りっく☆じあ~す×リトルアーモリー ~誰の為に引き金を引く~ 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
目の前――というより、双眼鏡で覗いた先の景色は、敵しかいなかった。
「こんな明るい内に突入ですか? どうぞ撃ってくださいと言ってるようなもんですよ」
砂丘に隠れ、双眼鏡から目を離した西部が、須恵原1尉に問う。が、須恵原1尉は口を開いた。
「既に、連中は機甲師団が接近しているのに気付いている。夜まで待っていたら、守備部隊を増やされて、この町が廃墟か更地になってしまう。坂城2尉、さっき言った通りに狙撃班を先に潜入させ、我々も続く」
その指示に、坂城2尉が応える。
「了解。1-2、2-2、狙撃班のエスコートと進入路の確保だ」
すると、朝霞が須恵原1尉に質問した。
「須恵原1尉、ROE(Rule Of Engagement、交戦規則)は?」
「武装している者、無線や携帯を持っている者は容赦するな。後者と一般人の区別は難しいだろうが、そこは徹底してくれ。海外で自衛隊の評判を落とす訳にはいかないからな」
「了解」
「よし、前進だ。何かあれば、ここから支援射撃をする。スナイパーには気を付けろ」
「了解。皆、前進」
そして、14人が移動を開始した。
アスラール共和国の首都・エルダビアから南西に180kmの所にある街、ファルジナ。ペルシャ湾に面した港町から運ばれてくる物資は、必ずここを通ってエルダビアへ向かう、云わば交通の要所であった。
「いた。ASF兵士、2人。奥には……誰もいない」
14人は壁伝いに移動し、ファルジナに潜入するのに成功した。そして、先導していた国分が、曲がり角で敵を見つける。
「私が奥のをやる。相浦は手前を。くれぐれもヘボをするなよ?」
「これだから元1空は嫌いなんだ」
愚痴りながらも、相浦は89式多用途銃剣を取り出す。すると、習志野がレッグホルスターからUSP自動拳銃を抜きながら返した。
「好き嫌いなら、日本に帰ってから聞いてやる。やるぞ」
延長銃身の銃口カバーを外し、減音制退器(サウンドサプレッサー)を装着。弾倉を外し、代わりに緑色の弾丸――亜音速弾――が入った弾倉を装填、遊底をスライドする。
2人は曲がり角に並び、習志野は立って、相浦は片膝を地面に付ける。
「ゴー」
習志野はUSP自動拳銃で発砲、相浦が近くにいたASF兵士に駆け寄り、頸を89式多用途銃剣で突く。
くぐもった銃声と共にASF兵士が倒れ、相浦が89式多用途銃剣を引き抜く。
「クリア」
「移動する。松本、あれとかはどうだ?」
レッグホルスターにUSP自動拳銃を仕舞いながら、習志野が通りの向かいのビルを指差す。
「使える。沢城チームはあっちのビルへ。発砲はまだ」
「了解」
直ちに二手に分かれ、警戒しながら通りを渡る。
「よし、行くよ」
朝霞が言い、隊員達――練馬、富山、多賀城、沢城桐子、沢城昌子、照安――が頷いた。
扉を開け、中に入る。中は暗く、窓も無い。
7人は警戒しながら、静かに進む。曲がり角を確認した練馬が左手でグーサインを出し、入り口を警戒していた富山の肩を朝霞が叩き、進む。
突き当たりの階段を、ゆっくりと登る。
4階へと登った先には、マグマ軍歩兵の後ろ姿。
朝霞がハンドサインを出し、多賀城が腰に提げていた短刀〈白之紫〉を鞘から抜く。そして、マグマ軍歩兵の背後から近付き、左手でマグマ軍歩兵の口を抑え、右手の〈白之紫〉で首を斬った。
(富山士長、多賀城1士は右手の部屋を。私と練馬は左手の部屋を制圧する。狙撃班は階段を警戒)
朝霞がハンドサインで指示を出し、皆頷く。そして分かれた。
富山と多賀城が扉の前に立ち、頷き合う。そして、扉をゆっくり開けた。そこには、窓際でPKM汎用機関銃を伏せて構えるマグマ軍歩兵と、隣でAK-74自動小銃を床に置き、双眼鏡で監視するマグマ軍歩兵。幸い意識は窓の外、南側を見ている。
2人は89式多用途銃剣と〈白之紫〉を抜き、ゆっくり近付く。そして、首をさくっと斬った。
〔クリア。こっちは見晴らしがいいわ〕
「こっちもクリア。南側が見える」
「多国籍軍が攻めてくる方だ」
〔こっちなら、北も見えるわよ〕
〔了解、そちらに向かう〕
通信を終え、富山はPKM汎用機関銃を持ち上げた。
「これより南側を監視する。万が一あったら直ぐに知らせる」
〔了解。気を付けてよ〕
「ああ」
富山は伏せ、PKM汎用機関銃の尾筒蓋(フィードカバー)を開いて、装弾を確認した。
沢城達は移動し、朝霞達が制圧した部屋に入る。窓は、北・西・東それぞれにあり、確かに視界がいい。
桐子は背負っていたM24A2対人狙撃銃を手にし、銃口に減音制退器を装着し、作動桿を引いた。
「こちらシュガー4。配置に着いた」
〔シュガー1、了解。シュガー1よりゼブラ、準備良し〕
〔ゼブラ、了解。移動する〕
砂丘に隠れていた、残りのメンバーが移動を開始した。
「お姉ちゃん、敵の見張り」
「確認した」
観測用単眼鏡を覗いていた昌子が、ビルの屋上にASF兵士を見つけた。
「シュガー4からゼブラ。敵の見張りを発見した。これより排除する」
〔ゼブラ了解。全員、止まれ〕
並べたテーブルの上に伏せた桐子は、深呼吸をする。
「距離は? だいたい260m?」
「264m、撃ち下ろし14°。ほぼ無風」
観測用単眼鏡のレーザー測距機能や水平儀、周りの景色からの情報を、昌子は桐子に伝える。
スコープの規正距離(ゼロイン)は400m、覚えている数値を元にスコープのダイヤルを回す。
スコープの倍率は最小、十字型照準線がASF兵士と重なる。
引き金に触れ、スコープが上下に揺れるのが治まるのを待つ。そして、引き金を引いた。