王国が反転した。さぁ、控えろ人類(仮) 作:銀髪!銀髪!
「頼む!俺にISの乗り方を教えてくれ!」
学園生活二日目。清々しいほどの晴天に、適度に蒔かれた白い雲。顔を上げれば眩しい太陽が目を焼いてくる。場所が屋上のためか、日差しが教室よりも強力だ。普段本社で開発中心の生活だったため、日にはあまり強くない。
さて、今の状況だが、私の目の前には頭を下げている織斑君と、その傍らに腕を組んで番人のように立っている篠ノ之箒。そして呼び出された私。
「えっと・・・」
「頼む!この通りだ!」
「一先ず顔を上げてください。話はそれからです」
渋々頭を上げる織斑君。それから少しだけ話を聞く。どうやら篠ノ之箒に頼んでISの訓練をしようと思い、何故か剣道の練習をしていたらしい。
「えっと・・・確かにISの武装に剣はありますけど、IS戦闘の殆どは銃火器が中心になりますし、剣よりも銃火器中心の練習の方がいいのでは?」
「ダメだ!一夏には剣でなければダメだ!」
後ろにいる篠ノ之箒が口を出す。少しだけ手を出そうとしていたように見えたのは気のせいだろうか?
「ですがオルコットさんの機体は遠距離専門の機体です。近距離戦は不得意のようですが、敵を近づけないことに関してはオルコットさんに軍杯が上がります。弾幕の張り方などは対近距離用のものもあるでしょう。そうなれば必然的に銃火器の必要性が出てきますが・・・織斑君はどう思いますか?」
「えっと・・・」
まぁ、戸惑うのも当然ですか。どちらを選ぶかでどれだけ教えられるかが変わってきます。
「俺は、剣がいいかな。銃なんて撃ったことないし。それに千冬姉も剣を使うから」
「また千冬さんか・・・」
隣で篠ノ之箒が呆れたように頭を抑えている。かくいう私も少しだけ彼女の気持ちが理解できる・・・気がする。
姉の背を追いかける弟———織斑君ですか。何故だがとても感情が昂ってきますね。
「分かりました。織斑君の意思を尊重しましょう。ですが私の機体も、戦闘も遠距離中心なのであまり参考になりません。ですから、ISでの移動を中心にやりましょう」
「移動?剣はいいのか?」
「いえ、ISは体の延長上のような存在です。ですが突然体が大きくなってもまともに動くことはできません。ですから放課後にISを借りて移動の練習。残った時間は篠ノ之さんと剣道の練習に当ててください。私は少々やることがあるので」
「ああ、分かった!よろしく頼むよカレン、箒!」
うっ・・・!またこの感覚ですか。胸が痛いというか、苦しいというか。なんとも形容し難い感覚です。
「では休み時間に篠ノ之さんは剣道場を、織斑君は訓練機を借りられるように申請してきてください」
私が頼むよりも織斑君が頼んだ方が効率がいいですしね。
あれ?オルコットさんと同室の私がこんなことしていいのでしょうか?
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ー放課後ー
織斑君たちが申請してくれた結果、明日から訓練機が借りられるようです。どうやら予約してくれていた生徒が織斑君直々に会いに来て譲ったとか。そしてその生徒を真似して連日で借りられるようになったそうです。
今日はISを使えないため、2人は剣道場で昔の感覚を思い出すと言っていました。私は剣が並程度にしか使えないため、今日は参加はしません。
だから私は、ISの整備室に向かいます。
IS学園にある整備室は最新式の設備を揃えているため、DEMにも劣らないはず。
「先客がいるようですね」
自動ドアが開くとカタカタとキーボードの軽い音が聞こえる。音の方向を見ると一人の生徒と、その前に沢山のコードを繋がれて鎮座している巨大な鉄塊———ISがある。
見たことのない型、と言うわけではない。機体は日本で開発され、世界的なシェアを誇っている『打鉄』に似ている。恐らくは『打鉄』をベースにした専用機だろう。
しかし、随分と集中していますね。
「だ、誰!?」
足音を立てていたためバレてしまった。まぁ特段隠そうとはしていなかったので仕方ないですね。でも彼女からしてみたら警戒する対象としては十分でしょう。
「驚かせてしまって申し訳ありません。一年一組のカレン・N・メイザースと申します」
「えっと・・・」
名乗ったら戸惑ってしまっている。私はそんな彼女を横目に、彼女から一つ間を置いて整備台に指輪———私の専用機を乗せ、起動する。
ISの待機携帯は基本、アクセサリのため持ち歩きが簡単なのはいいことですね。
「さて、始めますか」
機体から一つの機械を取り出してISが置かれている場所に鎮座させる。取り出したものは人型で白を基調とした機体。ようやくして完成の目処が経ってきたこの機体の名称は『
私が開発しているのは外装や武装であり、中身は本社で開発されているらしい。
人間を使わず、コマンド一つでどんな命令でも行う無人機。DEMの限られた
完成率はざっと80%。多大な時間をかけて作ってきたわけでもない。開発期間はおよそ2年程度。スムーズに進んでいるといえます。
電力を魔力に変換するシステムの運用は容易ではないが特段難しいものでもない。問題はバンダースナッチが使用するための
いえ、これは本社の者たちが考えること。私はただ与えられた命令を実行すればいい。
ふむ、やはり関節部位に負担がかかりますね。急激なGに耐え切れなければ空中でバラバラに分解されるなんて最悪ですからね。
やはりフレームの形を少し変えるべきでしょうか?
とりあえず、ウェストコットには問題点を報告しておきましょう。
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イギリス、DEM本社社長室
その部屋にいるのはアイザックとエレンという見慣れた2人組。アイザックはエレンに背を向けて窓から下を見下ろしている。人の営みを、人そのものを。
「カレンからの報告です。関節部の問題から急激なGに耐えきれない可能性が増大したため、その修繕のために期日を伸ばしてほしいと」
エレンはアイザックの背中に話しかける。まともに聞いているかなどどうでもいい。ただ自分がアイザックに向けて報告したという事実だけあればいい。
「本当なら私も期日を延長してあげたいんだけど、これでもだいぶ切羽詰まっているからねぇ。残念だけど不可能、期日までに作成してくれと報告してくれ」
「分かりました。次に
「ふふふ、相変わらず自由に楽しくやっているようで何よりだよ」
狂三が誰を殺そうが、それはアイザックの知ったところではない。むしろ都合がいいのでもっと殺してもいいとさえ考えている。狂三はアイザックからしても最悪の可能性を秘めた存在だ。魔王であるアイザックさえも寝首を掻かれるかもしれない。
だがその狂三が手元にあり、DEMにではなくアイザック本人への忠誠に近いものを持っているならば、狂三という存在はアイザックにとっての最強のジョーカーとなる。
わざわざ狂三のためだけに専用の処理班まで作らせたのだ。
「少しは行動を制限されてはいかがでしょうか?いくらなんでもこうも立て続けに問題を起こされるといずれDEMとの関係が篠ノ之束にバレる可能性もありえます」
エレンは篠ノ之束へと警戒心を誰よりも強く抱いている。つい先日にも篠ノ之束と思われる人物からのサイバー攻撃を受けているのだ。その時はアイザックの命令で世界各地から集められたその道のプロ凡そ350人を使用して防御できたが、次が上手くいくとは限らない。
現にサイバー対策チームの代表から色々と『要望』が来ている。
「バレるならバレるで構わないさ。問題はバレた分以上の情報を掴むことだからねそれに・・・」
アイザックが不敵に笑う。大抵何を考えているのか、付き合いの長いエレンは少しだけなら理解する。絶対にろくなことを考えていないと。
「彼女が気づいたとしても、もう彼女では我々は止めることはできないからね」
実は3月に入りたてのころにデート・ア・ライブの最新刊を遅れながらも買ったのですが・・・アイザックェ・・・そういう設定ならもっと早く言ってくれよ・・・(読むのが遅れた作者のせい)
新しく追加されたアイザックらの設定に頭を痛めていました。