視点は妖夢です。注意。
では本編どうぞ。
白い空間に私は立っている。ただ、その果てしない白い先を見ている。
「……? ここは一体……?」
冥界でこんな場所はなかったと思うんですが……?
ここはどこか分析をしているとき、前方から黒い人影が見え始める。
『おーい、妖夢ーっ!』
……聞き覚えのある声が聞こえてくる。私の正面まで走ってきたのは──現在白玉楼に居候状態となっている……辰上侠さんだ。私の楼観剣を奪い、組み手で負けてしまった人物。そして──
「──っ!?」
そ、そうでした……っ! わ、私お風呂で、は……裸を……見られたんでしたっ!?
……お、おまけに侠さんの裸まで……!?
私の顔が赤くなっているの気づいたのか話しかけてくる。
「どうした妖夢? そんな顔を赤くして?」
「ど、どうしたんだじゃありませんよっ!? さ、さっき、おおお風呂場であなた、わわ私の裸を見たんじゃ──」
私がそう言いかけているところで侠さんは言葉を挟んでくる。
「……懐かしいな、それ。ゆゆさんが仕掛けたのに引っかかったんだよな。あの時のゆゆさんは面倒なことをしてくれたものだ」
「懐かしい……!? さっきのことですよ!?」
「? そんなに過去にさかのぼっていてどうしたんだ? 俺達の仲だろう? さっきというと──」
……おかしいです。会話が噛み合わない。
そして……次に出てきた言葉が信じられなかった。
「一緒に川の字になって昼寝をしていたじゃないか。俺達付き合っているんだから」
「…………え?」
今……とても驚愕過ぎることをいいました? この人?
付き合っている──それは異性として付き合っている!?
「ま、待ってください!? いつから私達はそんな関係になったんですか!?」
「いつからって……寝ぼけているのか? 付き合い始めたきっかけは──」
侠さんが変なこと説明し始めたとき、私はある違和感に気づいた。
──口調と人称が違う。侠さんは『自分』で、口調はこんなに男らしくなかったはず。そして何より私への呼ぶ方は名字だったはず。つまり──偽者!
私は腰にある楼観剣を掴もう──としたが、何故かなかった!? そして白楼剣までもがない!?
「!? 何で楼観剣と白楼剣が……!?」
「? その二つの刀は昼寝する際に外して白玉楼に置いたままだろう? まったく──」
そして侠さんが繋げた言葉は──
「──すこしおっちょこちょいのところが妖夢は可愛いとこだと俺は思うよ。本当に」
「か、可愛いっ!?」
顔を向き合って……可愛いと言われた!?
……男の方にそう言われたのは初めての所為か、顔が赤くなるほど恥ずかしいです……っ!?
「ふぅ……まだ突然に言われると恥ずかしがるのか。まぁ、ゆゆさんが妖夢を苛めたい気持ちは分からなくもない。そして──愛おしい」
恥ずかしいセリフを言いながら侠さんは左手を私の頬に触ると……だんだんと顔を近づかせてきて──っ!? ちょ、ちょっと待ってくださいっ!? このままいったら……キスっ!?
「ま、待ってください!? そんなこといきなりすぎますって!? それに私はあなたのことを──」
「悪いが、気分的にしたくなった。妖夢──俺に委ねろ」
「あ……」
言葉が急に出なくなってしまった。今日が始めて会ったのにも関わらず。最初の印象は最悪で。異性としての魅力を感じてなくて。だけど……逆らえない。男らしい。この侠さんに惹かれかけている。異性として私を見ていて。半人前の私を愛おしいと言ってくれて。
そしてそのまま私と侠さんの距離が縮んでいき──
「──それでもダメですってばーっ!?」
──残っていた自我で侠さんを突き放そうとする!
その瞬間──
『へぶっ!?』
「痛っ!?」
──額に痛みの電撃が流れる。痛みで目を覚ますと……白玉楼の……私の自室の天井だ。
『うぉおお……まさかあのタイミングで起きるなんて……』
『見てる分だと面白かったわよ? 寝言を言いながらおでことおでこでごっちんこなんて初めて見たわ♪』
近くに二人の声が聞こえる。近くにいたのは幽々子様はもちろんなんですが……侠さんまでもが私の自室にいる。どうやら私とぶつかったのは侠さんみたいだ。
…………はっ!? 今のは夢!? 何であんな夢を……!?
恥ずかしさを感じていると、幽々子様が私に話しかけてくる。
「妖夢、起きたところで悪いけどどこまで覚えているかしら?」
「お、覚えているところ……?」
確か──お風呂場で──
「──っ!?」
「あら♪ どうやらちゃんと覚えているみたいね♪」
そうでした……! お風呂場で私が滑った後に侠さんが庇って……ほぼ裸で抱き合ってしまって……!?
そんな私を見てか……侠さんが申し訳なさそうに話しかけてくる。
「魂魄……今回は事故だからしょうがない。ゆゆさんが仕組んだ事故だからね……」
「も〜……そんな目で私を見ないでちょうだい」
ジト目で幽々子様をみる侠さん。
……まさか私に入るように促していたときにはもう入っていたのでしょうか……?
続けて侠さんは私に話しかけてくる。
「それと……魂魄の事は自分は気にしていないから。ここはお互い見たことを忘れるべきだし」
「そんな簡単に忘れませんよっ!? わ、私……親族以外の殿方には、裸を見られたの初めてなんですよ!?」
「大丈夫大丈夫。見られたぐらいで人生が大きく変わるわけでもないし」
「あら? それは違うんじゃないかしら?」
気楽に話しかけてきた侠さんに幽々子様は問いかける。
……私の擁護でもしてくれるんでしょうか──
「──世の中には女性の裸を見た親族以外の男性は責任を取るのもあるのよ?」
「ゆ、幽々子様ぁっ!?」
そ、それって……結婚して責任を取れって事ですか!?
「てなワケで侠……妖夢の責任を取りなさい♪」
「会って数十時間で責任を取れってどういうことですか? そんな望まない結婚を魂魄は望んでいないでしょう?」
「そ、そうですよ! そんな形での責任を取ってもらうなんて私は嫌です!」
「ん〜……まぁ、二人がそう言うのなら仕方ないわね」
何故か残念そうに渋々受け入れる幽々子様。
……本当に何で残念そうなんですか?
話の区切りがついたのか、幽々子様は侠さんに話しかけましたが──
「じゃあもう解散ね。私はお風呂に入ってくるけど……侠──」
「さっさと入ってきてください。一人で」
「うぅ……お姉さんはあなたをそんな子に育てた覚えはないのに……」
「お茶目な冗談を言っていないで入ってきてください。魂魄は入り直さないといけないんですから」
侠さんが厳しく言うと幽々子様は『化けて出るわよ〜……』といって私の自室を出て行った……まぁ、私も半分は化けていますが。
……あれ? そういえば私……バスタオル姿だったはずですけどいつも服に着替えている……? 幽々子様が着替えさせてくれたんでしょうか?
ちょっとした疑問を自己解決していると侠さんが話しかけてきました。
「やれやれ……ゆゆさんには困ったものだね。君は振り回されて大変じゃない?」
「いえ……慣れていますから」
「……振り回されるのを慣れているというのはちょっと問題があると思うんだけど……」
「それが幽々子様ですから仕方ありません」
侠さんは私のことを気遣っていますが……どうしてそこまで心配してくれるのでしょう? おそらく侠さんも私に対して良い感情は持っていないと思うんですが……。
改めて侠さんを観察してみる。顔はそれなりに整っている。一般的に見たら評価が高い顔かも知れません。けど……夢の中で出てきた侠さんはもう少し男らしい顔つきだったような気がする。口調も全然違いましたし……。
そんな私を見てかどうか分かりませんが……侠さんは立ち上がり、こう話しかけてくる。
「じゃ、ゆゆさんがお風呂から上がったら入り直してくると良いよ。それと、何時まで帰るか分からないけど……これからよろしく」
そう告げながら侠さんも私の自室を出て行った。
……侠さんの評価を改める必要があるかも知れません……。
翌日の早朝。私は定時に起床し、身支度を終えてから自己鍛錬に励んだ。これはいつもの日課だ。一日でもサボると勘を取り戻すのに三日はかかると言いますし。
自己鍛錬を終えた後は朝食を作る。いつもながら多めに……おっと、侠さんもいるからもう少し多めにしなくてはいけませんね。
朝食を作り終えた後は幽々子様を起こしに行く。自室の前まで来たので声をかけてみる。
「幽々子様ー? 朝食の用意が出来ましたよー?」
…………。
数十秒待っても返事がありませんでした。私は襖に手をかけながらまた声をかける。
「……失礼します」
幽々子様の自室に入るも……布団に幽々子様の姿がありませんでした。どこにいるんでしょう──そう思った矢先、少し先に閉じ切れていない襖がある。私は何となくそこの襖を開けてみると……侠さんが安らかな顔で眠っていた。
……申し訳ないですが、侠さんにも幽々子様のことを探してもらうのを手伝ってもらいましょう。
そう考え、寝ている侠さんの近くに行くと──何故か布団の膨らみ方がおかしい。侠さんの左側が不自然に膨らんでいる。
「……みょん?」
不思議に思い、布団をめくってみると──
「──みょんっ!?」
──幽々子様と侠さんが一緒に眠っていた!? お互いの服ははだけ、幽々子様は侠さんの左腕で腕枕をさせてもらっている。そして……幽々子様ははだけた侠さんの胸と作務衣の間に左手を入れている。
え、えっと……もしかして昨夜に……!?
そんな混乱しているときに幽々子様は眠そうに起き上がった。もしかしたら私の声で目が覚めたのかも知れない──ってそんなことより確認したいことがあります!
「妖夢〜少しうるさいわよ〜」
「そ、それはすみませんでした──それより、この状況は一体何なんですか!? そ、そんなお二人の服が、は、はだけている状態で……!?」
私がそう指摘すると幽々子様は周りを見渡し、隣で寝ている侠さんを見た。
そして──幽々子様はこう答えた。
「……逞しい体だったわ♪」
……それを聞いた瞬間、私は何やら黒い感情が胸に広がっていく。
……よりによってそんなみだらな行為をしたんですね……?
私達の会話で気づいたのか、今度は侠さんが起き上がってきました……。
「何だい? そんな焦っているような──」
侠さんは辺りを見渡すと……そして服がはだけている幽々子様を見て、私に視線を送った後、幽々子様を二度見した。
「……何でゆゆさんが隣にいるんですか?」
「やだねぇ侠。昨夜のことを忘れたの?」
「普通に寝ていましたけど?」
「だ、そうよ。妖夢」
「そうですか……そうですか……」
「……あのさ、どうして魂魄は楼観剣を握りしめてこちらに向けているのかな?」
どうやらとぼけているようなので、私は侠さんに問う。
「──辞世の句は終わりましたか?」
「待った。説明を要求する。そもそも何ではだけたゆゆさんが隣にいるのか──」
「この不埒者ーっ!」
「何でっ!?」
幽々子様に当たらないように楼観剣を振り、侠さんを斬りつけようとしたが、転がって避けられてしまいました。
「待った! 君は何かを誤解している! これはきっとゆゆさんの罠だ!」
「そうしたら何で幽々子様が隣にいるのを気づいていなかったんですか!?」
「さっき気づいた! だからそれ以上なことはしていない!」
「嘘をつかないでくださいっ!」
「理不尽だっ!?」
そして、幽々子様が真相を言うまでこの鬼ごっこは続いた。
……訂正します! まだこの人を信用しきれません!
「……やっぱりこの二人は面白いわね♪」
妖夢の評価が台無し……これはゆゆさんが仕組んだ罠です。本当に。
この話でこの章での白玉楼は次回に持ち越しになりますが、次話で『〜Ex side story〜』シリーズを投稿して表・第六章は終わりです。
活動報告にてアンケート結果を集計しました。時間のある方はどうぞ。
ではまた。