「まぁ座り、座り。」
言われた通りに占い師さんの目の前に座る。バーサーカーは私の後ろで物珍しそうに机の上を見ていた。
「じゃ、まずは…この紙に名前、生年月日を書いてな。別に悪いことには使わへんから、安心して書いてな。」
「は、はぁ。」
また言われた通りに動いて相手に差し出した。
「ふむふむ、なるほどなるほど。」
喋れば喋るほど、占い師さんが胡散臭く見えてくるのは気の所為だろうか、いや気の所為ではない。
「え~と、名前は"坂田金美"さん、生まれは2014年8月7日。てことは19歳か~。え、嘘。もっと下や思うとったんやけどな。へ~。」
若く見られて少し嬉しかった。だが逆に、
「もっと大人っぽく見られたいんですけどね。」
「そんな!若く見られるのは得やで得!ウチなんかこの前実年齢の5歳上や言われたんやから!もーお姉さんショックやでショック!」
何やら逆鱗を掠めるぐらいの言葉だったらしい。少し早口になっていたなと思う。でも、少しだけ胡散臭さが減った。
「ごほん。それじゃ気を取り直して。ウチの目を見てちょうだいな。」
占い師さんがわざとらしい咳払いし、私はまたまた言われた通りに行動する。
「オーラを見るんにはやっぱ目と目、合わせるんが1番分かりやすいからな。」
目と目が合う。占い師さんの目は透き通るような茶色で、綺麗な瞳だ。私は、彼女の目に吸い込まれるかの様な感覚におちいる。そして約4秒、体感時間1分間の見つめ合いをしたところで、彼女が喋る。
「はい、えぇよ~。そんじゃぁ結果報告ぅー。」
ぼーっとしていたので少しビクッと驚いた。
「え~金美さんのオーラはどうやらこれから特殊な事柄にさらに巻き込まれていくでしょう。それは、自分だけじゃあ解決できひん事も多々あるはずです。」
「ほぉーほぉー。」
「へぇー。」
私とバーサーカーが同じタイミングで頷く
「せやけど、諦めたらあきまへん。周りにいる人達を信じればなんとかやっていけるでしょう。…多分。ってとこやな。」
「いや多分ってなんなの!最後の多分って!少し減ったと思った胡散臭さがMAXまで上がっちゃったよ!」
「え、カナミン私の事胡散臭い思うてたん?」
「当たり前でしょ!歩いてていきなり声掛けられて!その内容がオーラがなんだの言われて!胡散臭いって思わない方がよっぽど変わってるわよ!あとなんでいきなり馴れ馴れしくカナミン?!」
「まぁまぁ金美、少し落ち着けって。」
「バーサーカーは黙ってて!」
そう言って少ししゅんとするバーサーカー。
「うん?バーサーカー?珍しいあだ名つけるなあんた。」
「え、あぁ、いや、その。そう!こいつ筋肉ごついでしょ!で、見ての通りいっぱい袋を持てるだけの力があるでしょ!だからバーサーカーなの!」
一瞬焦った。感情的になりすぎてバーサーカーをまんま呼んでしまった。これは反省だ。まぁ我ながら完璧な言い訳。
「へぇ~そうなん。せやったらウチにも付けて。」
何故胡散臭い初対面の占い師にあだ名を付けなければならないのか。しかも出会って30分も経っていない。
「え、いや、あなたのことよく分からないし。」
「え~、ウチの占いやったらこれからカナミンとはちょくちょく会うって出てるのにー。」
「それは多分つかないんだね。」
「あ、そうだ、あだ名付けてくれへんのんやったら、お代、はろうてもらうから。1万。」
高!?
「ちょ、ぼったくりでしょ!」
「ウチの心が傷ついた慰謝料代こみやから。」
「あぁーもー分かった、分かった、付ければいいんでしょ!」
「やったー!」
なぜ私達はあだ名を付ける付けないでここまで言い合わなければならなかったのか。
「えーとじゃあ、胡散、くさい子。」
「なんでやねん。」
真顔で言われた。
「あぁ、じゃあ"たまちゃん"でどう?」
「ほぉーその心は?」
「勾玉のネックレスの主張が激しいから。」
「なんやねんそりゃ。」
そう言って占い師さんこと「たまちゃん」は笑っていた。
「それじゃあありがとうな。」
「うん。」
「今回はウチが引き止めたけど、次は道に迷ったり困ったりした時にきんさい。友達料金で99パーセントOFFにしたる。」
「残りの1パーセントはどうするのよ。」
そう言って笑いあい、手を振って家路に戻る。バーサーカーは蚊帳の外。荷物を持ってもらっているのに申し訳ない。今晩はたくさん料理をつくろう。昨日、一昨日の感謝を込めて、そして今日、明日の夜に共に頑張るために。
占い師たまちゃん
全て謎
やっぱ謎多き女は素敵
まぁたまちゃんそう言う性格ではないよな
話せば話すだけ謎が明かされていきそう