守護者のあとに (Fate×ネギま)   作:yamabiko

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どうしてこうなった・・・。よくある台詞ですが確実に今の私の心境ですね。
もう少しさらっと行くはずだったのに・・・!

複数人の戦闘や会話ってすごく大変なんだね、と実感いたしました。

分かり易く、かつテンポよくを目指して頑張りたいです。


第2話

 赤く焼けた荒野。 

 鉄錆交じりの風。

 墓標のように突き立つのは無数の剣。

 空は見通せず、錆付いた歯車がただ空転するのみ。

 

 それが、正義の味方という理想に向かいただ走り続け、その理想に押し潰された男の世界だった。

 

 

 突如として出現した異様な世界に「紅き翼」のメンバーは驚きを隠せなかった。

「なんだぁこの場所は?!」

「・・・別の場に転送された?いえ、我々が動いたという感じはしませんでした。ならばこの世界はいったい・・・」

「周りの世界が変容しておるようじゃ。しかしなんとも殺伐とした風景じゃの」

 驚きの声を上げるラカンをよそに、アルビレオが推測をもらし、ゼクトが考察していく。

「当たりよ。これは世界を術者の心象風景で塗り替える《固有結界》。ここはアイツの世界なのよ」

 いち早くタカミチの背から降り、ナギを回収したリンが答えを明かす。

 そうしている間にも荒野に突き刺さっていた剣は宙に浮かび上がり、剣先をこちらに定めている。その数は先ほど払ってきた剣軍の倍以上。360度囲まれている。

「みんな、こちらへ固まって!出力全開で障壁を張って!アレを防ぎきるわよ」

 リンの言葉に力を使い果たしたナギ以外の「紅き翼」のメンバーが各々障壁を張り、七重の魔法障壁の結界が組みあがる。

 

 そしてこの世界の主―――赤い外套の男が手を振り下ろすと同時に、殲滅の剣の軍団が振りそそいだ。

 魔法障壁が一枚、二枚と突き崩されていく中、リンは反撃に向け指示を出していく。

「イリヤは回復魔術で少しでもみんな回復させて。ここでは私はもう宝石剣での魔力の供給はできないから、イリヤの魔力だけでお願い」

 そう、ここでは平行世界への穴を開けることはできない―――世界に穴を開けるということは、世界の構造を把握して開いた穴から破綻しないように、慎重に切れ目を入れることである。《固有結界》で塗り替えられてしまった世界の構造を把握している暇など無い。リンは先ほどまで引き込んでいた魔力のみで決着させなければならないのだ。

「それから刀使いの貴方―――」

「青山詠春だ」

 障壁に力を注ぎながらも律儀に答える詠春。

「そう。青山詠春、貴方にはこの障壁が破られた瞬間に、アイツに切りかかってもらいたいの。一対一なら貴方の得意分野でしょう。彼までの道の障害は私が吹き飛ばすわ」

 すでに攻撃魔術の用意に入りながらリンは告げる。

「買いかぶりすぎです。私よりもナギやラカン殿のほうが強い」

 そんな詠春の謙遜にラカンが嫌そうに訂正を入れる。

「ナギの野郎はさっきの一撃でくたばってるし、俺やそのほかのやつはここまで来るのに結構消耗してる。イリヤ嬢ちゃんを抱えてたお前が一番余力が残ってるってこった」

「・・・分かりました。任されてみましょう」

 納得し、障壁が壊された後すぐに瞬動で斬りかかれるように準備する詠春に、リンは言う。

「それと、アイツは接近戦では短剣の二刀流を使うわ。理詰めの剣筋で防御が固い。自分から隙を作ってカウンターを仕掛けてくることがあるから要注意よ」

 そのアドバイスに詠春は目を剥く。

「随分と彼に詳しいのですね。あなた方と彼の関係が気になってきましたよ」

「今は話すときでないわ。彼を止めた後にでも話してあげるわよ!」

 5枚目の障壁が破られる。あとわずかで「紅き翼」の魔法障壁は消滅する。

「サクラ、イリヤ。貴方たちの役割は分かっているわよね」

「詠春さんのサポートと、隙を見ての先輩への影による拘束ですね」

 結界内で息を整えていたサクラは当然のこととばかりにうなずく。しかしその発言に詠春が待ったをかける。

「サクラさんでしたか、我々の戦闘はおそらく高次元の戦いとなるでしょう。その間に貴方が割り込めるかどうかは分かりませんよ」

「馬鹿にしないで下さい。私だってそれなりに鍛えているんです。集中力と目のよさは姉さんだってイリヤさんにだって負けませんよ」

 そう、サクラにだって譲れない物がある。聖杯戦争ではアンリ・マユと契約中だったとはいえサーヴァントを手玉に取り、その後も修行で自分を高めてきた。弓道で鍛えた集中力にだって自信がある。それに、守護者となった彼に相対するのは、今回が初めてではない。

「サクラはうまくやるわ。信用してくれていいわよ」

 イリヤもサクラの実力は熟知している。特別剣術や体術を収めているわけではないサクラの身こなしから判断した「紅き翼」の懸念はもっともだが、サクラの武器は武術ではなく魔術。しかも愛しい先輩を救うためと、意気込みは半端ではない。

「私は新たな結界を張るわ。彼が詠春を相手している間にこちらに攻撃してこないとも限らないし。詠春は流れ弾の心配を気にせず全開で戦って」

 イリヤの後押しに、詠春は後顧の憂いを無くし、ただこの剣の爆炎の向こうにたたずむ敵を制することだけに意識を集中させる。

 

 6枚目の障壁が消失し、あと一枚となる。最後の障壁を支えるのはアルビレオ・イマ。詠春やリン、サクラやイリヤの負担をわずかでも減らすために、ぎりぎりまで障壁に魔力を注ぎ込む。

 だがそれも限界はやってくる。

 7枚目の障壁に罅が入る。

 そして障壁が砕ける直前。

「―――いくわ」

 リンの渾身の魔術が完成する。

 次の瞬間、緻密な術式で組み上げられた魔術が十分な魔力でもって、砕けた障壁と共に殺到していた剣の軍をなぎ払う。

 同時に詠春が赤い外套の男へと瞬動で迫る。

  剣を射出しようとしても詠春が到達するほうが早い。

 愛刀の「夕凪」で斬りかかる詠春に対して、男は無手のまま。

(―――本当に剣士なのか?)

という疑問が掠めるが、

 ガキンッ

 男の手にいつの間にか現れた白と黒の短剣で、己の一撃が防がれたことで払拭される。

 すぐに刃を返して二撃、三撃と攻撃を重ねる。距離を取らせてはいけない。そうなれば剣の射出と爆発という手段で攻撃を許すことになる。近接戦闘で反撃のチャンスを与えないほどの猛攻が、あの莫大な火力を擁する剣の砲弾を封じる鍵なのだ。

 

 詠春は刀を振るいながらも男を観察する。

 身から発する、高密度の魔力をカタチにしたような圧迫感は変わらないが、先ほどまでの異常な剣の攻撃からは拍子抜けするほど人に準じたものだった。その身体能力は人外だが何とか《気》で強化した詠春が反応できる範囲。それが分かっていたからこそ、リンは詠春を行かせたのだろう。

 男の振るう双剣は無骨にして洗練されておらず、ただ実戦で鍛えられたと分かる剣だった。太刀筋に才の煌きは見えず、経験則で築き上げてきた努力の果ての術なのだろう。

 若くして神鳴流を修めた詠春と互角に剣を交えるだけに至った剣技には敬意を称したいが―――

(まったく、機械を相手にしているようだよ)

 なぜか中身の無い機械を相手にしているという空虚感を覚えていた。

 男は確かに、こちらの猛攻を左右に持った白と黒の剣で弾き、あるいは受け流し、冷静に対処しこちらを倒そうとする意志は見える。だがそこに熱は無く、人間味のある感情が見えてこない。人の形をしていようと、彼はまさしく世界の装置だった。

「こんなのが彼女たちが助けたいと思っている者なのか!」

 

 

 

「すごいよクルト!詠春さんがあの男と対等に渡り合ってる!」

少し離れた場所でイリヤの結界の中からその戦いを観戦していたタカミチが興奮して声を上げる。

 タカミチにとってあの赤い外套の男は悪夢のような存在だった。次々に膨大な魔力を秘めた剣を召喚し、こちらに射出しそして爆発させてくる。一発二発ならタカミチでも対処できる。恐ろしいのはその数、物量なのだ。

 その男が一転、詠春一人に押さえ込まれ、防一線となっている。タカミチにとって詠春は悪を倒すヒーローに見えた。

 そんなタカミチにイリヤは複雑な目を向けた。

「私はかわいい弟があそこまで戦えるようになったことを素直に喜びたいのだけどね」

「それはどういう意味ですか」

 クルトが探るように問いかける。あの男と敵対している今、男に関する発言は聞き逃せない。命を助けてもらったが、彼女たちの正体は依然として不明。男にしてもアルビレオからの「守護者」という情報、そして彼女たちの「アイツ」「先輩」「かわいい弟」という発言、そして「固有結界」というこの異常な世界の名称、男の剣術に関しての情報以外は無い。

 「守護者の契約からの解放」というのが目的だと言ったが、解放後、どうするつもりなのか。彼女たちと男の能力では消耗した「紅き翼」を一網打尽にすることも容易だろう。

 ノー天気なナギやラカン、タカミチはべつにしても、多少は不審を覚えるものだ。

 自分がしっかりしなくては、とクルトは気を引き締める。まぁ同じ結界内にはアルビレマもゼストも、ガトウ、ラカンもいて一様に聞き耳を立てていたのだが。見た目が同じ年頃ということでクルトに質問役を任せたようだ。

 ちなみにナギはまだ回復中であり、リンはどこかに姿を消したまま帰ってこない。しかしこの異常な世界に居ることは間違いない。切り札は彼女が持っているのだから、隙をうかがっているのだろう。

 サクラは結界の外で、詠春に弾き飛ばされた男の短剣を何かを警戒するように足元から伸びた影で片っ端から飲み込んでいた。もっとも男の手には同じ剣がいつの間にか現れ、攻撃をいなし続けているが、ここは剣の世界。いくら剣が出てきてもおかしくはない。

 

「すべて詳しく説明すると、すごく長くなっちゃうんだけど」

イリヤは白い小さな指を唇に当てて考え込む。

「・・・たぶん後の時間もないだろうし、最低限のことはここで伝えてしまうべきかしら?ねえ、リン、サクラ?」

ラインを通じてリンとサクラに確認を取る。しかし、

(悪いけど、そんな悠長なことやっている暇は無いわ)

(詠春さんの体力が削られています。このままでは距離を離されて剣の砲撃が再開されちゃいます)

 見れば、まったく様子の変わらない男に対し、詠春は息を乱し始めていた。

 そう、いくら攻勢に出ていようとも、世界からの無限のバックアップを受けている守護者を制すことができなければ、いずれは体力が尽きて倒されてしまうのである。

(こうなったら奇襲のチャンスを捨ててでも無理にリズムを崩すしか・・・)

 リンの呟きが漏れたちょうどそのとき、詠春はわずかな防御のほころびを見出し、男の双剣の一方を弾き飛ばした。

 白の短剣はちょうどサクラの居る側とは反対側―――イリヤたちの結界のすぐ近くに突き刺さる。

(やられた――この男は全て計算に入れて短剣を手放していたのか!)

 詠春は男の手の上で踊らされていたことに臍を噛んだ。

 短剣を弾き飛ばされるごとに少しずつサクラをイリヤたちから遠ざけ、そして十分引き離したところでイリヤたちを攻撃する。

 白い短剣は一本にもかかわらず先ほどの剣の軍を上回る――――大爆発を引き起こした。

 

 

イリヤの言葉を信じ、背後で鳴る爆音に意識を乱されそうになるのを、必死で押さえつけ、詠春は上段からの一撃を繰り出す。男の手にはもう何本目かも分からない、弾き飛ばしたはずの白の短剣があったが気にしない。力ずくで跳ね除け、空いた脇に必殺の一撃を入れようとする。これで決着―――と思ったその時、リンの言葉が脳裏に閃く。

 

―――自分から隙を作ってカウンターを仕掛けてくる

 

(しまった――勝負を焦ったか)

詠春が男の狙いを悟ったが時はすでに遅し。

男は赤い外套を翻し上へわずかに跳躍して胴を薙ぐ一閃から逃れると、体勢を崩した詠春へ黒の短剣を繰り出した。

 

 

 




次でけりをつけたいですが・・・予定は未定です。

※2013.9.2 指摘を受けて「近衛詠春」を「青山詠春」に変更しました。
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