王国が反転した。さぁ、控えろ人類(仮) 作:銀髪!銀髪!
「失礼しました」
黒茶の木製の扉が開かれ、部屋から少しだけやつれたように見える更識楯無が出てくる。退出した楯無は思いっきり伸びをして、少しでも体を楽にしようとする。
「本当に、厄介なことになってきたわね」
つい先程まで、楯無は背後の理事長室にて、ISの学園理事長である、轡木十蔵と会談をしていた。内容は裏の世界情勢と、今年突然動き出したDEMについて。
男でありながら女性の権力の象徴であるIS学園の理事長を務める轡木は、様々な界隈で有名過ぎるほど有名である。世界は彼を邪魔に思うものも、取り入ろうとするものも多い。故に各国各社のパーティーには連日のように呼ばれ続けている。前までは時間的な問題で出席はあまりしていなかったが、最近では業務時間に支障をきたすのではないかと疑われるほど各地を飛び回っている。
ここまで動く理由は一つ、やはりDEMという存在。驚く程にISに対して無関心を貫き通してきたDEMが、織斑一夏という彼らにとってはちっぽけな例外一つで動き出したのだ。
楯無も、そしてアイザックと何度か会ったことがある轡木は突然の行動に疑問を覚えてしまう。それと同時に恐怖さえ感じる。
轡木はアイザックよりも数十歳は年上。得意の言葉による化かし合いを駆使して、今の地位に望まずとも上り詰めた。得意だからこそ、対面した時に理解した。アイザックの言葉はまるで言葉として機能せず、化かそうとしても彼の目は何もかもを見透かしているかのように俯瞰している。まるで嘘に嘘を重ねる子供を見ているような感覚。
言葉と知恵を駆使しても、アイザックが相手では太陽に向かって手を伸ばしているのと同じ、途方なこと。
これを轡木から聞かされた時、戦慄とともに納得してしまった。嗚呼やはりダメだったかと。
まるで心のどこかでアイザックに勝てないことを受け入れている。あの時、初めてアイザックと会った時点で既に楯無は負けていたのだ。
まるで行動の先が読めない。カレン・N・メイザースを送り込んできたきり、DEMは一切の行動が見られない。むしろ、DEM以外が常に動き続けている。
権力があるからこそ、様々な問題が楯無へ送り込まれてくる。例えば各国からの転入願い然り、織斑一夏の引渡し、データ公開然り。
数日前に中国の転入生を認めてから後が絶たない。特に勢いが強いのはヨーロッパだ。ヨーロッパは形骸化してはいるが、EUという枠組みで、外側だけ見れば協力し合っている。
「流石に不気味すぎるわよ・・・」
カレン・N・メイザースには出来る限り監視をつけている。流石にイギリス代表候補生と同室なため、部屋内にカメラは仕掛けられないが、音声だけは拾えるように細工はできた。他にも校内の至る所に仕掛けられている監視カメラは、カレンを執拗に追いかけている。
あとあまり褒められたことではないが、トイレにも一応音声だけは取れるようになっている。
疑いすぎと言われればそうだろうが、カレンはアイザック・ウエストコットが送り込んできた刺客。少なくと轡木と楯無はそう捉えている。少しの油断が命取りになる相手に、過剰という言葉は意味をなさない。
(死の商人・・・アイザック・レイペラム・ウエストコット)
わずか十数年で裏社会にその名を轟かせた凄腕。楯無は何度もアイザックを排除しようと考えた。いや、楯無だけではない。世界各国の要人達も。だがまるで先を読まれたかのように計画案は潰され、秘密裏に送り込んだ工作員は皆等しく音信不通になる。
誰も触れようとしないDEMという暗黙の了解。その頂点に立つ
更識楯無は、世界は魔王を倒す勇者にはなれなかった。もしかすれば楯無の名を襲名した時点で、更識楯無がアイザックに挑む資格は、なくなっていたのかもしれない。
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朝から非常に憂鬱な気分だ。最近何も上手くいってないが、今日は特に酷く感じる。起きてみれば寝違えて首を痛めてしまった。モーニングコーヒーを飲もうとしたらコーヒー豆は切れていた。制服に着替えようとすれば衣服に足が引っかかって転んでしまった。部屋から出て食堂に向かおうとすれば、鍵をかけ忘れた。
それ以外にも沢山ある。塵も積もれば山となる。普通ならどうってことないミスでも、こうまで続くと呪われてるように思えてしまう。
もしかすれば本当に姉さんの病気が移ったのかもしれない。いや、もしかすれば遺伝という可能性も・・・。
そんなことを考えながら食堂で朝食を頼んでいく。私の朝食はルーティーンで、曜日ごとに食べるものを決めている。
が、ここでも問題が起きた。
「ごめんね〜。それ、前の子が取ったので最後なの〜」
なんとも運のない話だ。一人遅れとは。普段はこのようなことがないようにもっと早く来るのだが、朝から問題続きの私がいつも通りの時間に来れるはずもない。
代わりのものを頼み、空いている席に着く。トーストとコンソメスープにサラダ。女性の一般的な朝食であろうものばかりである。織斑君には少なくないかと、前に聞かれたことがあるが朝などこんなもので十分だ。
前までは、研究開発に没頭するあまり、何食も食べないこともあるのだ。今では同僚達の説得でしっかりと取るようになったが、かつてはそれは酷いものだった。
いつもと同じペースで食べることが出来ない。時間が余っていない。詰め込むように口へ入れ、喉を詰まらせないように水を流し込む。腹は満たされたが口の中は混沌だ。
食べ終わってトレイを返して早足で教室へ向かう。
「ギリギリ、セーフです!」
案の定、クラスには全員揃っていたし、カレンが席に座った直後に織斑千冬はやって来た。本当に危なかった。もし遅刻をしてしまえば面倒極まりない罰則が与えられていただろう。
「珍しく遅れそうだったけど、もしかして何かあった?」
HRが終わり、一限の準備に入っていると一夏がカレンに話しかけてきた。一夏だけではなく、これはクラス全員が聞きたいことだろう。普段は真面目の中の真面目で、クラスにも15分前には席にいるという、過度な優等生のカレンが遅刻しそうになるなど、未だ短い付き合いの者達でも何かあったのかの心配してしまう。
だが心配されるということは、それだけ信用して貰っているということ。
「いえ、少しだけ寝過ごしただけですから」
のろいのようなうっかりドジの連続。余り人には言いたくない。人並みの羞恥心を当然のように持ち合わせているカレンは、それしか言うことがない。
(いえ、恐らく私の内心の問題でしょう)
迫る刻限への焦り。カレンの内側で燻り、カレンの失敗を誘発したのは、やはりDEMの事だった。
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放課後。迫るクラス対抗戦に向けてアリーナへ向かうカレン。一夏を初めとしたいつもの3人は既にアリーナで練習していることだろう。本来であれば教える側のカレンだが、生憎と今日は日直があったため、放課後の時間を削っていた。
そして仕事も終わり、練習へ加わろうと備え付けの更衣室でISスーツに着替えていた。
「やはり、このスーツは慣れません」
ISスーツは出しているメーカーごとで様々な違いがあるが、その全ては肌に密着する、まるでタイツのようなものばかりである。しかもその多くは半袖短パンを過度に超え、最早競泳水着程しかない。
見方によっては競泳水着よりも・・・。
「〜〜〜!!」
今思えば私は織斑君の前ですごい格好をしていた。篠ノ之さんやオルコットさんもだ。彼女達はほとんど気にした様子はない。いや、幼い頃からそういう物だと受け入れてたからだろう。だが私は元々はIS乗りではなく研究者。乗るとしてもISではなくCRユニット。ISと違って男女の区別もないからスーツもISスーツよりだいぶ大人しめなもの。
隠すどころかボディラインを強調するような格好。自覚すればするほど羞恥に心が染っていく。頬の温度が大幅に上昇している。頬に触れたら火傷してしまいそうだ。
「悶絶しているところ悪いのだけれど、少し時間を貰えないかしら?」
人の声。その声の主に赤らめた顔を向ける。とてつもなく恥ずかしいところを見られてしまった気がする。ダメだ、同性でもやはり恥ずかしい。
「はじめまして。私は更識楯無。この学園の生徒会長って言えば分かるかしら?」
生徒会長、更識楯無。その名前を聞いて羞恥の心はすぐになりを潜め、私の心は警戒心に染まる。彼女は『参上!』と書かれた扇子で口元を隠しながらこちらを見ていた。
「その生徒会長が、一生徒の私に何の用ですか?」
「あら?言わなくても分かるでしょう?もしかしてそこから説明が必要かしら?」
「いえ・・・勿論理解しています」
私が解せないのは何故このタイミングで接触してきたかだ。勿論集音マイクなどの存在にはずっと前から気づいていた。DEMへの報告も、なんの変哲もないはずだ。バンダースナッチは・・・集中しすぎて周りへの注意が散漫だった。まさかこれの事?
「聞かせてくれないかしら?どうしてアイザック・ウエストコットが貴方をIS学園に送り込んだのか」
どうやらバンダースナッチのことではないらしい。これには正直に驚いた。バンダースナッチなど、知らない者達から見たら怪しい人型の小型ISにしか見えない。知らないのか、もしくは知った上で聞かないのか。
どちらにせよ、質問の答えは決まっている。
「私が送り込まれた理由。そんなもの、ありませんよ」
「どういうことかしら?」
更識会長の目が細まる。いつの間にか扇子の文字も『説明要求』に変わっている。便利なものだ。彼女の目はここで私を倒すことも辞さないと言いたそうな眼をしている。そうなれば呆気なく負けますね。間違いありません。
「そのままの意味ですよ。まぁあえて理由を挙げるのであれば、火薬庫の中身を弄り回したいだけではないでしょうか?特に今年は織斑一夏の登場に、既に3人もの代表候補生が集まっています。あの人が手を出すのには十分な理由だと思います」
正確なところは分からない。ウエストコットMDの考えなど、分かる人間は存在しないだろう。何時如何なる時も付き添っている姉さんでも、あの人の考えていることは理解できないでしょう。
「その言い方だと、貴方は何も行動を起こすつもりがないということになるのだけれど?」
「その通りです。私はただの学生としてここに通っています」
「ただの、ねぇ」
怪しまれても、私には何もない。守るべき秘匿も、話すべき事実も。今は、ですが。
「もう話は終わりですか?」
「ええ。お話してくれてありがとうね」
「失礼します」
一礼して更衣室から出ていく。思わぬ所で時間を食ってしまった。織斑君達には迷惑をかけてしまったかもしれない。
更識会長は可哀想な人だ。なにせ生徒会長をやっている時に、ウエストコットMDに学園が目を付けられるなんて。ですがどうすることも出来ない。予定通り、襲撃は行われる。1人の無邪気な意思によって。
デート・ア・ライブ3期、面白いですよね。自分はアイザックが登場するのを今か今かと待ち望みながら見ています。
精霊?知らんな。