王国が反転した。さぁ、控えろ人類(仮)   作:銀髪!銀髪!

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ISの最新刊が出てくれたおかげで、今作の目標が決まりました。


狂三デストロイ

ここはドイツにある最重要機関の一つとして一般人には秘匿されていく研究施設。研究内容は様々であり、各分野のエキスパート十名と、護衛約百人にISを持った戦闘員が必ず一人待機している。だが絶対の守りと思われた研究所は一人の少女の特殊能力のせいで、時を喰らう城になった。城にいるだけで気分は悪くなり、本人が遠慮なく喰らっているため、人はすぐに消えていく。

鼻歌を歌いながら少女は軽やかに踊るように進む。足をステップのために動かせば爆発が起こり、手を広げれば赤い鮮血が散るが、それでも少女が美しいためか、その姿は美しく映える。

 

「キヒヒヒヒ、足りませんわ!足りませんわ!」

 

時崎狂三は手に持つ長銃と短銃を乱射する。両の目が別の色に輝き、それぞれの軌跡を描きながら破壊は進む。足から伸びる影は全ての時間を喰らい尽くして狂三の糧としていく。

 

「ようやく本命が来ましたのね」

 

狂三は上体を逸らし、発砲音と共に射出された高速の弾丸を避ける。弾の方向を見ればドイツの国旗を機体に刻んだ『ラファール・リヴァイブ』が銃口を向けていた。

 

『化け物め・・・!ISの弾丸を躱すか・・・!』

 

「あらあら、化け物とは心外ですわね。私、これでも女性なのですわよ?同じ女性でも言葉には慎みを持って頂きたいですわ」

 

『ふん、戯れ言を!大人しく私に殺されてもらおう!!』

 

ラファールが加速する。一瞬で音を超え、逃げ場を塞ぐように射撃しながら、狂三に肉薄しその手に持ったブレードを突き立てる。ぐじゅり、と肉を切り裂き抉る音がする。ラファールのパイロットはこの感覚が好きだった。最初は嫌悪感を抱いていたが、段々と癖になってやめられなくなり、結果的に彼女は侵入者や敵対因子と相対するのを楽しみにしていた。

全ては一時の快楽を得るために。

 

だが突如、肉を抉っていた感覚がフッと消え、前のめりに転びそうになった。幸いにもISのセンサーが働き、勝手に脚が動いて転ぶことはなかったが、地面を見てしまった。

地面には狂三の死体が影から出た狂三(・・)によって、影の中に引き摺り込まれていく光景があった。

 

『な、何が・・・!?』

 

分からない、理解不能だ。女は混乱し、地面に向けて銃を乱射するが、狂三に当たる前に不可視のバリアに阻まれ、弾は無残に地に落ちる。

 

「あらあら、後ろは簡単に取られてはいけないと、教わりませんでしたの?」

 

背後から狂三の声がする。ヒッ、と喉から声が漏れ、恐怖を押し殺しながら振り向き銃口を向けようとするが、直前にアラートがなる。

彼女の視界にはシールドエネルギー残量が残り数パーセントと表示されている。その残りも恐るべき速度で減っていき、すぐに機体は待機形態のアクセサリーへ戻ってしまう。

 

「ひぃっ・・・こ、来ないで・・・」

 

「そんなに怯えないでくださいまし。私、そこまでされると気が引けてしまいますわ」

 

狂三は踊りながら彼女へ近づき、長銃を彼女の額に当てる。その後、彼女は震え、地べたにぺたりと座り込み、目尻に水滴を侍らせながら臀部から液体を漏らし、パイロットスーツを汚水で濡らす。

 

「キヒヒヒヒ。いい姿ですわね。惨めで哀れでとてもお似合いですわよ。その姿にめんじて、私があなたを殺すのはやめて差し上げましょう。ええ、そうですわ、そうですわ!」

 

「い、生かしてくれるの・・・助かった・・・」

 

長銃が額から離れていく光景に、彼女は心底安堵しながら心に喜びを浮かべる。助かったと、記法に満ち溢れた素晴らしい笑顔だ。狂三はそんな彼女を見て、嗤う。

 

「ええ。殺すのは私ではありませんわ。お願いしますね、私達」

 

「え?」

 

影が隆起し、そこから狂三の肌と同じ真っ白な腕が何本も出てきて彼女の身体を掴む。すると身体はまるで沼に沈むように引きずり込まれていく。

 

「ひぃっ!た、助けてくれるって!生かしてくれるって言ったじゃないか!?」

 

「私は言いましたわよ。「私があなたを殺すのはやめてさしあげましょう」と。人の話はよく聞くものですわよ」

 

狂三の口元が、彼女には三日月に裂けたように見えた。邪悪な存在。悪意の塊。類を見ない悪意に晒された彼女は、もはや足掻くことさえできない。ただ恐怖に呑まれ、狂三に喰い尽くされる未来しかない。

 

「美味しかったですわ。それでは、ごきげんよう」

 

言葉と共に、彼女は影に飲み込まれ、狂三の金色の瞳の中の時計は急速に左回転した。

 

 

———————————————————————————————

 

 

もはやこの研究所には誰もいない。人もISも、実験動物でさえも。そのすべては、持てる時間を狂三によって喰い尽くされた。だがそれでも狂三は満足せず。狂三にとって時間とはいくらあっても足りないもの。故に、たかだか百数人では塵に等しい。

 

「まぁ、ISとの戦闘実験も出来ましたし、目的の物も手に入れられたので良しとしましょう。嗚呼、今度はご褒美に何をしてもらいましょうか!」

 

まだ来ない、だが遠くない未来、アイザックに貰えるご褒美を考えると、思わず淑女としての顔が緩んでしまう。いつもなら正しく律するところだが、仕方がないと狂三は思う。いつの時代も女は恋をする生き物であり、恋する相手には弱い。狂三はそう考えている。

 

「楽しみですわ!楽しみですわ!」

 

狂三は震え狂う自分の身体を抱きしめる。その顔は先程よりも恍惚としており、どれだけの感情が宿っているかを理解させる。そして、

 

「あら?やりすぎてしまいましたわね」

 

全てが消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、世界中にとあるニュースが広がった。ドイツのとある一地域で半径数キロにも及ぶ謎の爆発———ブラックホールのように全てを飲み込むかのような現象があり、その後には何もなく、辛うじてあるのはなにかの施設の破片や、抉られた森の木々だけだった。

世界はドイツが新たに開発した軍事兵器ではないかと懸念し、ドイツはISの一つが行方不明になったことに慌てふためき、世界はたった一人の少女の感情で滅茶苦茶にさせられた。

 

 

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悪夢(ナイトメア)が空間震を起こしました。

 

飛行機に乗って空の旅をしていたアイザックにその一報は突如伝えられた。さしものアイザックも、まさか空間震と呼ばれる現象を起こすとは思っていなかったのか、頭に手を当ててしまった。

 

「エレン、状況はどうなっている?」

 

「各国はドイツに今回の件を問い詰めようとしていますが、当のドイツは亡くしものを探すので手一杯のようです」

 

今回の狂三の襲撃で、ドイツは十機あるうちの一機のISを失った。たかが一つ、などとは口が裂けても言えまい。その一機が他の国、例えばISを持たない小国の手に渡るだけで、その国は世界と渡り合える国になるのだ。今の世はIS一つで世界情勢が容易く変わってしまうのだ。

 

「下手をすれば私達まで捜索と隠蔽を手伝わされてしまうね。しばらくドイツ支部は機能停止にしておこうか」

 

「いいのですか?確かにたかだか支部一つが止まった程度で、DEMにほとんど影響はありませんが。政府から何を言われるか」

 

「構わないよ。あちらは我々に構うより、ISを探した方が有意義だろうさ。最悪、ドイツは管理問題を問われてISを全て剥奪されるかもしれないからね」

 

そうなってしまえば現状、自然に流れる状況では最高のパターンとなる。IS剥奪に抵抗したドイツが少しでも他国と小競り合いを起こせば、アラスカ条約などの柵から簡単に小規模の戦争が起こり、次第に発展していくだろう。そうなればあとはコチラ側の独壇場。

魔術師(ウィザード)というISにも届く兵士達を何百何千も抱えるDEMが介入してしまえば、後は思いのままに。

 

「まっ、どうでもいいんだけどね」

 

本音を言えばドイツがどうなろうが、世界がどうなろうかなど知ったことではない。別にアイザックは自ら好んで戦争をしかけたい訳では無いし、やりたければやればいい。

 

「しかし、たかが感情の高ぶりだけでこの規模ですか。流石は精霊(・・)、と言うべきですか」

 

「ああ。自分から放とうとすれば、大陸に穴を開けるだけの力があるからね。無論、私も」

 

そう言って魔王は椅子の背もたれに身体を預ける。機内アナウンスがもう少しで到着を告げる。エレンも自分の椅子に座り、到着を待つ。

 

「もうすぐでアメリカに着きます。さしあたってまずは、」

 

「オランダと共同開発しているIS、銀の福音(シルヴァリオ・ゴスペル)の視察だろう?分かっているよ。アレにはほんの少しだけ、顕現装置(リアライザ)の技術と、アレを組み込んだからね」

 

最近DEMで開発されたとある機体。その機体に含まれているとあるシステムを、アイザックはアメリカに潜ませた者に、新型ISに組み込ませた。全ては己の目指す目的の、悦のために。

 

魔王は空から地へ降りる。

 

 

 

 

 

 

「そういえば中国の専用機持ちのIS学園への転入を認めたそうですが

?」

 

「ああ。彼女は織斑一夏と親しかったようだからね。今の世界には珍しい、男一人の修羅場が見れるよ。カレンも含めた、ね。ふふ、実に楽しみだ」

 

「・・・」

 

 

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イギリス本社のアイザックの部屋の影から、狂三が出てきた。相変わらずの季節感無視のゴスロリ。

狂三は先程までドイツにいたが、専属の部隊を差し置いて先にイギリスに帰ってきていた。元々ISとタメを張れる身体スペックを持ち、更には影に入り込んでの移動もできるのだ。遅い者達を待つなど、気が遠くなるだろう。

 

「あらあら、いませんわね」

 

唇に指を当てて部屋を見渡す。部屋には簡易的なデスクといくつかの絵画。それだけしかない。前に狂三がこんな部屋で退屈でないのかと聞いたが、どうやら本人はこれで満足しているらしい。

 

「これだけ先に置いていきましょうか」

 

影から一つの紙ファイルを取り出してデスクの上に置き、今度はドアから出ていく。

誰もいなくなった部屋。狂三の置いていった紙ファイルの一番上には日本語で『ーー計画』と書かれ、その周りの文字は全てドイツ語で書かれていた。

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