王国が反転した。さぁ、控えろ人類(仮) 作:銀髪!銀髪!
「出来ました・・・」
IS学園の整備室にて、カレンは感嘆の声を上げる。目の前に鎮座するのは人よりも少しだけ大きく、お世辞にもISとは呼べない大きさの機体。DEMの技術を結集させ、作り上げられた量産型の無人機。
人工
特殊なAIに単純な最新のコマンド。ISにも劣らない機体性能。そして機械の脳のおかげで通常の人間以上に有用できる
アイザックの提案により造られたこの機体は、必ずDEMに変革を齎すものとなる。まずは試運転だ。それはDEMが支部、もしくは所有している無人島で行われるだろう。現存する量産機IS、ラファール・リヴァイヴと打鉄を相手に行われるだろう。それでも必ずや、好成績を収めてくれるだろう。
「これで、しばらくは私の仕事も終わりですか」
送られてきたアイザックからの業務メールにはしばらく好きにしていいと書かれている。最近大仕事続きだったから、ようやく休める。
ドイツで起きた大事件など知らないし関係ない。詳しいことは知らないが、どうせアイザックの命令で何かが起こったのだ。関わろうとすれば無駄な労働を強いられる。
「・・・」
隣にいる人に目がいってしまう。打鉄を思わせる機体をいつも黙々と、カレンの隣で弄っている少女に。
四組の代表候補生の更識簪。確かな情報なら、織斑一夏に専用機を奪われた子。彼女のISを開発していたのは倉持技研という日本最高峰の研究所で、名目上では織斑君の専用機『白式』を開発したのも倉持技研となっている。
そう、織斑君のISをを開発したのだ。
未だに開発中だった彼女のISは開発中止になり、技術者達は揃って織斑君のISの開発に躍起になった。故に彼女の機体は開発を放棄された。技術者として受けた仕事を中途半端に投げ捨てたのだ。同じ技術者として許せるものではない。
だから彼女はISを引き取り、いつも中途半端な完成度の機体を弄っているのだ。
だが相当四苦八苦しているらしい。顔には焦りが浮かび、失敗を重ねる度に焦燥は濃くなっていく。それもそうだ。見た限り、彼女は自分一人でISを組み立てようとしている。国の何人もの技術者が集まり、知恵を振り絞ってようやくISが作れるのに、言ってはアレですが、たかが学生が一人で開発できるなんてありえない。無理がある。
「・・・」
ふと、思い出してしまった。かつて、まだ未熟だった頃の自分を。
それを思うと放っておけなくなる。気付けば意志とは関係なく体が勝手に動いてしまった。
「あの、少しよろしいでしょうか?」
まぁ、自由にしていいのだから、仕方がないか。
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中々面白いことになりました。2組に転校してきた中国の代表候補生の凰鈴音さんが織斑君に宣戦布告していった。最初は幼馴染との再開を喜んでいた織斑君も、今では凰さんとの戦いに備えてISの訓練をしている。
今回は織斑君が言っていた凰さんの性格上、近接戦闘が主体になると言っていたので遠距離のオルコットさんではなく、訓練機を借りてきた篠ノ之さんとの訓練になっている。
二人の性格上、銃器を使うつもりが最初からなく、かつ篠ノ之さんは剣道の全国優勝者なので近接戦闘の練習をするのならもってこいだろう。
ただ少しだけ思うところもある。
「オルコットさん、気付きましたか?」
「はい。メイザースさんもお気付きになられましたのね」
隣にいるオルコットさんも、私と同じことを思っているらしい。同意を得られたので話を進める。
「篠ノ之さんの動きは剣道を主体にした動きです。イギリス風に言うならフェンシング。まぁ、基自体は何でもいいですが、余りにも綺麗すぎます」
「ええ。それに箒さんの動きはケンドー、武術の動きそのものです。武術は本来地上で足を付けて行うもの。箒さんの行動がISでの空中戦闘に適していません」
その通りである。実際、篠ノ之さんは真っ直ぐにスラスターを蒸かして直進的な攻撃しかできていない。あのままでは対戦している織斑君にも直線的な攻撃への対応が染み付き、今後のISでの戦闘の妨げとなる可能性が高い。
正すべきか、正さないべきか。
関わってまだ日は浅いが、篠ノ之さんは剣道へ並々ならぬ思いを抱いている。それこそ、普通では考えられないほどまでの情熱を。そしてその情熱を織斑君へ押し付けようとしているのも、前回の決闘騒ぎで確認済み。
恐らく彼女は精神的に不安定なのでしょう。まぁ、姉がISを開発してから色々と大変でしから、当然といえば当然かと。
そう思っていると、空から織斑君と篠ノ之さんが降りてくる。ズドン、と重い音を響かせながら着地すると、織斑君はISを待機形態に戻し、持ってきたIS用のエネルギーパックと白式の待機形態を繋ぎ、シールドエネルギーを補給する。篠ノ之さんの訓練用の打鉄は待機形態に出来ないので、一度ISから降りてケーブルに接続する。
このエネルギーパックはDEMが開発したもので、2回までならISをフルにかつ急速に補給できる優れものである。開発当初は世界各国が買い求め、それはIS学園もしかり。
結果、DEMをよく思わないIS委員会の一部が権力を行使してDEMに各国に配るように命令したが、ウェストコットMDが圧力でもかけたのか、指示してきた者達は上層部の意向でIS委員会を追放されたらしい。その後の行方は不明とのこと・・・。
「箒、もう少し手加減してくれよ。流石にキツいぜ」
「ほ、本気でやらねば意味がないだろう!それに一夏が鍛錬をサボっていたのが悪い!」
まるで夫婦喧嘩のような光景を延々と垂れ流し続ける。そんな二人を、特に篠ノ之さんをオルコットさんとジト目で見てる。負けてはいられない。私ももう少し織斑君と距離を詰めなければ。
「シールドエネルギーもチャージされたようですし、練習に戻りましょう。今度は私がお相手させてもらいます」
「なっ・・・!?」
私の発言に篠ノ之さんが抗議の声をあげようとしますか、なんの問題もありません。だってこの訓練機を借りてきたのは私なんですから。私が使うのが普通です。
ちなみに、アリーナには私達以外人がいないように思えますが、ちゃんと同級生や先輩達はいます。ただ皆織斑君に夢中になってアリーナの端によって見物しているだけです。
「では、行きましょう」
打鉄を纏って空を飛ぶ。そしてそれだけの動きだけで分かってしまう。やはりISは動きづらい。手足に取り付けられた巨大な金属。自分ではなく、IS側からバックアップしてくる感覚。
私も同じことを、乗る度に思っている。
武器を取り出そうと背中へ手を回すが、空を切る。失敗しました。普段使うCRユニットは背中の小型バックパックに武装を積んでいたり、人によってはレッグに付けている人もいますが、ISは武装を粒子にして機体へ格納する。つまりは無から武器を出すのだ。
イメージが大切、と人は言う。だが武器の『重さ』を知っている人間は、イメージなんかではできない。『無』だと思えない。
手順、基本を思い出して武装であるIS用の刀を取り出す。本当ならば軽くて重いレーザーブレードがベストですが、ないものを強請れない。
「いきます!」
織斑君と向き合い、スラスターを吹かしてまずは正面から突撃する。織斑君も待っていた、と言わんばかりに雪片二型を両手に構え、切りかかってくる。
私達の剣がぶつかり合う寸前、スラスターの方向をずらしてぶつかる前に下におもいっきりズレ、そしてすぐ様ジャンプするように織斑君の背後に飛ぶ。
私を見失った織斑君はISのレーダーで居場所を確認したためか、少しだけ遅れて私に追いつく。だがその頃には私の刀が織斑君の右脚を切り裂く。
「うわぁっ!」
絶対防御のお陰で怪我一つない。ISは頑丈だからこの程度で何処かが壊れたりもしない。だが、シールドエネルギーはかなり貰った。
「まだまだ序の口です!」
刀と実体化させた軽機関銃『焔火』によるアル・カタ。銃弾から逃げ回る織斑君に火を噴き続ける。だがやはり、近距離特化の機体の白式のスピードに追いつけない。ジリジリと距離を詰められていく。
何度も言うが、正直私の剣の腕も射撃の才能も、突飛っしたものはほとんどない。出来て先程のような無理矢理な軌道変更位だ。それ以外は常人よりも少し上だけ。
故に、
「おい、ついた!」
「やはり、速い・・・!」
少し時間があれば、すぐに私への接近を許してしまい、
「うぉぉおおおおお!!」
呆気なく、一太刀入れられてしまう。
右肩から左脇にかけての袈裟斬り。零落白夜を展開していなくても、シールドエネルギーを三分の一持っていく。機体スペックで突出しているのはパワーアシストもでしたか。
「まだです・・・!」
負けるつもりは毛頭ない。私にも意地はある。例え本来使うのはCRユニットで、ISには慣れていなくとも、操縦したての初心者に負けたくなんてない。
打鉄の重量を利用した幾多もの斬撃。巧みに機体のバランスを操り、終わることの無い連撃を与え続ける。ダメージを与えるためではなく、疲労させ緊張がほんの少しでも解ければその瞬間、ストレージに入っている銃器による零距離射撃を加える。
織斑君はそこまで考えには入っていない。恐らくは私がこのまま近接戦闘で倒すと思っている。
それは剣に拘り続けた故の思考。戦闘では無用の考え。
「そこ、です!」
都合、数十回目の斬撃の応酬。織斑君が苦し紛れに振ってきた雪片二型をパリィし、空いた胴体に刀を持つ手と反対の手を伸ばす。瞬間、出てきたのは散弾銃『火花』。火花の銃口を織斑君の腹部に突き立てる。
「このっ!」
「逃がしません!」
スラスターを蒸して逃げようとする織斑君。だがその前に、打鉄の腰に付けられた装備が開き、アンカーが出てきて織斑君の足に巻き付く。逃げ場を封じた。反撃の可能性も低い。
勝利条件は、揃った。
火花が文字通り、火を噴く。本来なら火花のように散っていく弾丸は、その全てが白式に命中している。一発一発の威力は小さいが、何度も何度も、それこそ弾倉が空になるまで撃ち続ければ、どんなISだといえ、必ず落とせる。
こういう時に、ISのパワーアシストは非常に役立つ。撃った時の反動で出来る銃口のブレが極端に少なくなるのだ。
弾倉が空になったあと、私の視界の端に勝利報告が告げられる。どうやら白式のシールドエネルギーが尽きかけたらしい。しかし、至近距離の散弾銃を撃ち尽くさないと勝てないとは。正攻法ならばどれだけ時間をかければよかったのだろうか。
白式を支えながら静かにオルコットさんと篠ノ之さんのいる場所に着地する。織斑君が白式を待機携帯に戻すと、余程疲れたのか座り込んでしまう。
絶対防御はダメージは防げても、衝撃までは防げない。あんな至近距離から撃たれれば、体力も減る。
「つ、強いなぁ、カレンは」
「いえ、これでも企業代表なので。織斑君こそ、中々ヒヤリとさせられましたよ」
ISから降りて織斑君に手を伸ばして立ち上がる補助をする。私と違って大きい手、それなりに鍛えられた腕。汗をかいていると凄く色っぽく見えてしまう。
「でもまだまだだな。もっと特訓して、みんなを守れるくらいに強くならないと、な!」
織斑君がエネルギーパックに白式を繋ぎ、減らしたぶんのエネルギーを供給する。
「守る、ですか」
「ああ。だってカッコ悪いだろ。女の子に守られてばかりなんてさ」
今の時代にはなかなかいない、珍しい考え方。この女尊男卑の世界では、男は常に、理不尽な女達から身を守らなければならないというのに。女性から何かを強要されたことがないのか、はたまたただ、織斑君がそういう人間なだけか。
私も、姉さんに守られてきた。いつまで?ウェストコットMDに拾われるまで。その後は?ウェストコットMDの秘書として、そして右腕として鍛え続けてきた姉さんとは疎遠になって、私は技術者として居続けて。
いや。私は本当に守ってもらっていたのだろうか?もう十年も前の記憶。ほとんど思い出せない日々。
私は、守るという言葉を失ってしまっているのだろう。
「織斑君はとても———」
汗が滴る彼の横顔。談笑する彼の姿はとても、眩しかった。