『ゴットイーター2・レイジバースト』~神々の二重奏~   作:平崎

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第3話 実地訓練‐破‐

 黎明の亡都 図書館裏

 

 

「ナナの様子はどうだ?」

 

 外の安全を確認してきたジュリウスはナナの看病する雪奈に尋ねる。

 

「今は落ち着いているみたい。ぐっすり眠っている」

「そうか……」

 

 ジュリウスはそう返し、近くの崩れたベンチに座る。声に元気のないジュリウスを気遣い、隣に雪奈が座り話かける。

 

「ジュリウス隊長、元気ありません」

「まあ、そうだろう。隊長でありながら、このざまだ。俺は何も出来なかった、雪奈がいなければ今頃どうなっていたか……」

 

 ジュリウスも人間だ。彼は良く効率的な冷酷人間と言われるが、実際は仲間思いの心優しい人間。それが自分の不注意で仲間達を危険な目にあわせてしまったのだ、落ち込みもする。

 

「えぇっと隊長、私は話すのは余り得意じゃないし、敬語も苦手です。だからタメ口になるけど良い?」

「もう既にタメ口になっているぞ」

 

 困り顔をでジュリウスに笑われ、雪奈は少し困惑する。

 

「それじゃあ言うよ? 良い?」

 

 大きく息を吸い込みジュリウスの耳元に顔を近付け大声で叫ぶ出す。

 

「バカァァ‼」

「…………」

「はぁ……はぁ……ジュリウスさん、私達は神機使い。常に何が起こるかわからない戦場にいる。だから後悔ばかりしてないで、上を向いて自分の仕事をちゃんこなしてよ、隊長」

 

 ジュリウスに取って初めてのことだった。幼少期を養護施設で過ごした彼はその中で上のクラスにいた。だからこそ、年下の少女に怒鳴られること自体が初めての経験だったのだ。

 それが可笑しかったのか、ジュリウスは吹き出して大笑いをしだす。

 

「はは、全くその通りだな。俺も初めてのことで弱気になっていた、ありがとう雪奈」

 

 そっと、手を差し出すジュリウス。雪奈がそれに答える様にジュリウスの手を握るとその上に、おでんパンが二つ差し出される。

 

「悲しいときもおでんパン、食べると良いよ」

「ナナ! 起きたのか。傷むところはないか?」

「ジュリウスさん、人の事言えないけど、病み上りの人に大声出さない」

 

 おでんパンを受け取りナナの手を握るジュリウスに対し、非常識だと注意する雪奈。

 ナナはおでんパンを持つ左手と逆の右手で胸を押さえる。

 

「痛いよ、胸の奥が」

「ナナちゃん、辛いかもしないけど話して、少しは楽になれる」

「うん……」

 

 

 

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 戦闘中にナナが混乱し、偏食場パルスを発生させた原因はジュリウスの直前の言葉によるものだった。『ナナ、お前だけでも逃げるんだ』それは、かつてゴットイーターだったナナの母親が最後に残した言葉と酷似していたと本人から伝えられた。

 

「すまない、俺がナナのトラウマを刺激してしまったのか」

「違うよ隊長、最近調子が悪かったのに言い付けを聞かなかった私が悪いんだよ」

「言い付け? 誰の」

「ラケル先生の言い付けだよ?」

 

 雪奈の問い掛けにナナはそう返した。そこに疑問が出来、雪奈は続けてナナに尋ねる。

 

「ナナは今までマグノリア・コンパスにいたの?」

「お母さんがいなくなってからは、ラケル先生のマグノリア・コンパスにお世話になっていたよ」

「そう言えば昔、ゴットイーターチルドレンの子を引き取ったと聞いたことがある。君だったんだな、ナナ」

 

 話の流れは自然と自身とラケル先生の繋りの話になっていった。

 

「雪奈ちゃんはラケル先生とどんな関係なの?」

「そうだな気になるな、折角の機会だ。教えてくれ、これも隊長の仕事の内だからな。自分の仕事はちゃんこなさないと行けないのだろ?」

「うっ……」

 

 先ほどの言葉を使われ、逃げ場を失った雪奈は観念した様に話を始めた。

 

 

 

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 2072年の極東支部、当時十四歳程の姿だった雪奈は現在の極東支部長に呼ばれて、支部長室に来ていた。支部長からフェンリル本部を介しての極致化技術開発局への転属願いが出ていることを伝えられ、雪奈はそれを一つ返事で承諾して待ち合わせの場所に向かっていった。そこでラケル博士と落ち合い、フライアに来たのであった。

 

 

「じゃあ雪奈ちゃんは極東支部の所属だったの?」

「少し違うかな、正確には身分証明の為に極東支部にいただけだから」

「しかしそれだけでは、君の高い身体能力の説明がつかない」

「その内にわかるよ…………今は『あれ』を倒してからにしよう」

 

 そう言う雪奈は神機を手に取り、図書館の表の方を眺める。

 

「ジュリウスさん、ナナをお願い」

 

 彼女が言葉を終えるより先に飛び出すのと図書館の本棚を突き破り、ヴァジュラが現れるのは同時だった。

 

「何故だ⁉ さっき確認したときはいなかったはず!」

「アラガミだって動物だよ。人より優れた能力を沢山持っているよ」

 

 慌てて神機を握るジュリウスはまだ動けないナナを守る様に構える。

 

 ヴァジュラの出現は雪奈には予測出来ていた。微かだがナナから偏食場パルスが発現していたことに気付いていたが、ナナを傷付けまいと雪奈は黙っていたのだ。

 結果的に危険な目に合わせることになるが、雪奈はここから生き延びことが出来る確信があった。

 

 鬣を帯電させ周囲円状に強力な放電攻撃を仕掛けようするヴァジュラを止める為、雪奈は踏み込んで神機を水平に切り込む。

 それが前に傷付けた垂直の傷と重なり、ヴァジュラは大きく怯み後退する。

 続けざまにスタングレネードをヴァジュラの顔に直接ぶつける。爆破し煙幕が上がる中、ジュリウスはナナを連れ、広場の方に出る。

 

「ジュリウス!? 探したんだぞ!」

「ロミオ、どうしてお前が…………」

 

 ジュリウス達を探索していたロミオと合流したのも束の間、煙幕からヴァジュラが強烈な突進を仕掛けてきた。ロミオにナナを強引に預け、ジュリウスは神機のシールドを展開するが姿勢が悪かったのか、ジュリウスの手から神機がヴァジュラの後ろの方に吹き飛ぶ。

 ヴァジュラが再び鬣を帯電させ、強力な放電攻撃を開始しようとする。

 

「貴方の相手は……私だぁ‼」

 

 ヴァジュラの背後からアラガミにも負けない叫び声を上げ、雪奈はジュリウスの神機を左手に握り『ゼロスタンス』の構えで空中を滑空していた。

 

「ハァァー‼」

 

 ヴァジュラを左右の神機でバツの字に切り付け、ジュリウス達の前に雪奈は降り立った。

 

「終わりだよ」

 

 ヴァジュラのいる空間にのみ無数の斬撃が起こり、ヴァジュラは断末魔を上げて倒れた。彼女は神速の一撃とも言える剣撃を一瞬で、ヴァジュラの身体に何度も叩き付けたのだ。

 

 

 

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「ロミオさん、合流出来ましたか?」

「……あ、うん、合流出来たけど」

 

 ナナを抱えるロミオは目の前で起きたことに処理が追い付いていなかった。一人の新人神機使いが適合していない神機を使い、大型アラガミを瞬殺する光景を見せられたのだから、例え熟練の神機使いでも驚く。

 

「ジュリウスさん、大丈夫?」

「あぁ、君のおかげで五体満足に生きている」

 

 雪奈はジュリウスの神機と自分の神機を地面に突き刺し、今まで何もなかった様に落ち着いていた。

 

「えっと、ナナちゃんは何処に?」

「ロミオに預けた」

 

 ジュリウスはニット帽をかぶっている黄色いポップな服の青年の方を指差す。

 

「ロミオさんだね、ナナちゃんのことありがとう」

「お、おう、先輩だしな」

 

 その後、フランに帰投を指示され、ブラッド各員はフライアに帰還したのであった。

 

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