王国が反転した。さぁ、控えろ人類(仮)   作:銀髪!銀髪!

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作者に日常編とか無理です(


一夏/鈴デンジャー

それはまるでSF映画にでも出てきそうな巨大な航空艦だった。何処で作れたのか、疑問を持ってしまう程の巨大な建造物。バカらしくなるほどのソレは、蒼空に浮かび、地上の一部から太陽の光を奪いながら、誰の目にも止まっていなかった。

全体が透明になり、外から見ればそこには影も形もない。これもまた、SFのようなもの。

 

音も風も、何も発生させることなく、その航空艦は日本を横断していく。世界で最も危険で歪で楽しめる場所(IS学園)に。

 

ブリッジ、と呼べる場所には20を超える人々がいた。彼らは数値を観測し、状況を確認し、進路を変更し、速度を整える。何人ものクルー達は、慣れながら計器をいじっている。

 

そんな彼らを見下ろす、4人の存在。

 

一人はDEM幹部『戦争狂』アーノルド・エイドリン卿。

一人はエイドリンの秘書、キース・B・ハイウェイ。

一人は最強の魔術師(ウィザード)、エレン・M・メイザース。

一人はDEM代表取締役、アイザック・ウエストコット。

 

アイザックとアーノルドは備え付けの椅子に座り、残りの2人はそれぞれの主の後ろに、いつものように控えているに

 

今日こそが、前にアイザックが宣言した新型魔術師(ウィザード)バンダースナッチを率いた襲撃日。そしてIS学園において、織斑一夏の戦闘が公式に行われる、初めての日でもある。

記念すべき日、記念すべき襲撃。

DEMの革命になり得るかもしれない日に、クルー達、そしてエイドリンは興奮を隠せていない。

 

「さぁ、始めようか。今まで息を潜めて隠れ潜んできた、私達の凱旋だ」

 

宣言するように、眼科へと迫ったIS学園を見下ろしたアイザックは、闇の如き瞳を向けて言う。

 

「バンダースナッチ、‪α‬、β、γあ、全機出撃準備完了。何時でも行けます」

 

「よろしい。なら———」

 

「最高のタイミングで、横殴りといこうじゃないか!」

 

葉巻を咥え、そのまま歯で噛みちぎるエイドリン。彼らは待つ。

 

 

———————————————————————————————

 

 

「どうして私はここに居るんですか?」

 

「はぁ?そんなの知らないわよ」

 

クラス対抗戦初戦。1組対3組、世界唯一の男性操縦者と第三世代型を操る中国代表候補生。上級生達も必死にアリーナの席を確保する程の注目度がある試合。

本来は1組の生徒であるカレンは、反対側のピットにいる一夏と箒の方に行くのが普通なのだが、何故だかカレンは敵側である鈴のピットに来てしまった。

 

「まさか・・・道を間違えた・・・?」

 

「ぷっ!アンタ電光掲示板があんなにあったのに道間違えたの?!アハハハハ!」

 

「わ、笑わないでください!」

 

 

あの日からの不調は治らず。1組でのカレンの評価は既になんちゃってクールビューティである。鈴も噂には聞いていたが、まさかここまでは酷いと思わなかったのか、腹を抱えて笑っている。

カレンは顔を真っ赤に、もう涙目である。

 

「は〜笑った。じゃあそろそろ時間だから行ってくるわ。アンタも、はやく1組のピットに戻りなさいよ」

 

ぶっきらぼうに言い放つと、鈴はそのままアリーナへの入口に向かって歩いていく。瞬間、待機携帯のブレスレットが光を放ち、現れたのは紫を主体としたIS。

ISを身に纏った鈴は、アリーナの中央目がけて飛んでいく。

 

「・・・頑張ってください」

 

残されたカレンは宙で一夏を待っている鈴の背中を見て、例えこの場にいたとしても絶対に届かない程小さく声援を送った。

だがそれは一夏との試合か、それともDEMとの殺し合いに対してか。どちらに向けた物か、誰にも分かることは無かった。

 

 

———————————————————————————————

 

 

「怯えないで来たわね、一夏!」

 

「鈴。俺が勝ったらあの時の言葉の意味、ちゃんと教えてくれよ」

 

「いいわよ。でも、アンタがアタシに勝てたら、ね!!」

 

言うと同時に鈴のIS———甲龍が大型の青龍刀《双天牙月》を二本持ち、白式に切りかかる。白式も唯一の武器、雪片弐型で迎え撃つ。一本目の双天を雪片で迎え撃ち、二本目の双天を甲龍から身体を離すことで回避する。

だがそれは隙である。人体でも容易く付けるほどの隙を作った。ましてや相手はIS。そのスピード、加速力、なによりハイパーセンサーによって鈴の判断力も大幅に上昇している。

その隙を見逃さず、一瞬で青龍刀を突き刺す。並のパイロットならば確実に当たり、シールドエネルギーを二割は確実に削れる一撃。

 

「うぉおおおお!!」

 

一夏は白式の浮遊ユニットのスラスターを爆発的に加速させる。。双天が白式に辿り着くその刹那、爆発的な加速により、一夏の姿が消える。

 

(逃げた?いや、一夏に限ってそんなこと・・・センサーに反応、上!!)

 

「いいわ、迎え撃ってあげる!」

 

空を見上げれば、太陽を背に甲龍へ一直線に突っ込んでくる一夏。太陽で視界が塞がるが、ISの機能のお陰で少しだけなら見える。鈴は獰猛に唇を吊り上げ、二本の双天を連結させ、一本の巨大な刃とする。連結した本来の形の双天牙月を薙ぐように振るう。あれだけの速度。いくらPICがあったとて、容易には止まれない。弾くだけだ。ダメージは狙わない。だが弾いた瞬間、怒涛の追撃を御見舞する。それで終わらせる。

 

「まだ加速!?違う、まさか瞬時加速(イグニッションブースト)!?」

 

「ぉぉおおお!!」

 

予想外の加速により、距離も速度も想像とタイミングに狂いが生じた鈴は双天を間に合わせることが出来ない。それを察し、せめてどうにかしてダメージを減らそうと動こうとするが、気付いた。こちらへ振りかぶられる雪片の形状が変化していることに。そして変化した雪片から、エネルギーの刃が作られていることに。

 

「アレは千冬さんの・・・!?不味い不味い不味い!!あーもう!!」

 

当たればその時点で負ける、もしくはシールドエネルギーをごっそり削られると、単一能力(ワンオフアビリティ)零落白夜を見て確信した鈴は手札を一枚切ることにした。

甲龍の浮遊ユニットがガコン、とスライドされる。同時に連続して破裂音のようなものが発せられる。

 

「うぉっ!?遠距離武器!?でも———!」

 

一夏は異変を確認した。白式が攻撃を受けたという異変を。だがこれがチャンスだと踏んでいる一夏は、捨て身の覚悟で鈴へ迫る。燃費最悪の零落白夜に加え、瞬時加速(イグニッションブースト)も燃費が悪い。そして鈴の思わぬ迎撃。正体不明の遠距離武装でシールドエネルギーは半分を切っている。

次もまた、このような最高のチャンスが来るなどと、楽観視していない。ここで決める。次へ繋げない。

 

「止まらない!?でもこの距離なら!!」

 

「うぉぉおおおおおおおお!!」

 

雪片が甲龍のシールドエネルギーを切り削りながら、白式はさらに前へ前へと進んでいく。鈴は急速に削られるシールドエネルギーに顔を顰めながら、白式を無理矢理引き離すため、白式を力いっぱい蹴りつける。パワーアシスト、そしてクリーンヒットしたため、引き剥がすことには成功した。だがシールドエネルギーの残量は心許ない。

 

「仕留めきれなかった・・・!」

 

直ぐに体勢を建て直した白式は零落白夜を停止し、いつもと同じ雪片の状態に戻す。本当であればここで何としても決めていたかった。白式はとにかく燃費が悪い。セシリアやカレンがISとしては失敗作に限りなく近いと言ってしまうほどに。

射撃武装があるわけでもなく、あるのは雪片一本のみ。完全な近距離機体のため、機体速度などは他のISよりも群を抜いて高いが、それに比例してエネルギー消費も早い。オマケに武装の中では最強格である零落白夜も、現存するどのISの武装よりも燃費が悪い。彼女達が言うには、未だISに乗り慣れていない一夏が乗るには、余りにも性能がピーキーすぎるらしい。

 

燃費が悪いのは前回のセシリアとの戦闘で一夏も既に分かっている。だが今更白式の燃費を解消出来る訳でもない。ならば戦い方を変える。燃費最悪の機体でも、確実に相手に勝てるように。

そして当然のごとく、辿り着いたのはこの序盤からの一撃必殺の戦法。

ただこの戦法を確実なものにするためには瞬時加速(イグニッションブースト)の練習がどうしても必要であり、瞬時加速(イグニッションブースト)はかなり高度な技能のため、習得するのにほとんどの時間を費やした。

 

一ヶ月間。その全てを率いて挑んだ一回きりの勝負に、一夏は負けた。甲龍は未だ健在。かなりシールドエネルギーは削れたが、正体不明の遠距離武装が存在している。

それに対して白式はシールドエネルギーは残り半分。零落白夜を使えば直ぐになくなってしまう。武装は雪片一本のみ。

 

「まだよ一夏。本番はここから。もう隠しておく必要もないから、こっちも遠慮なくコレを使わせてもらうわよ」

 

破裂音がまたした。音源は甲龍の二つの浮遊ユニット。何か来る、と一夏は雪片を中段に構え、正体不明の攻撃を警戒する。

 

「くらいなさい、一———」

 

一夏と、鈴が叫ぼうとした瞬間、ピンク色の閃光が天から降ってきた。降ってきた閃光は両者の間を通り抜け、アリーナの地面を爆熱で吹き飛ばす。

何が起きたのか。一夏と鈴が揃って空を、ビームの来た方向を見上げる。そこには一部が千切られたかのように破られ穴の空いたシールドバリア。そしてその奥に見えるのは一機の黒いIS。

機械的なモノアイで二人を見下ろしている。両腕は肘の部分から大きく肥大している。人体で言う手首の部分から見える筒状の何か。恐らくは砲塔らしきものがこちらへ向けられている。

 

「なんだ、あのIS・・・?」

 

「ボサっとしてるんじゃないわよ!!」

 

呆然と空を見上げている一夏を押しだすように、鈴が飛び出る。次瞬、一夏のいた場所をビームが通過する。かなりの高威力なのは既に分かっている。当たれば確実に大ダメージ。今の状況では一撃で両方ともアウトだろう。

 

ゆっくりと、黒いISが降りてくる。無機質なモノアイを一夏と鈴へ向ける。両者とも、緩んだ気は締まっており、自分達の武装を構え、何時でも戦闘に移行できるようになる。

 

「ちょっとアンタ、どこの所属のIS!?ここがどこか、分かってるの!?」

 

ここは天下のIS学園。そのアリーナ。襲撃すれば直ぐに教師陣達がISを纏い、十人以上に袋叩きにされる。いくら見たことも無い、恐らくは第三世代型とはいえ、IS学園の教師になれるほどの実力者達相手に、勝機はない。

鈴の問いかけに、黒いISは何も答えない。だが返答の代わりに両腕の砲口を二人へ向ける。

 

「問答無用ってわけね。千冬さん達とも連絡が取れない・・・。オマケにアリーナの入口がロックされてるなんて」

 

「それって・・・」

 

「あのシールドバリアを貫通したビームが、最悪観客の子達に向けられるってことよ」

 

既に観客席はパニックだ。誰もが冷静さを失い、醜く我先にと他者を蹴落とし、自分だけでも安全な場所に行こうとする。結果、アリーナの入口各所はロックされ閉じられているまま飽和状態。あらゆる入口出口が封鎖されているため、援軍の教師達もピットまで遠回りを強いられる。

 

孤立無援。エネルギーは半分まで消費。ビームがシールドバリアを貫通したら敗北。

容赦がないほど厳しい状況。

 

「行くしかないだろ。俺達がやらないと、皆が傷つく。今動けるのが俺達だけなら、俺達で守るんだ」

 

「そうね。こんな訳わかんない奴に好き勝手されるのもゴメンだし、やってやろうじゃない!」

 

最悪の状況でも、彼らは立ち上がり、敵を見据える。敵は一機。火力は絶大。性能は不明。パイロット技量も不明。ならば戦いながら見極め、その上で勝利する。

 

白式が雪片弐型、甲龍が双天牙月を分離させ、黒いISを挟撃せんと左右に分かれ、攻める。黒いISは待っていたと言わんばかりに、駆動する。両手を広げ、二人に向かってビーム射撃。大気の塵を消滅させながら、閃光が駆ける。だが平面の簡易な攻撃は当たらず。徐々に接近を許していく。

 

黒いISが浮き上がり、上空へ加速し急停止。白式と甲龍も追いかけ、飛び上がるがそれを黙って見ているほど黒いISは優しくはない。

休む間もなく連射。砲塔が溶けるんではないかと思うほど、縦横無尽にビームを吐き出す。

黒いISは威力だけでなく、連射性能まで優秀だった。

オマケに、

 

「アイツ、意外と早い!!」

 

追いつけない訳では無い。速度としては十分。だが荒れ狂うように乱れ撃たれる弾幕の中、中心にいる機体は常に移動しながら、正確な射撃を撃ってくる。彼らが移動する位置に正確にビームが撃たれる。

 

「一夏、今からアタシは射撃で牽制するから!」

 

「鈴!?分かった、頼む!!」

 

甲龍が黒いISを中心に、円を作るように駆ける。黒いISのモノアイが甲龍へ向けられ、腕の砲口を甲龍へ向けると、一夏が邪魔させまいと切りかかる。黒いISは余裕のある動きで振り下ろされた雪片を、その肥大している腕で受け止める。

 

「コイツ、腕も武器なのか・・・!」

 

受け止められた雪片は弾かれ、黒いISは両腕を振り回しながら、白式へ迫る。鈴と同じ、二刀———二拳流。オマケに腕を向けられればいつ撃たれるかわからないビーム。

ギリギリの状況は確実に一夏の精神力を削っていく。

 

「しまっ、」

 

迫る剛腕から逃れる為に、雪片を振り上げて敵の腕を撃ちあげた。だがそのせいで、胴はガラ空きになり、片腕の砲口が至近距離で白式へ向けられる。

 

ディスプレイに表示されるロックオン警報とアラート音。

避けようと、白式が逃げようとして、一夏は気付いた。今自分の背後に、未だに入口で逃げ遅れている生徒達がいると。黒いISの攻撃はシールドバリアに簡単に穴を開ける。そんなものが彼女達に向けられれば。考えなくても分かってしまう、最悪の未来。それを見通したが故に、一夏は動けなくなる。

それは過剰な自己犠牲の精神。常に姉に守られてきた一夏が抱いた、誰かを守りたいという憧憬。

 

「やらせないわよ!!」

 

衝撃、墜落を覚悟していた一夏は、突如一夏に向けられていた砲口が弾かれたように跳ね上がるのを見た。視線を動かせば、鈴がそこにいた。

 

「さっさとそこから退きなさい!じゃなきゃ、アンタも巻き込んじゃうから!」

 

「あ、ああ!」

 

黒いISを振りほどき、白式が離脱する。黒いISは追撃を仕掛けようとするが、見えない攻撃に当たり、身動きが取れていない。

 

「空気砲?」

 

「違うわ。これは甲龍の第三世代型兵装、衝撃砲よ。まぁ、原理は同じだけど」

 

それは空気を圧縮し、弾丸と化して敵に撃ち込む兵器。鈴が隠そうとしていた手札の1枚。いくら衝撃砲がかなりの角度まで砲撃できて、尚且つ見えない空気だとしても、バレてしまえば対策は簡単。隠しておくに越したことはない。

 

「さて、どうにかしてアイツをぶっ倒さなきゃだけど。何か作戦とかある?」

 

鈴が眼前の敵を見据えながら言う。強力な砲撃、技能、速度。どれをとっても第三世代型に劣ることない性能を持つ機体。まるで城塞を攻めているような気分になる。

 

「作戦、ってわけじゃないけど、実は———」




中途半端な終わり方でゴメンなさい・・・。でもこれ以上書くと、確実に自分でも何書いてるか分からなくなっちゃうから・・・。
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