ダンジョンに人修羅がいるのは間違っているだろうか 作:巴里と鬼神
あなたの言葉にヘスティアが渋々ここで神の恩恵を授けることに頷いた。
「……わかったよ。シン君もそう言うのならここでやってやるよ。じゃあ、上着を脱いで……そこに座るんでいいかな」
ヘスティアの指示に応じて、あなたは上半身をあらわにして座り込む。
ヘスティアは自らの指を針で傷つけると、その血をあなたの背中に塗りこんで
ヘスティアとロキはあなたの背中に浮かんだ【ステイタス】を覗き込んだ。
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間薙シン 種族:魔人
Lv.1
力:&%* 40
魔:&%* 40
体:&%* 40
速:&%* 40
運:&%* 40
《魔法》
【】
《スキル》
・契約した仲魔を召喚、送還できる。
・無生物を異空間保管できる。
・
・魔石の消費で肉体の修復が出来る。
・所持している
・マガタマの励起は能動的行動。
・励起しているマガタマのスキル、アビリティが適用される。
・マガタマ、スキル、アビリティにはレベル制限が存在する。
・成長により励起していないマガタマのスキル、アビリティが追加で選択可能となる。
【アナライズ】
・眼前にいる存在の【ステイタス】を確認する。
・能動的行動。
【一分の活泉】
瀕死に到るまでの耐久力が上昇する。
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「うん……うん? なんだこれ? ……なんだこれ!?」
「な? 言ったとおりやろ?」
「根本的に色々おかしくないかい!? 基礎アビリティの等級が文字化けしてるし、運ってなんだよ!?」
「昔と仕様が違うからやろか。レベルやスキルはそれなりに今基準っぽいのにな」
驚愕から声を張り上げるヘスティアに対し、ロキは想定内とばかりに淡々と評価を続ける。
あなたが側にいる今、ロキはこれまでよりもずっと余裕を持ってヘスティアに接する事ができていた。
「【召喚】やけど、多分
「ちょっと待ってくれよロキ。それってシン君は
ロキの言葉にヘスティアが叫び声をあげる。
その声にロキはうるさいと顔をしかめながら言葉を続けた。
「あんまり大きい声だすなや……ここの精霊は人より
だとすればかつての仲魔達のなかには、精霊として過ごしているものもいるのだろうか。
そう尋ねたあなたに、ロキは残念そうに首を振って答える。
「ウチにもその辺はわからんよ。アイツら気紛れやし」
あなた達がそんな会話をしている間に、あなたの【ステイタス】をうんうん唸りながら凝視していたヘスティアが再び声を上げた。
「【人修羅】のマガツヒを直接取り込み成長するっていうのは?」
「マガツヒって呼び方懐かしいなぁ。ヘスティアは冒険者の成長の仕組みちゃんと理解しとるか?」
ロキからふられた質問に、ヘスティアは知恵を絞りながら答えていく。
「え? 成長の仕組みって言われてもなぁ……神の恩恵を受けた冒険者がモンスターを倒すと
「概要はそれでもええけどな。まず、マガツヒっちゅうのはモンスターの体を構成する……まあエネルギーみたいなもんや。モンスターを倒すっちゅうか魔石を奪えば体の大部分は灰となって霧散する。これはモンスターとしての肉体がマガツヒに戻った事を表す。んで、マガツヒはダンジョンへと還り、そのマガツヒを使って再びダンジョンからモンスターが生まれ出るって寸法や」
その部分だけを聞けば、ボルテクス界であなたが悪魔を倒して自身を強化していったのと大きく違わないだろう。
もしかしたら、かつての悪魔達のように人間からマガツヒを搾り取っているものもいるかもしれないが。
ヘスティアはロキの説明に首を捻って疑問をあげる。
「そんなの初めて聞いたけど、それと冒険者の成長と関連があるのかい?」
「大有りや、神が神の恩恵を授けることで、冒険者には器みたいなモンが出来る。その器に倒したモンスターのマガツヒが少し集まるんや。冒険者の行動に関係する箇所ほどマガツヒが集まりやすくなる、それが経験値や。で、経験値として器に溜め込まれたマガツヒを神が【ステイタス】を更新することによって冒険者の血肉として、実際の成長へと繋がるっちゅうわけやな」
「なるほど……ん? じゃあつまりシン君は……」
「【ステイタス】更新の必要がないっちゅうこっちゃ」
「……それって僕いらなくない?」
「そうかもなぁ」
ヘスティアはロキの解説に納得が行ったと一度は頷いたが、あることに気付いて動きを止める。
ロキはそのヘスティアに追い討ちをかけるとニシシと笑った。
「……【ステイタス】といえば【アナライズ】とかいうおかしなスキルが見えるのは気のせいかな?」
「気のせいやないで。シンも昔はそういう事が出来たしな。ただちょい気になる……シンはアナライズは書き換えてたはずやろ? ま、それ以前に使ってた筈のスキルが殆どないけどな」
言われてみればそうだ。あなたがヘスティアに最初に会ったときに反射的にアナライズをかけたが、アナライズと同等の効果を持つ万里の望遠鏡を手に入れてからは、他のスキルに書き換えていたのだ。──あなたが過去に戦っていた時は、マガタマからスキルを引き出してあなた自身が保持する形だった。
その為、あなたという存在の殻には保持できるスキルの数に制限があり、不要なスキルは書き換えて捨てる必要があったのだ。
しかしヘスティアに会った時、あなたはアナライズを使用出来ると思ったから使用し、実際に使用できた。それだけではない、ロキの言う通り一分の活泉もとうに書き換えたはずのスキルであり、最終戦闘で使用していたスキルがひとつも残っていない。これも弱体化の影響なのだろうか。
あなたがその事を告げるとロキは腕を組んで唸った。
「うぅむ……シン、ちょいと別のマガタマに換えられるか? ……出来そう? そんじゃあイヨマンテあたりいけるか?」
なにか思いついたことがあるのだろうか。ロキに指示されたとおりに、あなたは精神を集中してあなたが内に秘めるマガタマを呼び出した。あなたを人から別のモノへと変えたマガタマであり、宿敵に植え付けられた
「うわっ、なんだこれっ!?」
「ああ、やっぱりなぁ……」
あなたの合図を受けて改めてヘスティアとロキがあなたの背中を覗き込むと、ヘスティアは目を見開いて驚き、ロキは予想通りとばかりに頷いた。──口元に浮かぶ笑みを隠しもせずに。
表示内容だけを見ればかつてのあなたよりも格段に落ちる。だが表示されたスキルの内容とこの時点でのレベルがまだ1だというのを考えれば、
「やっぱウチの惚れた男は一味違うなぁ」
ロキがしみじみと呟き、あなたがそれに片手をあげて答える。
甘い空気が流れるが、ヘスティアがそれを許さない。
「君達イチャつく前にコレを説明してくれよっ」
そう言ってヘスティアがあなたの背中を指差した。
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間薙シン 種族:魔人
Lv.1
力:&%* 40
魔:&%* 40
体:&%* 40
速:&%* 40
運:&%* 40
《魔法》
【タルンダ】
《スキル》
・契約した仲魔を召喚、送還できる。
・無生物を異空間保管できる。
・
・魔石の消費で肉体の修復が出来る。
・所持している
・マガタマの励起は能動的行動。
・励起しているマガタマのスキル、アビリティが適用される。
・マガタマ、スキル、アビリティにはレベル制限が存在する。
・成長により励起していないマガタマのスキル、アビリティが追加で選択可能となる。
・魔法や呪詛等の要因を問わず魅了、睡眠、混乱を無効化する。
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「しゃあないやっちゃなぁ……予想通り昔と違ってマガタマを切り替えることで使えるスキルが変わるんやな。今【アナライズ】は使えそうにないんやろ? 多分昔おったペルソナ使いに似た感じやな。レベルが上がれば今使えんスキルや、メインでないマガタマのスキルも使えるようになるって認識で良さそうや」
ロキの説明通りならば、マガタマやスキルも低レベルの物から順に使えるようになっていくのだろう。
その経緯で考えるとマサカドゥスは最低でも他のマガタマが全て使えるようになってからだろうか。
あなたはなるほどと頷くが、ヘスティアが疑問の声を上げる。
「そのマガタマってのはどれくらい切り替えられるのさ?」
それに答えるのはあなたの役目だった。
現段階ではここに来た当初に確認した通り、マロガレ、ワダツミ、アンク、イヨマンテ、シラヌイの5種。
もし全て扱えるようになれば25種のマガタマを切り替えられる筈だ。
「25!? なぁ、ロキ。僕はもうお腹一杯なんだけど……」
「この程度でツッコミ疲れとはだらしないやっちゃなぁ。ほいじゃ残りのマガタマのスキルも確認していこかー」
傍目に見ても浮かれているロキとは対象に、あなたの主神となった筈のヘスティアはゲッソリとした顔をしていた。
2人の会話を聞く限り、相当前例のない状態なのだろう。だからといってあなたにはどうすることもできないのだが。
「やっぱ弱点が付いとるのは慎重に扱った方がええな。今までずっとマガタマを扱ってきたシンにゃ釈迦に説法かもしれんけど、一応な」
――一通りのマガタマのスキルを確認して、ロキがそう漏らした。
例えば
以前のセオリー通り、能力を把握していない相手には弱点のないマガタマで挑んだほうが良いだろう。
あなたはそんな事を考えながら上着を羽織っていく。
「それじゃあ用も済んだし
あなたが着替え終わるのを待ち、やっと解放されるとばかりにヘスティアが声をかけて来る。
しかし、ロキがそれに待ったをかけた。
「ちょ! ちょい待ちーや! ドチ……いや、ヘスティア、ヘスティアさん、待って下さい!」
「今度はなんだよ?」
珍しく下手に出てきたロキを胡散臭そうに睨みつけながらヘスティアが尋ねると、ロキは拝み倒すような形で頼み込んだ。
「久しぶりの再開なんやで!? 一晩、せめて一晩だけでもシンを貸して貰えん?」
一晩。ロキの言葉の意味を察したヘスティアは一瞬で顔が真っ赤に染まる。
「ひ、一晩って、そそそ、そんなふしだらな事に、ぼぼぼ僕の大事な家族は貸せないよっ!」
あらぬ想像をしたのか酷く動揺しながらヘスティアが大げさに手を横に振りながら否定した。
普段のロキだったらここで初心な女神をイジる所だが、今ヘスティアの機嫌を損ねたら元も子もないと判断したのだろう。ロキはぐっと我慢して言い募り、あなたからも頼み込んだ。
「お願いや! 今までずっと会えんかったんや……この借りは必ず返すから……」
「……しょうがないなぁ。シン君までそう言うんなら……」
あなたの言葉と涙を浮かべて懇願するロキの姿に、ヘスティアがついに折れた。
しかし、ロキに指を突きつけて警告するのも忘れない。
「でも今晩だけだからね! シン君は朝には帰ってくること。前からお付き合いしてたっていうから多少は考えてやるけど、節度を保つんだぞ! シン君はウチの子なんだから、ロキもあんまり引っ付いて回るなよ!」
ヘスティアは一気に捲くし立てると、肩を落としてブツクサと小声で悪態をつきながら帰っていった。
ヘスティアが退出したのを確認すると、早速ロキが甘えるようにあなたに抱きついてくる。
「さあって、邪魔者も帰ったことやし、イチャイチャしよかー……あたっ、何するんや!」
あなたに額を小突かれたロキは抗議の声を上げた。
あなたも一応ヘスティア・ファミリアに属する事になっているのだ。神の恩恵を受ける事もロキが認めて勧めたことだ。だとすれば邪魔者扱いは良くないし、関係も改善していく必要があるだろう。
ロキはあなたの小言に口を尖らせながらも不承不承頷く。
「ちぇっ、しゃーないなぁ……」
それさえ判ってもらえればあなたからはこれ以上言う事はない。
あなたにとっては一瞬でも、幾星霜を超えて待ってくれていたロキに報いる必要はあるだろう。
それをロキの唇を塞ぐ事で表明した。ロキの体が一瞬強張るがすぐに力が抜ける。
あなたはそのままロキの腰に手を回し、抱き寄せていった。
ヘスティア様にも春はちゃんと来ます。
次回は2/10(土) 23時更新予定