『ゴットイーター2・レイジバースト』~神々の二重奏~ 作:平崎
2071年 極東支部 北の居住区
極東支部がハンニバル襲撃を受けていた裏で、北の居住区の更に端の方で少数の大型アラガミに襲撃された事件が起きていた。その日は強い雨の日だった…………。
神機使いの到着は遅れ、既に居住区は壊滅状態であったが奇跡的に死傷者はなかった。
「はぁ、はぁ――っ‼」
大型のアラガミ『ヴァジュラ』から逃げていた少女は小石に躓き、転がりながら仰向けで倒れる。そこに『ヴァジュラ』が追い付き、捕食の合図の様に咆哮を上げる。
逃げようとする少女は立ち上がろうとするが、恐怖が身体を支配して地面に座り込む。
「いや……いやぁ……」
人の言葉を理解しようとしないアラガミに対して、少女の命乞いは無意味であった。
ゆったりと捕食をする為、ヴァジュラは口から涎を垂らし少女に近付く。
少女が絶望を抱いて死を覚悟した刹那、少女の身体に大量の『ヴァジュラ』の血が飛び散る。
驚き上を向く少女の目に、若干十三歳程の姿の少女がヴァジュラの首に二本の剣を突き刺していた。現れたもう一人の少女の眼光は鬼の目の様に赤く、空中に残像が残る程にギラついていた。
赤目の少女はヴァジュラの首を切り裂き、右の刀剣――俗言う日本刀――を下から振り上げた際の剣風で虫の息のヴァジュラに止めをさす。
「あの、あの!」
「もう大丈夫、あれが最後だから」
ヴァジュラを倒した少女は地面に座る少女を抱き上げ、極東支部の緊急避難所に歩き出す。
その日は強い雨だったがその後、青々とした晴れだった。ヴァジュラを倒した少女の今の瞳の様に。
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2074年 極致化技術開発局 検査室
その事件から三年、極東支部以外の誰の目にも止まることのなかった。
だが『神機無しでアラガミを討伐した子を預かりたい』とラケル・クラウディウスと名乗る少女に極東支部から連れて行かれてから二年、そして今日この日は少女にブラッド因子の投与する日。
「変化がない、失敗か?」
「いいえ、成功よ。良く見て」
失敗かと疑う金髪の青年をほだす様に黒いベールで顔を隠す『ラケル・クラウディウス』。
モニター室のカメラに映る検査室の様子、それはかつて『ヴァジュラを倒した少女』が黒い腕輪を右手に付けた姿であった。
「適合おめでとう。ようこそ、ブラッドに」
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極致化技術開発局 庭園
「受付のオペレーターに休憩を取ってくださいって言われたけど――」
「適合検査お疲れ様」
適合検査を終えた少女はフライア――極致化技術開発局の略――の庭園に足を運んでいた。そこで木の木陰にいた金髪の青年に話かけられていた。
「あ……?」
「ああ、悪い。俺はブラッド隊隊長『ジュリウス・ヴィスコンティ』だ」
「あ! ごめんなさい‼ 私は本日所属となる『時雨雪奈』です‼」
ジュリウスと名乗る青年に急いで頭を下げる雪奈、そんな姿を見たジュリウスは不思議そうに眺める。
「まあ座れ、少し話そう」
「はい」
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ブラッド隊隊長『ジュリウス』と他愛ない会話をすることになった。
「では、君は極東出身なのか」
「そうです。ラケルさんに引き取られる前は極東支部でお世話になっていました」
軽く雪奈は自己紹介やここに来た経緯を話終えた頃、丁度アナウンスが入る。
『新人ブラッド隊員の方は訓練場に向かってください』
「だ、そうだが行かなくいいのか?」
「私は免除だそうです」
「そうか、じゃあ先に伝えておこう。もう一人の新人の訓練が終わり次第、実地訓練を行う」
「わかりました。それでは私は神機の調整に向かいますね」
ジュリウスの横を立ち上り、雪奈はエレベーターの方に走る。そこで思い出したかの様に振り向き、ジュリウスに尋ねる。
「ジュリウス隊長はどうしてここに来ようと思ったのですか? 後で聞かせて下さい」
雪奈は手を振り、エレベーターに乗り込んでいった。一人残ったジュリウスは雪奈の言葉の意味をしばらくの合間考えていたが、自分の準備もあるため神機保管庫に向かった。