悪魔は彼の中に住む   作:正体不明.

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リューゲ達が入学してからそろそろ二週間が経とうとしたある日、ホグワーツの中庭でグリフィンドールの一年生とレイブンクローの一年生が彼らの代表である二人の少年に声援を送っていた。
そして何時もなら彼らと一緒になって馬鹿騒ぎをするであろうリューゲは…その声援を受ける側になってた。周囲の声援を聞き流しながらリューゲはどうしてこんなことになってしまったのか頭を抱えていた。


始まりはレイブンクローの一年生がリューゲに話しかけてきた事だった。
飛行訓練の授業が楽しみで三十分も前に中庭に着いていた四人が駄弁っているとレイブンクローの生徒が話しかけて来たのだ。彼は名前を名乗った後 ー確かグレースとか言っていたー リューゲにある挑戦を持ちかけた。当然リューゲは面倒くさがったが近くにいた三人と他の生徒達が乗り気になり全てが勝手に決められてしまったのだ。

そしてその挑戦がまた問題だった。挑戦のルールは簡単、リューゲとグレースが授業開始五分前に中庭に並べてある箒でホグワーツ城の中でも一際高い塔の周りを一周し先に戻って来たほうが勝ち、というものだった。
まず五分前ということは教師に見られて罰則を食らう可能性もある。さらに言うならばもしそんな高い所から落ちて生きていられる保証は無い。

そして何よりもの問題はリューゲが箒に乗るのが始めて、ということだ。一方アインスは名家の出身らしく箒は身近にあるものだ。そんな相手にリューゲが敵う筈も無い。
とはいえ挑まれた勝負を買わないのはダサいし全て勝手に決められているのだ。仕方ないと割り切りリューゲは勝負を仕方無しに承諾した。




そして現在に戻る。リューゲは今更ながらこの勝負に乗った事を後悔していた。今のタイミングで問題を起こすと兼ねてより計画していた壮大な悪戯計画がパーになる可能性すらある。

「レイ!あと三十秒後にスタートだ、ビビって逃げるなよ!」
「残念。俺は売られた喧嘩は必ず買う男だ」

挑発してくるグレースに対して同じく挑発し返すと丁度三十秒経ったようでグレースは箒に飛び乗り凄いスピードで大空へと飛んで行く。その様子を呆然として暫く眺めた後リューゲは我に帰りグレースと同じように走りながら箒に飛び乗る。

〔フワッ〕

恐怖で目を瞑ってしまうが浮遊感を感じて体勢を崩さない様に気をつけながら目を開け下を見るとリューゲは宙に浮いていた。思わず声が漏れそうになるが抑えて体を軽く前に倒す。すると箒が少し前進した。
正直な話リューゲは箒の乗り方など全く知らない。フレッドに聞いても経験と感覚、としか教えて貰えなかった。だから…兎も角感覚で飛ぶ。

先程と違い体を大きく前に傾ける。すると箒は凄いスピードで進み始める。
耳の直ぐ横で風を切る音がする。リューゲは急に楽しくなってきた。元々スリリングな事が好きなリューゲだが胸が高鳴り無性にワクワクする。

暫くしてふと前を見るとグレースは居なかった。しかし気配を感じ上を見ると驚いた様子のグレースがいた。

「な、なんでもうこんな所に!?」

思いの外スピードが出ていたのかスタート地点の中庭から遠く離れ二人はもう少しで折り返し地点の塔に着こうとしていた。しかしここでリューゲは在る問題点に気がつく。リューゲはどうやって高度を上げるのか知らなかった。グレースは流れる様にして上昇していたがリューゲにはそれは出来なかった。

当然だ。普通何十、何百回も練習しなければ走りながら箒に飛び乗り、風と上手くタイミングを合わせて上昇なんて真似は出来ない。

そこでリューゲは箒の先端を「思いっきり上方向に傾け箒を地面とほぼ直角にした。」
グレースの慌てた様な声が聞こえるがリューゲは一切気にしない。そして体を箒に密着させ極限まで空気の抵抗を少なくする。スピードを無理矢理上げるとリューゲは徐々に自分が上昇している感覚を感じた。

だがリューゲにその感覚を楽しめる余裕は無かった。何せほぼ直角だ。今のリューゲは振り落とされない様必死で箒にしがみつく状況だった。
どれだけ経っただろうが。リューゲはギリギリ振り落とされる事なく最も高い塔と同じ高度にいた。グレースはそれよりも少し低い所でリューゲの無茶苦茶過ぎる飛行の様子を呆然と見ていた。

それからはあっという間だった。
リューゲの飛行に呆然としていたグレースは我を取り戻した後自分も高度をあげようとして…落下した。そもそもグレースもそんな高いところで飛んだのは初めてだった。余裕が消え去ったグレースに先程までの安定した飛行の様子は欠片もなくよろよろと上昇しようとした所で汗で手が滑ったのかグレースは箒から落ちた。
グレースは徐々に近づいて来る地面と下に居たギャラリーの悲鳴や叫びを聞いて自分は死ぬのだな、と覚悟して目を瞑った。が、いつまで待っても訪れない衝撃にを疑問に思い目を開けると目の前には遥か上空にいたはずのリューゲがいた。


リューゲはグレースが落下していったことに気付くと何も考えず唯直感のままに箒に先端を下に向け、先程の上昇時と同じ様に空気抵抗を極限まで減らして一気に高度を下げた。そしてグレースが地面につくギリギリの所で視界に収めたグレースに向かって降下しながらアゾット剣を振り空気のクッションを作った。
結果グレースは何の怪我もなく勝負はリューゲの勝利、という形で幕を閉じた。いつの間にか授業時間は開始していたようでリューゲとグレース、そして勝負を止めずむしろ馬鹿騒ぎをしていた周囲の一年生はフーチから物凄い説教を受けた。

リューゲが授業終了後グレースに礼を言っているとフーチがやって来た。

「Mr.レイ、話があるのでこの後授業がない様でしたら付いて来なさい」

仕方ないのでグレースに詫びを言いフレッド達三人に先に言ってろとアイコンタクトをした後にリューゲはフーチについて行くことにした。
暫く歩いていてもう向かう先が予想できたリューゲが今からでも帰りたいという気持ちと今帰ればどうせ後で説教を食らうんだ、という二つの気持ちの間で葛藤していると二人は目的地であるマクゴナガルの私室に到着した。

ここで待っていなさい、と言われて廊下で待たされたリューゲは中に入っていったフーチの背中を見送り説教を回避する為の言い訳を考えていた。

「やっぱり俺は悪くなk「Mr.レイ!」

独り言を言っていると扉が開きマクゴナガルが出て来る。またいつもの説教か…、と思っていたリューゲは驚愕する。何故ならマクゴナガルが物凄い笑顔だったからだ。

「え、えっと…あーはい、すみませんでした。以後気を付けます」

リューゲがどもりながらも謝るがマクゴナガルの笑顔は変わらない。そしてリューゲはマクゴナガルの次の言葉に驚愕する。

「そんなことはいいのです!!本当にあの箒でそんな芸当をしたにですか!?」

リューゲは一瞬呆気にとられてポカンとした表情を浮かべた後 あ、あぁそうですが、と答えを返した。





そしていつの間にかリューゲはクィディッチ場で箒を手に持っていた。

あの後何があったかというと、リューゲはグリフィンドールのクィディッチチームにスカウトされた。最もスカウトと言っても入らなければ説教2時間コースですね、とマクゴナガルに脅されたという方が正しいが…。
何でもあの時やった無茶苦茶な飛行が凄いだとか何とかだそうで文句をつける暇も無くリューゲはクィディッチチームでどのポジションに就くかのテストを受けていた

そしてここからが大問題なのだが相手はグリフィンドールの伝説のシーカーとまで謳われているチャーリー・ウィーズリー、フレッドとジョージの兄だった。
適当に飛んだだけで伝説のシーカーと勝負なんて、と必死に言ったがその適当にが凄いだの何だの言われここまできてしまったのである。とはいえリューゲとしてもあの空を飛ぶ快感は忘れられない為出来れば勝ちたいな、くらいには思っていた。

テストはクィディッチでシーカーが捕まえるスニッチをどちらが早く捕まえるか、というもので先にやっていたチャーリーは2分18秒だった。曰くこれは物凄いこと、らしい。

そんなに凄いならそれに一年生を挑戦させるなよと内心愚痴りながらリューゲは箒を握りしめる。

「じゃあ始めるよ。 よーいスタート!」

記録係らしい五年生がスニッチの入った箱を開けると同時にスニッチは飛び出しあっという間に見えなくなってしまう。リューゲは溜息を吐いて先程と同じように走りながら箒に飛び乗る。今回は落ち着いているからなのか前回の様に無理矢理な上昇をさせなくても箒はちょうどいい高度まで上がって行く。
一度クィディッチ場の中央で動きを止めて息を大きく吸って吐いてを繰り返す。
周囲の観客は全く動かないリューゲに何やら野次を飛ばしているがそんなもんは無視だ無視、と思い目線だけでクィディッチを探す。

そろそろ二分が経とうとして観客がチャーリーを破る新人シーカーの誕生を諦め始めてきた頃リューゲは初めて動きを見せた。

リューゲは箒を固く握り締め視界に捉えたスニッチ目掛けて観客席の方に一直線で向かっていく。
先ほど乗っていた箒とは違う競技用の箒を使って飛んでいるリューゲは流れる様に滑らかに超加速する。

スニッチは接近してくる敵の出現に気付き上空に行こうとしたがそれは一歩遅く、リューゲはスニッチを捕まえていた。

記録係が「2分27秒!!」と叫ぶと観客席の方からクィディッチ狂達の歓声が聞こえる。
一年生の癖して伝説のシーカーばりの記録を立てた新人だ。クィディッチの優勝杯に命を賭ける彼等が喜ばない筈がない。

とはいえリューゲの記録はチャーリーに9秒の僅差で負けた。
今年度のシーカーはチャーリーだ。

試合後リューゲはグリフィンドールのクィディッチチームにスカウトされた。
スカウトといっても当然補欠だ。だが補欠だけでは無く再来年に向けてシーカーを育成させたいという現五年生の意見があったらしく普段はチャーリー達と一緒に練習することとなった。

別れ際にリューゲはチャーリーにある質問をした。

「チャーリー、一つ質問いい?」
「あぁ、いいよ」
「もしも来年俺がチャーリーよりも良い記録を出したら俺がシーカーか?」

リューゲの質問はチャーリーに対する宣誓布告だった。するとチャーリーは笑い出す。

「アハハッ、いいね君最高だ!君も飛ぶのが大好きなんだろう?」
「これまでこんな楽しい体験は二回くらいしかした事無かったよ。来年は勝つ」
「望むところだ」

リューゲはいつの間にか飛ぶことが楽しくなっていた。
残り一年…たった一年で最強シーカーを抜けるのだろうか? 寮に帰るリューゲの頭の中はチャーリーに勝つための方法で一杯になっていた。





2 近付く決行の日

アインス・グレースは苛立っていた。

 

グレース家は聖28族 程ではないがかなりの名家だった。故に幼い頃から英才教育を受けて来ていたアインスは常に一番だった。魔法でも筆記でも魔法薬の調合でも箒に乗るのも、全て一番だった。

元の才能もあったが何よりもアインスは常に努力していた。

だから、だったのだろうか? ホグワーツに入ってから自分が一番じゃ無いことに怒りを感じた。

ー自分はこんなにも努力しているのに何故!!ー

 

最初に奴の名前を知ったのは変身術の授業だった。授業終了直前にマッチを針に変化させた自分を嘲笑うように教師はレイは数秒で変化させた、と言った。たまらなく悔しかった。

だがそれは何度も続いた。魔法薬でも妖精の呪文でもいつも一番だった。

 

レイブンクローでは一番でも一度も本当の一番にはなれなかった。ある日レイに意を決してどんな風に勉強しているのか聞いてみた。レイはなんでも無い風に答えた。

ー予習?んなの汽車でやった後はなってねぇよー

事実レイは授業以外で勉強していなかった。

 

悔しかった、その才能が。自分が必死になって掴んだものを簡単に掴んでしまう力が。

 

だから…絶対に勝てるはずの勝負で挑んだ。万全の状態だった。

そして負けた、完膚なきまでに圧倒的力を見せつけた挙句アインスを助けてレイは勝った。その飛行技術を評価されレイはグリフィンドールの次期シーカーになった。レイブンクローの寮生からは余計な事をするな、と言わんばかりの視線を向けられた。

 

けれど…アインスは救われた。

ーありがとな、お前のお陰で空を飛ぶってことの楽しさをしれた。お前すっげぇ飛ぶの上手かったよー

たったそれだけの言葉でアインスは救われた。

 

レイはもう自分の事など覚えてないだろう、とアインスは思う。

アインスは「普通」だ。どこまで言っても平凡な子供だ。

しかしレイは違う、レイは言うならば主人公だ。彼を中心にして世界が回っているようなそんな奴。

文字通り住んでいる世界が違うのだ。

 

だが、アインスは思う。

ー僕は君を決して忘れない。例え叶わぬ願いでもいつか君と肩を並べたいー

 

 

少年はいつの間にか大きく成長していた。

結局生涯少年が彼と肩を並べることはないだろう。が、こんなほんの些細で小さな出来事で少年は後に歴史に己の名を残す人物となる。

「彼」は運命を変えた。ほんの些細な一人の運命?いや少年は大きな働きをした。

決して些細な運命などでは無かった。

 

どうして彼は運命を変えれたのか?主人公だから?それとも…

 

これは彼とその隣に立っていた者達の「反逆」の物語……

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ホグワーツでの生活はあっという間だ、と上級生は言っていた。
事実その通りでリューゲ達の毎日はどんどん過ぎ去って行く。

そしていつの間にか10月30日、計画の実行前日の夜となっていた。
リューゲ達は天辺を回り、誰も居なくったグリフィンドールの談話室でひたすら無言で最終確認をして居た。

何時もならいるだけで騒々しい三人は何も喋らず真剣な表情でリューゲが今週一週間、クィディッチの練習を休み、ほぼ徹夜で作った小さな道具を弄っていた。

「それ一つ作んのに俺の八時間とガリオン金貨十数枚が消えてなくなるからくれぐれも壊すなよ、やったら俺泣くよ。いや、マジで」
「「「乙…」」」
「お前ら仲良いな」

リューゲの忠告、というか懇願に三人は半分ドン引きな表情でお疲れ様の言葉を伝える。双子はいつも合わせてくるから予想通りだったがリーまで合わせてくるのはリューゲには予想外だった。

「で、お前ら三人も完璧なのか?」
「当然だ。リーとフレッドは例のモノの設置はバレずに上手くやったし、俺もあの人にバレない様にこっそり動いた」
「これで本人にバレてたら笑いもんだな」
「言えてる」

一応リューゲも三人に確認をするが当然彼らに抜かりはない。

「じゃあもう後はぶっつけ本番だ、舌噛むなよリー。お前が司会者なんだから」
「俺が舌を噛む? そんなことあるわけ無いじゃあないか!」
「緊張の余り万が一もあり得るからな」
「まぁそこはやってみなきゃワカンねぇだろ」

「「だな」」


一通り計画に穴がないか確認し、互いの手順を確認し終えるとリューゲ達は明日の為に少しでも早く寝ようと早足で談話室から寮の部屋へ向かう。

計画の実行は明日、リューゲは胸が高鳴るのを感じていた。



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