この章は妖夢視点です。
では本編どうぞ。
小宴会が始まり幽々子様は紫様とお話をして食べ、橙ちゃんは藍さんとじゃれ合っている。侠さんは──隣で静かに食事を食べている。
……ちなみに侠さんの式神の食事も用意して、食べている。
今の状況を見てか、侠さんは願うように呟く。
「……このぐらいの宴会の静けさだと良いんだけどね」
「残念ながらこういう静けさはいつもの宴会は皆無なんですよね……」
「……割り切るしかないか」
食べるのを中断し、麦茶を喉を通す。そういえば全部飲み物はお茶関係のような……?
「侠さんはお酒は飲まれないんですか? ずっとお茶ばかり飲んでいるような気がするんですが……?」
「飲めない。というより厳重に止められている」
「……もしかして酒乱なんですか?」
「聞いた話だと飲んだら二日間眠り続けるらしい」
「厄介な酒癖ですね……」
何でお酒を飲むと二日間眠り続けるんですか? どちらにせよ飲ませない方が良さそうですね。
「…………」
「…………」
侠さんは会話を終えると黙々と食べ続ける。その間、お互いは黙ったまま。
せっかくなんですから……お話ししないと損ですよね。そう思い、私は侠さんに話し掛ける。
「…………侠さん? その、お口に合うでしょうか?」
「おいしいから大丈夫だよ。この出汁巻き卵」
「あ、よかったです。その出汁巻き卵、私が作ったんですよ」
「そうなんだ? 出汁巻き卵は自分は作ったことはないから良いよ、これ」
「あ、ありがとうございます……」
作った料理を褒められ。少し顔合わせがしづらいですが、返事をします。凄く嬉しいです……!
侠さんは続けて話し掛けてくれます。
「魂魄ももっと食べたら? ゆゆさんがいるのにも関わらず結構料理残っているし」
「……そうですね。それと、侠さんは料理できるんですか?」
「最低限は。でもこんなに作ったことはないからなぁ……。藍さんや魂魄みたいな料理は作ってみたいとは思うんだけどね。レシピを知らないから」
「なら、傷が治り次第一緒に作りますか?」
「それはお願いしようかな? いろんな料理を作れるようになりたいし。そのときはよろしく」
「はい! お任せください!」
侠さんとお話をしていたその時──幽々子様が私達を見て言う。
「……良いムード出しちゃって〜。どこの新婚夫婦よ〜」
「し、新婚夫婦!?」
きゅ、急に新婚夫婦!? 幽々子様は何をおっしゃっているのですか!?
その中で侠さんは気にしていないのか(そうだったらかなり複雑なんですが……)、落ち着いた風に話しかける。
「どこからそう見えるんですか?」
「雰囲気よ雰囲気〜! 何か妖夢に対する侠の態度が優しい〜! 私にもその優しさをちょうだい〜!」
「ゆゆさんは綺麗だなー(棒読み)」
「優しさがこもってない〜!」
侠さんの対応に不満を漏らす幽々子様。それに紫様も会話に加わる。
「甘いわね幽々子。普段からちょっかいをかけているからそうなるのよ」
「紫さんもスキマで送るとき場所を考えて欲しいです。事前に場所を教えるなり」
「説教された!?」
紫様は侠さんの言葉に意外そうに返した。
……何だかんだ不満はあったんですね……。
その光景を見てか、藍さんは侠さんに話しかける。
「言葉遣いは正しいが……何だか霊夢の度胸が移ってないか?」
「? そんな事はないと思うんですけど?」
「……今まで侠、霊夢に色々不満とか言われなかったか?」
「…………言われたことがないような気がします」
い、言われたことがないんですか!? 居候ならばあの人は色々と言ってくると思うんですが……!?
紫様は藍さんの言葉に繋げるように話します。
「何だかんだ霊夢は侠の事を評価しているのよ。主に家事が万能的な意味で。まぁ……本人は無自覚だけど私が侠をここに送ったとき、侠を取り返す気満々だったもの」
紫様の言葉に橙ちゃんは質問をする。
「え……紫様、ならばどうして霊夢さんはこちらに来ないんですか?」
「結界を展開しているのよ。白玉楼から出るのは簡単だけど、そこから入るのが難しくね。認識した者だけ通している。簡単に言えば入り口は他人から見ると見つけにくいのよ」
「わざわざ結界を展開しなくてもよかったんじゃないですか? ちゃんと博麗に事情を話せば良いと思うんですけど?」
侠さんのそもそもの疑問を紫様にする。
「……多分だけど、あの子はきっと独占欲が強いと思うのよ。侠が利便性が分かった時点で手放さないと思うわ。それにあなた、紅魔館で働かないかと聞かれて霊夢に聞いたら断ったらしいわね。霊夢が」
「……まぁ、そうですね」
「おそらくちゃんと話したとしても霊夢は却下したと思うわ。だから強制的に」
「……自分の拒否権というのはないんですかね?」
「結果オーライだから良いんじゃない?」
「……過ぎ去ったことは仕方ないですね」
少し不満がありそうですが、割り切る侠さん。侠さんって結構心が広いですよね……。
すると幽々子様は私達に話しかけてくる。
「まぁ、それはそれで置いとくとして……妖夢と侠は明日買い出しに行って欲しいのよ。侠達が主役の宴会の材料を」
「はぁ……私は構わないのですが……侠さんはまだ怪我を──」
私が言いかけたところで侠さんが話に入り込んできます。
「……実はと言うと、もう治りかけているんだ。一応念のため今日は大事に取ったけど。多分明日にはほぼ全快しているんじゃないかな?」
「…………えっ? そうなのですか?」
「だから大丈夫だよ。傷のことを心配しなくても。まさかほぼ二日で治るだなんて思ってもいなかったけど……」
侠さんは作務衣から左肩を露出し、包帯を取ってみると……薄い切り傷が残っているだけでした。
「……切り傷ってこんなに早く治るものでしたっけ?」
「永遠亭の薬がよかったんじゃないかな?」
「……例えそうだとしても、早く完治しそうでよかったです……」
私は少し目頭に温かいものを感じながら安堵しました。侠さんの傷が早く治りそうで良かったです……!
「(……甘いわね)」
「(……えぇ、甘いわね)」
「(……妖夢があんな表情をしているのは初めて見たな……)」
「(……?)」
『春ですよー』
「……紫さん? 今どこからか春でもないのに『春ですよー』と聞こえたんですが……?」
「気のせいよ、侠」
…………何故でしょうか? 橙ちゃん以外の幽々子様達からの視線が生温かく感じるのは? そして私にも侠さんと同じような声が聞こえたような……?
腑に落ちなさそうな侠さんでしたが話を戻し、幽々子様に改めて返事をする。
「まぁ、多分明日には傷が完治するんで自分も魂魄に同行します」
「じゃあお願いねぇ〜」
……侠さんと人里、ですか……何故か嬉しいです。
私達はそのまま小宴会を楽しんでいった……。
どこからの巫女から呪詛が聞こえたのは気のせいに違いない。
それと修正にあたり……とある妖精を出すならここと思いました。
ではまた。