バトル・ロワイアル The Rebellious Memory   作:原罪

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宇喜多佳司は勇者である/宇喜多佳司(反骨)

会場北西部―――静けき平原の中、いま目覚めた男がいた。

心地の良い微風が草花を揺らす夜天の下で、男が着込んでいる白衣は周囲の暗闇とのコントラストを演出する。

白を主張するのは決して服装だけではない。

薄く覆われた頭髪、凛として存在感を示す太い眉も白い。

一見すると、どこかの病院に勤める医師か洗練された科学者のような堅苦しい風貌であるが、正解は後者となる。

 

 

その男―――宇喜多佳司は、鹿鳴市の原子力研究所、通称「ラボ」と呼ばれる施設でBC能力の研究に従事する職員である。

だがそれはあくまでも表の顔であり、裏では反コミュニケーター組織「Q」と繋がりを持ち、「ラボ」の爆破を行い、欺瞞に満ちた社会に対して叛旗を掲げたテロリストという一面も持ち合わせている。

そんな男は果たして、この殺し合いに何を思い、何を感じているのだろうか。

 

 

宇喜多は振り返る。

自身の信念、正義に基づいて綿密に練り上げたテロ計画。

それを台無しにした裏切り者―――笠鷺渡瀬に裁きを下すため、拳銃という慣れない凶器を手にし、火炎地獄と化したラボ内を徘徊していたが、気が付くとあのホールの中に立たされていた。

ホールの中には宇喜多以外にも、男女老若問わず多数の人間の姿が見受けられたが、群衆の中から追い求めていた憎き男―――笠鷺渡瀬の姿を発見するまで、それほどの時間は掛らなかった。

早速詰めかかろうとしたその瞬間、ファヴなるホログラムのようなものが現れ、公開処刑を見せつけられた。

 

 

宇喜多は憤る。

見せしめとして無残に殺害された少女のことは知らない。

だが一つだけはっきりした―――それは、宇喜多をこの場に召喚した主催者は許されざる存在であるということだ。

それこそコミュニケーターに対して非人道的な扱いを行ってきた鹿鳴市を凌駕するほどの巨悪であると、宇喜多は主催者打倒を胸に誓った。

 

 

宇喜多は思考する。

支給されたスマホを手にして自身の首輪解除条件を確認してみたが、口にするだけでもおぞましいものであった。到底このような非人道的な解除条件は許容できない。

また参加者名簿についても目を通したが、裏切り者の他に守辺洵、天川夏彦、鳥羽ましろ、三宮・ルイーズ・優衣の名前もあった。

シリウス隊員の守部はともかく、後の3人は言うまでもなく、護るべき対象だ。

笠鷺渡瀬のような悪漢の手に掛る前に、早急に保護しておきたい。

 

 

宇喜多は支給品袋に手を入れる。

志は立派ではあるが、はっきり言って宇喜多自身には、悪意のある暴漢から弱者を護りきるほどの腕っぷしはない。ラボ内で入手した拳銃も今は手元にない。

したがって、宇喜多が縋るのは皮肉にも主催者から割り当てられた支給品しかない。

 

 

「これは……ショットガンか!?」

 

 

袋から最初に飛び出してきたのは散弾銃だった。

没収されてしまった拳銃よりも遥かに殺傷力のある代物を手にし、宇喜多は思わず笑みをこぼす―――

これがあればやれる、と。

 

 

一先ず取り出した得物を傍らに置き、次の支給品を確認すべく支給品袋に手を突っ込む。

 

 

「痛っ!何だこれは……」

 

 

出てきたのは鎧だった。

それも両肩に刃が露出した物騒なデザインのものだった。

右手から血が滴る。どうやら肩口の刃で裂かれてしまったようだ。

添えられていた説明書には「やいばのよろい:物理攻撃を跳ね返す効果があります」と記載されている。

 

 

「この説明文が本当だとしたら、相当便利なものだぞ、これは!」

 

 

宇喜多は右手に刻み込まれた痛みなどすっかり忘れ、興奮気味に白衣の上から鎧を装着する。

鎧で守られた領域以外は白衣という不格好な容姿となるが、非常事態であるがゆえ致し方ないだろう。

 

 

悪漢に正義の鉄槌を下すための武器も、自分の身を守ってくれる防具も手に入った。

後は夏彦達を捜索するための足が欲しいところだ。

願わくば、最後の支給品がそれを満たしてくれるものであればと支給品袋に手を入れる。

 

 

「こ、こいつは……!?」

 

 

かくして、宇喜多の願いはかなった。

尻餅を抜かし、袋から飛び出てきた“それ”を見上げる。

宇喜多の視線の先にいたのは頭部が鳥で、下半身は馬の……怪物であった。

 

 

この世ならざる幻馬<ヒポグリフ>―――シャルルマーニュ十二勇士が一人、英霊アストルフォの愛馬は自身を呆然と見上げる宇喜多の姿を黙って凝視する。

一人の男と一匹の怪物の視線が交わるが、両者ともに動きがない。

暫くの間沈黙が続き……やがて、宇喜多は意を決して目の前の怪物に声をかけてみた。

 

 

「ぼ、僕にはどうしても救わなければならない人達がいる! その為に力を貸してくれないか!」

 

 

 

目の前の怪物が人間の言葉を理解できるほどの知性を持っているとは分からない。

しかし、宇喜多はありったけの思いを怪物にぶつけてみた。

ヒポグリフは冷静に宇喜多の眼を見据え続け―――そして、クエーと叫び嘴を己が背中に向けた。

乗れ、という意思と捉えて良いだろう。

どうやら意思疎通に成功しようだ、と宇喜多はホッと胸を撫で下ろし、ヒポグリフの背中に搭乗した。

 

 

「待っていてくれ、夏彦君……そして、隊長さん!」

 

 

救うべき存在である夏彦達の顔と、正義の裁きを下すべき背徳者の顔を思い浮かべ―――

 

 

正義の思いのままに

その瞬間全てを賭けて

宇喜多は飛び立った

 

 

 

 

だが間もなく、宇喜多は元来た道を引き返し―――西へ向かうこととなった。

遠方より助けを呼ぶ女性らしき声が耳に入ったからだ。

夏彦達も心配ではあるが、こちらを捨て置くわけにはいかなかった。

 

 

このバトルロワイアルの会場には勇者と呼ばれる存在は複数人いる。

宇喜多は彼や彼女らのような異能も戦闘力もない、ただの脆弱な一般人だ。

だが宇喜多の「弱者を護り、悪を討つ」という志は、彼や彼女らのそれと引けを取らない。

燃え上がる正義の心を胸に抱き、宇喜多はまだ見ぬ弱者を救いに空を駆ける。

 

 

握りしめるショットガンは不相応かもしれないが―――重々しい鎧を着込み、伝説の幻馬に跨るその姿は伝記上に登場する「勇者」と言えなくもないだろう。

 

 

見知らぬ地、見知らぬ夜の中

無限の星すらも霞むように

勇気、心に溢れ宇喜多は往く

 

 

しかし宇喜多は気付いていない。

自身の心の奥底には既に「被験体N」という別の人格が住み着いているということを……

そして、「被験体N」によって生成されていく悪意が、ゆっくりと確実に宇喜多佳司という人格を蝕んでいるということを……

 

 

 

【A-2/上空/一日目 深夜】

【宇喜多佳司@ルートダブル -Before Crime * After Days-】

[状態]健康、右手に切り傷(少)、笠鷺渡瀬への激しい憎悪、「被験体N」の悪意により精神汚染中

[服装] やいばのよろい@ドラゴンクエストⅪ

[装備] 散弾銃@リベリオンズ、この世ならざる幻馬@Fate/Apocrypha

[道具] 基本支給品一色、スマホ

[首輪解除条件]

6名の参加者からそれぞれ頭部、胴体、右腕、左腕、右脚、左脚の何れかを切り裂き、切り裂いた部位を繋いで人形を作成せよ。

作成した人形を「七望館」内にある棺に収納することで首輪は解除される。

[思考・行動]

基本方針:コミュニケーターを保護し、主催者を打倒する

1:助けを呼ぶ声へと向かう

2:その後、夏彦君と鳥羽君、三宮君を探す

3:ゲームに乗っているものに関しては容赦しない

4:隊長さんは絶対に仕留めなければならない

※ 拡声器によるセーニャの声を聞きつけ、グラン・ニョールへ向かっています。

※ 参戦時期は本編Aルート終了後、「被験体N」によって悪意を植え付けられている状態からとなります。

※ 現在は渡瀬に関する記憶が改竄されておりますが、今後他参加者への印象に関して記憶の改ざんが行われ、悪意が増幅される可能性があります。

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