王国が反転した。さぁ、控えろ人類(仮) 作:銀髪!銀髪!
一週間とは早いものだ。織斑君が取ってきてくれたISを使った訓練。日常的に追加された開発。そしてこの年になって初めて行う授業。
研究者となるべく教育を行われてきた私からすれば新鮮なもの・・・だった。
伊達にこの年でDEMの極秘プロジェクトの開発部副主任だけあって、目を通した教科書の内容をほとんど理解してしまった。いくらIS操縦者を育成する学園とはいえ普通の学校で行われる授業も勿論ある。
それら全て、世界トップクラスの授業を一週間で終わらせてしまうと・・・流石に授業の合間は退屈になってしまう。
下手に授業をストライキする訳にもいかないので大人しく受けてはいるが、日が経つにつれてウェストコットMDから与えられた期日が減っていくにつれ、焦りが出てしまう。
まぁ、今はそのことは置いておこう。私と織斑君、そして何故か篠ノ之箒・・・篠ノ之さんは第一ピットにいる。私達の目の前には白い機体。織斑君に与えられた専用機である白式が鎮座している。
織斑君は白式を装着し、両手を握ったり広げたりしている。どうやら体にはしっかりと馴染んでいるらしい。
「まだ一次移行は終了していません。武器もその刀一本だけです。ですので、一次移行が終わるまではオルコットさんの狙撃を避け続けなければなりません」
「一夏なら出来る。胸を張っていけ!」
「ああ。二人に教わった一週間の成果、無駄にはしないぜ!」
そう言ってスラスターを蒸して飛び出していく織斑君。爆発的な風が体へ叩きつけられる。
今はかけている眼鏡が飛ばされないように抑えながら、彼の背中を見つめる。
「頑張ってください・・・織斑君」
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「待たせたか?」
「いいえ。もっと時間を稼いでよかったのですよ?どうせ勝つのは私と決まっていますので」
そう自信満々に言い切るのは既に空へと飛び出ていたセシリア。彼女の四肢には青い装甲のブルーティアーズが纏わっている。そして右手に持つのは大口径エネルギーライフル、『スターライトブレイカー』。イギリスの持つ技術を最大限に使用したセシリアが最も得意とする
「行くぜ」
「踊りなさい!私とブルーティアーズが奏でるワルツで!」
一夏がスラスターを蒸して突撃する。セシリアは自らを鼓舞しながら天に掲げたライフルの銃口を下ろし、速攻で一夏へと狙いを定めて、撃つ。
銃特有の爆音はしない。それがエネルギーライフルの特徴だからだ。
大口径のエネルギー弾を一夏は左右に機体を動かすことで回避しようとするが、
「無駄ですわ!」
「くっ!」
まるで先読みするかのように当てられていくエネルギー弾。どうにか直撃を防ぐも、一発も躱すことが出来ない。セシリアからすれば一夏の動きなど分かりやすすぎる。当てるなという方が難しい。
遠距離専用機体を操るセシリアにとって、剣を構えて明らかに近接機体を駆る一夏は天敵である。近接専用機体は総じて通常時の移動速度が他の機体より素早く、スラスター、特にイグニッションブーストなどの加速は抜群に速い。
それこそ一瞬で間合いを詰められるだろう。
そうなればスナイパーであるセシリアの勝機は0に等しくなる。だからこそ、どんな加速をされようと、どんな軌道で動かれようとも決して自分には近づかせない。そんなスナイパーとしての鉄則を、セシリアは忠実なまでに実行する。
何よりも重要な基本だからこそ、何よりも重宝するのだ。
それこそがセシリア・オルコットの実力の大部分でもある。大抵のものはある程度出来たら応用へと移ろうとする。何故か。答えは単純。誰にでも出来る基礎ができた時点で、誰にでも出来るものなど意味がないと思うからだ。
だからこそ、人は誰にも持っていない、自分だけの何かを手に入れようとする。その響きが美しく、自らを周りよりも優れた特別な存在にしてくれるから。
だがそんなものは砂上の城の如く、脆く儚く容易く砕け散る。その事にいち早く気付けたセシリアは誰もが欲する『特別』を持ちながら、それを使わずに基礎を徹底した。
自らの得意不得意を選別し、得意な『基礎』を『特別な基礎』にまで昇華させた。
故に必中。並の相手ならセシリアの狙撃からは逃れられない。
「くっ・・・!中々やりますわね」
直撃がほとんどない。全てを当たる直前で腕で守ったり、無理に体勢を変えて足で受けたりと、ISにおいて最もダメージ量が大きい胴体への攻撃を上手く避けている。
本来ならすぐにシールドエネルギーがなくなるが、もとのシールドエネルギーが通常の機体よりも多いせいで中々減らない。
「仕方ありませんわ・・・。これはあまり使いたくなかったのですが・・・。お行きなさい!ブルーティアーズ!」
自身の機体の名前を発する。するとウイングのように付けられていた部分から4枚の鋼鉄の物体が分離する。それはイギリスが持つ最先端の技術であり、IS適正の他にも特殊な適正がなければ動かすことさえもできない特別な兵器。
BT兵器《ブルーティアーズ》。
機体と同じ名を持つ兵器が、一夏へと牙を向く。
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「見たまえエレン。これが英雄の卵の凱旋だよ」
DEM本社にて、手元のディスプレイに表示されている白式、そしてそれを操る一夏を見てアイザックは愉快に笑う。
この映像はIS学園から、正確に言えばIS学園の第1アリーナのモニタールームにいるカレンのかけているメガネから送られてきている。
「相手はイギリスの第三世代型ですか。狙撃手としての練度はそれなりですが・・・それは周りと比べればマシなだけですね。一つ一つの動作に無駄がありすぎます。これは『魅せる』戦い方です」
何の意味もない、と切り捨てるように言うエレンに、アイザックは満足気に微笑む。
「エレン、君は彼の機体をどう見る?」
「どう、とは?」
「見た所、まだ一次移行してないみたいだけどあそこまで動くことが出来ている。少なくとも普通のISでは一次移行もしていないのに移行済みの相手とマトモにやりあうなど不可能だ。織斑一夏は素人だが、明らかに機体がオーバースペックすぎる。そもそも倉持技研はあんな機体を作っていなければ、あそこまでの技術を持っていない」
「そこに第三者の介入があったと?」
「ああ。これを見たまえ」
アイザックが取り出したのは一枚の羊皮紙。そこにはなにかの設計図と、製作者などの関係する情報が全て記載されている。
「倉持技研は一週間前に何者かにISコアを一つ奪われている。そしてその事を政府は隠蔽した。当然だ。何せ世界に均等に割り当てられている数少ないコアが一つ奪われたのだから。そんなこと、あってはならないし知られてはならない。
ISコアの管理は厳重だ。それも、織斑一夏へ当てられるコアだから、なおさら警備は強くしている」
織斑一夏は金の卵だ。世界で唯一の男性操縦者だけではなく、篠ノ之束に接触できる可能性を持っている。もし、ブリュンヒルデというガードがなければ今頃どこぞの牢獄か、解剖台の上だろう。
織斑一夏のデータはその一つ一つが数千万に値する。日本はこのデータをいずれ売り払おうとしているのだ。売るのなら、なるべく多く高い方がいいに決まっている。そして多く集めるために、専用に用意したコアは幾多もの採取機能が加えられている。
「全く。とんだ猿芝居だよ。芸がなくてくだらなすぎる。つまらない劇を見ている気分だ。ああ、本当に悲しいよ。自分が全て正しく、世界が自分を中心に回っていると思い込んでいる天才と、こんなバカなことを心のどこかで気づいていながら、指摘しない人間も」
だからこそ、アイザック・ウェストコットが存在する。目を覚まさせてあげるのだ。深い深い、眠りから。
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「はぁ・・・」
夕暮れの教室で机にうつ伏せになりながら、織斑君は大きく息を吐く。
結果をいえば、織斑君は敗北した。あの後、ブルーティアーズに翻弄されながらもなんとか四基斬り壊し、白式は一次移行をすることが出来た。
そして白式唯一の武器である雪片二型でオルコットさんに接近戦をしかけるも、その直後、エネルギー切れで敗北した。
要は自滅である。
本来であれば絶対にありえないことだが、百式には一次移行の段階で『ワン・オフ・アビリティ』が積まれていた。
これは本来であれば二次移行の時に偶発的に現れるものだが、彼の機体には一次移行の段階で付けられていた。
恐らくは・・・天災が何かをしたのだろう。
百式の使う雪片二型を介した『零落白夜』。これはかつて織斑千冬が使っていた暮桜のものでもあり、効果は全てのエネルギーを切り下げること。
エネルギー弾も、絶対防御も。
学生が、素人が扱うには危険すぎるものだ。絶対防御さえも意味を成さず、一撃で殺してしまう可能性さえある。
このことに関して、織斑先生は何も危険性を言わなかった。
もしかしたら最初から知っていたのかもしれないですね。
「そうめげなくてもいいと思います。相手は代表候補生。こっちは素人。負けても恥じることはありません」
「でもなぁ・・・カレンや箒が毎日特訓に付き合ってくれてたから、なんか申し訳なくて」
「それでも、あと一撃の所まで追い込めたのです。たった一週間のあいだにそこまで成長できた。教えた私達でさえも想定外です。織斑君には才能があります」
「ありがとう、カレン。そういや、箒は?」
「ああ、今日は剣道部の方に出ているみたいです。彼女は一週間、出ていなかったみたいですから」
「そっか。あとで箒にもお礼言っておかないとな」
そう言って織斑君は伸びをする。彼の右手首には白い機械。大きさはリストバンドほど。これが彼の白式の待機携帯。ISは総じて待機携帯はアクセサリになるという。何故そうなるのかは分からないですが。
しかし、やはり分からない。なぜ織斑君がISを動かせるのか。なぜISは織斑君を認識できたのか。織斑千冬の弟だから?そんな誰にでも分かるほど単純でくだらない理由なのでしょうか?
「私はこれからやることがあるので、失礼します」
「分かった。じゃあまた明日」
「ええ、また・・・明日」