この章は基本的にアリス視点になります。
では本編どうぞ。
一話 『隠れている素顔』
静雅との待ち合わせの日。私は少し悩みながら待ち合わせ場まで歩いていた。
……絶対テンションが高いわよね、あいつ。デートと言ってはしゃいでいたようだけど。その色々な対応に私はしないといけないわけで。出来れば普段からテンションが低い方が良いんだけど……。
待ち合わせの龍神の像の近くに来たけど……いつもより人が集まっているような? 女の人のグループが何かを見ている。
『ねぇねぇ! あの人に話しかけてみようよ!』
『え〜? ちょっと今の状態じゃ話しづらい〜。起きていれば話しかけるんだけど〜』
『人里にいないタイプの人で見ない服よね。しかも着こなし方が他の人とは違くて何か良い〜!』
何を見ているのかしら? 私はちょうどそのグループで見えないけれど……主に女の人が歩く際にある方角を見たり、男女の組み合わせで女の人がそっちのけで見て男の人は妬ましい目でその方角を見たり。その方角に向かって男の人が舌打ちしたり。
……何を見たら男女でこういう違いがあるわけ?
私は歩いて移動し、その正体を見てみると──
「Zzz……」
……龍神の像の近くのベンチで静雅が寝て待っていた。服装は紅魔館で見たような執事服ではなく、何か……タイプが違う。着こなし方は執事服と同じなのだけど、袖まくりをしてズボンのポケットに手を入れている。黒い上着のボタンは全開で、襟元は黒い上着の襟元の上に白いワイシャツが重なって、胸元が少し露出しているところに黒いTシャツの生地が少し見えている。そして、人形のように整えられた……綺麗な顔。普段の静雅を見てたせいか……余り顔を意識していなかったけど……結構格好いい──いや待って。静かにしているとこんな印象が違うの!? 詐欺に近いわ!?
そして……こんな静雅に注目している中起こしに行けというの!? これ起こしに行く私も注目されるから相当な勇気が必要なんだけど!?
当人の静雅は……周りの騒がしさに気がついたのか、目を覚ました。辺りを見渡し、私に焦点を合わせる……え? 同時に私に周りから視線が集まった?
……やばい。これで静雅の気分が紅魔館のようだったら──
静雅は周りの視線を気にしないで私の元へ来て、話しかけた。
「…………待たせたな、アリス。寝て待っててすまない」
──最初に会ったような、落ち着いた感じで話しかけてきた。
私はそれを予想していなかったせいか、言葉に詰まりながら話す。
「え、えぇ。逆に私が待たせたみたいで悪いわ。先に待っていてくれたのに」
「女性より先に待つのが紳士ってものさ。ちゃんとアリスは時間通りに来てくれたわけだ。アリスは悪くない」
「……そう言ってもらえると助かるわ」
普段の静雅とは違い、落ち着いた男子。普段からこうだと良いんだけど……。
周りの人達は私達を見てか色々なことを言っている。『何だ彼女待ってたのかー残念』や『いいなー』、『彼女持ちのイケメンなんて死ねば良いんだ!』とか『妬ましい……パルパルパルパル』など聞こえてくる……前半の勘違いはともかく、後半の男達……地底妖怪の橋姫みたくなるわよ?
そんな周りに構わず、静雅は私の手を取り歩き出しながら話す。
「さ、行こう」
「え、ちょ、ちょっとっ!?」
人だかりが集まっている龍神の像から離れる私達。そして大通りに着いた静雅は手を離し、歩きながら話しかけてくる。
「……アリス、悪かったな。オレの容姿は一般的に見れば浮いているとは思うんだが……如何せん、それはどうにもならなくてな」
「……さらっと自分の容姿を自慢してない?」
「これでも外界ではオレの容姿は認められているんだぞ? それでちやほやされたり、妬まれたりもしたな」
「? どうなったらそう認められるのよ?」
「きっかけはスカウトだったな? 侠と一緒に都会へ遊びに行ってた時だ。侠がトイレに行った時に事務所にスカウトされた」
「……良く分からないけど……?」
「要約すると『お前の容姿で事務所の懐を潤してくれ』。まぁ、その結果世間に受けたからな。金を稼ぐ代わりにその代償として知名度が日本中広がったが」
……さらっと凄いことを言っているような気がするんだけど……?
「え……それって外界では有名人って事?」
「そーだぞー? 見る目がない一般人からするとオレは高嶺の花だからなー。オレと歩ける人はそれで自慢が出来る。もし外界でアリスとこんな風にするなら文にスキャンダルとしてトクダネものだ。だから誇っても良いぞ?」
「……悪いけど、幻想郷だとあなたの知名度は微妙よ? 普段の烏天狗の新聞は信憑性に欠けるし。【幻想日食異変】だっけ? むしろ解決した侠の方が有名よ?」
「あらら。現状況のオレはそんな知名度はないか」
まいったまいったと言いながら頭をかきながら困ったようにする静雅。
……その有名人が神隠しに遭っていることがトクダネじゃないの?
「まぁ、知名度なんて関係ないと思うわよ? 特にあなたはあの異変以来、野望があるわけじゃないんでしょう? 大体は能力で不満はないみたいだし」
「野望、ねぇ……別にオレは良いだけどよ、願いはあるつもりだ」
「……願い?」
どこか寂しそうしながら、空を見上げて言う。
「──侠が受け入れてもらえる、理解してくれるようなやつの出現。オレはただそれを願っている」
「……侠の事?」
「そうだ。侠はちょっと訳ありでな。一部を除いて他人に依存しないんだ。その一部というのが侠を受け入れてくれた家族とオレぐらい。何時までもオレは侠の傍にいれないからな。もう少しあいつは他人を信頼することをしてほしいって思ってんだよ」
「う〜ん……つまりあれ? 友人を作れってこと? だったら問題ないんじゃない? 何だかんだ侠は友好的に私達に接しているわよ?」
なんだかんだ侠は話しかけるとちゃんと答えてくれているし、性格上も問題ない。少なくとも私達に侠は嫌悪感などを抱いていないはず。それなりにはコミュニケーションも取れていたことだし。
しかし、侠の親友である静雅は軽く横に首を振った。
「……それは違うな。特異な外来人である侠にお前さん達はその事に興味を持って友好的に接しているだけだ……(それじゃダメなんだ)」
「え……? 今、何て──」
「さて、この話題は終わりにして本格的にデート開始だ!」
急にテンションが高くなり、紅魔館にいたようになる静雅。
でも──ほんの一瞬、静雅の顔が悲しそうな顔になったのを見逃さなかった。普段はふざけているのが多い静雅。そんな彼が真面目そうな雰囲気を醸しだし、悲しみが含まれていた声で『それじゃダメ』と。彼は侠にどんなことを望んでいるのか。詳しい理由がありそうだったけどそれ以上尋ねられなかった。そもそも私は侠とそんなに親しいわけではない。個人的に『良い人』と思っただけ。
何となくだけど……今のままでは聞いてはいけないと感じた。
でも……これ以上話を続けても侠の事は何も変わらない。静雅も何も答えないで話題を変えてくるかもしれない。
「はぁ……とりあえずデートじゃないってば……」
「男女で買い物に出かける……これは立派なデートだと思わないかね?」
「思わないわね。私達はそんな関係じゃないじゃない」
「おう、ツンデレ。いつデレ期になるんだ?」
「あのね……」
とりあえず今は静雅のどうでも良いことにツッコミを入れながらお店まで歩いて行った……。
裏主人公の願い。その事が叶えられるのは何時なのか。
ではまた。