バトル・ロワイアル The Rebellious Memory   作:原罪

38 / 67
でも欲しいのは、選べるのはたった一つ/シロウ・コトミネ、スノーホワイト、イレブン(サードマン)

 

 

 

これが殺し合いである、という事実を天草四郎時貞が認識した時、彼が抱いたのは確かな嫌悪感だった。

集められた人間を小馬鹿にするような態度の、使い魔のような奇妙な存在。

見せしめと称された、醜悪が過ぎる人殺し。

そして、人の死をまるで見世物にするかのような、ゲームと称された殺し合いのシステムそのもの。

どれもこれもが、その本質的には善人である彼にとっては、醜悪と呼べるものであった。

必要に迫られたというだけで、人間は幾らでも醜くなれる。そんな「彼が憎む人間の悪性」へと意図的に追いやるような条件。

そんなものを強いる60年の年月の中で彼が見てきた中でも有数の、救えない畜生だと言うには十分だろう。

今すぐにでもあの巫山戯たフォルムの使い魔の眉間に剣を突き立て、企画した恐らくは魔術師の首を刎ね飛ばすべきだ、という思いもある。

 

けれど、彼はそんな感情的な衝動を全て封殺する。

ただ個人の激情を清算する為に剣を振るうことは、つまるところ前に挙げた彼等が嫌悪する人間と何ら変わりない。

独り善がりの善も悪も、それによってまた新たな善悪を生み出す火種であり、そしてその新しい善悪が終わらぬ戦いを繰り広げられる──それによって、人類は進化してきたのであり。

天草四郎時貞は、そのような残酷に過ぎる人類の進化の道筋を否定する為に──戦いを無くす、永久の世界平和の為に戦っているのだから。

 

それに。

 

 

『──最後まで生き残った優勝者には、どんな願いも叶える権利が与えられるぽん!』

 

 

天草四郎時貞にとって、聞き逃すことが出来ない言葉も、確かにあった。

 

第三魔法、その発動による魂の物質化。

真なる願望機であるアインツベルンの大聖杯によって、彼が成し遂げんとしている悲願。

それを実現出来るのならば、ありとあらゆるもの──必要ならば彼自身すらも投げ打って成就させるだろう、それだけの価値があるもの。

その可能性を、彼等は提示したのだ。

 

勿論、ただの狂言である可能性も相当にある。

そもそもが口約束──その言葉が真である可能性すら怪しいことに加え、あのような悪趣味な見せしめを遂行した主催が、生き残ることができたからと言ってそう易々と願望を叶えるとも思えない。

冷静に考えたとしても、あの主催者が信用に足り得る可能性はほぼ存在しない。

それでも、「もうそれに縋るしか後のない人間」──たとえば、あの車椅子の少女であったり──にとっては十分に餌たりうるであろうし、その理屈を元にゲームに乗る輩も現れるだろう。それだけで、彼等にとっては十分なのだから。

それに、そもそもその権利が果たしてどれだけのものなのかも怪しい。

己の願望がそもそも小聖杯程度には達成できない相当に大規模なものである以上、もし願望を成就させる機構そのものが真であったとしても、第三魔法の成立すらも保証できるというものであるかどうかははっきり言えば疑わしい。

根源にも到達し得る冬木の大聖杯にも及ぶようなチカラを、あのような輩が簡単に持ち合わせている──というのは、正直眉唾であるとしか思えない。

手に入っても尚、第三魔法の発動には程遠い──そうなる可能性が大きいのは、疑いようもないだろう。

 

 

それでも。

天草四郎時貞にとっては、「願望の成就」というそれだけの言葉で、決して無視できないファクターになりえた。

 

 

──何故なら、天草四郎時貞は、失敗したからだ。

 

 

大聖杯の起動は、失敗した。

天草四郎時貞の、人生を賭した人類救済は、どのような手段を用いたかは知らないが、あのホムンクルスと黒のライダーによって阻止された。

それは、この悪趣味極まりない催し自体が証明している。

天草四郎時貞の救済──魂の物質化による全人類の不老不死が成っているのならば、そもそもが有り得ない筈のルール。

天草四郎時貞の、達成していた筈の宿願は、土壇場も土壇場でひっくり返されたのだ。

恐らくは、最後に残っていた一人のマスターと黒のライダー──そして、あのホムンクルスによって。

人の事を言える立場ではないが、随分と執念深いものだ。

世界を救う為の条件も何もかもが揃った聖杯を、遍く全ての人々にとっての夢を、粉々に打ち砕いたのだから。

 

だが、まあ。

それはもう、終わってしまったことだ。

あのホムンクルスに思うところはあれど、叶わなかったことに無念はあれど。

けれど、シロウにとって、それは立ち止まる理由にはならない。

 

──今、彼がここにいて。

願望が、未だ叶っていないのであれば。

そして、与えられるものが、「望みを叶える」可能性が、一ミリでもそこにあるのなら。

 

シロウ・コトミネという人間は、立ち止まる訳にはいかないのだ。

 

まず、精査が必要だ。

主催の言う、願いが叶う力について。

大前提として、存在するか否か。

もし存在しなければ、蘇生したこの身で再び機会を伺う為の準備を始める必要がある。

では、もし存在していたら。

己の悲願の成就の為に、どのように手に入れ、どのように扱うか。

直接悲願を叶えられないとしても、その機能を自身の悲願の踏み台にすることはできる。

ありとあらゆる可能性を考慮した上で、自分の願望の実現可能性を実証しなければならない。

 

まず大前提として、その「願望成就」の力に触れないことには意味がない。

──如何なる原理で稼働しているか。

──その起動に必要なエネルギーは何か。

──叶えられる願いの規模は。

──それに限界があったとして、自身やここに招かれた他の異能で拡張することは可能か。

──そもそもそれにアクセスする方法は?

それらは全て、自分の手で確認せねばなるまい。少なくとも、主催者達の言う事を信じ込むことは出来ない。

幸いなことに、自分の手で接触さえできれば、上記の疑問の幾らかは解決することが出来る。

自身の宝具、『右腕・悪逆捕食』と『左腕・天恵基盤』。ありとあらゆる魔術基盤に対しての接続とその行使を可能とする権能は、消費魔力こそ増えているが問題なく使用可能だ。

ものは試しにと、自身に支給された杖に刻み込まれた魔術を自分のものとして使ってみたが、杖そのものの機能を経由することなく行使できた。

ならば、魔術が介入している限り介入そのものは容易い。

仮にそれが出来ないとしても、少なくとも主催と面識があったと思しきあの白い少女──『魔法少女』にコンタクトを取れば、ヒントは探れるだろう。

 

そして、その前段階にして、何より重大なこと。

この殺し合いにおいて、どのように立ち回るべきか。

 

少なくとも、単純に優勝するのは悪手。

感情的な問題によるものではない。あくまでイニシアチブは主催側が握っている──それが大前提である以上、彼等の言う通りに動くのは悪手も悪手。

精査や調整などを行わなければならない以上、権利だけでなく、その願望を叶えるチカラそのものを奪取しなければならない。

加えて、大前提として「この殺し合いで生き残る」ことがある以上。

マーダーとして疑心暗鬼の中で行動するか、それとも対主催として集団を組んで戦うか。

個人としての危険性の有無でいえば、対主催の方が立ち回りやすいかは一目瞭然だ。

仮にサーヴァントや、或いはそれに比肩する参加者と戦うことになったとしても、徒党を組むことができれば勝率は当然上がる。

それに加えて、先に言った通り『魔法少女』との接触も必要となりうる以上、やはり対主催として取り入る方が堅実に立ち回れるだろう。

 

勿論、懸念もある。

ルーラーや黒のライダー、そしてジークというホムンクルス。いや、赤のセイバーも。

あの聖杯大戦で戦った彼等が、自分のことを疑ってくるのは間違いない。

元はと言えば、あの聖杯大戦で自分が後ろ暗い行動をしたからではあるが、疑われるには十分だろう。

そうなれば、対主催同士での分裂もあり得る。

加えて、自分の人類救済の方法を吐露されることがあれば。

それがどう捉えられるかは、聴く者次第ではあるだろうが──少なくとも、簡単に賛成されるものではないだろう。あの聖女が、自分と対立したように。

だが、どちらにせよ黒陣営や赤のセイバーとは対立を余儀なくされる身だ。加えて、自身がサーヴァントとしては実力が下の部類にいることを考えれば、正面から戦っても潰されるだろう。

それならば、表面的にでも和解してからの頭脳戦の方が、まだ可能性はあるだろう。

 

ならば、こちらの方が良い。

あくまで合理的な思考に基づいた、スタンスの選択。

これでいい。懸念は残っていない──そのはずだ。

 

 

「……ですから、少なくとも今貴女と対立するつもりはありませんよ」

 

 

そして、今。

己に対し武器を構える白の少女に対し、この思考から導いた結論を、シロウは口にしていた。

 

 

 

 

 

 

姫川小雪──魔法少女「スノーホワイト」は、今の自らの状況を改めて振り返る。

 

この殺し合いが始まってから、概ね30分が経とうとしていた。

彼女がいるのはD-7──座礁船のすぐ脇。彼女が転移してから、ほぼ移動はしていなかった。

その理由の一つは、事前準備にいたく時間がかかったというのがある。

転移してからすぐに、彼女は身につけているものを確認した。

スマートフォンと支給品袋。そして、その中身を順番に改めていく──ある意味では模範的な、この世界に転移してすぐの行動。

順に支給品を確認し、ひとまず武器と呼べる一本の槍をすぐさま身につけた後、スマートフォンの内部を確認。

相棒のファルの不在、現在地、そして何より重要な首輪の解除条件。それらを次々に確認し、最後に名簿を確認し──行方不明だったリップルや死んだはずのラ・ピュセル、クラムベリー、カラミティ・メアリの名前がそこにあるのを確認して、彼女の思考は一旦停止した。

こちらを動揺させる為の偽装か、はたまた──そんな思考に気を取られていたのが、理由の一つ。

 

そして、もう一つの理由は。

行動を始めてから程なくして出会った、今目の前にいる青年。

シロウ・コトミネ。白髪に褐色の肌、神父服を纏った青年。

だが、その青年の何よりの外見的特徴は、その顔に浮かべた柔らかな微笑み。

一見すれば見る者に温和な印象を与えるそれは、しかし若く見える外見に反して老成しているようにも見える。

彼に対して、油断なく武器を向けたまま、彼に対して言葉を返す。

 

 

「その言葉を信頼するに足る根拠は?」

 

 

その言葉と同時に、一瞬だけ『魔法』を発動する。

 

 

「残念ながら、それを提示するのは無理だと思いますね。特に、このような状況である以上」

(……流石に、簡単には信じませんか)

 

 

すると、彼女の脳裏に、聴覚とはまた別の感覚で「声」が届く。

彼女が、魔法少女として持つ魔法。

「困っている人の声が聞こえる」──文言だけを見れば、困っている人間を助けるような心優しい魔法少女をイメージさせるもの。

だが、その魔法の用途は、ただ額面通りのものでは決してない。

心の声の数によって、自身の周囲の人間の数を探る。元の世界にいた頃には相棒のマスコットキャラクターがより高性能な索敵を持っていた為に必要なかったが、彼がいない以上この用途も決して見逃せない。

そして、何より重要なのが、「無意識下における思考までも汲み取ることができる」ということ。

悪人の謀り事、狂言師の欺瞞──場合によっては兵器よりも悍ましい脅威となりうるそれらを、スノーホワイトは看破する。

更に、戦闘にも応用すれば、「敵が無意識下で考える戦闘行動プラン」を読み取ることで、敵の一手先を読み戦うことすら可能。

 

しかし、今その魔法は、そうやすやすと使えるものでは無くなっていた。

 

 

(……やっぱり、制限が面倒)

 

 

心の中で、小さくそう呟く。

スノーホワイトに課せられた首輪解除条件。

「第四回放送まで、指定された参加者固有の能力を制限以上に用いてはいけない」。

簡単に言えば、能力の制限だ。

普段は常時発動の魔法が、今は特定の相手を意識しないと全く使えないようになっている。その上、意識的に使用する時間が超過すれば爆発する──と、とんでもなく厳しい条件になっている。

制限は各放送毎にリセットされるらしいが、それでも六時間の間に30分以上魔法を使用すれば首輪が爆破されるというのはかなり使いどころを考えなくてはいけないだろう。

しかも、ご丁寧に『のべ』という言葉が添えられている以上、複数人に同時に使用すればそのまま数倍の速度で目減りすることになるのだろう。

 

 

ここまで直接的に制限するということはつまり、スノーホワイトが『魔法少女狩り』としての強さを発揮することに大幅な制限をかけるということ。

つまり、よりはっきり言うなら──スノーホワイトへの、嫌がらせ。

そして、このようなことをする『心当たり』を思い出し、心の中に苦々しいものが浮かぶ。

 

電脳妖精、ファヴ。

かつて自分達が倒した筈の『マジカルキャンディー争奪戦』の首謀者の一人にして、この殺し合いの主催。

あの争奪戦の壮絶な日々と痛み、苦しみを思い出させる最悪の存在。

そして、スノーホワイトにこのような制限を仕掛けたのも、恐らくはこいつだろう。

電子妖精に「恨み」という感情が存在するのかは知らないが、ことファヴに対しては存在していてもおかしくない。

あの時彼を失脚させた自分と、恐らくはリップルに対しても、悪辣な条件を設定した──そう考えれば、筋は通る。

再びこのようなゲームを開催したことも含め、ファヴに対しての並々ならぬ憎悪が、スノーホワイトの中には広がっていた。

 

だが、それよりも。

こと今のスノーホワイトにとって注視せざるを得ないのは、目の前にいる青年。

シロウ・コトミネ──あの天草四郎時貞であるという、神父服の男だった。

 

 

彼女が彼のことを認識したのは、この殺し合いの会場に至る前。

あの広間で目覚めた直後に、彼女はまず何より己の能力を発動することを優先した。

今、周囲に何人の人間がいるか。魔法少女との関係は。ここが何処か知っている人間は。自分が目立ったとして、どれほどの人間が自分に対して反応するか。

目の前にいた少年やファヴとの対話に平行して魔法を使い、その反応を見ることで、現状を把握すると同時に情報収集を図る──咄嗟の判断でそこまで出来たのは、魔法少女狩りとしての経験故か。

お陰で、魔法少女はおろか、それ以外にも様々な異能──たとえばサーヴァントなど──の概念を知ることが出来たのは、大きなスタートダッシュであった。

見知った魔法少女であるシャドウゲールが見せしめとして処刑された時には動揺したし、そこから間もなく会場に転移させられたことで魔法の続行も不可能となったが、それでもなおおおよそ三割ほどの参加者についてはある程度正確に心の声を聞き取れた。

そして、その中の一人に、シロウ・コトミネは存在し。

彼のその時の心の声を、彼女は聞いた。

 

──この天草四郎時貞の野望を、如何にして打ち砕いたのか、という、答えの出ない疑問と。

──もしも人類救済が叶うのであれば、最悪勝ち上がってでもその願望成就の権利はなんとしても手に入れねば、という、強固な決意。

 

人類救済がどのようなものかまでは、具体的に読み取ることはできなかった。

だが、彼がその為に人を殺すことも辞さない存在であることは、彼女にも読み取れて──それは、彼を危険人物とみなすには十分な情報だろう。

 

そして。

彼女が座礁船の近くに人影を見つけ、魔法を発動した時。

それが、先ほど聞いたものと同一の声──天草四郎時貞と己を称した声であることを確認し、彼女は武器を油断なく構えたまま、彼へと声をかけていた。

 

 

「──天草四郎時貞、ですね。そのまま両手を上げて、こちらを向いてください」

 

 

最初にしたのは、あくまで警告。

スノーホワイトとしても、不意打ちで昏倒させる等の手段を取りたかったのは事実だが、

下手に逃げられて「いきなり問答無用で襲いかかってきた」という事実だけを握られても厄介だし。

第一、相手の力量を弁えずに不意打ちをするのでは、イレギュラーも込みで戦闘そのものを楽しむ花売り少女のことを笑えまい。

ひとまず、このまますぐに襲ってくる様子はない。先手を取ったからか、はたまたひとまずは穏健にこの場を切り抜ける気か。

 

 

「……心当たりがありませんね。名簿にも、そのような人間はいませんが?」

 

 

頷く。

心の声を覗けた人物の中で、特定できるような固有名詞を聞き取れた人間もいくらかいるが、その中でも名簿の人間と名前が一致したのはそこまで多くはない。

それも理解しているが──かといって悠長に接するのも悪手。

 

 

「……人類救済の為、願いを叶える権利を手にする。その為なら、優勝も辞さない。そう思ったことは、事実ですね?」

 

 

故に、いきなり核心を突く。

そして、シロウの纏う空気が僅かながら変化した。

ここからどう動く──この状況からでもなんらかの反撃にあう可能性もある、と、魔法を発動できるよう意識したまま、シロウの次の行動を待つ。

果たして、その次に控えていたのは反論──だが、それはスノーホワイトが思っていたのとは些か異なっていた。

 

 

「──なるほど、確かにそれは私が思ったことでしょう」

 

 

あくまで冷静なまま、そしてスノーホワイトの言葉を肯定した。

ならば問答無用、と改めて構えを改めたスノーホワイトだが、同時に一つの疑問が早計な行動を押し留める。

自分が危険人物であることを肯定したにも等しく、そして自分があの最初の時点で既に対主催であることを行動で示しているにも関わらず──焦ってはいない。

何か絶対の余裕があるのか、それとも。焦らないように思考を整えながら、ならどうするの、と問いかけようとして。

果たして、彼はその余裕を崩さぬまま──口にしたのは、『鞍替え』の言葉。

 

「ですが、私としても、様々なことを含めて考え直しましてね。私も、この殺し合いにおいては、主催に対立するものとして動こうと考えています」

 

そう前置きしたシロウは、ひとつひとつ説明を始めた。

 

──確かに願望成就の権利は手にしたいが、安易に優勝したところで実現できるかは怪しいこと。

──故に、主催に対しては少なくとも対等、できれば撃破した方が確実性が高いこと。

──それなら、対主催として振る舞う方が、この殺し合いにおいての安全も確保できるということ。

 

要所要所で魔法は使ったが、明確に彼自身の意思に反している発言は確かに無かった。

少なくとも語られた範囲については、彼は嘘をついていない。

 

そして。

 

 

「……ですから、少なくとも今貴女と対立するつもりはありませんよ」

 

 

そう結ばれたシロウの言葉に対し、スノーホワイトは改めてそれを反芻していた。

確かに、彼が今言った事は、概ね理屈が通っている。

願いを叶える権利なんてものをあのファヴがそうやすやすと渡すとは思えないし、その権利を手にする為により効率的なのが対主催、というのも納得できる理屈ではある。

合理的な結論であることは、認めざるを得ないだろう。

 

だが。

それでも、尚、懸念は残る。

 

 

「……なら、貴方がそちらの方が確実だと感じれば、優勝を狙う可能性もあるということ?」

 

 

スノーホワイトが抱く疑念。

どんな理屈をつけようと、シロウにとっての目標は主催の提示した願望成就のチカラであり。

もしそれが最も確実な手段だと認識すれば、彼は一切の躊躇無く優勝に向かうだろう、ということ。

 

ちょうど、似たような人間がここにいるのは理解している。

魔法少女、プフレ。

シャドウゲール──皆の目の前で見せしめとして殺されたあの少女の為なら、如何なる卑怯な手段にも手を染めてきた少女。

そのシャドウゲールが死んだ今、この殺し合いで彼女がどう動くか。

少なくとも、良い方向に動くとは思えない。

シャドウゲール本人が、自分が死ねば彼女は止まると言っていたが──いや、だからこそ、それに対して「生き返るかもしれない」という希望に向かって暴走する可能性は大きい。

それがどれだけ小さな希望だろうと、

 

 

「……さて。それを明かせば、敵対しますか?」

 

 

そして、恐らくは同じことが彼にも言える。

現時点で彼がマーダーとなっていないのは、「身の安全の確保」と「主催に対する疑念」あればこそ。

それが何らかの要因で覆されれば、彼が対主催でいる理由も存在しなくなり。

そして、その状況で彼を身内に置いているのは、極めて危険なステルスマーダーを擁しているのと同義になる。

 

それに。

 

 

「それと、もう一つ──あなたの、首輪の解除条件は?」

 

 

質問と同時に、魔法を数秒だけ発動する。

その意図を理解しているのか、彼は笑顔を浮かべたまま。

 

「──『超高校級の幸運』の、殺害」

 

ここで明かすのは仕方がないな、という言葉も添えられた心の声と、全く同じ条件を口にした。

それが、彼の条件であり。

そしてやはり、彼が目的の為に必要であれば、彼は間違いなくそれを成すだろう。

たとえばこの『超高校級の幸運』なる参加者が、他の参加者の害として動き回るならまだしも──いや、そうであったとしても、一度殺害したという事実は後にあらぬ方向へと事態を転ばせかねない。

 

 

「……貴方の懸念も尤もです。簡単に信頼を得られるとは思っていません」

 

 

思案を巡らせる自分に対し、シロウはあくまで平静を保ったまま口を開く。

 

 

「ですが少なくとも、その条件を行使し怪しまれるのも、スタンスをより乱暴なものにするのも、私にとっては大きなデメリットになり得る……ということは、理解してもらえることだとは思います」

 

 

そして、その反論にも筋は通っている。

実際にそうなったらどうなるか、はともかく、「そこに至るまでのメリットとデメリット」を前提で話されれば、「そうならないようにする」対主催のこちらとしても強く出れない。

加えて、神父が懺悔に答えるようなその柔らかな声音が、猫を撫でるようにスノーホワイトの神経を擽る。

そして、更に付け加えるように、一言。

 

 

「……尤も、本来の方法とは別に首輪を解除する条件があれば、その懸念も減るのでしょうが」

 

 

その言葉に、スノーホワイトも言葉を詰まらせる。

それは、彼女自身にとっても避けて通れない条件。

似たような条件──ゲームを加速させる為の、『参加者の殺害』という条件は、他の参加者にも課されているだろう。

スノーホワイトがあくまで対主催として振る舞う以上、その条件を達成させないようにしながら首輪を外す方法を見つける必要がある。

そして、それを見つければ、シロウとの関係もより信頼し得るものになる、と。

シロウが主張しているのは、つまりそういうことだった。

 

 

「……分かりました。ですが、無条件に信頼出来ないのも事実です」

 

 

このまま続けても、議論は平行線になりかねない。

いつまでもこの問答を続ける訳にもいかない以上、腹を決めなければいけない。

 

あくまで徹底的に危険を排除するなら、ここで倒しておくか無力化し拘束という手段が確実性は高いだろう。

だが、前者は失敗すれば「対主催を主張する人間を襲った」と認識されることになる。なまじ主催に反目することで対主催と認識されやすくなっている以上、それが反転し「あれは主催が送り込んだサクラ」などと思われては、自分だけでなく、自分を庇ってリップルやラ・ピュセルまで立場が悪くなる可能性もある。

拘束してどこかに放置するにしても、誰かの手によって救出されたりすれば、ノーマークで行動することになるばかりか自分に対して同様の疑念を植えつけられるだろう。

自身の魔法を説明するにしても、それが自己申告である以上魔法そのものはともかくシロウの企みを証明する術はない。

故に、取りうる最良の手段は。

 

 

「貴方に、同行させてもらいます」

 

 

手元におくことで、離反しないように見張る。

それが、恐らくは確実性が高い行為。

何かあってもすぐに対応できる上、自分の魔法を上手く使えれば事前に行動を抑制することもできる。そうでなくとも、自分の魔法を相手が認識している以上自分の存在そのものが牽制になる。

勿論限界はあるが、それでも目に入らないところで不用意に動かれるよりはマシだろう。

 

 

「……まあ、そうなるでしょうね。いいでしょう」

 

 

そしてその結論は、あっさりと受け入れられた。

恐らくは彼にとっても、それが彼女の選び得る最善手であることが分かっていたのだろう。

どこまでこちらの思考をトレースしているかは分からないが、彼自身の慎重さも理解できた。

ある程度の用意が整わない限り、軽率に動くことも少ないはず。

無論注意を払い続けることに変わりはないが、安心の条件としては十分だろう。

 

ひとまずは収まった──両者がそう思おうとした、その時。

 

 

 

「すいません──一つだけ、聞かせてください」

 

 

 

難破船の裏から、声が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

話が分かる相手で助かった、というのが、素直な感想だった。

最初に自分の真名と思考を知られていた時にはどう出るか迷ったが、相手がすでに対主催の旗印となりうるだけの要素を持っていることからもそれは賢明ではないと判断。

ひとまず行動方針を出来る範囲で明かし、信用を勝ち取ろうとしたが、どうやら上手くいったようだ。

 

 

(……しかし、私の目的を把握していたのはどういうことでしょうか)

 

 

彼女が『魔法少女』──魔術に関係していそうな存在でありながら全く

こちらの聞き覚えのない存在である以上、この殺し合いが始まる前から事前に知っていたとは考えづらい。

ならば読心か。だが、対魔力──それも最高ランクのもの──を貫通した読心があるのかどうか。

自分たちの扱う魔術とは別のシステムである故に対魔力を貫通していたのか、或いは主催の言うジャイアントキリングを有効とする為に施された制限か。

或いは──そこで、ファヴの言っていた『魔法』少女という名前に思い至り、僅かばかり眉をひそめた。

本当に魔法に至る可能性もあるかもしれない──そんな極端な希望的観測をひとまずは保留した時、彼もその声を聞いた。

 

 

「聴きたいことが、あるんです」

 

 

声の主は、ちょうど自分の肉体と同じ程度の年齢であろう少年。

西洋人らしき顔立ちに、滑らかなブロンドの髪をした少年は、そのまま影から姿を現しながら名を名乗る。

 

 

「……僕はイレブンといいます。隠れて話を聞かせてもらってました。そのことについては、ごめんなさい」

 

 

そう名乗り、謝りながら出てきた

一応両手は上に上げているが、その所作が戦闘慣れしたものであると認識し、いつでも黒鍵を取り出せるよう備えをしておく。

 

 

「……それで、聴きたいことと言うのは」

 

 

そう言いつつ、白の少女に一瞥を飛ばす。

こちらの視線に気づき、彼女は静かに首を振った。

──少なくとも、こちらを害するつもりはない、か?

彼女自身が嘘を吐いていない限り、読心を利用できる彼女による判別は相応の信頼ができる。

ひとまずは手を組むことが決定した以上、いきなり排除されることはないとは思うが──それでも念の為に構えは崩さずに、イレブンを注意深く観察する。

 

 

「……シロウさん、でしたね」

 

 

どうやら、その聞きたいことというのは自分に対してらしい。

となれば、先の論争での、自分のスタンスについての話か。

何らかの反論や追求をしてくるのであれば、それでいい。それに納得できるだけの答えを用意するだけだ。

そして、その推察は、ある意味では正解だった。

 

 

「──単刀直入に、聞きます」

 

 

 

但し、それは。

 

 

 

「どうして、世界を救おうとしているんですか?」

 

 

 

思ってもみないところからの、切り込みだったが。

 

 

 

「……これは、また」

 

 

本当に、想像だにしていなかった。

この殺し合いにおける自分がどう、という問題ではなく。

彼自身が抱く理想──それについて切り込まれるという予想は、していなかった。

ともあれ、何かしら言わないと始まらない。それは分かっているが、しかしどこまで話したものか。

 

 

「……人類救済──恒久的な世界平和。それが実現すれば、この殺し合いに参加したよりも遥かに多くの、人類そのものが救われるでしょう。

それこそが私の望みであるから──それでは、納得しませんか?」

 

 

ひとまず、嘘は吐かずに、徹底的なまでに端的に要約したことだけを話す。

だが、ここまで単純なことだけなら、ここまで真剣に聞かれることもないだろう。

ならば、何だ。

思い当たる節がないわけではないし、むしろ多いとも言えるかもしれない。

それだけの問題点はあることを理解しながら、それでもこの方法が最も良いと信じたからこそ貫いているのだから。

 

 

「その為に、必要ならば手にかける──ということを、貴方がたに納得しろというつもりもありません。ただ、それでも私は──」

「そういうことじゃ、ありませんよ」

 

 

否──そうでもない。

彼が聞こうとしているのは、そうでもない。

シロウの思考は、前提が間違っている。

イレブンという少年が聞こうとしているのは──シロウ・コトミネの行為の、理想の、その是非などではない。

 

 

「……それが願いだから、頑張ってる。それだけですか?」

 

 

イレブンの表情が、少しずつ歪んでいく。

記憶の中の痛みを掘り出すかのように、或いは、今も痛むその傷の瘡蓋を剥がすように。

 

 

「……世界を救う為に。貴方は、どれだけ傷ついたんですか?」

 

 

──それは。

あろうことか、シロウのことだった。

シロウ・コトミネ、天草四郎時貞が、どうしてそれに拘っているのか。

たったそれだけの、ことだった。

 

 

「……それが、どうしたというのですか?」

 

 

シロウとて、流石に困惑する。

そんなものを自分に問うて、どうしようというのか。

そんなものを聞くことで、何を得ようというのか。

意図も意味も、推察するには情報が少なすぎる。

 

 

「……辛くは、なかったんですか?」

 

 

そして、そんなシロウの疑問も他所にイレブンの言葉は続く。

その言葉は、或いは同情かともとれるそれ。

だが、そうでもない。似ているが違う。同情ならば、それはこちらを哀れんでいる筈だ。

けれど、目の前の少年は違う。

その瞳に浮かんでいるのは、憐憫でなく。

それは。

 

 

「──どうして?」

 

 

その言葉は。

最早、質問ではなかった。

 

 

「──どうして、貴方はそうやって──『頑張ることができている』んですか?」

 

 

その瞳に浮かんでいるのは──期待。

それは、まるで──救いを求めて彷徨う人間のような、声だった。

 

そして。

そのせいか、はたまた、先に言われた「辛い」という言葉故か。

シロウの脳裏に、過ぎるものがあった。

 

──それは、天草四郎時貞としての人生。

民に救済を望まれ、彼等の統率者として立ち上がったこと。

そして、そこからの記憶は、一本の紐のように連綿として想起させられる。

勝てる筈のない戦で、一度は勝ってしまったが故に、最悪の結末を呼び。

民を殺した徳川の軍に、果てしない呪いを抱こうとした。

 

その気持ちが、残っていない訳がない。

ただの天草四郎時貞は、未だにそれを恨んでいる。

もしも一歩掛け違えれば、その怨念は徳川を──否、世界そのものを憎悪で埋め尽くすに足るものにすらなっていたかもしれない。

 

けれど、シロウは動じない。

これらは、もう、既に乗り越えた。

 

星の数ほど後悔をした。

嘗て抱いた紛れも無い憎悪と悲しみに、幾ら苛まれたか分からない。

親族や仲間の顔を夢で見る度に、これでいいのかと立ち止まりかけて。

幾度となく、自分の道が本当に正しいのか悩み、怨嗟の声に囚われかけて。

 

──そして、それでも歩んできた。

それでも、人間を信じることを止められなかったから。

きっと世界を幸福にすれば、誰もこんな感情に囚われることなく生きる事ができるだろう、と。

そう決意して、自分は世界を救う為に歩んできた。

 

だから。

だから──その幻は、霧散して。

感傷による痛みに浸る暇など、もう無く。

 

 

 

 

──そう。

──天草四郎時貞としての人間的感情は、既に置き去りにした。

 

 

 

『ふむ、そうだな。折角だし、何ぞ褒美をくれてやろう』

 

 

 

──けれど。

──シロウ・コトミネとしての、人間的感情は。

 

 

 

『不服だと言い出したら、今度こそ毒を飲ませるぞ』

 

 

──それは、最新の感情。

シロウ・コトミネという存在が観測した、最も新しい感情。

切り捨ててきた天草四郎としての感情の代わりに残った、たった一つ。

一瞬の感触が、そこに、まだ残っていた。

 

 

「─────」

 

 

その感触は、至福だった。

シロウ・コトミネという人間にとって、報酬を願わぬまま人類種の為に人生を費やし駆け抜けた男にとって。

きっと、何よりも。

 

──考えていなかった可能性を、考える。

仮に。

シロウがセミラミスとこの殺し合いで出会ったとして。

彼女が、仲間と協調するような対主催となる可能性は、どれだけあるだろうか。

もし、彼女を斬らなければならないとしたら。

 

対主催として立ち回るという、合理的思想に対して。

反する可能性を、内包したそれを。

意識的にしろ、無意識的にしろ──避けていたことに、シロウは、ようやく気付いて。

 

だから。

シロウの脳裏に、その情景が宿った時、その瞬間。

柔和な笑顔に包まれていたシロウの表情に、ほんの少しだけ。

 

何かを想う想いが、過って。

何かを憂う想いが、過って。

 

スノーホワイトとイレブンは、その時。

その時始めて、シロウ・コトミネが、その柔和な笑みの中に。

彼の、人間としての感情を垣間見たような気がして。

 

 

 

 

 

「──それでも、私は進むと決めた。

──それでも、私は人間を信じると決めた。

ただ、それだけのことです」

 

 

 

そして。

シロウ・コトミネは、それすらも。

その淡い感情すらも棄却して。

その一瞬の逡巡さえ、笑顔の下へと葬り去った。

 

ある意味では、それは当然であったのかもしれない。

かの女帝が最期にそれを遺そうと思うまでに少年に魅せられたのは、その愚かしいまでの高潔さ故。

もしも彼がここで止まるような人間であったなら、彼女がそうすることもなかったのだろうから。

 

 

そして、それを見て。

イレブンという名の少年は、再びその顔を上げた。

その顔に、先程までの、救いを求めるような表情はなく。

──代わりに、何処か泣きそうな表情を浮かべていて。

或いは、先の表情よりに比べれば、より同情と呼ぶに近いものであったかもしれない。

 

 

「……分かりましたよ、全く、もう」

 

 

そして、ただ一言、そう呟いた後。

彼は徐に懐から何かを取り出し、それをシロウへと投げた。

反射的にシロウは受け取り──それが何かを理解して、再びイレブンに向き直った。

 

 

「……どういうつもりですか、これは?」

 

 

それは──この殺し合いの中でも特に重要なものである、スマートフォン。

そして、それを投げた本人は、真っ直ぐにシロウを見つめて一つの提案をする。

 

 

「……僕のこの、スマートフォンっていうのに、特殊機能がありました。──『このスマホのみ、首輪解除条件とスマートフォンが紐つけされる』らしいです」

 

 

その言葉を聞いて、シロウはすぐさまイレブンの意図を理解する。

先にシロウ自身が示唆した通り、首輪解除条件は一つの鍵だ。

その解除条件に参加者を殺すというものがある以上、対主催はそれに頼らない解除方法は絶対にどこかで見つけなければならない。

しかし、それを見つけるヒントは今はなく──そしてシロウは、何をきっかけに動き出すかが読めない。

そして、動き出した時点で殺害によって首輪を解除するとなれば、それは少なくない懸念事項であるだろう。

 

「僕の解除条件は、『オクタゴンに到達する』です。これなら、少なくとも首輪を解除する為に誰かを殺す必要はなくなる」

 

 

だが、仮にそれが見つからなくとも、首輪を解除することができれば。

それは、シロウが少なくとも突然の凶行に走る可能性を減らせるということである。

 

 

「僕は、最後まで別の手段で首輪を外す方法を探します。だけど、貴方がもしそれより確実な方法で首輪を解除したいというなら──その手段は、誰かを傷つけないものがいい」

 

 

それが、イレブンの主張であり。

対して、それを突きつけられたシロウは、暫し考える。

少なくとも、デメリットはない。

今後三時間、彼と1メートル以上近づかないことがデメリットといえばデメリットかもしれないが、マーダーとの乱戦にならない限りは──或いは自分たちが戦わない限り問題もないだろう。

オクタゴンなる場所の所在こそ分からないが、ヒントが設定されている上、所在が分からないのは自身の殺害対象である『超高校級の幸運』も同じ。

スマホの機能にも一見して違いがない以上──いや、特殊機能があるという事実だけでもブラフには使えることを考えれば、此方の方が扱いやすい可能性もあるか。

 

 

「……そんなことをして、何の意味が?」

 

 

けれど、それだけだ。

デメリットもなければ、メリットもそう多くない。

疑われずに首輪を外せるのはありがたいが、逆に言えばそれだけだ。

少なくとも、イレブンにとってのメリットはほぼ無いだろう。というより、支給品として与えられている特殊機能を手放すというのは敢えてハンデを負うにも等しい。

そこまでする理由があるのか、という疑問と共にそう問いかけたが──

 

 

「じゃあ、殺したいんですか?」

 

 

返ってきたのは、そんな答え。

そして、そんなイレブンの表情には、何かを信じている──いや、信じようとしているような、そんな期待が篭っていて。

彼がどんな想いでそんな表情をしているのかはともかくとしても、彼の返してきた質問に対しては、答えねばなるまい。

勿論──その答えは、当然一つだけなのだから。

 

 

「──いいえ」

「でしょう?だったら、それでいいじゃないですか」

 

 

ああ、そうだ。

もし殺さなくて済むのであれば、殺さない方がいいに決まっている。

天草四郎時貞は、決して悪人ではないのだから。

 

 

「……いいでしょう」

 

 

今度はシロウが、イレブンへとスマホを投げ渡す。

これで1メートル以上密接しないまま三時間過ごせば、交換が成立──それに伴って、特殊機能の発動により条件が変わることになる。

 

「ありがとう、ございます」

「いえ、これでこちらとしても動きやすくはなります。それと、宜しければこちらを」

 

丁寧に頭を下げてくるイレブンに対し、シロウは自身のバッグから一つの支給品を取り出す。

取り出されたのは、一本の片手剣──シンプルな作りではあるが、しかし見る者が見ればそこに秘められた並の鋼の剣とは一線を画していると一眼で分かる逸品。

 

「良いんですか?こんな良い物を……」

「こちらとしても、収まりが付きませんので。扱えますか?」

「はい。装備は出来ますし……うん、よく馴染みそうです」

 

そもそも、交換を提示してきたのは彼とはいえ、こちらは事実上支給品を貰ってしまったようなものだ。

スノーホワイトに後から突かれても面倒になるし、むしろ此方からも支給品を渡した方がいいか、と思ったのが一つ。

そして──その剣が個人的に曰くつきのものであったのも、一つ。

黒のライダーのものであり、あのホムンクルスが用いて、自身が対峙したあの剣だった。

宝具とはいかぬまでもサーヴァントお墨付きの逸品であり、さりとて自分で持ち続けるにはどうにも縁起が悪い。

これからの協力者となり得る人間に渡しておけるなら、一石二鳥と言ったところだろう。

 

それにしても。

ふと、イレブンの言葉を反芻する。

──もし、無辜の人々を殺さないままに、この世界を救えたら。

 

なるほど、自分が目指すのは確かにそうだ。

けれど、それが成るかどうかについては、正直に言えば不可能だと思っている。

自分の理想の真実。

魂の物質化による人類救済。誰もが我欲を捨て、ただ生きる為に生きるということ。

もしそれを知れば、イレブンは、スノーホワイトは、或いはこれから出会う人々はどう思うだろうか?

──少なくとも、全員に無条件で受け入れられることはないだろう。

隠し通すつもりではあるが、スノーホワイトのこともある。露見する可能性は存在する。

そしてそうなれば、きっと対立し、争うこともあるだろう。

 

そもそもイレブンという人物がどんな人間なのか、まだ理解はしていない。

今の彼の行動は、対主催であるかどうか以前の問題──酷く個人的な問題であり、既に二人の間で話が決まっていたことを抜きにしても些か動機を理解しきれない行動である。

その本質が何であるかは未だ知れず、それ故に自分に対してこのような理想論を語る真意、そしてそれを実現するだけの力を持つのかどうかすらも未だ見抜くことは出来ない。

 

けれど、もしも。

罪なき人を誰も殺すことなく、人類救済を成すことができるなら。

それ程素晴らしいことも、ないのだろう、と。

そう思ったことは、紛れもなく真実だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで、どうしますか?」

 

 

二人の会話が終わった、少し後。

それぞれの知りうる情報を一通り交換した後、スノーホワイトは改めて口火を切った。

ひとまず、三人で同行するような雰囲気にはなっているが、さし当たって決めるべきなのは次にどこに向かうか。

既に幾らか出遅れている以上、いつまでもここで話している訳にはいかないのだ。

どこに向かうべきか──そんな提案に対して、答えたのはシロウだった。

 

 

「とりあえず、私の解除条件であるこのオクタゴンという場所を探してみたいと思うのですが」

 

 

なるほど。スノーホワイトとしても異論はない。

恐らくはそれが妥当だろう。下手に見つからないまま禁止エリアになりました──となってからでは遅い。そのまま解除するにせよしないにせよ、見つけておくことは重要だ。

シロウはそのままスマートフォンを調べ、『ヒント』であるらしいらしき写真を呼び出していた。

 

 

「巨大な、丸い石造りのタワーが大写しになってます。それに連なる建物ですから、恐らくこのタワーを見つければいい……ってことですかね」

 

 

その写真を覗き込みながら──スマートフォンは一旦手の届く場所に置いている──イレブンは言う。

 

 

「ええ。恐らく、その建物内の隠された場所なのでしょう。ひとまずこの建物を探さないことには話になりません」

 

 

スマートフォンを操作──というには少しぎこちないが──しながら、そう呟くのはシロウ。

拡大と縮小を何度か繰り返し、地図と見比べ幾らか唸った後──ふむ、と一つ呟いてから納得したかのように頷いた。

 

 

「ですが──少なくとも、北西の島と断定できる以上、まずはそこに向かうべきでしょうね」

「えっ?」

 

 

そうなの?と言いたげな唖然とした顔でイレブンがこっちを見る。

もしかしてその辺のヒントが全く分からないから譲渡したんじゃ、という思考が一瞬頭を過ぎった気がしたが、それだけを確認するのに魔法を使うのはあまりに無駄なのでやめておいた。

 

 

「ヒントはここです。このタワーに繋がる回廊の向こう側」

 

 

見れば、そこには巨大な山がある。

地図と照らし合わせれば、標高が高い山は南西の小島かホムラの里のみ。

その上で、今度は塔の右側を見れば、そこには森が広がっている。

南西の小島ならば、そこを望むロケーションには必ず河が映っているはずだ。それがないというのであれば、自動的に山はホムラの里と絞られる。

となれば、あとはそのホムラの里を囲む四つの施設のうちのどれか───少なくとも、北西の島だというのはアタリをつけらるれる。

 

 

「ひとまず、ホムラの里に向かいましょう。これほど大きなタワーなら、眺めの良い場所から見れば見つかりやすいかと」

 

 

なるほど、目的地としては分かりやすい。

目立つ場所なら人も集まるだろうし、それまで北西の島で行動していた参加者に話を聞ければその分手間も省ける。

だが、ここからはイマイチ遠い──そう言おうとして、地図に描かれたそれに気付く。

 

 

「なら、ここからちょうど北や南に駅があります。電車を使う方が早いと思います」

「ですね」

 

 

シロウの同意も得て、イレブンはと見ると──頭の上に大きなハテナマークを浮かべ、難しい顔をしていた。

 

 

「……電車?」

 

 

──そういえば、彼が住んでいたというロトゼタシアの世界には、電車はないのだったか。

電車を知らないとなると、このあとに切り出したいことにも支障が出かねないのだが──そう思いながら簡単に説明をする。

幸いにして理解は早く、そう長い説明を要せずに理解してもらうことができた。

そして、理解したというなら──と、スノーホワイトはここで一つの提案をする。

 

 

「私は、一旦ここで分かれてそれぞれ北と南の駅を目指すのが良いと思います」

 

 

つまり、こういうことだ。

スマートフォンの交換に必要な三時間の間、イレブンとシロウを1メートル以内に入れない。

それだけでも達成可能ではあるだろうが、万が一のこと──特に戦闘などが起こった場合などでフイになってしまえば、また三時間待ちになる。

そして、時間が進めば進むほど、『超高校級の幸運』に出会う可能性も高くなる。

如何にシロウが穏健に事を進めたとしても、「自分を殺せば首輪を解除できる人間の存在」は純粋に仲間内で不和を生む可能性がある。

そういう意味ならイレブンが持っていても面倒にはなるが、シロウが持っているよりはマシだろう。

それに、仲間──リップルやラ・ピュセル、それにシロウはともかくイレブンにも仲間はいるだろう──を探す為には、その方が効率は遥かに良い。

問題は、シロウの見張りを一人でしなければいけないことだが──元よりそのつもりだった以上、そこに関して問題はない。

どうあれ当面は合理的な理由で協力関係になった以上、少なくとも早々に裏切るという選択肢だけは可能性が低いと見て良いはずだ。

そして、もう一つ懸念があるとすれば──

 

 

「一人で行動して、イレブンさんは危険ではないですか?」

 

 

残る懸念は、後はそれくらい。

無論、ここで出会わなければもとから一人で行動するしかないのだが、出会った以上一人にするというのは忍びないとも感じる。

だが、当のイレブンはというと。

 

 

「──そういうことなら、大丈夫です」

 

 

そう言いながら、手に持った剣を無造作に掲げ。

 

──瞬間、その剣が稲妻に包まれる。

 

金色に武装した剣が、辺りの夜闇を激しく照らす。

先程までただの剣に過ぎなかったそれが、今は雷を纏った神々しき剣と化した。

肌を撫でる、掻き乱され吹き荒れた風が、見掛け倒しなどではないことを主張する。

スノーホワイトは肌で感じる──魔法少女であろうと、これを喰らえば生半可なダメージでは済まない。

再び剣を軽く振ることで霧散した剣をもう一度眺め、損耗を確認しながら、再びイレブンがこちらを向いた。

 

 

「……っと、まあ、こんな感じなんで。最悪複数で囲まれたりしなければ、まあ、逃げるくらいはなんとかなるかなって」

 

 

スノーホワイトもシロウも、こうなれば心配することもない。

他のパラメータを無視したとしても、或いは制限を考慮したとしても──単純な火力というのは、それだけで一つのアドバンテージとなる。

 

ともあれ、話は決まった。

手分けして仲間を探し、交換も成立した後に駅で合流。

そのまま西へ向かいオクタゴンを探す──ひとまず、計画としては悪くないだろう。

電車の乗り方が一人では分からない可能性のあるイレブンが北の駅に行き、そして一応は理解しているスノーホワイトとシロウが南から電車に乗ってそれに合流する。

 

 

「……大丈夫?」

「大丈夫です。うん、キラキラとかないだろうし、鍛治やってる場合じゃないから寄り道して素材集める必要ないし、大丈夫、大丈夫……」

 

 

……後半ブツブツ言っていた事がもの凄く不安になるが、しかし三時間はあると言っていたし地図自体を読む能力には長けていた。

本人曰く、方向音痴でこそないが寄り道しがちだが、その要因もどうやらこの場では心配ない──とのこと。

「少なくとも頼まれごとをしてる最中はそっちに集中します」とも言っていたので、これに関しては大丈夫だと思うしかない。

 

──しかし。

改めて、不思議な人間だ、と思う。

 

彼の心の声の中に浮かんだ、一つの言葉に思いを馳せる。

──『勇者』。

彼女にとってのそれは、『魔法少女』ほど心惹かれるものでこそ無かったが、アニメなどのサブカルチャーに触れていた頃には聞き覚えのある言葉で。

そして、伝え聞く限りでのその行動方針──弱きを助け強きを挫く、というようなそれは、彼女が理想とする魔法少女のそれと似ていた。

勿論、そういったものを美徳とするものこそがヒーローとされ、創作の中では

魔法少女が存在するのだから、勇者も存在しても良い、ということか。

 

そして、そう。

そういったカテゴリーの話をするなら、心の声を聞いた限りでの彼は間違いなく『勇者』と呼ばれる存在であろう。

仲間に手を出されることに恐れ、無辜の人々が傷つくことを嫌い、そして誰かを傷つけようとする相手と戦う覚悟は決めている。

心の声を聞いた限り、彼に対して浮かび上がるのは、そんな模範的な『勇者』のような性格ばかりだった。

 

だからこそ。

最初に自分たちの前に姿を表し、シロウに詰め寄った時の彼の心の声が、ずっとひっかかり続けている。

あの時、聴こえてきた心の声は──やはり、その表情に浮かべていた通りの、期待のような感情と。

そこに混じった、ほんの少しの──後悔。

世界なんて、と独りごちた、ほんの小さな呟き。

それだけが、勇者という言葉のイメージからかけ離れた、しかし確かにイレブンという一人の人間の言葉。

想起されるのは、あの試験が終わってから暫くした後に呟いた、一つの言葉。

 

──次は後悔するんじゃない。後悔する前に自分で選ぶ。

 

彼は、後悔していたのだろうか。

或いは──勇者という言葉。正しいもの。その重圧を背負った先にある、何かに。

 

それが何かと、掘り下げるつもりはない。

ただ、ほんの少し──恐れと、迷いがある。

自分が選んだ、その道の先にある後悔。

ここに来る前に悩んだ、魔法少女狩りと名乗るような権利が自分にあるのかどうか、という思いが、何故か思い出されて。

 

だから、離れようとしたのだろうか。

この先に避けられぬ後悔があると言うようなイレブンから。

そして、何があろうと後悔しないと言い切った、シロウの横にいるのは。

それらの感情を、完全に排斥したものだと、誰が保証できる?

 

 

(──考えすぎは、良くない)

 

 

頭を振る。

どうあれ、この選択は間違ってはいないはずだ。

 

イレブンがどういう人間であるにせよ。

シロウがどのような行動をするにせよ。

スノーホワイトにとって、やるべきことはたった一つのはずだ。

魔法少女として──せめて彼女自身は、正しき魔法少女として振る舞う。

 

ここには、倒さなければならない存在はきっと山ほどいる。

黒幕のファヴ、生き返ったクラムベリーにメアリ。或いは目の前のシロウも。そして、それ以外の危険人物。

そして、その手の内から零してはならないものも山ほどある。

スノーホワイトにとっての、リップルとラ・ピュセル。そして、誰かにとってのこの二人のような存在。

 

そして、その為に。

決定的なものを、取りこぼしてしまう前に──後悔する前に。

スノーホワイトは、魔法少女として、選ばねばならないのだから。

その選んだ先のことは──今はまだ、誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

飛ばされた座礁船に見覚えがあったのが、幸を奏した……のかもしれない。

 

その特徴的な船首や派手な意匠から、慣れ親しんでいる船──シルビア号と酷似していることに気付くのはそう難しくなかった。

いつだったか読んだ本とシルビア本人の証言を信じるならば、この船はオーダーメイドとのことであり、よく似た船であるという可能性も薄い。

 

 

(これは……シルビアさんが知ったら悲しむよなあ)

 

 

そんなことを思いながらも、ひとまず確認の為にその内部を調べることにした。

不幸中の幸いと言うべきか、あくまでイレブンが調べた限りではそこまで致命的に損壊しているわけではなかった。今は数十メートル程海岸線から離れてはいるが、何らかの手段で海まで押し戻すことが出来れば、もしかしたら航行も可能かもしれない。

あるいは、何らかの事故で島同士を移動できなくなった時の応急措置か──そんなことを考えながら船室を調べている時、彼の耳にある声が届いて。

それが、自らと共に長い旅路を歩んだ相棒の声質に似ていた為に、最初は思わず飛び出しそうになった。

勿論、すぐに飛び出さず影から様子を伺った結果として、それが彼とはかけ離れた落ち着いた口調であり、別人であることを悟るまでにそう時間はかからなかったが。

 

 

──代わりに。

彼としては、聞き逃せない言葉も、飛び出していた。

 

 

世界を救う。

それは、そう。

かつて、自分が背負った筈の責務。

それを背負っているという、相棒と似た声の神父──シロウ・コトミネという男のことを、イレブンはそこで初めて知った。

 

イレブン本人の行動方針は、至って単純だ。

どうにかして脱出の手段を模索し、巻き込まれた人々を救う、という、ごく単純なもの。

誰かを殺してまで願いを叶えるつもりなど毛頭ない。

もしも、自分にそんなことが出来るのなら──きっと、とうにそうしていただろうから。

あの選択──世界をもう一度救うか否かの選択の時点で、既に。

 

もしも、あの選択をもう一度しろ、と言われたなら。

自分はきっと、同じ選択をするだろう。

救えた可能性に見て見ぬフリを続けるのは、きっと今よりもっと辛いだろうから。

 

けれど。

それを、後悔していないか、で言うのであれば──後悔していないと言えば、嘘になる。

見て見ぬフリをするよりはマシでも、この痛みそのものが無かったことにはならない。

いくらその世界が幸せに溢れていたとしても、周囲とズレた思い出はその幸せそのものをチクチクと刺し続ける。

 

だから、問うた。

シロウという、人類救済を志すという人間に対して。

何故、そんなものを背負おうとしているのか。

 

もしかしたら、痛みを背負おうともそれを苦としないのかもしれない。

もしかしたら、世界を救うという行為の為ならそもそも痛みだと思わないのかもしれない。

もしかしたら、そもそも痛みという感覚を消しているのかもしれない。

 

イレブンは、その答えが知りたかった。

もし、それで、この痛みが少しでも癒えるなら、と。

それをそのまま踏襲する事は出来なくても──せめて、そういう選択肢があることさえ知れれば、それで良かった。

そんな、ささやかな救いを、求めようとしただけだった。

 

そして。

それに対しての、シロウという青年の答え。

 

 

『──それでも、私は進むと決めた。

──それでも、私は人間を信じると決めた。

ただ、それだけのことです』

 

 

額面通りに受け取れば、それは、痛みを痛みと思わず進む人間の言葉と取れたかも知れない。

だが、その直前の一瞬、表情を歪めたあの時。

その表情に、イレブンは、まぎれもないシロウ・コトミネという人間の感情を見て。

そして、理解してしまった。

 

痛みを感じていない、なんてことはなく。

痛みだと認識していない、なんてこともなく。

その痛みを、苦に感じず笑うことすらもしていなくて。

 

ただ、それをただひたすらに押し殺して、理想を追わんとしていた。

 

 

(──ああ)

 

 

イレブンはそうして、あの一瞬の表情が物語っていたことを理解して。

同じなのかもしれない、と思ってしまった。

彼は自分と同じで──世界を救う為に、たった一人の我儘を、押し殺してしまえる人間なのかな、と。

 

だからこそ。

そこまでして、輝く理想を必死に追い求めるシロウという人間に。

苦しみながらも、前に進み、世界に平和を齎さんとしている彼に。

ある意味で、自分は、共感を覚えて──そして同時に、それを助けたいと思った。

 

彼が作ろうとしている人類救済が、世界平和がどんなものか、それは分からない。

もしかしたらディストピアだったりするのかもしれないし、実はなにかが根本的に間違っていて、不幸せを呼んでしまうものなのかもしれない。

 

けれど、少なくとも、それがシロウただ一人の人間の益になるものではない、と。

その先に見つめているものが『シロウという存在にとっての安寧』ではない、と。

確信とまではいかないけれど、それでもイレブンはそう信じて。

 

そして、ならば。

願いの本質がどのようなものであれ、

その意思だけは、どうか、報われることがあってほしいと。

そう、思ってしまうのだ。

 

 

「……そこまで同意してるのに、その手段は許せない、っていうのは、身勝手なんだけどね」

 

 

二人から別れて。

一人になり、一路北側の駅へと北上するイレブンは、シロウとの会話を追想しながら呟いた。

 

優勝してまで──そう願うのであれば、イレブンとしても対立せざるを得ない。

自分だけでなく仲間達もここに呼ばれている以上、彼等に害を及ぼすならば、自分はそれを止めようとするだろう。

いや、そうでなくとも、無辜の人々を殺すのであれば、

あの煮え切らない折衷案は、そんな曖昧な思いが形になったものであり。

今のイレブンに出来る、最大限のことでもあった。

側から見れば、現実が見えていない理想論だろう。

シロウとて、本心からそれが出来るかどうかは怪しんでいるかもしれない。

 

 

(──それでも。それでも僕は、それを目指してみたい)

 

 

けれど。

果てなき理想を、諦めずに追い続けることを、止めることも出来なかった。

否。

もとより、理想論をただ理想論として切り捨てるつもりなど、ない。

 

理想論、ハッピーエンドを成立させるもの。

そして、『世界を救う』もの

現実にはいないような、御伽噺の英雄。

それを、『勇者』と、そう呼ぶのなら。

 

 

(僕を勇者だというのなら──決して諦めないものだというのなら)

 

 

『勇者』たる少年は、進む。

自分と似た誰かに、手を差し伸べる道を。

それが代償行為と知っていて、それでも尚、その先に幸せがあればいいと願いながら。

 

 

 

 

【E-7/一日目・深夜】

【シロウ・コトミネ@Fate/Apocrypha】

[状態]:正常

[服装]:神父服と赤のカソック

[装備]:イーリスの杖@DQ11

[道具]:基本支給品一式、イレブンのスマホ(特殊機能『条件保存』入り)、不明支給品1個

[思考・行動]

基本方針:「願いを叶える権利」を手に入れ、人類救済を成す。方法を問うつもりはないが、主催が信用できるとは思えない。

1:ひとまずは対主催として行動する。

2:スノーホワイトと共に南の駅へ。そこから北の駅でイレブンと合流し、西の島でオクタゴンを探す。

3:スノーホワイトがジョーカーである可能性も一応は留意。

[備考]

・参戦時期は本編終了後です。

・首輪解除条件は「『超高校級の幸運』の殺害」です。

・スノーホワイト、イレブンと情報交換しました。シロウがどこまで元の世界の知り合いについて話したかは後続の書き手さんにお任せします。

・イレブンとスマホを交換しています。1メートル以上離れたまま三時間が過ぎた時点でイレブンのスマホの所有権を持ちます。

・イレブンとスノーホワイトに対し、目的が人類救済であることを話しました。手段については話していません。

 

 

【スノーホワイト@魔法少女育成計画】

[状態]:正常

[服装]:魔法少女の衣装

[装備]:ホムンクルスの槍@Fate/Apocrypha

[道具]:基本支給品一式、スマホ、不明支給品2個(確認済み)

[思考・行動]

基本方針:殺し合いを脱出し、ファヴを倒す。

1:シロウと行動しつつ、仲間を集める。

2:シロウの動向を見張る。

[備考]

・参戦時期はJOKER以降、ACE以前です。

・首輪解除条件は「第四回放送まで、定められた固有の能力を制限以上に用いてはいけない」です。制限は放送毎にリセットされますが、超過した時点で首輪が爆破されます。

スノーホワイトの場合は心の声を聞く魔法が制限されており、意識した対象にしかほとんど効果を発揮しません。使用できるのは放送毎にのべ30分までです。

他のキャラに譲渡された場合、何の能力がどのように制限されるかは後続の書き手にお任せしますが、何の能力も持たないキャラがこのスマホの使用権が譲渡された場合、所有とみなされた時点でこの端末での首輪解除は不可能となります。

・シロウ、イレブンと情報交換しました。シロウがどこまで元の世界の知り合いについて話したかは後続の書き手さんにお任せします。

・最初の会場で魔法を使用しています。日向のほか、大まかに三割程度の参加者の心の

声を聞き取れたはずです。

・シロウの目的を知りましたが、人類救済の具体的な手段は聞いていません。

 

 

【イレブン(主人公)@DRAGON QUEST Ⅺ 過ぎ去りし時を求めて】

[状態]:正常

[服装]:普段通り

[装備]:アストルフォの剣@Fate/Apocrypha

[道具]:基本支給品一式、シロウのスマホ、不明支給品2個

[思考・行動]

基本方針:脱出と主催撃破。犠牲が出ない限りはシロウの人類救済を手助けする?

1:北の駅へ向かい、南から電車に乗ってきたシロウたちと合流。その後西の島へ。

[備考]

・参戦時期は真ED後です。

・首輪解除条件は「オクタゴンに到達する」です。ヒントとして、スマートフォンに「オクタゴンの窓から見える景色」の写真が映っています。

・スノーホワイト、シロウと情報交換しました。シロウがどこまで元の世界の知り合いについて話したかは後続の書き手さんにお任せします。

・シロウとスマホを交換しています。1メートル以上離れたまま三時間が過ぎた時点でシロウのスマホの所有権を持ちます。

 

 

 

・特殊機能『条件保存』

この機能が入ったスマートフォンに『オクタゴンに到達する』という首輪解除条件が紐つけされる。

このスマートフォンの所有権を持った時点で強制的に首輪解除条件がこれに上書きされ、所有者の首輪解除条件は元所有者のものとなる。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。