悪魔は彼の中に住む 作:正体不明.
一年に一度の大騒ぎの日とだけあってか、何人かが集まると生徒達は朝っぱらから先を争う様に「トリックオアトリート」を言い合い、菓子を奪っては奪われてを繰り返している。
皆少なくとも一回は菓子を奪われる羽目になるのだが、寮内で人気者に位置する人間は他の生徒よりも狙われてしまうらしくリューゲ達が妖精の呪文の教室に向かう途中には、まだ正午にすらなっていないのに大量に持っていたチョコレートを全て奪われ、魔法で悪戯されまくっていたチャーリーに会った。
「我らが兄は中々センスある格好してるな!」
「これがセンスあるとは流石フレッド、相変わらずだな」
全く似合っていない真っ黄色の眼鏡を掛けさせられた上に、靴をハイヒールに変えられて途方に暮れているチャーリーに、フレッドは二ヤニヤ笑いながら話し掛ける。が、流石に兄弟とあってチャーリーはフレッドを上手くあしらう。だが当然そこでは終わらせないのがリューゲ。
「チャーリー、トリックオアトリート!」
リューゲが悪戯っぽく微笑みながら悪魔の言葉を口に出すとチャーリーはこの世の終わり、とでもいう様な顔をして天を仰ぐ。
「おいおいリューゲ、お前は俺にトランシルバニア・タックルをシーカーがチェイサーに仕掛ける時のコツを約三時間もかけて教えてもらったという恩があるんだぞ。いくらなんでもそれは無いだろ」
「それを言うなら俺はその後二時間チャーリーのドラゴン話に付き合ってやったんだけど。グダグダ言ってないで答えを言いなよチャーリー」
「……チッ、お前次の練習の時覚えとけよ。はぁ……トリック!」
チャーリーはリューゲに相手の鼻を殴るフリをするというある意味反則スレスレのクィディッチの技、トランシルバニア・タックルを教えたことで借り一つだと言い訳するが、当然そんな事に騙くらかされるリューゲでは無い。
リューゲはドラゴン馬鹿 チャーリーのドラゴンの話をすると止まらない、という特性(?)を利用して逆に言い返す。言い訳がブーメランになって返ってくる、という結果になったチャーリーは舌打ちをして捨て台詞を吐いた後覚悟を決めて答えを返す。
チャーリーの答えを聞いたリューゲは杖を一振りし、どこから持ってきたのかチャーリーの頭の上に兎耳の付いた深紅の可笑しな帽子を乗せる。
「プッ、や、ヤバい。コレは最早全英が腹筋崩壊するレベルだな」
「ちょ、おいリューゲお前センス良すぎ!」
「チャーリーに似合わなさ過ぎて面白すぎるわっ」
「………うん、お疲れ様」
「お前…優しいな。何であいつらと一緒に居るのか分からん」
「俺もよく分からなくなってきたかもしれないよ…」
リューゲ、フレッド、ジョージがチャーリーの可笑しな様に大爆笑する中、リーは若干目が潤んでいる様にも見えなくは無いチャーリーに同情した様に声を掛けていた。
それ程までに……体格の良いのチャーリーが黄色メガネにハイヒールを履いて、ウサ耳帽子を被っている様はシュールだった。
ご馳走で一杯のハロウィンの晩の大広間はホグワーツ名物ともいえるだろう。
しかしながら残念なことにリューゲはかぼちゃは好きでは無い、というか寧ろ苦手なのでテーブルに所狭しとかぼちゃ料理が並べられている様には少し引いた。
最もホグワーツの屋敷しもべ妖精の腕は良く、かぼちゃが苦手なリューゲもさして苦もなく腹一杯になる程か
ぼちゃ料理を堪能出来た。
他の生徒達よりもだいぶ早めに来て物凄い勢いで食事にがっついていたリューゲ達は多くの生徒達が食事を始めて数分経ったことには既にデザートまで食べ終え準備は完璧だった。
「さてさて…そろそろ始めるか?」
「「俺らは大丈夫!」」
「俺は今になって手が震えてきたんだが」
「じゃあその震え止めるために一発殴ってやろうか?」
「やめてくれ、いやマジで!」
よく見ればリーだけでなくリューゲもフレッドもジョージも、微かに手が震えているが四人はその不安を吹き飛ばす様に軽口を飛ばし合う。初めての大規模な悪戯。
入学前からフレッドとジョージが考えていた計画は結局四人が揃って初めて成功する。
計画が上手くいくかは実際の所分からない。だが…
「何は兎も角、千人を相手にこんな大掛かりな悪戯を思いっきり出来るんだ。人生はたったの一度、思いっきり楽しまなきゃ損くらいの気持ちでいくぞ」
「おぉ!我が友よ、なんだか格好良い台詞を言っているがそういう台詞を言うキャラは大抵酷い目にあうぞ」
「それは『俺この戦いが終わったら結婚するんだ…』とか言った奴だよ!後俺は死亡フラグを立てる様な真似はしないし、リューゲが立ててくれるなんてことはないだろうからジョージよろしく」
「誰が死ぬか。あ、唯これ終わった後鬼化した教師陣に追われる覚悟はしといたほうがいいぞ」
「マジかよ、俺まだ死にたくないんだが」
「おいおいそこは『逝ってきまーす』っていうとこだろ」
「字が違うような気がしたのは気の所為か?」
「気の所為だ。それと安心しろよお前ら、俺が死ぬ時はお前らも道連れだ」
「それは俺らは死ぬ時もお前は一緒になって死んでくれる、ってことか?」
「……俺は幾多もの屍の上に立ちこれからも生きて行く。 リー・ジョーダンの英雄譜 -完-」
「「「完じゃねぇよ!!」」」
例え何があろうとリューゲ達四人が臆して今更計画を変更、なんて事はない。
悪戯四人組の信念は、「人を楽しませる悪戯こそ最大の娯楽なり!」というジョージの言葉通りする側もされる側も楽しめる悪戯をするというもの。
今の彼らは本番直前のこの緊張感とスリルを心から楽しんでいた。
そしていよいよ悪戯四人組の最初にして最高の悪戯劇が幕を上げる。
フレッドの合図でリューゲとジョージが机の下で杖を振ると大広間を照らしていた何百本もの蝋燭の火が消える。瞬間、大広間は闇に包み込まれる。本来ならば天井に掛かった特殊な魔法のおかげで蝋燭の火が消えても大広間は薄暗くなる程度だが念密な事前計画のお陰でリューゲ達は十数分間だけだが天井の魔法を妨害することに成功していた。
突然真っ暗になったことで生徒達の声は一瞬止んだが、困惑した生徒達の囁き声があちらこちらから聞こえてくる。ただ戸惑っている一年生と違い、上級生達は懐から出した杖の先に小さな光を灯らせながら辺りを見回し警戒する。
光が全て消え去った大広間は夜の森の様に真っ暗で何百人もの光が灯っているのに周囲を見渡すのでさえ夜目がきかないとできない状態だった。
一方そんな生徒達の様子とは真反対に教員達は明かりが消えても杖で僅かな光を出すだけで何も言わない。
何故まだ事態を収拾するために動いていないかというと、昨晩の職員会議で校長に「ハロウィンの晩は何があっても楽しむことが一番じゃ」と、暗に手を出すなと釘を刺されていたからだ。
色々と変人が多いホグワーツの教師達はダンブルドアからのお墨付き、という事もあってかスネイプやマクゴナガルといった教師陣の中では比較的常識のある者以外はこの状況を思いっきり楽しんでいた。そしてスネイプは今すぐこの巫山戯た老人をブン殴って色々と情報を吐かせたい気持ちを必死に抑えていた。
明かりが消えてからそろそろ数十秒経ち多くの生徒達がこれがちょっとしたアクシデントでは無いと確信した頃。カチッ という小さな機械音が大広間に響くと同時に大広間の入り口付近の一箇所に視線が集中する。
機械音はスポットライトか何かの起動音だったのか真っ暗な大広間の中で一番強い光が
「…紳士淑女の皆s「あー あー マイクのテスト中」
暫くの沈黙の後に、スポットライトの光と約千人の視線を現在進行中で浴びている四人は自分達の喉にそれぞれの杖で魔法をかけ話し出す。しかし初っ端から格好良く紳士淑女の皆様、と決めようとしたリーの試みは空気を読んでいるのか読んでいないのか分からないリューゲの発言に遮られる。
「おい、お前空気読めよ」
「ごめんそういうの無理」
本人達は真面目に話しているつもりなのだが側から見るとまるでコントをの様なやりとりに大広間のあちこちからはクスクスと笑いが起こる。
「えーでは仕切り直して…あ、もう堅苦しいの無しなでいくぞ」
「おいお前ら!ハロウィン楽しんでるか?」
小さな咳払いの後に再び話し出したリーに続いてフレッドが生徒達に呼び掛けると。フレッドの問い掛けに生徒達はそれぞれ答えを返していく。
「楽しんでるに決まってんだろ!」
「お前ら暗くて飯食えねぇから早くしろー」
「飯は美味いぞ!ただ悪戯が足りん!!」
「もう悪戯は勘弁してくれ……」
「スネイプが青筋立ててキレかけだぞー 罰則頑張れよー」
「ヒャッハー!!最高だぜー!!」
全体的に野郎が多い印象だが大体は楽しんでいる様子にリューゲ達四人はニヤリと笑う。
「最後から二番目〜 俺らがそう簡単に捕まると思うなよ。それと最後の奴、お前は色々とヤバい。そして野郎しか答えてくれないのはなんでだ!?」
「お前のそういう考えが見え見えだからだよ、ジョージ。コメント返ししてないで続きいくぞ」
「オーケー、分かったよ。さて、さっき誰かが悪戯が足りないと言っていたな。それはその通りだ!今日はハロウィンなのに悪戯が全く足りていない。全くもって可笑しなことだ!!」
一部おかしな所に突っ込んでいるジョージをリーが止めるとジョージは唐突に謎の演説を始める。
するとリューゲ達もそれにノる。
「じゃあどうするか?」
「俺たちがやるしかない!」
「という事で俺たち『悪戯四人組』は」
「お前らに素敵なサプライズをする事にした」
四人がタイミングを上手く合わせて計画の概要を話すと生徒達は歓声を上げる。
「おぉそんなに喜んでもらえて嬉しいな」
「じゃあ成功させないとな」
「だな」
「いくぞ」
「「「「トリックオアトリート!」」」」
歓声が一度止んだところでリューゲ達は再び話し出す。そして四人で声を揃えて悪戯かお菓子かを生徒達に訊ねる。答えは当然のこと…
「「「「「「「トリック!!」」」」」」」
大広間に集った生徒達のほぼ全員が悪戯を選び大声で宣言する。
答えを聞いたリューゲ達杖を振ると大広間の天井に青白い光でカウントダウンが表示される。
現在の残り時間は5秒。
「お前らも声を合わせて!残り5秒!」
「「「「「「「4!!」」」」」」」
「「「「「「「3!!」」」」」」」
「「「「「「「2!!」」」」」」」
「「「「「「「1!!」」」」」」」
「「「「「「「0!!!!」」」」」」」
生徒も、教師も思わず声を合わせて一緒にカウントをしてしまう。
数字が減っていくにつれて大広間の緊張感は高まっていく。
そして数字がゼロとなった瞬間…眩い光が大広を包み込み、皆が思わず目を瞑る。数秒経ち生徒達が目を開けた時には大広間は光を取り戻しリューゲ達四人は姿を消していた。
「へ?」
誰かが漏らした声が静まり返った大広間に響き渡る。
「おいおい、ちょっと待てよ。あんだけ期待させといて何もn……はぁ!?」
一見して何も変わっていないような様子に獅子寮の上級生の一人文句をを言う、が何故か途中で目を点にして教師陣の座るテーブルを呆然として見つめる。
「おーい、どうしちまった?あっちになんかあんn……ファッ!?」
フリーズした上級生の隣に座っていた友人は彼の視線の先に目を向けて又もやフリーズする。
「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」
その様子に生徒達は一斉に教員テーブルの方を向き…驚愕した。
何故ならば…教師全員性別が反対になっていたからだ。
そして大広間は大爆笑の渦に巻き込まれた。
こうして悪戯四人組の最初の悪戯「教師性別逆転事件」は大成功で幕を閉じた。
リューゲ達は廊下を猛ダッシュで走っていた。
「成功だな!」
「結局何やかんやで上手くいったな!ほんと良かった」
「おいお前ら余計な事話してると鬼と化した教師陣に襲われるぞ」
「今頃大広間は阿鼻叫喚になってんだろうな」
「女になったスネイプを生徒が大爆笑→スネイプ マジギレ→ダンブルドア高みの見物 目に浮かぶな」
「うむ。成る程、確かに彼奴ならばその様子を笑って見ているだろうな」「実際に起きていますしね」
「あの人ああ見えて腹黒いk…ん?ちょっと待て今喋ったの誰だ?」
「俺じゃないぞ?」
「「俺らでも無い」」
「……って事はもしかしなくても…」
リーが三人と声質の違う誰かの返答に気付き確認するが三人は喋っていない。つまりもう追いつかれたという事。そぉ、と四人が後ろを振り向くとそこには鬼のような化身が背後にゆらゆらしているスネイプとマクゴナガルがいた。
「……逃げるぞっ!!」
「「「言われなくても逃げるよ!!」」」
「貴方方は一度止まりなさい!」
「貴様ら止まれ」
こうして教師VS生徒の二対四の鬼ごっこが始まった。
果たしてどちらが勝ったのか? 神のみぞ知る。