りっく☆じあ~す×リトルアーモリー ~誰の為に引き金を引く~ 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
「--ばる中東までやってきて、自衛隊もすっかり変わってしまったね。お兄さん、生か死か、どっちがいい?」
「何で日本人がここに--」
「早く答えないと、大事なタマを撃っちゃうよ?」
「待て、俺はまだ--」
ドゴォン。
朦朧としてはいた意識が、1発の銃声ではっきりとした。痛みは無いが、体が動かない。かろうじて動く腕を動かすと、何か硬い物で囲まれているのが分かった。
(いや、挟まっている?)
渾身の力を込めて目の前の硬い物を押し退け、上体を起こす。周りは暗く、所々で照明が付いてはいた。彼女はヒップホルスターからUSP自動拳銃を抜いて近くの物陰に隠れた。
【Tell the UN soldiers(国連軍兵士達に告ぐ)! We ASF and Magma Army let's extend our help to all UN soldiers(我々ASFとマグマ軍は、全ての国連軍兵士達に救いの手を差し伸べよう)! Get out in a visible place(見える場所に出てこい)! If you are hiding, you will regard it as an invasion act(隠れていると、侵略行為と見倣すぞ)!】
彼女は、スピーカーから流れる英語の全てを理解できなかった。しかし、今見つかれば碌な目に遭わないというのは分かった。
〔--イアイ41より全--バーン北西16kmで大規模な--動が無かった事から、人工て--ちにファルジナより撤--〕
耳に当てたヘッドセットから無線で指示が聞こえた。しかし、調子が悪いのか電波が足りないのか、あまり聞き取れなかった。
彼女は、物陰沿いに移動を開始した。
道路に出来た亀裂を、匍匐前進で進む。その上を、何も知らないASF兵士やマグマ軍歩兵が飛び越えていく。
(お願い、見つけないで!)
彼女は祈る思いで進む。
道の真ん中に墜落したUH-1Y汎用ヘリの残骸から米海兵隊員の死体が転げ落ち、彼女は悲鳴を上げそうになる。咄嗟に口を塞ぎ、出かかった悲鳴を必死に抑える。そして、匍匐前進を再開した。
何とか通りを渡りきり、彼女は近くの建物の扉をそっと開ける。そして、中に入って音が出ないように扉を閉めた。
「連中、核実験なんて夢にも思ってないだろうな」
「日本軍も自棄になって取り返しに来ているが、もう手遅れだ。知ってるか、日本は若い女だけの部隊を作って送り込んでるってよ」
「まじかよ、見た目が良ければ--」
「だな」
2人のASF兵士が、入口に近い所で談笑をしていた。アラビア語だったため内容は分からないが、1人が近付いてくる。彼女はUSP自動拳銃をヒップホルスターに仕舞い、代わりにコンバットナイフを抜く。真っ暗闇を利用し、静かに近付いて死角に引き込む。そして、コンバットナイフで首をかき切った。
「おい、どうした?」
小さな物音に反応した、もう1人のASF兵士がやってくる。彼女は素早く体勢を立て直し、息を潜める。
「返事くらい--」
躊躇い無く、ASF兵士の首にコンバットナイフを突き刺した。そして、彼が持っていたFAJR-224自動小銃を奪う。
30連P-MAG弾倉を外し、一番上の弾を押して残弾を確認、そして弾倉を元通りにしっかりと差し込む。槓桿を勢い良く引くと、薬室から1発の5.56×45mm SS109弾(フルメタルジャケット弾)が弾き出されたが、彼女は放っておいた。
「おい! 何の音だ!?」
廊下の角から飛び出してきたASF兵士に、彼女はFAJR-224自動小銃の銃口を突きつけ、こう言った。
「Freeze(動くな)」
しかし、ASF兵士は手にしたG3A6自動小銃の銃口を上げる。
彼女は、引き金を引いた。
「銃声だ!」
「味方か!?」
「敵も味方も5.56mmを使ってるんだ! 分かる訳が無いだろう!」
銃声を聞きつけたASF兵士達とマグマ軍歩兵達が、建物に突入する。
その入口の死角に隠れていた彼女は、足音が遠ざかっていくのを確かめ、外へ飛び出した。
細い路地を進み、南へ向かう。すると、物陰に何かいる気配を察知した。FAJR-224自動小銃の銃床を肩に付け、M2ドットサイトを覗く。ゆっくりと近付くと、それは動いた。
「Don't move!」
「Freeze!」
お互い銃口を突きつけ合う。FAJR-224自動小銃とM4A1MWS自動小銃の銃口は、互いの胴体を向いていた。しかし、M4A1MWS自動小銃の銃口が先に下がり、彼女に銃口を向けていた誰かが口を開いた。
「恵那ちゃん......?」
「未世?」
M4A1MWS自動小銃を携えた朝戸が先導し、FAJR-224自動小銃を持った豊崎が続く。
「そういえば、無線聞いた?」
「いや、聞こえなかった」
「そっか......どうやらあの『揺れ』、地震じゃないみたいだよ」
「地震じゃない?」
「人工的な爆発、核実験じゃないかって。詳しくは分からないけど」
「核......私達がここに来たのって--」
「だとすれば、手遅れだね」
そんな中、航空支援機を護衛するために、CAP(Combat air patrol、戦闘空中哨戒)中だったフランス空軍所属のラファールC多用途戦闘機達が、突然ロックオンされた。
〔周波数解析——F-14か!?〕
「だとすればイラン軍のものだ! デュランダルリーダー、エンゲージ!」
ラファールC多用途戦闘機達は増槽を捨て、MICA RF中距離空対空ミサイルを発射した。当然敵機も、AIM-23C セジル中距離空対空ミサイルを発射、双方がチャフを撒いて散開、回避機動を取る。
ラファールC多用途戦闘機に被害は無かったが、敵機編隊の半分が撃墜された。そして、ドッグファイトに突入した。ラファールC多用途戦闘機は可変カナード翼とフライバイワイヤを駆使して旋回、敵機も可変後退翼を目一杯広げてフラップを下げてシザース機動へ。
ラファールC多用途戦闘機のFLIR(forward looking infra-red、前方赤外線索敵装置)は、敵機のシルエットを捉える。アメリカ製可変後退翼艦上戦闘機・F-14AM トムキャットに化けた、マグマ軍の艦上戦闘機14號AM型を。
2人は通りを突き進む。角で止まり、朝戸はコータムⅡで連絡を取った。
「ベーカー1-2よりニアボアブラザー。テイクアウターは何処だ?」
〔ベーカー1-2、朝戸ね?〕
「あ、宇都宮さん」
〔あ、じゃないでしょう!? まだ見つかってないのはあんたと豊崎だけよ!?〕
「恵那も一緒にいます。ただ、コータムが不調らしくて」
〔そう......今作戦開始地点にいるわ。20分後、米陸軍のMRAP部隊が救援に来てくれる。くれぐれも遅れるんじゃないわよ?〕
「了解。恵那、行くよ」
「分かった」
2人は駆け出した。