悪魔は彼の中に住む 作:正体不明.
クリスマス休暇には多くの生徒が家へ戻る。無論フレッド、ジョージ、リーも例外では無く、家に帰るために荷物纏めていた。
「ごめんな、リューゲ。ホントは残ろうと思ってたんだがお袋に戻って来る様言われてな…」
「それぞれ家があるんだから仕方ないし、俺はこの冬休み中にお前らが驚く様なモンを発見しとくから気にすんな。楽しみにしとけ」
「なんか心当たりあんのか?」
「当然だ」
今年グリフィンドールで居残りリストに丸を付けたのはリューゲだけだった。
誰も居ない談話室でリューゲは一人、溜息を吐く。何時もは誰かしら座っていて取れない暖炉の前の安楽椅子は今だけはリューゲの特等席だ。だがたった一人ではゲームすら出来ない。
普段から五十人近くが居て、夕食後は百人以上、多い日は寮生のほぼ全員の二百人が集う談話室はリューゲ一人には広すぎる。休暇前は少し窮屈に感じる事すらあったが今は広すぎて気持ちが悪い程だった。
こういう時本好きなら図書室に行くのだろうが生憎リューゲは本やら勉強は大嫌いだ。
ハロウィン前は散々図書室に入り浸ったが悪戯の為、と思うから出来るのであって普段から本を読むのは御免だ。
仕方が無いのでリューゲは早速三人が帰ってきた時驚くようなモノを探すことにする。
心当たりは既にある。
リューゲは椅子から立ち上がると自分達の寮の部屋へ向かう。
部屋に着き、ドアを開けるとリューゲは腰の鞘からアゾット剣を抜き、歌うように二つの呪文を唱える。
するとリューゲが使っていたベッドが宙に浮く。そして次の瞬間ベッドは煙に包まれて消えたかと思うと、手のひらサイズに縮み、リューゲの右手の中に現れた。
リューゲはそのままミニチュア化したベッドをローブのポケットの中に突っ込み、先程までベッドがあった場所に再び剣を振る。瞬間、先程までホコリが舞い、薄汚れていた赤絨毯は、まるで新品の様に綺麗になる。
そしてリューゲはベッドの真下にあった、一ヶ所だけ赤絨毯が無い場所を見つけた。
この赤絨毯、よく見れば断面が炎で炙られている。つまりはこの赤絨毯が一部分だけ無いのは偶々ではなく、誰かの人為的なものということだ。
近寄ってみるとリューゲは赤絨毯の代わりに何かで彫られた痕跡のある木の板が埋め込まれている事に気付いた。リューゲは彫られている物が文字ということに気付く。
『我ら悪戯仕掛け人、卒業前に我々はホグワーツに不思議な地図を残し去った。
もし君が我らの後を追うというなら三つのヒントを教えてしんぜよう。
一つ もし君がコレを見つけた時、ホグワーツの管理人がまだフィルチなら、彼の部屋の事務所を探してみろ。貴重なものは時に見た目では理解できないことがある。君に見る目があるのならきっと見つけられるだろう。
二つ 獅子寮の勇敢なる生徒ならば、多少の冒険と危険も厭わないだろう。君がスリルを味わいたいというのなら始めの言葉は星見る塔に星と共に在るだろう。
三つ 悪戯仕掛け人の名を得たいならば、城の抜け道を知り尽くす位でなければならない。全ての抜け道の先に終わりの言葉は在るだろう。
少年よ!青春を、ホグワーツを、今しか味わえないことを存分に楽しめ!!君が楽しい悪戯をする事を願っている。 ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズより』
板に刻まれた文章を、読み終えたリューゲは思わず口角を上げる。
こんだけやっているのだ、恐らく嘘はないだろう。
元々この部屋にはかつての先輩達からのメッセージが眠っている、という噂があった。
何でも昔の卒業前の先輩が自分たちの残したお宝の隠し場所を記した、という話が最近になって話題になったらしく前からチャーリーに暇な時に本当かどうか調べてみてくれ、と言われていたのだ。
彼ら、悪戯仕掛け人が残した物が何なのかはわからないがこれからの休暇が楽しめそうだ、と考えながらリューゲは板を取り外す。そして幾度が剣を振るとあっという間に部屋は元の様子に戻っていた。
先程までの浮かない顔とは打って変わって、笑みを浮かべたリューゲは鼻歌を歌いながら寮の部屋を出ていった。
クリスマスまで残り一週間、リューゲは校舎の様々なところを歩き回っていた。
グリフィンドールだけでなくどの寮も居残りの者は少なく、何処を歩いていても全く人に遭遇しなかった。
とはいえ全く居ない訳でもなく、レイブンクローやハッフルパフの居残り組はスノーマンを作ったり、雪合戦をしていた。
そして彼らが遊んでいる頃、リューゲはハグリッドの小屋にいた。
罰則の日以来、リューゲは彼の小屋を訪ねたり、手伝いをしたりしていたため、ハグリッドも寒い中やって来たリューゲの事を歓迎し、紅茶を淹れてくれた。
「なぁ、ハグリッド。悪戯仕掛け人が残した不思議な地図って知ってるか?」
「なんじゃそりゃ?」
紅茶を飲みながらリューゲがもちだしたのは例の悪戯仕掛け人の話だった。
「俺らの部屋に彼らからのメッセージがあったんだ。この学校にお宝を隠した、ってね」
「不思議な地図…。思い出せねぇな」
「そうかー うん、ありがとハグリッド。そういえばーー」
意外な事にも二人は割りと話が合った。特に盛り上がったのは魔法生物、ドラゴンの話題だった。
「リューゲ、俺はなぁいつかドラゴンを飼ってみてぇ、ってずっと思っちょるんだ」
「マジ!?ドラゴンって飼えるのか?ドラゴンバカのチャーリーによるとウォーロックだか、ローロックだかの法で専門家以外駄目だって聞いたけど」
「勿論ダメだ、俺は資格なんぞ持っとらん。だがなぁ、一度でいいからドラゴンの卵をこの手で孵かしてみたいんだ」
「……この家木造だぞ?」
「それでもだ」
「…ハグリッド」
「なんだ?」
「お前最高!!」
チャーリーから散々ドラゴンの魅力を聞かされてきたリューゲは、魔法生物に詳しいハグリッドも認める程のドラゴンの知識があった。更にいうならば元々リューゲは魔法生物とかそういったモノが大好きだった。
ドラゴンに一角獣、キメラ、不死鳥、ヒッポグリフ、グリフィン……etc etc
童話に出てくる様な不思議な生き物が生きていて、それに会えるなんてリューゲ的には魅力的すぎた。
そのため、
「で、肝心の禁じられた森への立ち入り許可はまだ出せないの?」
「お前さんには悪りぃが、五年生以上の問題を起こさず、成績優秀で真面目な奴だけだ」
リューゲは危険な上に希望者が少な過ぎて、ここ数年実施されていない森番付き添いの禁じられた森探索クラブへの参加を求めていた。
そういうのが好きそうなチャーリーですらクィディッチの練習が忙しいのと、何よりドラゴンは好きだがドラゴンが居ない禁じられた森には興味が無い、との事で本当にここ数年希望者がゼロなのだ。
好奇心があるのは良い事だが森は危険だ。
森番であるハグリッドが付き添いで居ても、本来いるべき場所ではない。
よって内心はリューゲと森を探索したくて仕方ないハグリッドも、教師陣に叱られるのは御免なので、最初に言われた時にはにべもなく断った。
が、諦めの悪いリューゲは未だにハグリッドから許可を貰おうと頑張っている、というのが現状だ。
その後も暫く紅茶を飲みながら二人は語り続け、リューゲがそろそろ帰ろうと思った頃には空は茜色に染まっていた。
クリスマス前日、リューゲは頭を悩ませていた。リューゲを悩ませる原因は二つ。
一つ目は金欠。クリスマスプレゼントで見栄を張り、無茶苦茶高いモノを買ったせいでリューゲの財布はすっからかんだ。占いの館的な仕事で休暇前の財布はパンパンだったが、今では最早羊皮紙を買う金が無い、というレベルだ。このままでは昔の様にスリをする他なくなる。
そして二つ目は不思議な地図。これがまたとんでもない難題だった。
そもそも地図の隠し場所であるフィルチの部屋に入るためには悪戯をして捕まらなくてはならない。だがそれをすると寮の点数が減らされる。
それ以外の方法を取るならば裏道から入る他ないのだが、フィルチの部屋への入り口は上の階のある肖像画の裏側から入る他ない。幾ら城の抜け道を知り尽くしているリューゲでも、重力を無視して上の穴から脱出することは出来ない。
更に言うのならば始まりの言葉、とやらも文章からして夜にしか見つけられないだろうから夜間外出をしなくてはならない。夜間外出などバレたらいくら減点されるか分かったもんじゃない。
クリスマスの宿題は余裕のある日にさっさと片付ておいたので、逆に暇で仕方ない。
ハグリッドの所に行くにしてももう外は雪で一杯。寒い雪道を歩いてまで行く気にはならない。
結局やることが無くなったリューゲはまた何時もの様に安楽椅子の上で昼寝をする事となった。
目が覚めて一番最初に目にしたのはプレゼントの山だった。
昨晩、談話室の安楽椅子でそのまま寝落ちしたリューゲは、半分死んだ目のままプレゼントの開封作業を始める。
まず最初に開けたのは中くらいの包み。開けてみると大きくLとある、深紅のセーターが入っていた。一体誰からだろうとリューゲがメッセージカードを見ると、モーリー・ウィーズリーと書いてある。
ウィーズリーという事はおそらくフレッドとジョージのお母さんなのだろう。今年は何も贈っていなかったが、こんな手編みのセーターを贈ってくれるのならば来年はちゃんとしたものを贈らねば、とリューゲは早速来年のことを考え始める。
とはいえプレゼントはかなりの数がある。朝食を食べ逃さない為には早く開けなくてはならないだろう。
珍しく六時などという早起きができたリューゲは朝食の為にどんどんプレゼントを開けていく。
まずは知らない人や名前を知っている程度の人からのプレゼントを開けていくが、暫くしてリューゲはプレゼントの殆どが女性からだと気付く。
小洒落たチェスセットや黒のローブ、杖磨きセットに箒磨きセットなどといったそれなりのお値段をするプレゼントを贈って来ている人の名前をリューゲは近くにあった羊皮紙にメモしていく。この人達にはいずれお返しをしなくてはならない。そして貰ったものをリューゲは次々に小さくしていき、古ぼけたトランクに入れていく。
一方で食べ物や飲み物、香水などといった物は剣を振り、どんどん消失させていく。
この手のものは運が悪いと惚れ薬が入っている可能性もある。リューゲの場合フった女の子は大勢いるので更に危険だ。
次々とプレゼントの仕分けをしていくと後に残ったのは差出人不明のプレゼントと親友達、ハグリッド、そして今回のメインの大きな箱だけになった。
まず最初にハグリッドの包装を開けてみる。恐る恐る中を覗くと大きな箱の割に中には何本かの細いので棒が入っているだけだった。不審に思ったリューゲは一緒に入っていたハグリッドからのメッセージカードを読む。
「お前さんに頼まれたもんは無事完成だ。よいクリスマスを過ごせよ!、か。」
そう、このプレゼントはリューゲがハグリッドに頼んだものだった。正直どんなものが来るのかとドキドキしていたがハグリッドはその巨体に似合わず器用で繊細らしく、リューゲの注文通りだった。
嬉しくなったリューゲはその流れのまま、差出人不明のプレゼントを開ける。
そして中に入っていた物にゲンナリした顔をする。本だ。だがまぁ仕方ないので貰っておこうとリューゲは本を手に取り表紙を見る。
「世にも奇妙な魔法薬 九十九選」、「魔法とは? 魔力とは?」、「魔法界の常識」、「魔法族の嗜み」、「魔道具の作製方 初級」、「魔道具の作製方 中級」
全体的におかたそうな本が多いが悪戯に役立ちそうな本も多い。贈ってきたのが誰かは分からないが、誰かさんにリューゲは少しだけ感謝し、今度は親友たちのプレゼントを開けることにする。
まずはフッドとジョージのプレゼント。中身は魔法界のお菓子詰め合わせと悪戯グッズ、そして新しい悪戯グッズの設計図だった。なんというか…いい意味で予想通りだ。
まぁ何にしろ今のリューゲには嬉しい物が多い。特に悪戯グッズはフィルチを誘き出すのに使えそうだし、設計図の方は材料さえ用意できれば暇をつぶすのには最高だ。
自分の贈ったプレゼントを彼らが喜んでくれればいいが、と考えながらリューゲはリーの包みを開けていく。
包装紙を取り外し袋の中を覗いたリューゲは中に入っていた物に息を飲む。
透明マントだ。最も“本物の”透明マントでは無いのは明らかだが、魔法生物の皮で作った透明マントもかなりの効果があるし、値段も相当だ。
リーの家は立派な家系だが、俗に言う名家レベルではない。今のご時世に余程いい家でも無ければ、こんな高価な物をたかが息子の友人のために買ってくれる親がいるとは思えない。慌ててメッセージカードを見るがそこには『よいクリスマスを』としか書いていない。
呆然としたリューゲが冬休み明けの予定にリーをとっちめる、の欄を作っておこうかなどと考え始めた時、リューゲは透明マントの使い道に気付く。
このマントでも効果は十分ある。フィルチの目を誤魔化して部屋に入るくらい造作無いだろう。
それにこれがあれば夜間外出も楽勝だ。流石にダンブルドアは無理だろうが夜間の見回りの教師にもどうにか見つからないよう立ち回れるだろう。
今後の目標を見つけて急にやる気が出てきたリューゲは最後に残った大きな箱を開ける。
その中に入っていたのは一枚の板…ではなくスケートボードだった。
フクロウ通販「魔女の市」では様々な物が売っており、これはその中の格安品のパンフレットから見つけたものだった。最近マグルの間で流行っているスケートボードだが、魔法族には不人気のようで折角仕入れたはいいものの、結局全く売れず値引きされていたコレはまさに掘り出し物だった。
さて、ここでそもそもリューゲはスケートボードが出来るのか?ということになるのだが実はリューゲはスケートボードが大の得意だ。スラム街に住んでいた頃、よく買い出しに行った店の店主に教えて貰っていたのだ。最初は店主の姿を見て、面白そうと思った程度だったが一度やった後はどんどんのめり込んでいき、いつしか店主よりも上手くなっていた。
スケートボードには結構なお金がかかったが、リューゲは趣味の為ならお金は多少工面できるタイプの人間だったので、一時期は稼いだ金ほぼ全てスケートボードの部品の交換に回していた。
何故リューゲがこれを買ったかというと、ズバリこれを改良して自分だけのスケートボードを作りたい、という願望があったからだ。
そしてこれから作業を始めたいと思ったが…もう時間だ。
貰ったプレゼントで色々試したいことはあるが今はそれは後回しだ。取り敢えずは朝食に向かわないと昼食前に餓死してしまう。
リューゲは剣を振り談話室を少し片付けると、寮を飛び出し大広間へ向かう。
今日はクリスマス、いつもに増して豪華であろう朝食を、存分に味わおうとリューゲは駆け出した。
やっと出せた…機械いじり要素(笑)
あ、それとお気に入り 栞 などありがとうございます!!