幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ならず者は話し掛ける相手を間違えてしまいました。
 視点は裏主人公。
 では本編どうぞ。


四話 『風見幽香とは』

「ねぇ、静雅……あの人達に協力しちゃって良いのかな……?」

 

 肩車で一軒家に近づいてくるとき、フラン嬢は不安めいた言葉で聞いてくる。

 

「それはどうしてだ?」

 

「……何ていうか……あの人達に言っていることは嘘だと思うの……。何か信用できない……」

 

「……まぁ、オレもそう感じている。ほぼ断定的に」

 

 オレの返した言葉にフランは驚きながらも問いかけてきた。

 

「えっ? それなのにどうして協力しているの? 何で断らないの?」

 

「フラン嬢……言葉というのは不思議なものなんだ。フラン嬢では会話の流れでオレが協力するみたいな空気に感じたんだろうが、オレはあくまで『話をしてくる』と言っただけで協力するとは言っていない」

 

「……話すだけなの?」

 

「今のところはな。だが、もしかするという可能性で本当のことをあの怪しい三人組は言っていたのかも知れないということもあるからな。それを確かめに──おっと、家の前に来たからフラン嬢は降りてくれ。行儀が悪いからな」

 

 フラン嬢を肩から下ろし、扉の前に立ち──ドアにノックする。

 

「風見幽香氏はいるか? いるのなら少し話をしたい」

 

 どんな人物──妖怪か分からないので、敬意を持った呼び方で尋ねてみる。

 

 少し待つと……ドアが開き、女性が現れる。

 

「……こんな所まで来て、何か用かしら?」

 

 その女性は赤のチェックの上着を羽織、同じ色のスカートを履いていて、髪はセミロング。表面上はそこまで怖くない。むしろ淑女に感じた。

 

 さて、ここからが正念場だな。

 

「申し遅れた。オレは紅魔館の執事をやらせてもらっている。本堂静雅。この女の子は紅魔館の主の妹のフランドール・スカーレット嬢。オレはフラン嬢の従者でもある。以後お見知りおきを」

 

「ふ、フランドール・スカーレットです」

 

 オレが自己紹介をしてお辞儀をした後、フラン嬢もしてくれた。

 

「ふーん……紅魔館の執事と、吸血鬼の妹、ねぇ……。どうしてこんな日光の中で日傘すら持っていないのかが不思議だけど?」

 

「それはちょっとした事情があるんだ。その事を答える前にちょっと風見氏に聞きたいことがある。とある風見氏の噂についてだ」

 

 オレにとっての本題を聞くと、風見氏はフラン嬢を少し見た後、オレを値踏みするかのような視線を送ってくる。すると、風見氏はこう答える。

 

「いいわよ。今日の私は機嫌が良い方なの。よほど変な質問でない限りは答えてあげるわ」

 

「それはありがたいことだ。感謝する」

 

 一呼吸をし終えた後、本題について話す。

 

「とある奴が言っていたことなんだが、ここの向日葵畑に近づいたら半殺しにされるという変な風評があるんだが……それについては? オレとフラン嬢は最近ここの辺りについて知り始めたばっかりでな。風見氏がどの妖怪も恐れる実力を持つ大妖怪ということは知っているんだが」

 

「……私は大妖怪という肩書きを持っているせいか、恐れられるのよ。近づいたら殺されるだの、土の栄養にされるだの、力の弱い妖怪や何の力も持たない人間がそう言っているのだと思うわ」

 

「……ですよねー」

 

 オレは風見氏の目を見ながら相づちを打ち、次の質問に移った。

 

「次の質問なんだが……ここの向日葵を盗まれそうになったとき、風見氏はそいつをどうする?」

 

「殺すわ」

 

「っ!?」

 

 オレの質問にためらいなく風見氏は答え、フラン嬢は一瞬にして殺気を感じたのか少し後すざった。

 

 だが、オレはそれに構わず言葉を続ける。

 

「やっぱり、ここにある向日葵がそこまで大事なんだよな。オレは外界出身なんだが、こんな綺麗な向日葵たちを見たことがない。オレから見てもここの向日葵は貴重な存在だよな。外界では自然環境がどんどん減っている状況にあるんだ。一部とはいえ、それを盗む奴は許せないよな。何でここにある向日葵を盗もうとするんだか意味不明だ」

 

「……外界は花が少なくなってきているのかしら?」

 

「むしろ自然がなくなってきている。今はまだ余裕はあるが、いずれかは厳しくなるだろうな。でも、オレはここにある向日葵を見て感心したよ。『こんな綺麗な自然があるなんて良いな』って感じたな。フラン嬢も思っただろ?」

 

「──うんっ! こんなに綺麗なものを見たことがなかった!」

 

「……褒めても何も出ないわよ?」

 

 オレが感じた素直な感想を伝えてみると、少し笑ってくれた。やっぱり褒められると満更でもなさそうだ。

 

 続けて風見幽香氏はこう答えてくれた。

 

「一応、私は人里の花屋との関わりがあるのだけど……やっぱり私の育てた花はよく売れるみたいなのよ」

 

「だろうな。紅魔館で育て方を教えてもらいたいぐらいだ」

 

「売買目的で私はそこの花屋から新種の花の種をもらったら、私の育てた花を譲ることにしているの。そこの花屋は私の花や育てた花を大事にしてくれるから。でも……私が用事でいないときに、向日葵を盗んだ不届き者がいるって事を花屋から教えてもらったのよ。私の花を売ろうとしていたみたいで」

 

「……その結果は──まぁ、聞かないでおこうか……」

 

「その方が良いわね♪」

 

 威圧感のある笑顔でそういう風見氏。

 

 さて、どうするかは……フラン嬢に任せるか。

 

「フラン嬢。この話を踏まえてあの変な三人組か、このお姉さんとだったらどっちが【良い人】だと思う?」

 

「……えっ? うんと……」

 

 オレの質問にフラン嬢は考え、風見氏はオレの質問の仕方に興味を持っているような反応を示した。

 

 そしてフラン嬢の答え。

 

「……やっぱり、このお姉さんの方が【良い人】だと思う。お姉さんは何もしていないのに悪い噂が出てるのはおかしいよ」

 

「あら? 実際に私は人間を食べるのよ? 箱入り娘のあなたはどうかは知らないけど、妖怪が人間を襲う。これは立派な道理よ?」

 

「……それはそうかもしれないけど、お姉さんは理由があって襲ったんだよね? お姉さんの好きな花を盗まれたら誰だって怒ると思うもん」

 

「……ふぅん」

 

 風見氏はある意味感心したようなそぶりを見せた。フラン嬢はどんな性格かを見定めているのかも知れない。

 

 さて、フラン嬢の答えも出たみたいだし、こっからはオレの仕事か。

 

「そこで風見氏。ここでちょっくら余り嬉しくない情報がある」

 

「……言ってみなさい」

 

「この向日葵畑の近くに一度向日葵を盗んだ不届き者の集まりがお前さんを討伐しようと待機している」

 

「静雅っ!?」

 

 そういう情報を言うと風見氏は興味が出たように聞き、フラン嬢は驚いた声を上げる。

 

「フラン嬢……思い返してみるんだ。風見氏と言ったことと、あの三人組の言ったことを。風見氏は何も悪くない。悪いのはあの三人組だ。自分たちは被害者のように見せて、何も悪くない風見氏を悪役にしている。そしてあの三人組は嘘をついてオレ達を騙そうとした。明らかに悪いのはあいつらだ。それにフラン嬢も風見氏は良い人だと思ったんだろ? それなら良い人の味方に付く。これは大事なことだ」

 

「……うん!」

 

「あなた……口が回りすぎでしょ。それに勝手に私を善人扱いにしないでくれる? これでもそこらの妖怪や人間が恐れている大妖怪なのよ私は?」

 

 オレの言葉に風見氏は呆れたようにする。

 

 でも、オレはこう言う。

 

「少なくとも、風見氏と討伐をしようとしている不届き者と比べたら、根は風見氏の方が善人だろ?」

 

「……調子が狂うわ。あなたと話していると」

 

「それは失礼」

 

「まぁ……その情報を有効活用しましょうか。その不届き者はどの方角にいるの?」

 

 そう言いながら近くに立てかけてあった日傘を手に取りながら聞いてくる。

 

「南東だな」

 

「そう……感謝するわ。気配を辿っても良いのだけど、不届き者ために力を使うなんて馬鹿げているもの」

 

 そう言うと風見氏はオレ達の間を通って家から出て、オレの言った方角に日傘を向けて照準を合わせる。

 

 そして……傘の先に力が目に見えるほど溜まっていくのが分かる。

 

「お、おい……何をやるか分からんが、それはやりすぎだと思うぞ?」

 

「大丈夫よ。そこまで力は込めていないからね」

 

 風見氏はそう言うと──傘の先から、魔理沙のマスタースパークのような太いビームを放った!?

 

 そのマスタースパークを放った結果というと──

 

 

 

『ぐぁああああっ!?』

 

『あ、兄貴ぃーっ!?』

 

『兄貴にビームが直撃したでやんすーっ!?』

 

 

 

 ……どうやらリーダーに直撃したようだ。普通にどう見ても当たると痛いよな、あれ……。

 

 オレはフラン嬢と共に風見氏の隣に立ち、離れたところのチンピラに遠くから声をかける。

 

「お前さん達ーっ! 嘘は感心しないぞ! 嘘をつくならばれない嘘や身内だけにしておけ!」

 

『う、嘘をお前もついただろぉ! 俺達に協力しただろぉ!?』

 

『ひ、卑怯者でやんす! 妖怪に寝返った人間なんて卑怯者やんす!』

 

 当然の如くに非難を飛ばしてくる舎弟。リーダーは舎弟に肩を借りてもらっているが。

 

 さて……勘違いを解いておくか。

 

「オレはそもそも『話す』と言っただけで協力をするだなんて一言も言っていない。そして──よく神に向かって嘘をついたものだ。お前らの人間性はダメだな」

 

『なん……だと……!?』

 

「……やっぱり」

 

 リーダーは驚きを隠せていないが、風見氏は知っているような反応を示した。

 

 ……やっぱり妖怪はにおいか何かで分かるのか?

 

 まぁ、それでもオレは言葉を続けた。

 

 

 

「オレはとあるものを滅ぼす神の系統でもある。そして……お前らの所行は見逃せないな。普段の行動といい、悪くもない妖怪に覚えのない風評を流し、自分のやっていることを棚にのせる……お前らは神に喧嘩を売っている──それなりの覚悟は出来ているなっ!!」

 

 

 

 オレは傍の空間、チンピラ達の頭上に多数の槍の弾幕を形成させておく。抜け道はあえて残しているが、ほとんど囲まれている状況に近い。

 

 そして──実力の差を悟ったのか。

 

『ひぃいいっ!? お、お前ら! に、逃げるぞ!』

 

『りょ、了解だぁっ!?』

 

『合点でやんすっ!?』

 

 舎弟に引きずられならチンピラ達は弾幕の抜け道を通って森の中へと消えていった……。

 

 消えていったのと同時にオレは弾幕を解除して消した後、疑問そうにフラン嬢はオレに話しかけてくる。

 

「……静雅、本気で怒っていなかったのに何であの人達は逃げたの?」

 

「ん? 気になるのか?」

 

「あの人達遠目だから分からなかったのかな……静雅、顔が笑ってたもん」

 

 ……よく細かいところまで見てたな。

 

「オレは自信に溢れている奴の自信を粉砕するのが好きなんだ。どうだったあいつらの逃げ腰っぷり? 何かスカッとしただろ?」

 

「(何だろう……こういうのは学んじゃいけない気がする……)」

 

「あら。あなたよく分かっているじゃない。誇りや自信を粉々にするのは楽しい事よね」

 

 風見氏が同意してくれた。根本的にはこの人──妖怪はSなんだろうな。

 

 続けて風見氏は話しかけてくる。

 

「いろいろあなた達に興味を持ったわ。紅茶ぐらいは出してあげるからあがっていらっしゃいな」

 

「お、マジで? サンキュー風見氏!」

 

「『幽香』で構わないわ──神様。そこのお嬢ちゃんも構わないから」

 

「オレにはちゃんと『本堂静雅』って名前があるからそっちで呼んでもらいたいな。『神』関係以外の呼び方なら何でも良い」

 

「それじゃあ静雅って呼ばせてもらうわ。じゃあ着いてきなさい」

 

 オレとフラン嬢は幽香の家で紅茶をごちそうしてもらう事になった……。

 

 

 




 ……このならず者達はまだ出番があります。かませとして。

 何だかんだどんな噂をされても幽香は淑女だと作者は思う。

 ではまた。
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