最初は表主人公視点。
では本編どうぞ。
一話 『例え不利でも』
『鶏肉が食べたい気分なのよ』
白玉楼で過ごすこと四日目の夕方。急遽呼ばれた自分と魂魄はゆゆさんに自室に呼ばれ、そんなことを言われた。
続けて詳細を言うゆゆさん。
「それに新鮮なのを」
「幽々子様……つまり狩ってこいということですね」
「それで分かる君が凄いよ……」
ゆゆさんに対する忠誠心は大きいのだろうと感心させられる。
そしてゆゆさんは自分たちにこう言った。
「そこで二人には鳥を狩ってもらいたいのよ。いち早く成果を出してもらいたいの」
「成る程……私と侠さんとの真剣勝負ですね!」
「ちなみに拒否権はどうなんでしょうか?」
「ないわ〜」
「……ですよねー」
「ふふふ……今度は逃げられませんよ!」
そう言って対抗の意思を見せてくる魂魄。
……一度組み手で自分が勝って以来、異様に勝負を申し込まれるようになった。おそらく魂魄が勝てるまで続くと頭の中では分かっているのだが、断り続けている。それでもめげずに魂魄は挑発を繰り返したりするが、自分は何処吹く風。あの組み手以来組み手らしいことはしていない。
……白玉楼で過ごした二日目の朝が原因じゃないかと自分は思う。というよりゆゆさんが自分にちょっかいをかけて魂魄がヒートアップするという悪循環の所為でもあるような気がする。それでわざと勝負事に負けたらで問題が色々起きそうな気がしてならない。
「それじゃあ私が始めと言ったら開始ね。よーい──始め!」
「すぐに新鮮なのを調達しに行きます!」
ゆゆさんのかけ声の共に魂魄はすぐさまに白玉楼から出て行った。
……元気だなぁ。
そんな自分を見かけてかゆゆさんは話しかけてくる。
「侠? すぐに追わなくて大丈夫?」
「自分はのんびり鳥を狩っていきますよ。ちなみに鳥は妖怪とかそういう類じゃなくて普通の鳥でも良いんですよね?」
「えぇ。もちろんよ。でも──」
自分も準備してから行こうと思った──その時だった。
「──妖夢はミスティアかしら? そういう夜雀を狩ってくると思うわよ?」
「……ミスティアを?」
聞き覚えのある名前に自分は動きを止めた。
「あら? お知り合い?」
「知り合いも何も……寺子屋で自分は働いていて、その生徒ですよ!? おまけに誘われてチルノやルーミアなどと一緒に遊んだ仲です! 確か八目鰻を屋台で売ってるミスティア!?」
問題を教えているときに軽く自己紹介で『お金に余裕が出来たら食べに来てね! おいしいから!』と誘われていたのを思い出した。
そのミスティアが……狙われている!?
「あら? 結構仲が良いのね? 遊んだりする仲って」
「……くそっ! 魂魄を止めなきゃ!」
そう言って駆け出そうとしたとき──
「……待ちなさい」
急に声のトーンが変わったゆゆさんに声をかけられる。
「何ですか!? 急いで行かなきゃミスティアは──」
「この幻想郷では弱肉強食よ? 妖怪が人間を襲うように、強者に弱者が襲われるのも自然の摂理。妖夢とミスティアならば妖夢の方が強いでしょう。それでも弱者を助けるのかしら?」
「……自分の勝手でそんなのを決めます。ミスティアがいなくなったら真っ先に悲しむのがミスティアの友達でしょう!? 慧音さんも悲しむし、自分ともそれなりの関係も持っている! 助けられるのなら助けたい!」
「私は『鳥』を狩ってこいと言ったのよ? 無視するつもり?」
重みのある言葉聞いてくる。
「──そんなの俺の知ったこっちゃない! 助けると言ったら助ける! それだけだ!」
俺の決意を伝えると……何故かゆゆさんは笑顔を浮かべた。
「なら……あなたの好きなようにしなさい」
「……そうさせてもらう!」
俺は玄関で靴を履き、即座に翼を出して龍化をし、白玉楼を出て行った……。
『……これで良かったのかしら? 紫?』
『──上出来よ幽々子。彼の【素】をよく引き出してくれたわ』
『何か悪いことしてる気分ねぇ……侠は悪くないのに。そこまで彼の力に興味があるの?』
『普段から非戦闘的だからこれくらいの方がちょうど良いのよ。妖夢だけじゃ出なかったからね。このくらいはしなくちゃダメね』
『まぁ、彼は何で妖夢と組み手を避け続けているのか聞いてみると「女の子だし、そんなに仲がよくないから遠慮をしちゃうし、だからやる目的もない」って言っていたものね。紫はそこにつけ込んだのね』
『えぇ。戦う目的がなければ──作れば良いじゃない』
〜side out〜
「さってと〜♪ 八目鰻を調達しないとね〜♪」
鼻歌交じりでご機嫌な夜雀の妖怪──ミスティア・ローレライが魔法の森を歩いていた。
彼女はいつも仲良く遊んでいる友達と遊んだばかりで、ミスティアは遊びに快勝したのだ。
「(今日は良いことがありそうだし、おいしそうな八目鰻を捕ってこよう!)」
そう思い返したその時──
「──見つけました」
──ミスティアは背筋が凍った。その声の主を知っている。過去に幻想郷の満月がおかしくなったときに対峙した。挑んだ結果……弾幕ごっこだったが簡単に負けてしまった。その人物の主に食欲的な意味で見られたのを忘れられない。
ミスティアはおそるおそる振り返り──見たくない人物を見てしまった。
「──幽々子様の
半身半霊の庭師、魂魄妖夢だった。
ミスティアは妖夢に抗議する。
「な、何で急にそうなるのよぉ!?」
「幽々子様が鶏肉を食べたい気分とおっしゃっていたので……私は真っ先にあなたを思い浮かべました。だからです」
「そんな理不尽な理由で私は狩られるの!?」
「それに……これは私の真剣勝負でもあります。いち早く成果を出し、幽々子様に認めていただくため! あなたは私の
そう言った刹那、妖夢は素早いスピードでミスティアを斬りかかろうとするが、肝心のミスティアは恐怖で動けない。相手のためらいのない行動の動揺してしまっているのだ。
その一瞬が走馬燈に感じたのか、時の流れが遅くミスティアは感じる。
「(……せっかく、今日は良いことがありそうだったのに、私……色々できなくて死んじゃうの?)」
ミスティアはただ、こう願う。
「(誰か──助けて!)」
そう願ったとき──不意に何かに包み込まれるようにしてミスティアの体が動き、その場を転がる。だが、避けきれなかったようで左肩から血がドクドクと流れていく。
……しかし、その血はミスティアの血ではない。包み込まれた何かから血を出し、左肩近くから滴りミスティアの顔を汚す。
そして──包み込んだ何かに、妖夢は怒りを含めた声で話しかけた。
「……どういうことですか──侠さんっ!」
「ぐっ……」
その正体は白玉楼で現在過ごしている辰上侠だった。彼は妖夢を上回るスピードでミスティアを抱きしめるように庇い、転がった。しかし、その際に妖夢が振るった剣が左腕の二の腕に当たってしまったのだ。幸いにも重傷ではないが、血がどんどん流れていく。
侠は問いかけてきた妖夢を無視し、ミスティアの安否を確かめる。
「……何とか間に合ったみたいだ。よかった」
「侠っ!? どうしてここに!? というよりその血……!?」
「……あぁ、ごめんな。俺の血でミスティアの顔を汚してしまったな。本当にすまない」
「そ、そんなことはどうでも良いの! 血が……っ!?」
ミスティアは助かったという気持ちと、庇ってくれた罪悪感で涙を流している。
侠はミスティアを抱きしめるのは止めて、右手で左腕を押さえながら妖夢に対峙して話しかけた。
「なぁ、魂魄……ミスティアは見逃してくれないか? 頼む」
「……幽々子様の言っていたことを忘れたんですか? 幽々子様は鳥を狩ってこいと私達に言ったのですよ? その夜雀は私の獲物です。渡してください」
「断る。ミスティアは渡さない。他の奴を狙えば良いだろ」
「! そう言って私の獲物を横取りするつもりなんですね! 卑怯者!」
「卑怯者と何でも呼ぶといい。ミスティアは絶対に渡さない」
頑なに妖夢の要求を断り続ける侠。だが、妖夢は引き下がらない。
「幽々子様に一時的でもあなたは使えている身でしょう! 幽々子様の命令に従わないんですか!?」
現在の侠は白玉楼の主西行寺幽々子にしたがっている身だ。実際に侠は今まで幽々子の命令に従ってきた。
だが──
「そんなもん糞食らえだ。どんな命令も俺の気分で従う!」
「幽々子様を侮辱するつもりですか!? 幽々子様を侮辱するなんて、私は許しませんっ! 夜雀の前にあなたを──斬るっ!」
主を侮辱された怒りで妖夢は楼観剣を改めて構え、白楼剣を鞘から抜いて構える。
……しかし、侠は落ち着いた様子で背後にいるミスティアに話しかけた。
「ミスティア……この場から離れるんだ。遠いところまで逃げろ」
「そんな……!? 侠を放っておくなんて出来ないよ! それに今だって血が出続けて……!」
「大丈夫だ。これくらいでは俺はまだ死ねない。それに俺なんかよりミスティアを失った方が悲しむ奴が多いだろ?」
そして、ぎこちない笑顔を作りながら侠はこう言った。
「──ミスティアは俺が守るから」
「…………」
ミスティアは今までこんな人物に出会ったことがなかった。侠とは確かに遊んだ仲でもある。チルノが侠のいろんな事について言っていたが、それ単純に懐いているのだと思っていた。ルーミアもそうだ。ルーミアは出会い頭に人間を食べようとしたりするが、侠にはそんなことをしなかった。過去にそういったことを問いかけたがあるとルーミアは言っていたが、『断られたけど何か余り食べる気になれなかったのだー』と言っていた。現状はルーミアも侠に懐いている。ミスティアが侠から勉強を教えてもらっているときに感じた第一印象は、『何か仲良くなれそう』という好印象だった。実際には侠は寺子屋の生徒に人妖問わず人気があった。
──ただの人間がどうしてここまで妖怪や妖精に懐かれるんだろう?
人間は実際には妖怪より弱い生き物でもある。例外もいるが……実際に侠も例外の一部だ。実際に彼はどんな外見の人間や妖怪でも平等に接してきた。
だからだろうか……ミスティアから見て、こんなに頼りな存在に見えるのは。同じ人間の博麗霊夢や霧雨魔理沙とは違った感じ。安心感が胸一杯に広がる。
だからこそ──ミスティアは侠の事を信用した。
「侠……絶対無事にいてね!」
「まだミスティアの料理も食べていないのに死ねるわけがないだろ?」
「あっ……(覚えていてくれたんだ)」
そういえばそんな約束を交わしたことがあるとミスティアは思い出した。その事がさらに安心感を増す。
ミスティアは侠の言う通りにしてその場から離れていった。
そして……目の前で剣を構えている妖夢が話しかけてくる。
「……辞世の句は終わりましたか?」
「そんなつもりはないんだけどな。俺はまだ死ねないんでね。この場を乗り切ってみせる」
「そのまま出血が続いたらそのうち命に関わりますよ? それにあなたの利き腕は左腕。利き腕が使えなくなった上にあなたはただの人間。対等な条件ならばあなたは強いかも知れません。ですが、現状を把握した方が利口だと思いますけどね」
妖夢は白玉楼で過ごしていた侠のことを自然に知っていった。侠の利き手は左手だということを。過去に組み手をしたときは左手を中心にして竹刀を持っており、箸を扱うときも左手だということは覚えていた、
現状は明らかに侠の方が不利だ。利き腕に怪我を負い、出血も続いている。しかし、何食わぬ顔で侠は言う。
「なら左腕を使わなければ良い」
「……頭が悪いんですか? 使わないとしても出血で命に関わると──」
「……出血を止めれば問題はないだろう?」
侠は右手に力を込めると──出血している箇所に氷が張り付いていく。みるみると左腕の二の腕が凍っていき、出血はとりあえず止まった。
それを見た妖夢は驚愕した後、そして独りでに納得をする。
「成る程……あの氷精と同じ能力で【冷気を操る程度の能力】でしたか……」
「(……チルノの能力ってそんな能力名だったのか)」
侠はこの場において、この能力の名前を知った。
「(だが……それとは何かこれは違うような気がする)」
しかし、侠の中ではそれはしっくりこないのだ。
そんな疑問をよそに、妖夢は言葉で侠を牽制使用としたが──
「ですが……その能力が使えるからって弾幕ごっこに勝てるとは限りませんよ?」
「勝てなくちゃ俺が生き残れないだろう。だから──勝つっ!」
侠はスペルカードを取り出し、宣言した。
「適合【ブリザードオーバードライブ】!」
宣言した瞬間、いつかのフランドールと戦った時みたいに氷の柱が出現し、侠の体を包み込む。そして柱が割れ──【幻想日食異変】時の侠に変わった。
「!? 姿まで変わるスペルカード!?」
「──さっさと終わらせる!」
……文字数がおかしい。でも、分割する際にはこの文字数の方が区切りが良かったんです。
妖夢は悪気は無いんです。ただ、目上の人物の命令を遂行しようと考えているだけなんです。
現在、特別番外編執筆中ですが……文字数が半端ないことになりそうです。現在、四人目(?)の取材途中で文字数は──
文字数:22323
……ここまで大掛かりな特別番外編になるとは思わなかった。ガラケーの一つのメモ帳全角512文字に対して、50個中45個分使っているという事実です(改行や空白も含まれて文字数は少し少ない)。30000字前後いきそうな気がしてならない。
ではまた。