王国が反転した。さぁ、控えろ人類(仮)   作:銀髪!銀髪!

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アイザックプロローグ

「ここは星がよく見えるね」

 

グラスの中に入れたワインを揺らしながら、ガラス張りの壁から空を見上げる。季節が冬のためか、肌寒さを感じるも、室内に設置されたエアコンがちょうど良く室温を保っていてくれる。

空から目を下げ、下を見る。人口の光が無数に散らばり、移動し、そして消えていく。人の営みが始まり終わる。それを見るのは気分が高揚する。

 

一口、グラスを煽る。赤黒い液体が喉に染みとおる。温まっている体を内側から冷ましていくも、その感覚はすぐに消えてしまう。

 

「もう、30年か・・・」

 

私が誕生してから、早いような、遅いような。一瞬のように感じたか、永遠のように感じたか。分からない、答えが見当たらない。でも生きているという実感はあった。

 

「反転させるべき〈王国〉も存在しない。人類は衰退の道を辿り続ける。知能を成長したように見せかけた猿たちが無駄に生き、死んでいくだけだ」

 

また一口。同じ味が口全体に広がる。既に残りが少なくなっていたワインはこれで打ち止めだ。グラス内にあるものは、だが。

 

「こう感じてしまうのは俯瞰・・・しているからだろうね。十年前の『白騎士事件』で、人類は進化を止めてしまった。いや、それどころか退化さえしてしまっている。もうどうしようもないほどに」

 

嘆かわしいことだ。上へ上へと登ろうとする向上心は消えてしまった。あるのは心の隅で怯えながら、無為に時を過ごそうとする矮小さのみ。変化を望まず、停滞を望む。それもまた人の形としてはありだろうが、それを世界自身が望もうとしている。

 

「必要なのは『変化』だ。歯車の壊れた時計を、歯車を交換して動かすのではなく、時計そのものを、もっといえば時計を置く土台から直さなくてはならない」

 

途方もないことはわかっている。例えるならば石油が無くなったから地球を作り直すと言っているようなものなのだ。実質的に不可能、頭が可笑しいと思われるだけである。だがそれが必要なのだ。そうすることを求めているのだ。他ならぬ自分自身が。そうでなければ、それくらいの野望を持たなければ、自分が何なのか、なぜ存在しているのかが分からなくなってしまうから。

 

「君は私に着いて来てくれるかい?」

 

後ろにいる私の秘書に問う。何も話さず、動かずに私の独白を聞き続けた人に。

 

「勿論です」

 

考える間もなく、帰ってきたのは肯定の返答。それが当然であるかのように発せられたその言葉は、彼女が全てを私に捧げると、私には受け取れた。

 

「それが茨の道・・・神すらも滅ぼしかねないとしてもかい?」

 

「それをアイク(・・・)が望むのなら」

 

「ふふ、ありがとう、エレン(・・・)

 

ああ・・・本当に彼女は私にはもったいないくらい優秀だ。あの時、あの冷たい雪の日に、君を拾って本当に良かったよ。

 

「では行こうか、エレン」

 

「分かりました」

 

さて、この世界で私は、アイザック・レイペラム・ウェストコットの成すべきことを成そうか。

私の持つ、『特別な結晶』を使って。

 

 

 

 

 

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アイザック・レイ・ペラム・ウェストコット。

『デート・ア・ライブ』という小説に登場するキャラクターで、DEMインダストリーの代表取締役。そしてラスボス候補とされている人物である。通称、アイク。

アイクは作中、とある技術を使い自分の肉体を50歳とは思えない若さに保ちながら、主人公達と敵対していた。秘書であるエレンは最強の魔術師(ウィザード)。単騎で精霊さえも討つことが出来るアイザックの持つ最高の戦力。

 

私は30年前のある日、アイザックへ憑依していた。なぜ憑依していたのか分からない。最初は誰に憑依していたのかさえも分からなかった。なぜなら私は文字通り一から人生をやり直していたから。

俗に言う転生、というものなのだろう。神様転生でないのは神様にあっていないからだ。

 

私の両親は私の誕生を大いに喜んだが、元来より体が極端に弱かった母は私を産んでから少し経ってから亡くなった。父は男手一つで私を育ててきた。夜遅くまで働き、それでも私と共にいる時間を作ってくれた。

いい父親だったのだ。だが15歳の頃、父が死んだ日に、私は父についてとあることを知った。

 

父の家はとある巨大な資産家だった。父は本来ならばその家の跡継ぎになるはずだったが、地位を殴り捨て家と縁を切り、母と駆け落ちして私を産んだ。

その家が、父が亡くなり孤独となった私を襲った。血縁者を遊ばせている余裕はない、ということなのだろう。私は顔がよかったから、恐らくは政略結婚にでも使われるのだろう。

まぁ、そんなことにはならなかったが。

 

私は父が死んだ日の夜、両親の墓の前でとある結晶を拾ったのだ。一つではなく、複数の。それが何なのか只人には理解出来なかっただろうが私は違う。アイザックの優秀な頭脳と、私の知識がその結晶を〈霊結晶(セフィラ)〉だと理解したのだ。

これが始まりか、そう思い私は一つだけ黒く染まった霊結晶(セフィラ)を手に取り、自分の胸へと押し付けた。霊結晶(セフィラ)は熱を発し、私の礼服に穴を開け、そのまま私の肌を焼く。不快な感じなど一切ない。それどころか私自身が新生していくような素晴らしい感覚に襲われる。

熱は冷め、霊結晶(セフィラ)が私の中に取り込まれると、私の手元に黒い、黒魔術のような本が現れた。

頭の中に流れ込んでくる膨大な〈天使〉の知識、力の使い方。素晴らしいと思い私は歓喜した。

 

街を歩くといつの間にか黒服の者達に囲まれていた。それが家からの回し者か、と思うとしっくりくるものがあった。私という存在が邪魔になったのだな、そう思い薄い笑を浮かべると、私はほんの少しだけ力を解放し、彼らを壊した。有象無象がどれだけいようが、『魔王』となった私に勝てる者など存在しない。私を倒すのならせめて核兵器は持ってこなければ。まぁいざと言う時には奥の手、という程のものでもないがそれらしいものはある。

 

ドンッ、と尻餅をつく音が聞こえる。見られたか、と思い面倒事が起こる前に処分しようとすると、私は運命と出会った。二人の少女と。ボロ布で体を巻き、美しい顔立ちをした少女達に。

小さい、妹の方は泣きそうな顔になりながら物陰に隠れている。問題は姉の方。そちらは目を輝かせながら私のことを見ている。その目はまるで『神』を見ているかのように。

 

「君、名前は?」

 

「エレン・・・エレン・ミラ・メイザース・・・」

 

エレン。その名前はよく知っている。『デート・ア・ライブ』でDEM社の第二執行部隊長にしてアイザックの秘書。そして最強の魔術師(ウィザード)。その実力は並の精霊ならば無傷で圧倒。反転体が相手でも未だに負けなしの真実最強の位置に立つもの。

 

「私と共に地獄の先まで来ないかね?」

 

手を差し伸べる。地面にへたりこんでいる彼女へ向けて。手を取るか取らないか。取るならば私は運が良かったということ。取らなければ運が悪かったということ。どちらに転んでも構わない。私へのデメリットはないのだから。

ならば、彼女の選択を私自身の分岐点としよう。手を取れば私は『アイザック・レイ・ペラム・ウェストコット』として生きよう。取らないのならば『アイザック』として生きよう。

他人に運命を任せるなど愚かなことだと思うが、こうでもしなければね?退屈なんだよ。鬱憤が溜まっている。少しくらいは派手に賭けてみてもいいじゃないか。

 

「お願い・・・します」

 

ああ・・・やはり予想通り手を取ってくれたか。ふふふ、楽しくなりそうだ。

 

「私はアイザック・レイ・ペラム・ウェストコット。長いならアイクでいい。私の右腕」

 

 

 

 

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エレンを引き取った私は同時に彼女の妹であるカレンを引き取り、エレンと共に私の『霊装』を率いて家を潰し、再建し、掌握した。本当に便利な能力だよ。相手の弱みや歪み、行動までありとあらゆるものを把握できる。

そしそのおかげで、家がとある組織と繋がっていたため、新たなコネクションを繋げることも出来た。

ん?家の者はどうなったかって?

さぁ?今頃精神に異常をきたして暴れているか、死んだようにボーッとしてるんじゃないかな?

 

私は家の資産を増やし、増やした分だけ費やして私の会社であるDEM社(Deus・Ex・Machina・Industry)を創設し、そこで『デート・ア・ライブ』の技術である顕現装置(リアライザ)を開発し、世界各国の重鎮たちに高値で売り、更には世界政府への武器の売買など、世界中の政界を支配できるほどの地位に立つことが出来た。

 

そして十年前のある日、私は薄れかかっていたかつての記憶を呼び起こすことになった。

 

『白騎士事件』

 

突如世界中の軍事基地がハッキングされ、日本に向けて2314発のミサイルが放たれた。だがそんな時に、我社の開発した魔術師(ウィザード)を更にゴツゴツにしたような機械を纏った女性が全てのミサイルを迎撃。

そして後日、その機械を開発したのだ日本の女性科学者である篠ノ之束ということが発表された。

世界はこぞって彼女の開発したIS(インフィニット・ストラトス)のコアを手に入れようとした。千を超えるミサイルを単騎で撃ち落としたのだ。当然の反応と言えよう。

絶対防御システムに武器を粒子化して収納できるという素晴らしいシステムだが、同時に弱点も存在する。

 

『女性にしか操縦できない』

 

この事実が世界を変えた。平等を掲げていた世界は女尊男卑に染まり、通勤電車で無茶苦茶な理由でも痴漢したと女性が言えば有罪は確定。買い物先で見知らぬ女性に「これを買え」と言われて買わなかったら即逮捕されるように腐った世界へと一年以内に変わってしまった。

最近では各国政府の重鎮たちも皆女性へと変わっていってしまった。全く、彼女達は歴史を勉強していないらしい。古来より女性の統治は儚く脆く、すぐに砕け散っているというのに。

 

世界はISへ魅了された。ほとんどの大企業は『IS開発部』を自主的に設立。そうでなくとも所属している国家から「開発しろ」と命令が下される始末。面白いくらい壊れてきている。

 

さて、私はこの世界が『デート・ア・ライブ』ではなく『インフィニット・ストラトス』であることを理解した訳だが、どういう訳か、私は色々とやりすぎてしまったようだ。それについてはまた後日。

 

「白騎士事件」から10年。ここが転機なんだ。私が「魔王」として降臨するために・・・否、『アイザック』として生きるために。

 

だからどうか、折れないでくれよ。壊れないでくれよ。君には期待しているのだから。

 

 

 

 

 

 

 

「世界で唯一ISを動かせる男性操縦者。織斑一夏君」

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