りっく☆じあ~す×リトルアーモリー ~誰の為に引き金を引く~ 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
豊後水道上空を、3機のヘリコプターが低空飛行していく。
宵の空に溶け込むような、濃い蒼色の洋上迷彩が施されたそれは、海面を掠めるように飛んでいく。
双発ターボシャフトの中型特殊作戦用ヘリコプター――三菱重工 UH-60JⅡ改 ブラックホーク――は、前方赤外線装置によりぶつかる事無く飛行する。その機内には、自動小銃を携えた女性――否、少女達が乗っていた。
「そろそろだ。降下用意」
1人の、ぼさぼさの茶髪をポニーテールに結った少女が声を出し、一斉に作動桿が引かれた。
数日前――
「い、異動ですか!?」
「そうだ、坂城2尉」
自衛隊及び国連多国籍軍の連合軍による九州奪還作戦の直前、陸上自衛隊 陸上総隊 中央即応連隊の坂城 大翔(さかき ひろと)2等陸尉はこう言われた。
「貴様の小隊は、半数が病院送りにされていて、満足に戦えるが2個分隊にも満たないからな。そこで、小隊を解散し、使える人材は別隊に異動させる事になった」
「確かに、関東ゲリラ戦の際に小隊は奇襲を受けて――一体、何処に異動なんですか?」
「第18機動旅団 即応機械化中隊 第1小銃小隊だ」
「18旅団って――『関東奪還の英雄』率いる部隊じゃないですか!? 『化け物相手に国際法なんて知ったもんじゃない』とか言う精鋭部隊に、何で――」
「最適なのがいなかったらしい。それに、『関東奪還の英雄』こと土居内1佐は旅団長になったからな。即応機械化中隊は別のが指揮っている」
こうして坂城2尉は、かつて中央混成連隊、即応混成中隊と呼ばれていた即応機械化中隊に配属になったのであった。
UH-60JⅡ改特殊作戦ヘリは、宮崎県 都農に侵入した。
搭載された7.62mm M134ミニガン多銃身機関銃を地表に向けて警戒、ドアを開け、ホイストにロープを掛ける。そして、ロープを手足で挟み、滑り降りていった。
着地した彼女達は暗闇に紛れ、消えていった。
「何だって大将姉様がいない時にヤポンスキーが攻めてくんのよ!? 空気読めってんだ!」
暗闇の国道を車列が通る。先頭はBRDM-2偵察装甲車、その後ろにZIL-4104高級自動車と2台のUAZ-469多用途車がくっついていた。
そして、ZIL-4104高級自動車の車内では、1体のマグマ軍――日本南西軍 副指揮官・カテリーナ少将――が暴れていた。そして、別のマグマ軍――日本南西軍 本部親衛隊隊長、ノーナ大佐――が宥める。
「大将殿は関東奪還の為に作戦を立てたのです。その留守を預かるのが我々の任務です」
「分かってんわよそんぐらい!」
「ビンゴ、マグマ軍の将校ね」
車列を見ていた少女達の内の1人が、双眼鏡から目を離しながら呟いた。
「普通、指揮官の親衛隊は1個戦車小隊と2個歩兵分隊が付くって、あの単眼が言っていなかったか、守山准尉?」
「綾音でいいって言ってるでしょ? 1個歩兵分隊って事は、副指揮官の警護隊かしら?」
「で、姐さん。どうするんで?」
「当然、叩くに決まってるでしょ。国分士長、軽MATで先頭の偵察車を。相浦3曹がバックアップ。鞠亜ちゃんはあの黒塗りセダンの運転手を。他の狙撃手はセダンに乗っている護衛を排除。残りはジープもどきを廃車にしなさい。あ、1台は残しといて。軽MAT発射を合図に各個射撃開始!」
それを聞き、部隊は車列を追う。白髪ショートの少女は背負っていた歩兵携行型対戦車ミサイル――01式軽対戦車誘導弾(軽MAT)――の保護キャップを全て外し、夜間暗視装置を起動、覗き込んでBRDM-2偵察装甲車に十字型照準線(クロスヘアレクティカル)を合わせる。攻撃モードをトップアタックモードへ。ミサイルシーカーがターゲットを識別、発射準備が整った。
「1発行きます!」
少女はそう叫び、引き金を引いた。
発射された対戦車ミサイルは、勢い良く急上昇、ある程度上昇した所で急降下へ。ミサイルシーカーは確実にBRDM-2偵察装甲車を捉え、特攻機の如く飛び込んだ。
タンデムHEAT(対戦車成形炸薬)弾頭の1段目は砲塔を、2段目は車体を木っ端微塵に吹き飛ばす。
「な何だ!?」
「奇襲です! 少将伏せて! ドライバー、何があっても止まるな!」
黒髪ロング双眼のノーナ大佐が、ホルスターからマカロフPM自動拳銃を引き抜き、運転しているマグマ軍歩兵に指示を出す。
彼らを乗せたZIL-4104高級自動車は一瞬減速するも、直ぐに加速、反対車線に飛び出してBRDM-2偵察装甲車の残骸をかわす。
しかし、ツインテールの少女は自身の唇を舐め、肩に担ぐように構えたM82A2対空/対物狙撃銃の狙いをずらし、引き金を引いた。
強い衝撃と共に、ZIL-4104高級自動車が時計回りにスリップ、田んぼに落っこちた。
「くそ、スナイパーか!?」
ノーナ大佐が叫び、床にひっくり返ったカテリーナ少将が泣き喚く。
「冗談じゃないわ! 上官や共産監視委員相手に媚びへつらってここまでのし上がってきたのよ!? ヤポンスキー如きに邪魔されたくないわ!」
スコープの十字型照準線は、ZIL-4104高級自動車の運転席にいるマグマ軍歩兵の頭と重なる。
そして、引き金が引かれた。
分厚い防弾フロントガラスを貫いた弾丸が、マグマ軍歩兵の頭を粉砕し、防弾プレート入りヘッドレストを貫通、防弾リアガラスにめり込んだ。
「アンチマテリアルライフル!?」
ノーナ大佐が驚き、カテリーナ少将が泣き叫ぶ。
「ノーナ! 何とかしなさいよ!」
「当然です、少将」
ノーナ大佐は座席の下から、RPKS-74重小銃を取り出し、80連並列弾倉を装着、作動桿を引いた。
その時、助手席に座っていたマグマ軍歩兵が、迂闊にもドアを開けて外に出た。
「馬鹿! 今外に出たら――」
直後、AKS-74自動小銃を手にしたマグマ軍歩兵は、頭を撃ち抜かれた。
スコープを覗きながら、少女は作動桿を引く。
「ヘッドショット、ヒット。車内に……まだ2人いるな」
ほぼ同時に、2台のUAZ-469多用途車のヘッドライトが狙撃され、辺りは真っ暗闇になる。
数発の銃声により、護衛のマグマ軍歩兵が全滅した。
(この手際、奴らはSOG{特殊作戦部隊}か!?)
RPKS-74重小銃を手にしたノーナ大佐は思慮する。
右前輪が何処かへ飛び、田んぼに頭から落ちたZIL-4104高級自動車へ、2人の少女が近付く。片方はMK18 mod1自動小銃からMP7A1短機関銃へ、もう片方はMK18 mod0自動小銃からM500手動散弾銃へと持ち換える。
先台(フォアエンド)をスライドし、初弾を薬室に込める中、MP7A1短機関銃を手にした少女は、開いていた助手席から閃光音響手榴弾(スタングレネード)を投げ込んで離れた。
「――!?」
ノーナ大佐とカテリーナ少将は目を見開く。直後、閃光音響手榴弾は起爆した。
再び2人の少女はZIL-4104高級自動車に近付き、助手席から手を差し込んで後部ドアを開ける。そして、三半規管と目と耳をやられてもがき苦しむ2体をZIL-4104高級自動車から引きずり出し、パラコードで作った縄手錠を両手両足に嵌めた。
「ターゲットを確保。繰り返す、ターゲットを確保」
〔了解。撤収するわよ〕
すぐにUAZ-469多用途車がやってきて、2人は2体を荷台に載せる。そして、18人の少女達は移動を開始した。