バトル・ロワイアル The Rebellious Memory 作:原罪
会場北東部の平原―――所々に生い立つ草木が緑色の装飾を醸し出す大地の上に、ミュベール・フォーリン・ルーは降り立っていた。
聖騎士であった妖魔の姿は、露出が際どい純黒の服装と突起した黒と蒼の羽根が相まって、妖艶な雰囲気を周囲に放つ。
ミュベールは、殺し合いの場に巻き込まれたという事実を冷静に受け止め、涼しい顔で支給品が入った袋を物色する。
最初に袋から取り出したのは、蝶の刺繍が目立つ小さな古い袋であった。
袋の中からまた別の袋が出てくることに違和感を覚えながらも、同封されている説明書を確認する。
「どくがのこな……か」
どうやら、袋の刺繍は蝶ではなく蛾を表現したものらしい。
相手を一定時間麻痺状態にさせる代物のようだが、果たしてこの殺し合いの場に、自分にこれを使わせるほどの猛者が存在するか甚だ疑問である。
どくがのこなの次に出てきたのは複数のメモ書きだった。添付されていた説明書には「シークレットメモ集」と記載されていた。どうやら6人のあいどる(?)なる少女達の秘密が洗いざらい書かれたメモのようだが、この殺し合いの場では、武器にもなりえない外れの支給品と言えるだろう。
思わず溜息が出てしまうが、手は止めず、袋の中から最後の支給品を引っ張り出す。
「これは……傘か」
それはとても大きな傘だった。
開いてみると内側には青空が描かれていた。
説明書には「なんでも受け止める魔法の傘」と書かれている。
「なんでも、か。面白い。」
説明書に綴られた内容に興味を持ったミュベールは、開いたままの傘を足元に置き、その手に漆黒の剣を出現させる。
この魔剣こそが、彼女が魔に堕ちた証。
ミュベールは手にした魔の象徴を、傘に向けて勢いよく振り下ろす。
魔力を込め全身全霊で叩き潰しにいく一撃は、その風圧だけでも周辺に土煙を巻き起こすほどのものであった。
「ほう……無傷とはな……」
土埃が舞う中、その中心に位置する件の傘はミュベールの剣撃を何のことなく優しく受け止めていた。その情景を見て、この支給品は当たりだと確信する。
その後、すまーとふぉん(?)なる見知らぬ技術に悪戦苦闘すること30分。
ようやく操作感を覚え、名簿を確認することが出来たが、その画面には見知った名前があった。
「可哀想なアルーシェ。半妖という紛いものに改造され、あまつさえこのような茶番に付き合わされるなんて」
いいや、その茶番に巻きまれたのは私も同じか、と自嘲する。
アルーシェ・アナトリアーーー学園時代、教皇庁時代の後輩で、半妖に改造された少女。
実直で正義感の強い彼女は間違いなく、殺し合いには反対するだろう。
それにアルーシェの幼馴染のルーエンハイドも、主催者打倒を掲げるのは容易に想像ができる。
アルーシェーーーお前は理解していない、半妖の宿命を。
妖魔の血を身体に宿してしまった以上、いずれ仲間から疎まれ、愛するものと引き離されてしまう。
妖魔と人間は決して分かり合えることはできないのだから、ルーエンハイドなどの”人間”と手を取り合うことなど滑稽極まりない。
その宿命はとても苦しい。どうしようもなく苦しいことだ。
その苦しみから解放されるためには、魔の血に身を委ねてしまうか、自らの命を絶つしかないのだ。
但し、この殺し合いの場で生き残れるのはたったの一人。
自分を苦しみから解放して、新たな道を授けてくれた主人の元に帰らなければならない状況下で、ミュベールがアルーシェにしてやれることは一つしかない。
最後に、自身の首輪解除条件を確認してみる。
首輪の解除条件は「第四回放送までに同エリアに4時間以上留まらない。条件を満たせなかった場合、首輪は強制的に爆発する」となっていた。
兎にも角にも今は別エリアへの移動が必要のようだ。
魔に堕ちし騎士は、自身の翼を大きく広げ、高く飛翔した。
「待っていろ、アルーシェ。お前のその苦しみは私が解放してやろう。」
無数に拡がる星空の下、風を切る音が鼓膜に響き渡る。
向かい風の冷たさを肌に感じながら、愛らしい後輩騎士の姿を思い起こし、笑みを浮かべる。
「お前の苦しみが分かるのは、私一人だけなのだからな。」
今の自分には大切な何かが欠落している気はするが……。
妖魔となった私の体には、そんな記憶は不要だ。
他の誰にも奪わせやしない。
アルーシェーーー私はお前を……。
【A-7/平原上空/一日目 深夜】
【ミュベール・フォーリン・ルー@よるのないくにシリーズ】
[状態]健康、飛行中
[服装]いつもの服装
[装備]
[道具] 基本支給品一色、スマホ、アンブレンの傘@魔法少女育成計画、どくがのこな@ドラゴンクエストⅪ、シークレットメモ集@アイドルデスゲームTV
[首輪解除条件] 第四回放送までに同エリアに4時間以上留まらない。条件を満たせなかった場合、首輪は強制的に爆発する。
[思考・行動]
基本方針:全員殺して優勝する
1:近隣の施設を回り、目につく人間を殺す
2:アルーシェは私が殺してあげないとな
※参戦時期はよるのないくに2 第3章、学園内でアルーシェと交戦した直後からとなります。