だが、彼は知っている。
諭されて。
殺されて。
殺されて殺されて。
殺されて殺されて殺された。
どんな存在よりも長い時間を共に過ごした最弱を。
そして、それを乗り超えてしまった先にあるものを。
彼は知ってしまった。
「…なんで」
「ん~?」
「どうしてこんなことを…」
何故、こんなことに…
「なんでだと思う~?」
「…どうしてそんなに楽しそうなの?」
「だって、リツカがそんな表情を見せてくれるから」
歪な笑顔だ。
「…久しぶりに笑ったね」
「え~?いつもボクは笑顔でしょ?」
「感情の籠った笑顔は久しぶり、かな」
「ふ~ん」
興味無さげに、いつもの笑顔に戻る。
「…今までのは嘘だったの?」
「何が?」
「一緒に笑いあったのも、一緒に戦ったのも、全部演戯だったの?」
「そうだね」
「…アヴェンジャー、意外と嘘が下手だね」
一瞬、本当に一瞬だけ、いつもの笑顔が苦しそうに見えた。
「そうかな」
「そうだよ」
まだ、希望はあるのかもしれない。
「なんで、みんなを殺したの?」
「殺せるから、かな」
出来るから、やる。
とても単純だ、子供が蟻を潰すのと変わらない理由。
「それだけ?」
「たぶん、そうじゃないかな」
「たぶんってことは、まだあるね」
「…そうかなぁ」
「話してよ、きっと違うって思ってても話して」
「…」
「…」
ほら、君はこんなにも泣いてしまいそうな顔をしてる。
「きっと、飽きたんだよ」
「何に?」
「みんなの反応に」
「プレゼントをあげた時の嬉しそうな表情」
「一緒に遊んでいる時の楽しそうな表情」
「喜ばせて、楽しませて、ボクも嬉しくて、楽しくて」
「でも長続きしなくて、飽きちゃったんだ、退屈になったんだ」
「それで、みんなを殺したらどんな反応するかなって思って」
「殺した」
嘘はついている、と思う。
でも、悲しいけれど、本当のことも言っている。
彼が異常者であることの証明。
「最低だよね」
「どうかな」
正常と異常が混在している。
「リツカが最後なんだ」
「そう、なんだ」
もうみんないないらしい。
「…殺した後はどうするつもりなの?」
「世界を壊すよ」
「どうして?」
「もう決められたこと、だから」
まるで、アヴェンジャーが決めたことではないみたいな言い草だ。
「じゃあね、リツカ」
「ねぇアヴェンジャー、本当にそれでいいの?」
「もう、"決意"したから」
そう言って、彼はナイフを振り上げた。
「そっか」
目を閉じた。
何も起こらない。
いや、予想していたものと違っただけで実際には起こった。
聞き慣れた音が聞こえた。
肉を切る音。
信じられなかった。
信じたくなかった。
「…アヴェンジャー、どうして」
「言ったじゃないか、"決意"したって」
彼は自身の胸にナイフを突き立てた。
「ねぇ、リツカ」
「アヴェンジャー、話しちゃ駄目だよ、今手当てを!」
「リツカ、聞いて、約束して欲しい」
「…何?」
「次は、
「次って、次なんて無いよ、一人にしないで…」
「おねがい、だから」
「分かった、約束するから、だから…!」
「ありがとう、リツカ、ボクのめをさましてくれて」
「また、おなじことをくりかえすところだった」
「ほんとう、にありが、とう」
「みん、なが、そろった、ら、おちゃ、でも、しよう、ね」
「ま、たね、リツ、カ」
「アヴェンジャー?…アヴェンジャー!」
彼は息絶えた。
人理は修復されたけれど、自分は独りぼっちになってしまった。
嫌な夢を見た。
世界が救われる、けれど自分が独りぼっちになる夢。
まるで体験したかのような夢。
でも、一つ現実と違うことがある。
アヴェンジャーがいない。
代わりにセイヴァーがいる。
…。
約束。
ただの夢だって笑われるかもしれないけど。
約束、したから。
お茶会の招待状、作ろうと思うんだ。
来てくれるよね、アヴェンジャー。
藤丸立香がアヴェンジャーを召喚してしまった