桜色のレラカムイ   作:一ノ原曲利

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更新停滞大変申し訳ありません、更新です
沢山の感想評価ありがとうございます
一部本誌ネタなので閲覧注意(投稿時)

追伸:文化賞大賞受賞おめでとうございます
   魔人セイバーことオル田実装おめでとうございます




瀬田 対 牛山

 

 

 

 某喋る消しゴム漫画の前作を知ってる人はいるだろうか。

 某喋る消しゴム漫画自体は漫画賞を受賞していたし、アニメにもなったから知ってる人は多い。だがその前作は? 勿論一年程の連載であったが、私は覚えている。猿回しショーの漫画だ。

 何故単行本化されていないマイナー漫画の紹介をしたかというと、幼少期に読んだその漫画のあるワンシーンが脳裏を過ったからだ。

 どんなシーンか?

 

 主人公(猿)の師匠のケツに竹刀が突き刺さったシーンだ。

 

 前後の流れはこうだったと思う。猿回しの一発芸の一つとして、頭の高さほどの位置で水平にした竹刀を飛び越えて見せろという師匠。しかし主人公(猿)は、ならばまず手本を見せてみろと師匠に難癖をつけ、師匠が渋々お手本を見せようとした…確か、そんな流れだ。多分。

 そして師匠は手本を見せようと竹刀を飛び越えようとして―――零度、四十五度、九〇度と竹刀の角度を変えたところ、悲劇(喜劇)は起きた。飛び越えるということは、助走、跳躍、着地の三段階の工程を踏まなければならない。そして助走、跳躍まで成功して着地―――この瞬間、落下する師匠の真下には垂直に向いた竹刀。

 その時、師匠は知恩院もビックリな巨大鐘撞きを脳裏に描いたという。

 

 さて、長々と前世に読んだマイナーな漫画の話をしてしまったが何故今になってそんな話をしたかと言うと。

 今しがた、私がそれを連想してしまったからだ。

 

 

 今! 私の処女膜という鐘が! 極太摩羅という鐘撞きに叩かれようとしていたからだ!

 

 

「いやぁあああああああああああああ瀬田さん大ピンチいいぃぃぃぃぃぃ!!!」

「ぐほォ!」

 

 自由であった両の手の平が強姦魔・牛山(ウシヤマ)の顎に突き刺さり、骨格上顎の対角線上に存在する脳をぐらりと揺らす。タイミングは同時ではなく、しかし二発と呼ぶにしては間隔が短過ぎる一撃。

 

 拳ではないが、これも立派な『二重の極み』ビンタ版である。

 数年前、海女の真似事をして帆立や北寄貝、たまに海中で遭遇する鱈場蟹を狩っては食べ、売ったりして生計を立てていた頃。

 頭に赤い鉢巻、萎びたトリ頭、背中に〝悪〟の一文字が書かれた服を羽織る初老の男が浜辺に打ち上げられていたのを見つけた。

 思わず「炸裂弾の人だコレ!」と叫んでしまったが実際にあの名台詞を吐いた男は目の前の男ではなかった。ポプテでピピックな作品に感化されてしまっていた、反省。

 そもそも炸裂弾を作った本人はかの戦艦〝煉獄〟に対し沈没の有効打となる小型炸裂弾の開発を担っていた。何気にネタにするには洒落にならない偉業に貢献していたのである、複雑。

 周囲に破損した小舟の破片があったことから、恐らく海外留学(修行)の帰りに難破してしまったのだろう。実際にそうだった。

 とりあえず獲った獲物を浜辺の掘っ立て小屋に置いてから、体のサイズ上持ち上げることは叶わなかったため、両足を掴んで引き摺って掘っ立て小屋に連れて行った。因みに掘っ立て小屋は海辺にいた誰かが使ってたらしいが当時は無人だったので利用していた。家のどこにも文字が彫られていなかったのと、独特の模様がある食器や捨てられた衣類が散乱していたことから、恐らく浜辺に住むアイヌが使っていたのだろう。

 炸裂弾の人(仮名)を連れ、塩を傷口に塗り込んだところで不機嫌な色が残る呻き声を上げて飛び起きた。盛大にツッコミを入れられたが「スダレ頭の人ならタバコねじ込んでるよ」と言ったら爆笑された。解せぬ。

 とにかく脱水症が酷かったため、以前流れの行商人から買い取ったオホーツク海産の塩を水に溶かした粗雑な食塩水を調合して飲ませ、数日間看病していた。実際には一歩も動けなかったのは最初の一日だけで、残りの数日はピンピンしながら牡蠣の殻を『二重の極み』で割って食べたり釣って保管していた魚を焼いて勝手に食べていた。勿論オシオキはした。

 兎も角、「一宿一飯の恩を返させてくれ!」と(実際には一宿一飯どころではないのだが)気前良く頭を下げて来たので、その殻割りの秘儀を教えてくれと言った。

 本人は相当渋った(というより教えるのが下手過ぎた)が、最終的には何度も殻割りを見て、原理を理解して、何十もの殻を割り続け、見様見真似ではあるがビンタで『二重の極み』を再現することに成功したのである。といっても拳とは異なり一撃の威力はたかが知れてるので、ちょっと硬いものを割るには便利な程度の技でしかなかった。

 炸裂弾の人(仮名)は再現を目の当たりにした次の日、秋刀魚の頭だけ置いて掘っ立て小屋から消えていた。あのよく見る秋刀魚の骨を口に咥えて北海道を満喫していることだろう。

 『二重の極み』伝授の回想、終わり―――

 

「ん、ンンッ!」

「え」

 

 だが強姦魔は終わっていなかった。

 

 

 

 

 

 網走監獄に収監される前の牛山(ウシヤマ)であれば、先の一撃で意識を奪われていた。だが網走監獄は魔窟だった。死刑を宣告されるほどの極悪人だけあって、一癖も二癖もある獄囚ばかりだった。

 その中に、岩息(ガンソク)舞治(マイハル)という男がいた。

 十年間無敗の柔道家にして死者を出す網走監獄の労働でさえ温いと称する牛山を相手に、殴り合いでは負けなかった男だ。日本ではあまり馴染みのないスチェンカという露西亞伝統のスポーツを嗜んでおり、その拳が放つ肉体言語は牛山をノックアウトさせる威力だった。

 監獄でじゃれあいという名の殺し合いをしていく中で、いつだって牛山が意識を手放してしまうのは顎への一撃だった。岩息(ガンソク)との肉体言語的ノンバーバルコミュニケーションの果てに身についたのが、脳震盪に対する耐性であった。

 

(イイ一撃だ、たまらんぜ)

 

 牛山にとっては二重の意味でたまらない相手だった。

 一つ目は組み敷かれても容赦ない一撃を放つ腕っぷし。

 二つ目は、未通女(おぼこ)と思わせるきめ細かな白い肌と芳酵な香りを漂わせる瑞々しい乳房。

 

 土方(ヒジカタ)の勧誘に乗り、隠れ家に連れて行かれた牛山(ウシヤマ)は自主練後、風呂で汗を流して宛てがわれた部屋に戻ろうとしていた。すると途中、別室から人の寝息が聞こえた。

 土方(ヒジカタ)の仲間か? と思い、気取られないようにゆっくりと襖を開けると、美少年と見紛うような娘が寝ていた。

 娘。

 つまりは女。

 それだけで牛山(ウシヤマ)には十分だった。

 

 呼吸に合わせて上下する布団。押し上げている高さは女性の胸とは思えないほど平坦に見えるが、牛山(ウシヤマ)は暗闇の中でも寝間着の袷から覗くサラシを捉えていた。

 女と認識した牛山(ウシヤマ)の行動は迅速だった。始まってすぐ対戦相手の襟を掴みに掛かるが如き速さで布団を払い退け、一手で女の寝間着を剥がした。そうしてようやく牛山(ウシヤマ)は女を()()

 鍛えられた贅肉のない腹部にうっすらと割れた腹筋。安産を約束する腰つき、餅のような尻肉。研磨された流木のような曲線を描く健康的な太腿は鹿(ユク)のような張りと弾力、瑞々しい生命力に満ち溢れていた。絹のような皮膚は今まで抱いてきた女共と一線を画した触感、表面上で手のひらに吸い付くような薄い脂肪と深部に潜む強靭な筋肉。

 鼻息を荒げ、二手目でサラシをあっという間に引き千切る。

 雲が晴れ、隠れていた月明かりが寝室に差し込む。目の前に、赤子を健やかに育てられるであろう宝の山があった。

 牛山(ウシヤマ)の理性のタガが完全に外れた。

 

 血が通った下半身の我慢はできなかった。寝間着を抑えつけ、いきり勃つ下半身を女の足の間に滑り込ませた。

 娘――瀬田(セタ)の処女が奪われる、数秒前の出来事である。

 

 

 しかし、腰の前進は顎への不意打ちで阻止された。年端もいかぬ娘にそぐわぬ魅力的な身体だけではなく、組み伏せる(オトコ)に容赦無く反撃する力。どの要素も牛山(ウシヤマ)を(性的に)惚れさせるには十分な要素であった。

 

 十分、十分過ぎた。

 

「こンのっ」

 

 顎への一撃に対する耐性で踏み止まったはいいが、惚けた牛山(ウシヤマ)の旧式袈裟固めの拘束が緩み、その瞬間を狙い瀬田(セタ)は布団を蹴り寝間着から両の腕を抜き取って脱出した。

 持ち前の敏捷性を生かし、布団を挟む形で牛山(ウシヤマ)と相対する。上半身を前に倒し、両手を畳に這わせ、足を肩幅に開く。左右よりも前後の移動に適した〝構え〟だ。

 某褐色のスナイパー魔族が如く、護身用として枕の下に脇差を忍ばせていたが抜き取る暇は無かった。牛山(ウシヤマ)から逃れる間に一動作を差し込めば、すぐさま捕まりそのいきり勃った摩羅を突っ込まれることが目に見えてたからだ。

 

「オ ン ナ ァ ア ア ァ ァ !」

 

 牛山(ウシヤマ)が迫る。愚直に迫る。最早色欲に理性を引き千切られて半狂乱状態だった。だが目一杯に伸ばされた両腕は今度掴まれれば二度と離しはしないであろう力があることは明白だ。歩くたびに揺れる極太の摩羅に思わず顔を顰める。

 

「――シッ」

 

 瀬田(セタ)は進まず下がらず上に()()()

 寝室の狭い一室。平面状の逃げ場が六畳程度であるならば必然的に逃げ場は()に限られる。 他の部屋に繋がる襖は用意周到なことに牛山(ウシヤマ)が入室してから後ろ手で閉めていた。幸い、一軒家の寝室の高さはそれなりにあって、『縮地』と『三角跳び』の合わせ技で寝室の隅に張り付いた。この時ばかりは衣服という重しがない瀬田(セタ)に分があった。

 

「抱かせろオンナぁあああああああああ!!!!」

 

 理性はなくとも意識はあるようで、隅に張り付いた瀬田(セタ)を引き摺り下ろそうと手が伸びる。それを巧みに躱し、腕が限界まで伸びたところで部屋の壁を蹴って牛山(ウシヤマ)の頭上を飛び越える。

 

 片手に握っていたサラシを数本、手離して。

 

「私の処女は――」

「ンぐッ!?」

 

 伸ばした両腕に輪を三つ、纏めた腕と首に輪を二つ、それぞれサラシで形成した。牛山(ウシヤマ)の背後に背中合わせの形になった瀬田(セタ)は、首の前で両腕を交差して、掴んだ十指でサラシを思い切り引っ張り上げた。肘は伸びた時よりも曲げた時の方が人体が発揮する力としては強く、一本背負いの如く瀬田(セタ)の両腕はサラシを通して―――

 

「――土方(ヒジカタ)さんのものだあぁぁぁぁぁぁ!」

 

 叫びと共に、牛山(ウシヤマ)の巨体が宙に浮いた。

 足が畳から離れる。絡みついたサラシが抵抗しようとする腕を締め付け、同時に首が絞まる。呼吸が出来ず、徐々に赤らんだ牛山(ウシヤマ)の顔が紫に、そして程なく青くなる。脳への循環血流量が減り、抵抗の力が徐々に緩んだところで、唐突に襖が開いた。

 

「……何をしている」

「へっ?」

 

 若干呆れ顔の土方(ヒジカタ)がいた。次に呆けるのは瀬田(セタ)の番だった。サラシを握っていた手が緩み、窒息死直前で牛山(ウシヤマ)は解放されて力なく畳に転がった。

 

「え」

瀬田(セタ)

「」

 

 立派な髭をたくわえたイケオジを目の前にして、瀬田(セタ)は「いまコレどんな状況?」と頭の中で自問自答したところで。

 

 全裸だったことを思い出す。

 

「アァ―――!!!」

 

 瀬田(セタ)にできたことは、胸を隠すより羞恥で赤らんだ顔を隠し、馬をも超える敏捷性を持つ足で気絶した牛山(ウシヤマ)を寝室の外に蹴り出して返す足で襖を閉めることだけだった。

 寝室に繋がる廊下に、ボロンと摩羅を出したまま気絶する大男が一人と立ち竦んだまま不動の老人が一人。

 

「…結構あったな」

 

 どこがとは言わない。

 騒動を聞きつけてやってきた家主の永倉(ナガクラ)が溜息をつく。

 

「土方さん…絢子(アヤコ)に何したんですか」

「私は何もしていない。牛山(ウシヤマ)が元凶だ」

「そちらではなくて」

「………」

 

 〝鬼の副長〟土方(ヒジカタ)歳三(トシゾウ)。奉公に出ていた江戸で女中に手を出しては妊娠させる女好きであったという。

 

 渋川(シブカワ)善次郎(ゼンジロウ)の拠点にカチコミに行く、前夜の出来事だった。

 

 

 






途中官能小説を書いてる気分でした
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