ以上のスクープものはありませんね♪ その人物とは一体!?」
「(二人とも元気ですねぇ……)」
「あぁ。オレを取材した後号外でばらまくといい! 幻想郷の新たなる異変解決者! その名とは──」
〜side 霊夢〜
侠が異変を解決してから何か私……変だ。私は今侠を見送った後、境内の掃除をしている。昨日帰って侠が起きた後やその後、余り長く顔を見ることが出来ていないような気がするんだけど……? でも……思い当たりはある。
『──俺にこの異変を任せて欲しい。頼む』
……あの時に言われた言葉と表情を何回も思い出している。異変を起こした犯人――結果的に侠の親友の情報を整理していたときにもアレと似たことをしていた。
普段は優しい表情で言われたことを素直にやってくれる男版咲夜と思ってた。けど……あの時は男らしい、何て言うかその……かっこよく見えたのかしら? 普段ヘタレみたいな理由で名前は呼ばないし、弾幕ごっこもしたがらない。ついでに幻想郷では重要なお酒を飲みたがらない。これは意味不明だった。あんた、人生の半分近くは損しているわよ?
……話がずれたわね。
あの表情を思い出す度、何故か心臓の脈が速くなるよのねぇ……永遠亭に行ってきた方が良いかしら?
でも異変が終わってから侠はいつも通りに戻っており、男版咲夜として家事をこなしていた。
「……はぁ」
侠の事を考えるも、よく分からないことが多い。一方的に幻想郷のことについては話したけど、侠の事はよく知らないよのねぇ……。
博麗の巫女の直感として侠のことをよく知っていた方が良い気がする。ちょうど外界の親友が紅魔館にいることだし……今度聞いてみよう。
『おーい霊夢! 今朝の号外を見たか!?』
落ち葉をかき集めて今後の方針を決めたとき──集めていた落ち葉が散った。散った原因は間違いなくあいつだ。しょっちゅう神社にたかりに来る──
「魔理沙ァ……私の落ち葉を集めた時間をどうしてくれるのかしらァ……」
「そんなことはどうでも良いぜ! んなことより文の号外を見ろ!」
……これで大したことが無かったら夢想封印を喰らわせてあげようかしら?
文が書いたと思われる新聞を受け取り呼んでみる。
…………何これ…………?
【幻想郷に新たなる異変解決者『辰上侠』現る! 幻想郷の異変解決者達は世代交代か!?】
……これって侠の記事!? しかも昨日の異変について詳しく書かれている!? 侠はさっき出て行ったばかりで文には会っていないはずだし、このことを話した人物は──
「おおよそ、間違いなく静雅ってやつが言ったんだ……! 何故か侠の写真はない代わりに特徴が書かれているが、静雅の写真が少し写っていて、本人みたいな口調でまだ記事に書かれているぜ」
魔理沙の誘導されて──ヘアピンを付けて服をはだけさせている男──本堂静雅が載っている。コメントも書いてあり、こう書かれている。
【オレは紅魔館の主のために幻想郷を影で覆う『幻想日食異変』を起こした。しかし、それを見過ごすほど幻想郷の異変解決者は甘くはない。彼女たちは紅魔館住民を破り、オレの所へ来たが──初めに来た霧雨魔理沙は撃破した。そして最後に来たと思っていた代表的な異変解決者である博麗の巫女、博麗霊夢。オレはあと少しという所まで彼女を追い詰めたが──戦ってる最中に新たなる異変解決者が現れた。オレは外界が迷い込んだ、すなわち外来人だ。来た人物も外来人だった。しかもその外来人こそが──である辰上侠だった! オレは
……私はさらっと書いてある記事を読んだ。表現が大きいものの、間違いではない。
「ひでぇと思わねぇか!? これじゃあ私達は侠より実力が下だと言われているようなもんだぜ!? 私は侠に勝ったことがあるのに!」
「……私は侠とは一度も戦ったことはないけれど、魔理沙は特別ルールじゃない。侠が昨日みたいな本気だとしたら勝てるのは危ういんじゃない?」
静雅の戦い、フランの戦いから見ても場慣れしてしている。それなりに弾幕をコントロールする力、スペルを使うタイミングなど良かった。それに、フランと戦ったときに使ったチルノっぽくなったとき。初めて使ったとしても使い方を熟知していたような気がする。
……何でチルノっぽい能力を使えるようになってるのかしら……?
私の指摘に魔理沙は答える。
「それも含めて静雅と戦う前に全力の侠を倒すためにここに来たのもあるんだぜ! 侠はどこだ!?」
「寺子屋に向かっているわよ。帰ってくるまで少し長いと思うけど?」
「……そういえばそうだったぜ……」
……アホなのかしら、魔理沙は。
魔理沙と話しているとき──誰かの気配を感じた。
『ほら、到着』
『おぉー! 本当に一瞬で着くんだー!』
鳥居の近くで聞き覚えのある声が聞こえた……というより昨日聞いたことのある声。
「よっす。霊夢に魔理沙。遊びに来たぞ?」
「来たぞー!」
──そこにいたのは異変の首謀者の本堂静雅と……フランだった──ってちょっと待って!?
「あんたはともかく、何でフランが外に出ているのよ!? しかも日傘さしていないし!? 何で消えないのよ!?」
「…………」
私は驚きしかないし、魔理沙は開いた口がふさがらない。
そう。フランは静雅に肩車をさせてもらっているが──レミリアから幽閉されていたはず。近頃は軟禁になったけど……外に出ている。しかも今日の天気は晴れだ。日光は吸血鬼の天敵のはず。なのに消えないってどういうことなの!?
「霊夢達が持っている疑問を順番に答えるとするか。フラン嬢が外に出ているのは紅魔館の誰かの監督付なら出られるようになっているんだ。それで日光についてだが……オレの能力で受け付けないことにした」
「静雅の能力って強いんだよー!」
「……無茶苦茶すぎるぜ……何なんだよ、お前の能力って……?」
「そこはトップシークレットなんでね。詮索は無用だ」
……時折こいつは一種の紫なんじゃないかって思うときがある。というよりそんなことが出来るのなら異変を起こさなくても良かったんじゃないの……?
肩車をさせてもらっているフランは静雅に話しかける。
「でも……何でお姉様には能力をかけてあげなくて良かったのかな……?」
「フラン嬢はこれからの社会勉強も兼ねているんだ。元々社会の知識を持っているレミリア嬢には必要ないだろう?」
「いいのかな……? お姉様小さい声で『うーうー』泣いていたような気がするけど……?」
「気のせいさフラン嬢……(まぁ、単にその方が面白いからなんだけどな……)」
……こいつ結構腹黒いわね……。
そんな静雅に気付いていないのか、気にせず魔理沙は肩車されているフランに話しかける。
「そうか……良かったな、フラン」
「うん!」
何だかんだ魔理沙はフランの待遇に関して心配していたからか、安心していそうに見える。……しかし、以前までの狂気はどこに行ったのやら……?
フランと話し終えた後、肩車をしている静雅に向き直る魔理沙。
「で? お前は一体何しに来たんだ? この神社にめぼしいものはないぞ?」
「毎度押しかけてくる奴のセリフじゃないわね……」
「いや、侠に用があったんだが……レミリア嬢からの頼まれ事と小悪魔の頼み事で侠を紅魔館に招待しろと」
「? レミリアと……確かパチュリーの使い魔だったな? レミリアはともかく、何で小悪魔が侠に用事があるんだぜ?」
「レミリア嬢は知らんが、小悪魔は侠の猫を預かっているから取りに来て欲しいみたいだな(……あとは親睦を深めるが)」
「……今何か言ったかしら?」
「いや、何も」
嘘だ。絶対何か気になることを言った。
「どうやら侠はいないみたいだな……ま、待たせてもらうか」
静雅はそう言うと肩車をしていたフランを地面に下ろして縁側に座り始めた。
そんな静雅を見てか魔理沙は近づいて話しかける。
「ちょうどいい……お前に弾幕ごっこを申し込むぜ! この前のリベンジだ!」
「……オレよりその単語を聞いて目を輝かせている奴を倒したらな」
欠伸をしながら指さす先は……目を異様に輝かせているフランだ。明らかに構って欲しそうにしている。
「ねぇー魔理沙! 久しぶりに私とやろう弾幕ごっこ!」
「……よし! ならウォーミングアップをかねてやるか!」
「わーい!」
そうすると二人は神社の上空に飛んでいく。そして、弾幕ごっこを始めた。
「さて、この弾幕ごっこで魔理沙の弱点でも分析するか……」
……やっぱりこの男、腹黒い。どうやって侠と親友通しになれたんだか?
まぁ、私も侠が帰ってくるまで暇なので縁側に座って観戦することにした。
……ん? 修行はしないのかって? やるわけないじゃない、あんなもの。
文は仕事が早い。
ではまた。