幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 本格的にお邪魔します。
 アリス視点。
 では本編どうぞ。


三話 『アリス宅にて』

 足りないと思っていた黒の糸を購入し、その後に来たのは私の家。材料は多分大丈夫だし、問題は──

 

『……中々一人暮らしには広くないか? アリスの家?』

 

 静雅だ。多分今は落ち着いている方だが、まだ暴走する可能性もある。

 

 ……気にしてもしょうがないわね。

 

 私は家の鍵を開け家に入ると、留守番をしてくれた人形が出てくる。

 

「シャンハーイ!」

 

「ただいま、上海」

 

『ホーラーイ!』

 

 上海人形が一番早く来て、その次に半自立の人形──蓬莱人形も出迎えてくれた。

 

「蓬莱もただいま。特に変わりはなかった?」

 

「シャンハーイ!」

 

「ホーラーイ!」

 

「そう。ありがとう」

 

 二人ともうなずき、特に異常がないことを伝える。

 

 その光景を静雅は見てか、こう言う。

 

「……二体とも浮いているし、何か喋ってんなぁ……」

 

 ある意味感心したような風に言う。外界では私のような人形はないらしい。

 

 静雅を見た上海は気まずそうに顔をそらした。服のほつれを直してくれたのは良いのだけど、その際スカートの中を見られたことをまだ気にしているみたい。その上海の様子を見てか静雅は悲しそうな声で言う。

 

「……すっかり上海にオレは嫌われているみたいだ」

 

「人形でもスカートの中を見られたら恥ずかしいわよ。今後はなるべく見ないようにしなさい」

 

「男のロマンがそこにもあるんだけどなぁ……」

 

「そんなロマンは捨てなさい」

 

 変態のような発言はしているけど……まぁ、冗談の類でしょ。もしそうなら家に入れないし。

 

 静雅を案内させテーブルと椅子のある部屋に着き、椅子に座るように促す。上海は紅茶を用意し、蓬莱は予備の裁縫セットを机の上に出してくれた。

 

「ん。ありがとう」

 

「……これってもう一種のメイドじゃないか? 小さな人形なのにここまで働いてくれるとは」

 

「まぁ、それなりに家事も出来るからね。この子達は」

 

「……ちなみに気になっていたんだが、働いている赤い人形は何だ?」

 

「蓬莱人形。上海と同じで半自立型よ」

 

 私はタンスの中から人形に使う布と綿、糸を取り出しテーブルの上に置く。それを見てか静雅は疑問を含めた声で話しかけてくる。

 

「何だ? 早速作るのか?」

 

「えぇ。そのつもりだけど……ダメだった?」

 

「いんや。いいぞ。そういや作る人形の種類に指定はあるのか?」

 

「う〜ん……まぁ、別に何でも良いわ。あなたの好きな風に作って」

 

「了解した」

 

 できれば人型が良いんだけどね……。

 

 静雅はテーブルの上にある裁縫セットのチャコペンを取り出し、深緑の布を選びサラサラと印、線を書いていく。そして印を付け終わったと思ったら裁ち切りばさみを片手に、迷いなく切っていく。

 

 ……動きに無駄がない!? それよりも進行スピードも私と違って早い! 今はまた同じ色の布を手に、また同じ風にやっている。左右対称となる部分をやっているのでしょうけど……。

 

「やっぱり……慣れてるの?」

 

「まぁ慣れているな。サプライズで侠の義妹に作ったこともあったし。あとはテレビ──外界の仕事の企画でこういうこともしたり。まぁ、現時点では侠よりうまい物が作れるぞ」

 

 話しながらも手は休めない。今度は小さいパーツの型を取っている。

 

「侠もこういうことは得意なの?」

 

「まぁ……現時点では得意と言うよりは苦手じゃない。侠は最低限の技術しか身につけなかったな。ボタンの止め方とかごく一般的な縫い方とか。侠は裁縫に興味は持ってないからな。よく服の破れとかオレに頼んできたし。現時点では裁縫に興味がないんだろ」

 

「? 興味がない……あったら静雅よりうまくなるって事?」

 

「そうなんだよ。あいつが興味を持ったことはとことんまで追求するからな。しかも覚えるスピードが半端じゃない。他人がやれることは自分も出来ると思っているからかもしんない。侠の特技というか……真似る相手より発展させて技術を得るんだ。『この縫い方よりこの縫い方の方が効果的だろう』的に。外界で運動能力を高めることを学ぶ機会があるんだが……ある一つの技術が自分にしか出来ないぐらいで自慢する愚か者がいてな。侠もそいつがうるさかったんだろう。そいつが何回もその技術を自慢するように見せつけたが、その技術を侠が発展させてその技術を披露したんだ。そうしたらなんの、人柄の所為かそいつに集まっていた輩が侠に奪われてな。あの間抜けで悔しそうな顔を見たらオレは大爆笑しそうになったわ!」

 

 笑いながらも手は休めない静雅。

 

 ……他人の技術を発展させる技術ねぇ。偶然かも知れないけど……侠の本当の能力じゃないかと思っている【他人の能力を使う程度の能力】に似ている気がする……。でも、気のせいかしら?

 

 私も静雅の人形の作り方を見ながら、メモを取っていった……。

 

 

 

 

 

 少年制作中……

 

 

 

 

 

「──こんなものか?」

 

「…………」

 

 静雅は数時間という速さで人形を作った。時刻はもう夕刻を過ぎる頃。

 

 ……えぇ。確かに私が学ぶべき縫い方もあった。人形の大きさは上海人形より少し大きいぐらい。でも──

 

「…………その人形は一体何をモデルにしたの?」

 

「え? ゴ○ラ」

 

「ゴ……ゴジ○?」

 

 そう……静雅の作った人形は見たことのない怪物の人形だった。全体的に深緑の体。尻尾は太くトゲもついているように見える。手足には爪も表現されており、二本足と補助で尻尾で立っている人形。

 

 何て言うのかしら……トカゲが進化したような妖怪?

 

 私が疑問そうにしていると静雅は説明する。

 

「オレが小さい頃に流行った映画──まぁ劇の類の怪獣でな? そん時はこの○ジラが好きだったんだ。それで作ったみた」

 

「へ、へぇー……。外界ではこんな妖怪みたいなのがいるのね」

 

「実寸大だと五十メートルほどらしいが」

 

「でかすぎよその妖怪っ!? よく外界崩壊しなかったわね!?」

 

「アリス、この怪獣はフィクションだから実在していない。あくまで想像上の生物だからな?」

 

 静雅に念押しをされた。外界の人はこんな怪獣を作って何をしたいわけ?

 

 その人形を手に持った静雅は私の作った人形の列に置いた。

 

「よしゴ○ラ。ここで仲良く暮らせよ?」

 

「その人形を置かないでよ……並んでいるとかなりシュールなんだけど?」

 

 私の作った人型の人形に妖怪の人形が並んでいると違和感を感じる。

 

「人形劇かなんかで悪役の人形として使ったらどうだ? 怪獣に攫われた姫様を救う勇者の話とかで」

 

「悪役前提じゃない……」

 

「悪役じゃないやつだったらこれと戦ったことのある蛾の人形でも作ろうか?」

 

「お願い止めて。気持ち悪い」

 

 そんな蛾の人形なんて見たくないわ……。

 

 静雅は人形を棚に置いたままで(後でどこかに閉まっておこう)、椅子に座りまた布を持ち始めた……え? また作るの? そう疑問に思い彼に問いかけた。

 

「……まだ作るの? もう時間も遅いけど」

 

「せっかくだからちゃんとした人形でも作ろうと思ってな。ふざけるのはとりあえず止めようと思う」

 

 

 

 ──なら始めからちゃんと作れ──

 

 

 

 そう言いたい気持ちを抑えて我慢する。

 

 静雅は真面目な顔で裁縫道具を手に取り私に話しかけてくる。

 

「一応これから真面目に人形を作るつもりだから……大事な用があるときはいいが、極力話しかけないように頼む。さっきの人形は簡単だったから話ながら出来たが、今作ろうとしているやつは時間が掛かるんでな。集中するから」

 

「え、ちょ──」

 

 私が声をかけたときは──顔つきや目つきが変わった。少し笑いながらさっきまでは人形制作をしていたが凜々しい顔つきになり、鋭い目つきになる。

 

 そこからの手作業はさっきの制作よりも早くなる。チャコペンで線を引いて印を付けて、裁ちばさみで正確に切っていく。しばらく基本的にはその作業の繰り返しだ。

 

 ……しばらく私は見惚れてたんだと思う。だるそうな静雅ではなく、無駄にテンションが高い静雅でもない。真面目で、かっこいい。今まで男の子で一番そう感じた。

 

 ──って何静雅のことを凝視しているのよっ!? こっちに見向きもしないからってそんなに見るものじゃないわよ私っ!?

 

 ……というより、これから私はどうしようかしら? 時刻は夕刻を過ぎて暗くなってきているし……食事でも作った方が良いのかしら? 魔法使いの私には食事や睡眠は必要はないけど、基本的には人と同じ生活を送るようにしている。おそらく静雅は食事は必要だろうし。

 

 ……正直このまま作る過程を見ておきたいのもは事実だけど。

 

 一先ず私はその場を離れ、食事を作ることにした……。

 

 

 




 この章は全体的に話数は少なめ。次で裏の話は終わり、その次にフラグ回投稿予定です。

 ではまた。
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