『ゴットイーター2・レイジバースト』~神々の二重奏~   作:平崎

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第6話 獄炎の白狼

 

 感応種『イェン・ツー』との戦闘開始から三分。既に虫の息のイェン・ツーは気力のみで立っている状況だった。

 

「これで決めるぞ、闇の眷属! チェス……トォォォ‼」

 

 エミールの握る神機『ポラーシュターン』―自ら命名―を背後に回し、ジャンプして上空からイェン・ツーの頭に強力な一撃を入れた。通常の神機使いの攻撃は感応種に対し無意味はずだが、エミールの攻撃一つ一つは唯『単純』に重い一撃であった。一瞬でも傷を付けることが出来るならば、『強引』に肉質を『潰す』ことが可能であろうと、かつて雪奈と一人の神機使いが提案した。それにより極東支部の一部の神機使いはオラクル細胞を素早く、微塵切りの様にすることで感応種に対応していたのであった。

 頭から胸元まで無惨な程に潰され、イェン・ツーは倒れた。イェン・ツーの下半身も完全に折れ曲がっており、原型を止めていなかった。

 

「エミール、コアまで潰さないでよ」

 

 感応種の貴重なコアも一緒に潰したエミールに悪態を吐く雪奈はじっと目で睨む。

 

「くっ、僕としたことがやり過ぎた! 一時期の感情に流された愚かなぼ――ぐはぁ‼」

 

 彼の謝罪など聞いてないかの如く、殴り飛ばす雪奈。

 

「ち、ちがうんだ! 今回は許してくれと――ゴハァ‼」

 

 再度吹き飛ばされたエミールは地面に転がり気絶する。だが雪奈が追撃した訳ではない、白い大型の狼がエミールを背後から殴り飛ばしたのだ。

 

「ブラッド各員、大型感応種との戦闘だ。気を抜くな」

 

 ジュリウスの号令でブラッド各員は次々と神機を構え、白い狼と間合いを取る。

 

「あのアラガミは?」

「雪奈ちゃん、隊長の講義聞いてないから知らないだよ。マルドゥーク、ガルム神属の感応種だって」

「ガルムも知らないよ」

 

 雪奈の発言にロミオは転けそうになる。ナナは呆れ、シエルは「流石副隊長」と言い、ギルはタメ息を吐く。

 

「仕方ないだろう、雪奈はラケル博士の護衛で忙しいのだから」

「本業疎かにしていいと言う訳じゃないだろ」

 

 マルドゥークと睨み合うジュリウスは背を向けたままギルに言う。

 

「マルドゥーク、似てるけど違う……」

 

 雪奈は何か言葉を溢し、ジュリウスとマルドゥークの合間に割って入る。ブラッド各員の制止を聞かず、雪奈はマルドゥークに神機を突き付けた。

 

「でも腕試しには良さそう」

 

 マルドゥークは周りに赤い偏食場パルスが発生し、周囲にアラガミを呼び寄せ、オラクル細胞を活性化させる。

 

 

 

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 マルドゥークの赤い咆哮により、集まってきたアラガミ達をブラッドが相手している中、雪奈はマルドゥークと交戦中だった。

 

 活性化したマルドゥークは俊敏な動きと白いガントレットから放たれる炎を武器に雪奈を攻め立てる。隙が少なく、雪奈はろくな攻撃を当てることが出来ず、マルドゥークの一撃を避けるのが背一杯であった。

 

「ちょっとは止まってよ!」

 

 神機形態をブレードからアサルトに切り替えつつドローバックショット、最低限の威力と最高率のオラクル消費率を持つ連射弾をマルドゥークの頭目掛けて射つ。

 それでも秒速で打ち続けても怯むことなく前進を続けるマルドゥークは、ドローバックショットにより後退している雪奈に追い付き、両手のガントレットを発熱させて爆炎を起こそうとする。

 

「させるかよ!」

 

 ロミオの声と共にブラストの高威力ブラスト弾がマルドゥークの頭に直撃、雪奈の後方にいたジュリウスが前に駆け出す。

 

「活路は俺が開く、決めろ副隊長‼」

 

 ジュリウスのブラッドアーツ『神風ノ太刀・鉄』と同時に血の力『統制』により、雪奈は神機解放(バースト)を一段階上げる。

 マルドゥークの前足にジュリウスはブラッドアーツを叩き込み、ダウン状態になったマルドゥーク。そこにナナ、シエル、ギルからのリンクバーストにより、更に最大まで神機連結解放状態になり、雪奈は走り込む。

 

「行くよ」

 

 雪奈の神機は蒼いオーラを纏い、マルドゥークの左目を切り付ける。

 目を深く抉られたマルドゥークは吹き飛び、少し離れたところで立ち上がる。

 

「まだ、やるの?」

 

 マルドゥークは暫しブラッド各員を眺め、周りのアラガミを引き連れて何処かに撤退していく。

 

 

 

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「何とかなったか。副隊長、良くやった」

 

 ジュリウスの労いの言葉に続く様に、ブラッドの皆が雪奈を誉める。

 

「俺達の連携って、最強じゃね」

 

 調子のいいロミオが言うとジュリウスも頷いて、ブラッド各員に言葉を送る。

 

「ナナ達との実地訓練のこともあり、ブラッド隊長がちゃんと務まるか、不安だったが大丈夫そうだな。これも副隊長のおかげだ、ありがとう」

「皆に迷惑かけてる方だ思うけど。こちらこそ、皆ありがとう」

 

 

 帰還用のヘリが到着したことがフランから伝えられ、雪奈は気絶しているエミールを背負って、発着場に向かっていった。

 

 

 

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 極致化技術開発局 ロビー

 

「皆、怪我もなくて良かったですわ」

 

 帰還後、ロビーで休憩中だったブラッドの前に直ぐに駆け付けたのはラケル博士だった。

 

「ラケル先生、車椅子をそんなに急いで動かしたら、危ないですよ」

「そんなことより、子供達が優先ですわ」

 

 シエルの心配を他所にラケルは言い放つ。雪奈とギル以外のブラッドはラケルの養護施設で育った者、シエルもラケル博士のことを親の様に思っているためそれ以上は言い返せなかった。

 そこにエミールを病室に連れていった雪奈が帰ってきた。

 

「ラケルさん、自分でここまで来たの?」

「もちろんそうですわ」

「当たり前みたいな顔しない、転けたらどうするの?」

 

 ブラッド達の前でラケル博士は雪奈に静かに説教され始める。

 

「心配なのはわかるよ。でも皆も、私だってラケルさんの身に何かあったら心配するんだから、無茶しないで」

「でも、子供達が――」

「無事に帰ってきたって報告は受けているよね」

「うぅ……」

 

 押し黙るラケル博士、ブラッドの皆は珍しい光景に目を疑う。

 

「彼女は昔からこんな感じさ」

 

 頬にガーゼを張ったエミールがブラッド達の前に唐突に現れ、何処か懐かしい顔で言う。

 

「何、様は超世話好きな家政婦だ。SAMURAIは万能なのだろう」

 

 エミールはそこで大声で笑い出す。

 

「エミールうるさい、ラケルさんと一緒に廊下でバケツ持って反省して」

「なんと⁉」

「私も?! どうやってバケツ持つの⁉」

「車椅子に座って、手の平の上にバケツを乗せればいいよ」

「えぇ……」

 

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