バトル・ロワイアル The Rebellious Memory 作:原罪
"わたしは恐れてはならぬ。恐怖は心を殺すもの。恐怖は完全な消滅をもたらす小さな死。わたしは恐怖を直視しよう。それがわたしを横切り、通りすぎるのを許そう。そして、それが通りすぎてしまったとき、わたしは心の目をむけて、その通り道を見よう。恐怖が通りすぎたあとには何もないのだ。ただわたしだけが残っているばかり"
―――フランク・ハーバート「デューン」シリーズ(矢野徹訳)より
会場南西に位置する図書館、本来此処は、オスティナートの楽士の一人である少年ドールの住処であり、その奥は他者からの干渉を防ぐかのように複雑となっている
そして、そんな場所に迷い込んだ残念なヤツが一人
「……やべぇ」
彼の名はイケP、本名。小池智也。オスティナートの楽士の一人で、同じく参加者である峯沢維弦に対し並々ならぬ執着心を持っていたが、パピコでの戦いの後に多少は溝は埋まった模様。
そして、現状の彼の経緯はこうだ
ソーンに命じられ、Lucid、シャドウナイフ、ウィキッドの三人とともにシーパライソにてラガード狩り及び待ち伏せしていた帰宅部の二人の撃破してきた後からの記憶がない
と言うかこの男、シーパライソの戦いと濃いメンツに囲まれたのが原因で疲れていたのか、ホール内でのファヴのルール説明を夢かなんかと勘違い。半分ぐらいは聞いていたものの思いっきり寝てしまったのだ。
そして目が覚めたら少年ドールの図書館に突っ立っていたため、本人は意味不明状態。図書館なのでまず少年ドールを探しに走り回っていた結果―――
「迷子になったぁぁぁッ!」
この有様である
○ ○ ○ ○ ○
「だーもうっ! 意味わかんねぇよッ!」
元より少年ドールの図書館は複雑なのは分かっていたが、マジで迷子になるとは思わなかった
と言うかこんだけ叫んでいるのなら少年ドールが文句の一言ぐらい言い返してきても可笑しくないのに、うんともすんとも返事はない。
「おいまさか、あれ―――夢じゃなかったのか……?」
一瞬、あの夢がまさかの正夢パターンだったのかと頭がよぎる
「ん、んなわけねぇよな……そ、そんなわけね―――」
ポケットに入っているスマホを見つけてしまった
あとさらっと持っていた袋の存在にも気づいた
「そんな、わけ、ねぇ……」
そんな事を口走りながらも、スマホを操作し
『首輪解除条件:首輪解除条件が達成された女性参加者の首輪を2つ以上所持』
「―――マジ、かよ」
彼は、改めてこの状況―――殺し合いに巻き込まれたという現実を直視する結果となった
○ ○ ○ ○ ○
同じく―――図書館にて
「……困った」
ここに、この図書館内に迷い込み、困り果てている少女が一人。
彼女の名は三ノ宮・ルイーズ・優衣、友人たちからはもっぱらサリュの愛称で呼ばれている
そんな彼女、現在この図書館内で絶賛迷子中。おおよそ歩き続けて半時間ぐらいは経過していた
もっとも、出口が見えないこの状況でも考え事はしていたのだが
1つ、まずあの状況下でどうやって自分や夏彦たちをあの極限状態から連れ出したか
自分や名簿に載っている夏彦や笠鷺渡瀬は、本来ならMAP北東にある原子力研究所の地下施設に閉じ込められていた。外部からの脱出もほぼ不可能に近かったし、それどころか自分たちが閉じ込められていた原子力研究所がこのMAPに存在するという始末。常人よりも頭が良いサリュでもこの超常は流石にお手上げであり、思い当たる可能性としてはファヴの言葉にあった『魔法』という単語ぐらい
2つ、何故か存在する『夏彦』の家。このMAP内にも街エリアなるものは確認でき、その隣には廃村のエリアが存在している。おそらくもぬけの殻とは言え民家らしき建造物は何戸はあるのだろう。だが、何故わざわざ夏彦の家だけが名指しであるのかが不思議な所だ。―――いや、夏彦になら意味はあるかも。
夏彦は過去の出来事がきっかけで、死んだはずの『琴乃悠里』がまだ生きているという幻覚を見ている。そして彼の中では悠里は家からは出られないはずである。――あの時研究所内で何故彼が悠里の幻覚を見たのかは一旦保留とする。
名簿に『琴乃悠里』の名前が載っていない以上恐らく彼女本人が何らかの形でいるというのはありえない。だが、家がある以上夏彦は『悠里が家ごと連れてこられた』と思いかねない。その場合、恐らく夏彦は自分の家に向かう可能性が高い。
そのため真っ先に夏彦の家に向かおうとした彼女であったのだが、肝心の図書館が思いのほか複雑な構造であり、かれこれ出口を探している真っ最中である。
「……夏彦、ましろ……」
何処にいるかは分からずとも、この会場に居るのは明らかな、大切な友達の名を呟く
私がホールに来る前の最後の記憶は、隔壁の前にいた橘風見とあのテロリスト――笠鷺渡瀬を見かけ、橘風見の首を締めて事実を伝えた後、錯乱した彼女によって放り投げられた事。それ以降の記憶がまるでモヤにかかったかの如く思い出せない。
不思議なことに、テロリストに撃たれた傷や衣服に付着していた血痕等が最初っから無かったかのように綺麗になっている。最も、そこまで考えてしまうとキリがない。それよりも問題はさらにある。―――アリスが居ないこと
アリスがなければ自分は見ず知らずの人物とまともにコミュニケーションを取ることが難しい―――もしこのタイミングで誰かと出会っても下手に対応すれば不信感を与えかねない。
支給品として袋の中に入っていたのは基本的なものの他
――魔術万能攻略書(ルナ・ブレイクマニュアル)と書いている妙な本……意味がわからない。説明書には『本来の名前』で言わなければ効力を発揮しないとの事。何故か持ち主に文句を言いたい気分になった
――レスキューマンの衣装とかいう変なコスプレ衣装。レスキューマンが何なのかは分からないけど、ましろが見たら興味を持ちそうな気がする
――そして最後に、『単分子ワイヤー』。説明書によれば『本来使用者ですら見えない代物ですが、今回はこちら側で使用者には見えるようにしています』 との事。単分子ワイヤーを武器にして戦うなんてもっぱらましろが見ていたアニメの中ぐらいだと思っていたが、こうも実際に支給品に武器扱いとして支給されているところを見ると現実味を帯びてくる。
結果として、使えそうなのがこの単分子ワイヤーだけという。せっかくなので試してみることにした。
眼の前にあった本棚から本を一冊取り出し、上空に放り投げた上で、先程装備した単分子ワイヤーを目の前の本に目掛けて叩きつける
すると、宙に浮いた一冊の本は見事に三等分に切り裂かれた
「・・・なるほど」
攻撃面はある程度理解した。後は使っていく中で応用的な用途も考えていきたい――
そう思った最中であった。背後の本棚が真っ二つに両断され、それを扉のようにくぐり一人の男が現れたのは
「……おや?」
アリスがいなくてもわかる、その男は一見爽やかな美男子という風貌ではあるものの
―――彼から感じる”何か”は、テロリストの連中よりもよっぽど醜悪なものであった
○ ○ ○
「夢じゃねぇんだよな、これ……」
この後、何回か自分の顔をぶっ叩いてみたり、マシンガンの弾丸を攻撃を壁に当ててみたりしたが、逆にこれが現実であるという真実を突きつけられる結果となった。
それどころか、本来楽士の力で何かを壊したり、誰かを傷つけ、殺すことは出来ない。だが目の前にある現実……自分の攻撃でヒビが入った壁が、その事実を物語っていた
「あいつら、無事だよな……」
ふと思い浮かぶのは今いる仲間の楽士たちと、本来は敵対している帰宅部の面々。この惨状だ。最早メビウスから出るとかで争っている場合ではない。よくよく考えれば此処はメビウスではない、なのに何故自分はこの姿のままなのか、何故力が発現出来るか、イケPの頭ではその答えにたどり着くことはない
まず問題なのは今回選出されたであろう他の楽士だ。よりにもよって問題児ばかり。
シャドウナイフの方はランドマークタワーの一件で弱腰になっちまってるから逆の意味で問題。
ウィキッドは論外、というか下手したら意気揚々と殺し合いに乗ってそうだ。
ミレイは……まあアイツのことだからブレずにあの態度のままでどっかで痛い目にあっているようにしか見えない。
「……あれ、オレ以外楽士のメンバーまともなのいなくね?」
というか今更なことである。此処には居ないが、スイートPは中身おっさんだし、少年ドールは引きこもりだし、storkは覗き魔だし、梔子はまともだがなんか近づきがたいし、ソーンは何考えてるのかわかんねぇし
それに比べて帰宅部の方はまともなメンバーばかり。人のリアル素顔晒したゴシッパー女や梔子が執着しているキザ野郎はいないのが個人的には幸いである。
「……峯沢、お前はこの状況、どうするんだ?」
峯沢維弦、かつて小池智也が執着していた男。今ではそれなりにまともな関係にはなっているものの、帰宅部と楽士という敵対関係には変わりない。ただ、あいつも曲りなりに帰宅部だ、殺し合いに乗るなんて馬鹿な真似はしないと思う……いや、信じたいと思っている
「――オレらしくねぇ、考えすぎたか」
こんなに考え込むのは自分らしくない……そう思ったイケPは再び歩き始める。支給品の方は『けんじゃの石×5』と書かれた袋があり、開けてみたら持ち手がついた青い石みたいなものがあった。ここが殺し合いの場じゃなければアクセサリかなんかにしてもいい美しさであった。最も、説明書曰くこれの用途は『振ると半径50cm内にいる参加者の傷を癒やします』とのこと。
他の支給品といやあ『せいすい』とかかれた瓶詰めの水……なんかコンビニで似たようなの売ってたよな? もしマジの聖水だったら悪魔あたりに投げつける用途なんだろうが……
そして――フェレット? 説明書には『Air Reading Mascot System』って……わけがわかんねぇ……。なんて読むかわかんねぇしとりあえずこいつは『アリス』と名付けよう!
と、そんな事を考えていると、轟音が鳴り響く
「うおっ、なんだ!?……そういや音がしたほう、確かエントランス近くだよな…」
驚きもつかの間、誰ががいるという可能性を考え、イケPは音が出た方に向かうこととした
○ ○ ○
「―――全く、この図書館は手間を取らせてくれたものだ。だがここで人と出会えたのは運がいい」
「……!」
サリュの目の前に現れた鎧を纏った金髪の青年。一見爽やかそうな好青年に見えるその外見とは裏腹に、サリュでもはっきりと分かるほどに、その男が纏っている禍々しきオーラのようなものを感じていた
「……まずは警戒を解いてもらって、話をしたいのだが?」
「断る、まずその登場の仕方で危機感を感じないというのがおかしい。それに―――」
「あなたから、並々ならない何かを感じる」
人の感情を読み取るのが苦手なサリュでもわかる、そのオーラのような何かは、黒く、そして禍々しく蠢いている。大気が滲み、異様な緊張感がこの場に流れていた
「やはり、面倒になったからと言って本棚を壊して道を拓くやり方はまずかったか、それと」
目の前の青年は邪悪な顔のままサリュに対し剣を向け
「―――貴様のようなカンの良いガキは嫌いだよ」
攻撃の動作を察知したサリュがワイヤーで青年の一撃を防いだことで、戦いの狼煙は上がった
○ ○ ○
同じく図書館、PC室
ここに、轟音を聞いた参加者が一人
「……? なんの音だ?」
彼女の名は赤のアーチャー、純血の狩人。真名、アタランテ
彼女はさっきまで、この殺し合いで自分が取るべき立場に思い悩んでいた
もしファヴが言っている事が本当ならば、私は自分の願いのために殺し合いに乗るべきかもしれない
それこそが『この世全ての子供たちが愛される世界』という、かつて自分が聖杯に願った望みを叶えることが可能だからだ。
だが、その願いを抱いたまま挑んだ聖杯対戦の自分の
空中庭園でのルーラー、ジャンヌ・ダルクとの戦い、あの時の自分はルーラーへの憎しみから自ら禁忌を受け入れ、一匹の化け物と成り果てた。
頭の片隅では理解していた。こんな事をしても子どもたちのためにならない。でも、それでもどうしようもなく憎かった。救えるはずのあの子を見殺しにしたルーラーが憎かった
『それでも、それでも俺はあんたが堕ちていくのを止めたかったんだ』
そんな、行き場のない憎しみのまま暴れていた私を止めたのが、あの
最後まで、最後まで堕ちてしまえば、叶わない夢を願うことはなかった。翼を広げて翔ぶこともなかった。だが、あいつは『それでもだ』と、肯定してくれた。
―――はっきり言えば、本当にどうするべきかはわからない。だけど、あのファヴというのは信頼できないというのが事実だ。あのホールにおいて自分の他に何名か知り合いらしき姿は見かけたし、何名かだが子供たちの姿も確認できた。
願いが叶うというのならその夢想に手を伸ばしたい。だけど、そのためには必要ならばこの手で子供を殺す事になる。―――いくら望みのためとは言え、そんな事はしたくはない。戦える子供どころか戦いない無垢の子供すら巻き込んだこの殺し合いを開いた主催には反吐が出る。
だからこそ迷っていたのだが――――その迷いを一時的に忘れさせたのが先程の爆発だった
「……行ってみるか」
音の大きさからして、ここ場所からそう遠くはない。行ってみて、自らの方針が決まるかもしれない
そして狩人は走り出す
○ ○ ○
所変わってエントランス近く
静寂のイメージが強いこの図書館ではあるが、この一体はもはや静寂には程遠く、あたりには切り裂かれたりした本の紙片や本棚の木片が散乱し、宙を舞う
その中心にあるのは二人の人物
一人は鋼糸を操り、ガラクタの山と化した本棚の上を走り回る金髪の少女―――サリュ
一人はその少女の攻撃を剣で弾きながら、魔力の弾らしき紫の弾で応戦する金髪の青年―――ホメロス
状況だけ見るなればサリュがホメロスを翻弄しているように見えるが、実際のところ不利なのはサリュの方
「くっ―――!」
あの紫色の弾がなんなのかはわからないが、避けた際に弾が本棚を軽々と吹き飛ばしていた。あれがもろに直撃すれば最悪木っ端微塵―――よくても重症
持ち前の身軽さでなんとかしているものの相手の技量はかなりのものであり、接近戦を仕掛けて得意の関節技をかけようとしても軽く振り払われてしまった。今こそワイヤのリーチでごまかしているものの、もし相手の得意範囲に入ってしまおうものなら―――
「ちぃっ、ちょこまかと!」
相手も焦っているらしいけど、このまま長引けば不利なのは私の方―――だったら
思考を張り巡らせたサリュは方向転換、一気に―――
「……! ふっ、わざわざやられにきたか!?」
ホメロスの方へ猛スピードで一直線に飛びかかる――
「ならばここでくたばるがいい―――『ドルマ』!」
これを好機と見たホメロスは、飛びかかる彼女に対し手をかざし、手の先に紫色の魔力を放出
そのまま打ち出された魔法はサリュに直撃するかと、思いきや
「―――っ!」
手に持ったワイヤで――迫りくる魔力弾を反らし、受け流そうとする
が、ワイヤが接触した瞬間、魔力の塊は爆発し、サリュの体が吹き飛ばされる―――が
「ふん、馬鹿め。受け流すつもりだったのだろうがそう甘くはいか―――何っ!?」
「――スキあり」
吹き飛ばされた先はまだ辛うじて形を保っていた本棚の壁
サリュは即座にそれをバネ代わりとして―――再びホメロスへと飛びかかる
このまま近づければこちらのもの、あとは足を浮かせて転ばせてしまえば
そうサリュが思考していた最中だった
「―――甘いな」
男の目が怪しく、そして禍々しく輝いた
■ ■ ■
「―――!?」
サリュが意識を戻すと、そこに男の姿はなく、ただ本と本棚の残骸が散らかる静寂の空間へと戻っていた
「どういう、こと―――」
わけがわからない、あの距離で自分からどうやって隠れたのか、もしくは逃げ出したのか
あの光はなんなのかわからない。おそらくあの光を目くらましにしたのは確か
あの男は危険―――それこそテロリストの連中なんかよりも比較にならないほどに
早くなんとかしないと―――夏彦たちにも危害が及ぶ……
「あ、れ……」
視界がボヤける、室内だと言うのにピンク色のモヤのようなものが見えている……
意識がはっきりしない……眼の前が……?
『―――サリュ?』
―――聞き覚えのある声が聞こえた。
『―――よかった、無事だったんだな!』
―――もし本当なら、無事で良かった
何処にいるの?
『―――すぐ近くにいる!』
―――無意識に走り出していた。それか、意外な展開に呆然とながらも嬉しかったのだろうか
そして目の前に、天川夏彦の、姿が
「――夏彦!」
『―――ドルクマ』
少女に、邪悪な光と爆発が襲いかかった
■ ■ ■
「う゛……あ゛……」
「ふん……まさか勇者でもない貴様にここまで手こずらされることになるとはな」
そして今―――傷だらけで倒れているサリュを、ホメロスは見下ろしていた
あの時ホメロスが使ったのは「げんわくのひとみ」。対象一人に対し幻覚を見せる特技
サリュはこの技にまんまと嵌り、夏彦がいる幻覚を見せられていたのだ
その夏彦がついさっきまで戦っていた男―――ホメロスであることを知らずに
結果として、近づいたサリュはホメロスの魔法を受け、この様な結果となった。
そして―――
「それと、貴様が口にした『夏彦』という言葉……少し面白いことを思い出した」
「……!?」
全身の痛みに体中が引き攣りそうになりながらも、なんとか立ち上がりホメロスを睨むサリュ
「夏、彦に……何を…!」
「ふん、簡単な話だ―――このスマホとやらの画面を見てみろ。」
ホメロスが取り出したスマホ、その画面には
『首輪解除条件:実年齢が18歳以下の参加者を5名殺害する、ただし英霊は除く』
「―――きさ、ま―――!」
「……迂闊だな、貴様の反応でその夏彦とやらが18歳以下だということは理解したぞ」
「しまっ―――!?」
あの男が言う通り、今のサリュは迂闊だった。夏彦の名を出されて、いつの間にか冷静さを失っていた
「これを見れば分かる通り、私の条件のために、その夏彦とやらには死んでもらうことになる。なぁに、心配するな、―――先に貴様がそこに逝く。」
「そんな、こと、させな―――ガハッ!」
何かの糸が切れたのか、サリュは血を吐き、そのまま倒れる
「―――あの世で夏彦とやらを待っているが良い」
―――悔しい、こんな男にまんまとはめられて、挙句の果てに夏彦を殺すと宣言した男の前に、何もできない
―――手も足も、動かせない。眼の前が黒く染まっていく
―――約束したのに、夏彦とましろと、3人で帰るって
―――ごめん、ましろ。ごめん、夏彦
―――私、二人と一緒に暮らせたのは
―――……アリス? 良かった、あなた無事だっ―――えっ?
失われそうになった意識が光を灯す。眼の前には自分を心配そうに見ているフェレット、アリスの姿と
「―――何者だ、貴様?」
驚いている様子の邪悪な
「通りすがりのイケメンだ」
二挺のマシンガンを携えた、
○ ○ ○ ○ ○
(……やべぇな、足の震えが止まらねぇ……)
内心若干ぐらい後悔した。だが、あの少女があのまま殺されるのが我慢ならなくて乱入した
それに女の子を見捨てて自分だけ安全策を取ろうなんぞイケメンのやることでないしただのクズ野郎だ
ヤツの気をそらすために機関銃での威嚇射撃をしたおかげで、そのスキにあの子に近づく事ができた
「―――大丈夫か、アンタ?」
「……」
実際この少女の傷は酷い、見た感じ血吐いてんのかこれ……あの野郎……ひでぇことしやがる
袋に入っていた「けんじゃのいし」を取り出し
「……じっとしとけ、今治療してやる」
説明書に書いてあった通りに振ってみる、すると周りに青い霧のようなものに包まれ、それがすぐに止んだ後、少女の傷はほとんど消えていた
「……え!?」
少女の方はキョトンとした表情のまま立ち上がる。手首を動かしたりして足を動かしてみたり……その最中痛みで表情を歪ませる事もあったが、見た感じだと傷はおおよそ治ってくれたようだ
「……ありがとう、助かった」
どういたしまして……。そう返答したオレは、目の前の外道イケメンに目を向ける
「とんだ乱入者だな……その武器には驚かされたが、次はそうはいかんぞ」
「テメェ……そんな軽口叩けるのは今のうちだぞ」
「それはこちらのセリフだな……足が震えてるではないか」
……クッソ、その通りだよコンチクショウ!
俺の姿こそメビウスでの姿だが、ここはメビウスじゃねえ……
武装は使えるが、メビウスと違って「誰かを傷つけかねない」という事実のせいでビビっちまってる
もし……
「……私も戦わせて」
後ろからさっきの女の子の声がした
「おい、傷が完治したわけじゃねぇだろ! 無理すんなって!」
「―――大丈夫、ここまで治っていれば支障はない……っ」
やっぱり無視してんじゃねぇか……! でも、説得した所で引き下がってくれなさそうだなオイ……
「……無茶すんじゃねぇぞ」
「震えているあなたが言っても説得力がない」
……これは、その、武者震いってやつだ……はい、普通にビビってます
「……フン、まあいい。そこの子供も含めて貴様ら全員皆殺しに」
「―――そこの子供も含めて、皆殺しだと?」
何処かから声がした。
「……誰だ!?」
目の前の男がその言葉とともに、何処からともかく飛んできた『何か』によって
「ぬおおおお!?」
凄まじい轟音と共に吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた
「はあっ!? オイなんだよさっきの!? また新手とかじゃねぇだろうなぁ?」
「心配するな、今は汝らと敵対するつもりはない。」
目の前に現れたのは、美しいながらも気品と野性味を感じる、弓を携えた翠緑の少女
「……敵対の意思がないなら、何が目的?」
「……さぁな、ただ、子供が殺されそうなのを放っておけなかっただけだ。それより、今はここから出るぞ」
「なんだかわかんねぇけど、素直に従ったほうが良さそうだなこりゃ」
○ ○ ○
「おのれ……!」
再び静寂へと戻った図書館。戦いの跡とも言うべき本棚の残骸の中から、男は再び立ち上がった
油断した、などと言い訳をするつもりはないが、あの金髪の女と自分を吹き飛ばしたあの攻撃の元凶は油断ならない。―――いきなり乱入してきたあの妙な男が持ってた変な武器とやらも警戒したほうが良さそうだ
先の戦いであの少女の反応からわかったことと言えば、ヤツが溢した『夏彦』なる人物が18歳以下だということ
スマホなる謎の物体の操作には少々手こずったが、お陰でわかったことと言えば
この首輪を解く条件が、『実年齢が18歳以下の参加者を5名殺害する、ただし英霊は除く』であること
そしてこの場に忌々しき勇者どもと、……よりにもよってグレイグがいることが
命の大樹の崩壊とともにくたばっていたと思っていったが……存外しぶといようだ
まず勇者共とグレイグ……そして図書館で鉢合わせた奴らの始末は最優先だ。それと利用できる相手が欲しいところ。もとより我が主ウルノーガ様もデルカダール王に憑依し国を裏で操っていた。
元人間である自分にはそこまでの芸当はできないが、もし都合よく首輪の解除条件が『勇者の殺害』である参加者がいれば少しは交渉しやすいかも知れん、それに―――
「私がこの剣を持つことになろうとは、な」
勇者のつるぎ―――まさか自分がこれを持つことになろうとは。説明書には何故か『魔の皆さんにも使えるようにセッティングしているぽん』との説明。そもそも大樹に封じられていた勇者のつるぎはウルノーガ様によって変質したはずなのだが……いや、それだったらこの剣が大樹に封じられたままの形なのはどういうことだ?
……だがそれは考えても仕方のないことか。
「……墓地、か。」
この図書館から離れた所には墓地があるらしい。そしてその先にはユグドミレニア城と書かれた建築物の名が
「……まずはここに向かうか」
傷こそ癒えては居ないが、その男の笑みは、紛れもなく人間のものでなく、邪悪な魔物のような、そんな笑みであった。
【H-2/図書館/1日目/深夜】
【ホメロス@ドラゴンクエスト11】
[状態]:ダメージ(中)
[服装]:鎧姿
[装備]:勇者のつるぎ@ドラゴンクエスト11
[道具]:基本支給品一色、スマホ、不明支給品2つ(本人確認済み)
[首輪解除条件]:実年齢が18歳以下の参加者を5名殺害する、ただし英霊は除く
[思考]
基本:勇者とその仲間共、そしてグレイグも殺す
1:図書館で戦った少女と、乱入してきた妙な武器の男は警戒。なるべくは始末
2:利用できる協力者を探す。都合がいい首輪の解除条件を持った参加者が入れば良いのだが
3:首輪の解除条件のために場合によっては『夏彦』とやらは殺す
4:まずは墓地へ立ち寄る
5:まさかこの剣を私が使うことになろうとは……
[備考]
※参戦時期は命の大樹崩壊後からです
○ ○ ○
「ぜぇ……ぜぇ……」
「……全く、この程度で息を上げるとは、情けない」
「いや……つーか……アンタ、すっげぇ……はやい」
「生憎、速さには自信があるのでな」
図書館から脱出し、今はG-3のエリアに辿り着いたイケP、サリュ、そして翠緑の女性の三人と一匹
ちなみにイケPは何故こんなにもあがっているかというと、図書館を出てからアタランテのスピードが早くなり、いくら楽士として身体能力が強化されているとはいえ追いつくまで精一杯、しかもまだ傷が治りきっていないサリュを抱えて走っていたため、この有様である。
「……ふぅ。しっかし助かったぜ。俺じゃああいつに勝てるかどうか、分かんなかったからな」
「あの時にに言ったが、私はただ子供が殺されそうなのを見過ごせなかっただけだ。別に貴様を助けたわけではない。……が、貴様が時間を稼いでくれたお陰であの子を助けられたのは確かだ、そこは感謝する」
「そりゃどーも……。で、そっちは大丈夫なのか?」
「まだ傷は痛むけど……支障はない。でもだからといって背負ってもらうことまでなかったと思う。あの程度なら走れた」
「いや走れたって言ってもな……走って傷とか開いたらどうすんだって話だぞ?」
「そこは我慢する。銃で打たれた痛みに比べたら大したことじゃない。命に関わらなければ多少の無理は範囲内」
「さらっと怖いこと言ったよこの子!? 銃で打たれる経験をその年でするものなのか!? 普通はしねーよ!」
「その年でマシンガンを軽々と扱っているあなたには言われたくない。でも、あの時は本当に助かった。ありがとう。アリスも礼を言ってる」
「―――さて、落ち着いた所でいいか? せっかくだ、色々と話がしたい」
○ ○ ○
「マジなんだな、やっぱ。ここが殺し合いっていうのは。しかもすでに一人殺されてんのかよ……! 俺寝てて気づいてなかったわ!」
「……呑気にも程がある。」
「だけどマジでそうだったらなおさらあいつらの言う事なんぞ聞くわけにはいかねぇな……夢を叶えるってアイツは言ってたがそんなことはメビウスだけで十分だ」
結果として、それぞれの情報を共有することになった。翠緑の女性……赤のアーチャーはスマホの操作方法が分からなかったためにイケPが教えてあげることに。その結果判明したのは
『首輪解除条件:会場内にある導きの教会にたどり着く』
『特殊機能:死亡者放送時、同時に死亡した参加者が誰に殺されたかを表示する』
首輪解除条件の方は簡単な方の条件。特殊機能に関してはイケPは大したことない特殊機能だと言う認識だったが、『誰が殺したか?』という情報はこの場において重要な情報であり、素性を隠して殺し合いに乗っている人物が分かることが出来る。逆に、この情報を鵜呑みにするだけだと誤解から無意味な戦いに発展する危険性を持ち合わせている……というのはサリュの解釈
サリュの首輪解除条件は『天河夏彦、森の音楽家クラムベリー、一条要、三ノ輪銀の内、最低一人の第三回放送終了後までの生存』。特定参加者の生存が条件という癖の強い条件であり、しかもその3名が全員死んでしまった場合はサリュ本人の首輪も爆破してしまうという。幸いには該当者が一名でも生き残っていればOKとのこと。
あとアーチャーが名簿を見た時、ジャンヌ・ダルク、天草四郎、赤のアサシン、黒のアサシンの名前に反応していたが、ジャンヌに感しては同族嫌悪……というかお互い頑固なだけみたいな感じらしい。天草と赤のアサシンはアーチャーがいうのは「信用ならない」との事。黒のアサシンは……なんかはぐらかされた
因みにサリュは安易な首輪解除条件の提示には反対していたが、イケPがあっさり自分の解除条件を説明、さらにイケPが赤のアーチャーにスマホの操作方法を教えた際に流れで知ることになり、結果として教えていないのが自分だけという空気になりやむを経ず提示する流れとなった。
そんな最中―――
「……一つ良いか?」
「ん? どうした?」
赤のアーチャーが口を開く
「汝らに確かめたいこともある、はっきり言おう、私には―――誰かを殺してでも叶えたい願いがある」
「―――!?」
その時の、サリュの反応は早かった。
アーチャーの首元に対し瞬時にワイヤを突きつけ、それに対応したアーチャーを弓を構えサリュの額に対し矢を突きつけている
「お、おいお前ら落ち着け落ち着けって!」
「――動いたらただじゃおかない……!」
「――私には叶えたい願いがある。それこそ全ての子供たちが幸せになれる世界だ。だが、そんなものは夢物語だ。聖杯のような万能の願望機を持ってしてでないと叶わない。あの時私は揺らいだよ……素直に殺し合いに乗れば望みは叶うと。だが、そのためには―――ここにいるであろう子供を全員殺さなくてはならない」
ファヴが本当に、それこそ聖杯のような『望みを叶える』手段を持っているのなら、それこそ殺し合いに乗り、優勝するべきかもしれない。だが、この場に「子供がいる」という理由だけで自分は戸惑っている。
「もし、もしもだ―――汝たちにも、誰かを踏み潰してでも叶えたい願いが」
「―――そんな事でしか叶えられない願いがもしあるなら、そもそも望んでねぇよ」
この緊迫した状況で口を開いたのは、イケPであった
「別に、アンタの気持ちもわからんでもないぜ。俺だって目の前の甘い汁につられてこんな姿になったんだ」
「だけどよ、誰かを踏み台にして、誰かを殺してでしか叶えられない願いなんぞ、くそったれだ」
「結局、そんな事して自分が幸せになれるわけがねぇ―――いや、ある意味俺が言う資格はねぇかもな」
「もしその子供が幸せになれる
――アーチャーは思う。この男はつくづく甘い考えの男だ。そんな綺麗事が通じるのなら、あの時の私はあの様な苦難を、あの様な憎悪を纏うことはなかっただろうに。
だが、この男の目はまっすぐ自分を見据えている。覚えがある、あの時の赤のライダーの目と似ているような気がした。アイツとは強さも、生き様も、おそらく考え方も違う―――だが
「―――そうか」
悩みが晴れたわけではない。ただ、少しだけ、彼らと付き合ってみるのも悪くはないと思っただけだ
○ ○ ○
あの後、今後の方針を決めることとなった。因みにさっきのアーチャーの言葉に対するサリュの返答は「そこまでして叶えたい願いはない」との事。
話し合った結果、サリュの話から夏彦という人物が向かってるかもしれない『夏彦の家』に向かい、夏彦がいるか居ないかの確認ができた後、アーチャーの首輪解除のために導きの教会に行くことにした
当初は鉄塔を経由するルートだったのだが、アーチャーが鉄塔方面からとてつもない『何か』を感じ、危惧したため、お菓子の国を経由するルートになった
その最中、今更ながら先の戦いでサリュの服がボロボロでブラが見えており、イケPが話に集中できずチラ見してた疑惑がありサリュに関節技をかけられた模様。
「ギブ、ギブギブギブぅぅぅぅ!」
「―――えっち」
なお、イケPはサリュの事を「優衣」、アーチャーの事を「
「――『姐さん』、か」
「ん? どうした?」
「いや、なんでもない……そろそろ行くぞ」
「お、おう!」
一人の青年と
一人の少女と
一人の狩人
彼らの行き先に何が待ち受けるか、まだ誰も知らない。
【G-3/一日目/深夜】
【イケP@Caligula -カリギュラ-】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一色、スマホ、けんじゃのいし×5(残り数4)@ドラクエ11、せいすい@ドラクエ11
[首輪解除条件]:首輪解除条件が達成された女性参加者の首輪を2つ以上所持
[思考]
基本:この殺し合いを開いた連中をとっちめてメビウスに帰る
1:優衣、姐さん(赤のアーチャー)と共に夏彦の家に向かう
2:あの外道イケメンは警戒
3:もしウィキッドと出会ったらどうか
4:峯沢が心配
5:1の用事が終わった後、アーチャーの首輪を解除するために導きの教会に向かう
[備考]
※楽士ルート、水族館編終了後からの参戦です
【三ノ宮・ルイーズ・優衣@ルートダブル -Before Crime * After Days-】
[状態]:ダメージ(小・ある程度治癒)
[服装]:いつもの服(ボロボロ)
[装備]:単分子ワイヤ@魔法少女育成計画シリーズ
[道具]:基本支給品一色、スマホ、魔術万能攻略書@Fate/Apocrypha、レスキューマンのコスチューム@カリギュラ、アリス@ルートダブル -Before Crime * After Days-
[首輪解除条件]:天河夏彦、森の音楽家クラムベリー、一条要、三ノ輪銀の内、最低一人の第三回放送終了後までの生存。なお該当者が全員死亡した場合即座に首輪が爆発する
[思考]
基本:夏彦とましろと共に、元の世界へ帰る。
1:イケP、アーチャーと共に夏彦の家に向かう
2:夏彦とましろが心配
3:あの金髪の男は今後警戒
4:もし渡瀬と出会ったら……
5:1の用事が終わった後、首輪を解除するために導きの教会に向かう
[備考]
※AルートGoodエンドからの参戦です
【赤のアーチャー(アタランテ)@Fate/Apocrypha】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服
[装備]:天穹の弓@Fate/Apocrypha
[道具]:基本支給品一色、スマホ、不明支給品1つ(本人確認済み)
[首輪解除条件]:会場内にある導きの教会にたどり着く
[思考]
基本:主催の打倒。子供たちは最優先で保護
1:イケP、三ノ宮と共に夏彦の家に向かう
2:ジャンヌ・ダルク……貴様もいるのか
3:黒のアサシン……
4:天草四郎、赤のアサシン(セミラミス)は警戒
5:金髪の男は今後警戒
6:1の用事が終わった後、アーチャーの首輪を解除するために導きの教会に向かう
[備考]
※死亡後からの参戦です
赤のアーチャーのスマホの特殊機能は『死亡者放送時、同時に死亡した参加者が誰に殺されたかを表示する』
死亡者放送が流れ終わった直後に、スマホに自動的に『○○殺害者:○○』と表示されます