プロデューサー何某ユン、アイドルへ転向する   作:おーり

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たまには愛を込めた作品を書きたかったのです


同僚が節穴過ぎた件について

「アイドルを、やってみませんか?」

 

「――はい?」

 

 

 素っ頓狂な声が出たのも仕方がない。

 俺は今まで縁の下の力持ち的な立場の人間で、というか、そんな煌びやかな方向へ自らを発揮するような仕事をしてきたつもりもないのだ。

 むしろ俺にそんな声をかけるというのなら、俺がプロデュースする子たちこそもっと持ち上げてくれよ、と声を大にして言いたい。

 

 

「……返事は直ぐじゃなくとも構いません。しかし私は貴女にも、あのステージは相応しいと思っています」

 

「いや待て、待て待て待て。た、武内サン? 俺の仕事、忘れたわけじゃないよね!?」

 

「ひとつだけ、貴女を選ぶ理由を上げろと言うのなら、そう――笑顔です」

 

「なんか重大な場面で使うべき科白さらっと吐き出したけどもちょっと待てって!? 俺プロデューサーなんですけど!? あんたと同じ! 同じ職場の! ねぇ聞いてる!?」

 

 

 仏頂面でよくアイドルとのコミュニケーション取れてるな、と普段より感心しきりの強面同僚にとんでもねぇ爆弾落とされました。

 これが酒の席なら笑い話ですが、素面。

 かつ、千川さんの目の前です。

 ……あっ、笑顔の修羅が見える。

 

 

 

  ☆

 

 

 

 高校卒業後、一身上の都合で無駄にスキルばかり得ていた俺は、大学進学を選択せずに就職に足をかけた。

 色々と片付けるべき問題や、解決すべき事情が当時に山積みになったわけだが、それを『なんとかすること自体』が俺だけではどうしようもなかった、ということが当時の理由だ。

 何より生きて行くためには身銭が心許無く、むしろせっかく様々なスキルを持っているのだから、と華の学生生活を放り出し、同年代よりも一足お先に社会へ吶喊した、と言っても過言ではない。

 

 346プロに就職した、というよりは元々スタッフバイトという立場で入り込んだ経緯である。

 そこから紆余曲折、社内あちこちの雑務に駆り出され続けて、なあなあのうちに社員に取り立たせられていた。

 プロデュース業に身を(やつ)したのも、最近発足したアイドル部門の牽引にコミュニケーション能力に若干の難を抱える後輩が、それでも備える実績を見出されて採用された状況を黙って見ていられずにフォローすることを買って出た、という程度が足掛かりでしかない。

 事実、事業の新規開拓としてアイドル戦国時代とまで称される現代に、大規模な全国募集を懸けたのだ。

 それをたった14人に絞ることがとてつもない人材の鴨撃ちであり、取りこぼしが勿体無さ過ぎる選考漏れが目立ちすぎたことを見ていられなかった。

 夢を抱いて、目標を抱いて、しかして手を届けられなかった理由が『会社の都合』ではあまりにも可哀そうで。

 

 ――見ていられずに拾った結果、『俺がプロデュースするアイドル』が纏まってしまった。

 

 本末転倒(はなは)だしいわけだが、元々誰かを支援することが好きだったことも相俟って、そちら側とは上手く付き合えていると思う。

 それでも両手で数えられる程度であり、取りこぼしてしまった少女たちはもっと数えきれないのだが、……まあ、その辺りの愚痴はまた別の場所で語ろう。

 

 プロデュースの主体は武内サンだから、俺があまり口出しすることは憚られる。

 が、元々彼の過去を何とはなしに把握して、其処に不安を思ったことで手助けを買って出たのだから、本末転倒しようとも付き合いがおざなりになっては意味がない。

 勿論、彼の陣営とも仲良くやって、紆余曲折があってアイドル部門のスタートダッシュは一様の結果を示すことに成功した。

 その実績は武内サンと彼女たちのモノだけど、僅かばかりの手助けが少しは功を奏していたのだと、それくらいの自負は抱いてはいたんだ。

 

 

「……その恩返しがこれかよ」

 

「良いじゃないですかアイドルデビュー。雉子(キギス)プロデューサーによくお似合いかと思いますよ?」

 

「ちっひにも言われたよ……」

 

 

 というか、担当アイドルからも推奨されるってまずおかしいだろ。

 断ってもやけに食い下がってくるな、と思っていたらあの妖怪メイシダケデモ、既に上の方に俺のアイドル登録を打診していたらしい。

 どおりで食い下がりの上に耳も貸さないと思ったよ、出来レースじゃねぇかチクショウ。

 

 

「というか(タチバナ)、俺がデビューする前にお前らがデビューするのが当然だろうが。自分の外見がアレなのは今更どうでもいいけど、お前らのデビューを蹴ってまで自分を推薦するほど切羽詰まってないぞ俺は?」

 

「ありすです。雉子Pはもっと自分の価値を把握すべきだと思いますけど」

 

 

 現役のJSにジト目を向けられる。

 これが幼馴染なら『ご褒美です』などと宣うのだろうか。

 いや、あのゲーム馬鹿はそんな人物じゃなかったよな。会わなくなって随分と久しいので人物評価も掠れているらしい。危険な傾向だ……!

 

 

「価値って、やったことといえばプロデュースの手助け程度だし……。その手助けの必要性が問い糺されたからこうしてリストラの憂き目に合っているとも言えなくもないけどな……」

 

 

 自分で言ってて有り得そうな気がしてきた。

 社員なのに会社に貢献しないのなら、見た目だけでもそれっぽいから転向しろ、って言われているんじゃなかろうか。

 沿う言うとアイドルのこと馬鹿にしてんのか、って言われそうだが、自分が現状女子として動き回れる姿を維持できているからこそ下せる自己評価で、そういう【全盛期】を『どこまででも』貫けそう、ってことを上も見越しているから誂えられた下知なのではないか、と思えてきた。

 思わず斜に構え陰を作る。

 もう27なのに、ある意味異常なのに、受け入れてくれている会社なのだからやはり相応の貢献で応えるべきなのだろうか。

 

 

「いえ、そんなことはないと思いますけど。というかむしろ恩返しなのでは……? ああでも凹んでる雉子Pかわいいです」

 

「橘ぁー、心の声が漏れてるぞー」

 

 

 多分一般で言う方向とは真逆のベクトルで暗い決意を固めていると、どやどやと部屋へ入ってきた少女たちが目に入る。

 そんな中から橘に謎の声掛けをしたのは、同じく俺がプロデュースしている結城 (ハル)だった。

 

 

「ありすと呼んでくださいって言ってるじゃないですか晴さん。同じアイドルなんですから仲良くしましょう」

 

「……うん、お前俺の知ってる橘じゃない気がしてきた……のはむしろいい傾向かもしれねーけど、仲良く(それ)を表明する癖になんでプロデューサーのことは苗字呼びなんだ?」

 

「そりゃあ、公私の区別はつけるべきですし」

 

 

 何処かキョトンとした顔つきで、クールタチバナはそう宣う。

 しかし、続けられる言葉に、警戒が先立つのは致し方のないことだった。

 

 

「でもアイドルデビューすればプロデューサーとの仲にもっと踏み込んでも問題ないですよね?」

 

「踏み込んで何するつもりだお前」

 

 

 明らかに相談する相手を間違えたらしい。

 俺のプロデュースするアイドルたちの紹介はまた今度ってことで、事務所からスニーキングミッションのごとく逃亡を図る俺がいた。

 

 

 

  ☆

 

 

 

「――逃亡した意味、無かったなぁー……」

 

 

 数日後、予想以上の早仕上げで、舞台脇に控える俺がいた。

 武内サンの手伝いの伝手でスタッフの仕事に手を出すこともしばしばあったからわかるのだが、こんなに早くに全部のお膳立てができているなんて脅威以外の何物でもねーぞ……!

 

 衣装、デビュー曲、振り付け、場所の確保、一人がデビューするだけだ、と簡単な仕事で済ませられる話であるはずもないのに、とりあえずで上げ連ねた以上のモノは一週間もしないでご用意された。

 時間も押しているから、と遣り方を身体に仕込んで、万全の状態で俺はこの場にいる。

 あとは出て行って歌って踊るだけである。

 

 ……後から知ったことだが、そもそも俺がこの会社に就職した事情の裏に、アイドルとしての登録が下地として用意されていたらしい。

 最近になって発足したはずのアイドル部門だが、その下準備が控えてあることは当然で、数年後を見越しての用意がようやく実を結んだと企画部の方々は感無量であることだろう。

 でもそれならそれで俺に黙って個人登録を済ませる必要性は無かったのではなかろうか。

 まあ、当時高卒の小娘を真っ当な就職口として確保することが奇特だったことは知ってはいたけど、その扱いの方向性を隠匿してまで数年規模レベルでこんな大掛かりなドッキリを仕込まずとも……!

 

 

「素晴らしいですよ、雉子P……!」

 

「おうありがとな。お前らも早いうちにきちんとアイドルデビューさせてやるから待っとけ」

 

 

 蟀谷に井形を滲ませつつ、しかし笑顔で応える。

 これを皮肉と理解できたのは晴だけだった。

 

 

「おう、俺も似たような感じでよろしく」

 

 

 そう応えられる俺の意匠は、ホットパンツで生脚を惜しげもなく晒すが、飾り立ては然程も無いシンプルなデザイン。

 こいつにはふりっふりのスカートを用意してやろう。

 

 

「雉子さん、出番です」

 

「了解だオラぁー!」

 

 

 半ば自棄になって吶喊する。

 予想以上に集まっていた客の前に怯み掛けるが、そこで躓くと良いことが無いのは把握しているのでノリのままに歌い出す。

 

 曲名は『(俺が)お兄ちゃんだけど愛さえあれば(アイドルデビューも)関係ないよねっ』。

 思い通りに恋しよう、みんな可愛くなれ、女の子は誰だってセルフプロデューサー。と曲名も歌詞もとんでもねぇ皮肉の(サマ)である。

 誰だコレ考えたのァ!?

 

 




登場人物紹介

~雉子ユン
 クロスしたもう一方の原作の主人公、苗字は適当
 才能取得開発系のVRMMOでゴミセンスと呼ばれる才能ばかりを取得した初心者という剛の者
 男子なのだがシステムに女子と間違われネカマを敢行する羽目に
 そうして生まれたのが黒髪長髪の清純派乙女なのだからアイドルデビューするしかないよね! え? 誰か等と被ってる? 問題ないよ(目逸らし
 この世界にいる理由もあるけど、語る必要性が浮かばない


~武内P
 妖怪メイシダケデモ
 放送当時は声優さんが17歳とかいう話で逆ウサミン星人扱いされていた主人公
 一応はアニメ世界でのPらの代替え、という立場なので年齢もまちまちなのだが、この世界では25~7としておく。わずかにユンユンの年下という設定
 色々とプロデュースしているアイドルたちとパーフェクトコミュニケーションを通過していった、現在地がいきなり二期からの開始という暴挙
 でも改めて読み返したいか?と敢えてドクシャへ問いかけてゆくスタイル


~橘ありす
 カンスト
 むしろ天元突破なP大好きっ娘JS
 ユンユンが女子だからこの程度で済んでいる、というもっぱらのうわさ


~結城晴
 ありすと合わせて出したのは公式の某作品で『そうなっている』からとしか
 いや、あっちはあっちでP要らない子なんじゃないかな、って思いが…ゴメン(切実



思い返せば、

本気で好きな作品を二次にした覚えが碌にない俺氏
そんなときに、とあるキャラの科白を思い出した

「もっと、愛を込めて!!!」

なるほど。愛か

そうして出来上がったのがこんなプロローグモドキ
好評なら続けます
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