バトル・ロワイアル The Rebellious Memory 作:原罪
「そうだ、白秋さんはこれからどこに向かう予定なのかな?」
「そうですね。東の方向にあるアリスランドを目指そうかと思っています」
「アリスランド?」
「ええ、私の知り合いもその場所に来る可能性が高そうだからね」
(アリスランドって東南の端っこにある施設じゃねーか、七望館から遠ざかっちまう。
だけど烏丸理都や天王寺彩夏が必ずそこに向かう確証なんて無いしな……。
いくら見知った建造物とはいえ、そこで起きた惨状を考えると逆に遠ざかろうとする可能性だってある。
単独行動を取れば、その分リスクも増すしここは素直に白秋さんに付いていくとするか)
「そっか、じゃあしらせも一緒にアリスランドに行くよ」
「ありがとう。こんな状況だと一人は心細いからとても嬉しいよ」
あくまで打算的な考えを持って同行している筑波しらせ。
その内面を一切悟らせない様に明るく元気に振る舞いながら歩き出す。
そんな彼女の背中を見て白秋は表情一つにこう考えていた。
――この子なら僕でも殺せる。
伊純白秋は他者と比べて肉体的に優れた人物ではない。
下手すれば運動神経が良いだけの女性相手にも力で負けかねないほど病弱な身である。
それに彼に支給された武器は短剣とデリンジャーのみ。
短剣を用いたとしてカーシャどころか、絢雷 雷神や石動 道宗の様な体力のある男には確実に負けるだろう。
デリンジャーも内臓されてる二発の銃弾を撃ち尽くせばそれで終わりだ。
この舞台に置いて白秋が自力で殺害出来る人物は非常に限られている。
だけど筑波しらせぐらいなら殺せるだろう。
女性の中でも小柄で僕に対して警戒していない彼女なら
不意を突いて押し倒して、その小さな身体に短剣を突き刺して切り刻めば
僕でも簡単に殺害する事が出来る。
だが今はその時ではない。
もし殺す途中で悲鳴でも上げられ誰かに見つかったりしたら。
それとも返り血を浴びた状態を誰かに見つかったりしたら。
この殺し合いに乗った殺人鬼として今度は僕が殺されてしまうだろう。
焦る事は無い。殺せるチャンスが来るまでじっくりと待てばいい。
「ん?しらせの顔になんか付いてる?」
「いえ、とっても元気で羨ましいなぁと思ってね」
「えへへ、元気な所が筑波しらせの取柄なのだ!」
♢
東に向かってしばらく移動を続けていると遠くからこっちの方向へ歩いている一組の男女が視界に入った。
相手の存在に気付いたのはほぼ同時だった。
もしかしたら攻撃してくるかもしれない、と警戒する白秋だったが
「あれ?旭川さん!」
「まぁ、筑波しらせ……無事でしたのね」
どうやらしらせの知り合いのようだ。
二人のアイドルが駆け寄る姿を見て、向こう側の少年もほっと息をついている様子だった。
(旭川姫、デスゲームで殺された筈なのに今こうして生きている……。
参加者の名前に載っているのを見た時は半信半疑だったが本当にこの島に呼ばれているのか。
それなら名簿に書かれていないちは姉やまり姉は生きているのか?現状じゃ判断できねえ。
デスゲーム自体が偽物だったのか、それとも殺されたアイドルが影武者だったのか。
ドリパクの奴から吐かせればハッキリするだろうが何処にいるか分からないし正直に話すとも思えない)
表面的には旭川姫との再会を喜ぶしらせだったが
彼女のとっての最優先事項は烏丸理都及び天王寺彩夏の存在であり
旭川姫や諫早れんは悪く言えば二の次であった。
(例えD.o.Dの後に皆が生きていたと考えても、このバトルロワイアルもドッキリだなんて甘い考えは捨てよう。
死んだ筈の二人が生きている確証を得られた今、烏丸理都には地面に頭を擦り付けさせて謝罪させてやる。
そして天王寺彩夏……白浜ふじみをどう思っていたか、直接、直接出会って本心を聞き出してやる。
もし天王寺彩夏が白浜ふじみを妹の様に大切に想っていたのなら……。
天王寺彩夏の元から去った後、ずっと白浜ふじみを案じていたのなら……私は天王寺彩夏を……)
「ところで、そこにいる彼はしらせの同行者ですか?」
「――ッ!?」
しらせの無事に安堵している女性の顔を見た瞬間
白秋の心に稲妻の様な衝撃が走る。
彼女はあまりにも優雅で華麗で、気品があった。
例えどんな芸術家の作品であろうと彼女を超える美しさを表現するのは不可能と言えるほど。
白秋の心臓の鼓動がはっきり分かる程、速く、強くなっていく。
この苦しみは毒による物とは全く別だった。
心が熱くて、切なくて、苦しいけどむしろ心地いい。
この感覚、これは正しく――。
♢
私に向けられる彼の視線。
それは私を愛する者たちが向けてくる情熱的な視線と同じだった。
しらせと行動を共にしていた彼も私を愛してしまったのですね。
もしかすると、私を独占しようとするおぞましい『崇拝者』へと変貌してしまうかもしれない。
この旭川姫は私を愛する者を分け隔てる事無く全員を愛している。
その考えはドリパクに否定されようとも変わらない。
だけど『崇拝者』に成り果てて暴挙に出る前に私が止めなければならない。
姫は一歩前へと踏み出して、白秋の前へと立つと
まるで舞台劇の様な仕草で彼の手を取って
「貴方は私を愛してしまったのですね。とても嬉しいです。私も貴方を愛します」
「……あ、愛ィィ!?」
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
大胆すぎる姫の告白に日向は驚き、しらせに限っては思わず素が出てしまう。
「ですが私の愛は、私を愛する全ての人へと平等に捧げているのです。
だから貴方一人だけに愛を与える事が出来ないのを理解してほしいの」
これ以上の崇拝者を生み出さない様に
愛していた一人一人に説いて旭川姫の愛の形を伝えようとする。
すると姫の言葉を聞いた白秋はゆっくりと顔をこちらに向けた。
「貴女のような素敵な女性に告白されて、とても嬉しいです……ですが
私には意中の女性が既にいるのです。貴方の愛にはお答え出来ません」
白秋の瞳には既に情熱的な視線が消えていた。
むしろ氷の様に冷たく落ち着いた瞳だった。
「素晴らしい!!私の告白よりも想い人を優先する程の愛情!
なんて尊くて美しいんでしょう……私、感動しましたわ!!」
「一体どうなってるの?」
「しらせ、わかんない」
一時はどうなるかと思ったが、姫の危惧していた崇拝者は生まれる事無く
お互いの同行者が知り合い同士なのもあり、さほど警戒する事無く打ち解け合い
簡単な自己紹介と情報共有が行われた。
日向の知り合いである狛枝や姫の首輪解除条件に必要なカムクライズルの情報に付いて
聞いてみたがしらせも白秋も知らなかった。
日向と姫の首輪解除条件を伝えた所でしらせと白秋の首輪も解除するために
二人の解除条件の情報も共有する事になったが
「……『7名の参加者が死亡する姿を目撃する』って書いてあったよ」
「くそっ!なんて悪趣味な条件なんだ」
しらせの解除条件に日向は怒りを露わにする。
こんな少女に人が死ぬ姿を見せつけるような条件を押し付けるのが許せなかった。
「僕のは『バトルロワイアルが始まる前に殺人を犯した参加者3名の殺害』だね」
「それって少なくてもこの島に来る前に人殺しをした人が少なくても3人以上いる事になるわよね……」
「そういうことになるね」
この島には殺人鬼が複数いる。
首輪解除条件を通じて手に入れた予期せぬ情報に姫が不安になっていく。
トップアイドルとして気丈に振る舞っていても殺し合いとは無縁な環境で生きてきた女の子であり
殺人鬼の存在に恐怖を感じるのは仕方ない事である。
一通り情報共有が終わった頃――
「いいんですか?白秋」
「ええ、複数の施設を見て回った方が姫さんの首輪解除の情報が分かる可能性が高いですから」
「しらせも賛成ー!同じアイドル仲間だもんね」
「皆、ありがとう!」
姫の首輪解除の為に移動予定を変えてまで協力してくれる二人に日向は頭を下げて礼を言った。
殺人鬼と遭遇する可能性も考えて4人固まって行動する方針になったのだ。
「私を思いやるお気持ち感謝します。では行きましょう、私はこの殺し合いを必ず止めてみせます!」
もしかしたらこのバトルロワイアルが自分への崇拝者によって開かれたのかもしれないという責任を背負い。
恐怖を押し殺して姫は気高き誇りを胸に秘めて前へと進むのだった。
例え、その道が棘と地雷だらけの地獄だったとしても。
【G-6/市街地/1日目/黎明】
【旭川姫@アイドルデスゲームTV】
[状態]:健康
[服装]:いつものアイドル衣装
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一色、スマホ、不明支給品3つ(本人確認済み)
[首輪解除条件]:『カムクライズル』の首輪の入手
[思考]
基本:もしこの殺し合いの裏に『崇拝者』がいるのなら、私は自らの責任でこの殺し合いを止める
1:狛枝と他のアイドルを探す
2:日向さんには、『崇拝者』になってほしくない
3:『カムクライズル』とは何者なのでしょう……?
[備考]
※参戦時期は、旭川姫編終了直後からです
その後の移動中、しらせは日向にゆっくりと近づき服をちょちょいと引っ張る。
日向はそれに気付いて振り向くと、しらせはしぃーと静かにするジェスチャーをしたあとでひそひそ話を始めた。
「実はさ、気を付けてほしい事があるんだ」
「なんだい?」
「ここに呼ばれたアイドルで烏丸理都さんって人がいるんだけどさ」
「あー、名簿に載ってる」
「実は烏丸さん、前から悪い噂があってさ。ライバル候補のアイドル達を色んな手で辞めさせてるらしいんだ」
「なんだって?」
「ある時は取り巻きを使って虐めをやっていたり、コネのあるヤクザの人達をけしかけたりと
あらゆる手で追い詰められた子達がいてね、辞めていった子が多いんだよ」
「それは酷い……」
「すぐ辞めた子はまだいいけど……ヤクザに襲われた子は……」
しらせの声が苦しそうに震えているのに日向は気付いた。
彼女の目には涙が溢れていた。泣いていたのだ。
「ライブの帰り道に金属バットで顔面をおもいっきり殴られたんだ。表向きは悪質なストーカーによる逆恨みの犯行に見せかけられて」
「ッ!?……その子はどうなったの?怪我は治ったの?」
「……死んじゃったんだ。自殺で」
「そ、そんな……!」
「眼球が破裂して目が見えなくなって……せっかく命は取り留めたのに……!!」
「それが烏丸理都の仕業だと……」
「しらせ、聞いちゃったんだ。取り巻きにまるで武勇伝を語る様にヤクザにライバルを襲わせた事を」
「……酷すぎる!」
「しかもうちには優秀な弁護士が付いている、そのヤクザも心神喪失で無罪にしてあげたって。
本当はスキャンダルになるような話はするべきじゃないけど、この状況だから烏丸さんには注意してほしいからさ……」
(しらせは僕の身を案じて辛い話を……)
「分かったよ。烏丸理都には警戒しておく」
「話を信じてくれてありがとう、それと今の話は秘密にしておいてね。
噂の出所を調べられてバレたら、私が報復されちゃうからさ」
「ああ、しらせを危険な目に会わせるような事はしないよ。約束する」
♢
くっくっく……上手く行った、上手く行った。
これで日向は烏丸理都に対して完全に悪印象を持つ事になった。
さっきの話にはいくつか嘘が混ざっているけど虐めを行っていたのは事実だし
嘘の中に本物を混ぜとけばバレにくいって言うよね
どうせならヤクザが家に火を付けて家族が焼死したせいで
声が出なくなって歌えなくなったアイドルがいるというデマも入れとけばよかったかな。
次は白秋さんにもさっきの話をして烏丸理都を追い詰めてやる。
待ってろよ烏丸理都!お前はこの筑波しらせによって苦しんだ末に謝罪させてやるんだ!!
簡単に死んで終わりなんて絶対に許さないからな。
地獄から引っ張り出してでも土下座させてやる。
【筑波しらせ@アイドルデスゲームTV】
[状態]:正常
[服装]:アイドル衣装
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一色、スマホ、トップスピードの箒@魔法少女育成計画、包帯@スーパーダンガンロンパ2、動くこけし@スーパーダンガンロンパ2
[首輪解除条件]:7名の参加者が死亡する姿を目撃する。
[思考・行動]
基本方針:烏丸理都、天王寺彩夏への復讐。でも天王寺彩夏は……
1:伊純白秋、旭川姫、日向創の3人と行動を共にする。
2:今後のために烏丸理都の悪評を振りまく
[備考]
自身のルート終了後の参戦です
【日向創@スーパーダンガンロンパ2 さよなら絶望学園】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一色、スマホ、狛枝のパンツ@スーパーダンガンロンパ2、アーナスの水着@よるのないくにシリーズ、旭川姫の水着@アイドルデスゲーム2
[首輪解除条件]:記憶を取り戻す。記憶を取り戻した後、第二条件提示。第二条件をクリアすることで首輪が解除される。ただし第二条件は記憶を取り戻すまで提示されない
[思考]
基本:こんなコロシアイに乗るわけにいかない
1:狛枝、そして姫の知り合いであるアイドルのみんなを探す
2:狛枝は早く見つけたいと何をしでかすかわからない
3:カムクライズル、何処かで聞いたような……?
4:烏丸理都への警戒。
[備考]
※参戦時期は第一章終了直後です
しらせを早急に殺さなくて本当に良かった。
おかげで旭川姫と日向創の二人に警戒される事無くあっさり信用を得る事が出来た。
旭川姫を見た瞬間、白秋は彼女に魅了され『崇拝者』になりかけた。
事実、彼女の事を本気で美しいと想い、彼女を生かす為なら自らの命を捧げる事も心地よいと考える程に心が動いた。
もし、ごく普通の平凡な人生を歩んでいたら、蓼宮と出会わなければ姫のために行動していただろう。
だが蓼宮姉妹によって人生を滅茶苦茶にされ、地獄を味わい続けた白秋の心には深々と憎しみが根付いていた。
愛という強烈な嵐によって心を突き動かされても憎しみの根から引き剥がす事は出来ない。
姫の告白を聞いた頃には恋による息苦しさは消え、彼女を見つめる瞳は情熱的な視線ではなく
どうやって殺してあげようかと考える冷酷な視線に変わっていった。
カーシャを殺害して生き残り、元の世界でアーシャを殺害する目的を叶える為なら姫ですら邪魔者でしかない。
(だけど出来るだけ苦しませないように殺してあげるよ、旭川姫)
現状はこのまま信用を得て確実なチャンスが来るまで機を見るとしよう。
カーシャに付いては彼女の性格上、合流した時点で彼女達との同行を諦める事を想定した方がいい。
恐らく誰かを襲っている可能性が高い、殺人鬼と親しい事が知られれば暗躍は不可能になる。
その時はカーシャを利用して積極的に殺し回る事になるだろう。
僕の頼みなら望んで人を殺してくれるだろう。
そして最後は僕自身の手でカーシャを殺害する。
僕のスマホに搭載された『半径3m以内にいる2人以上殺害した参加者の首輪を爆破する』特殊機能を使えば
非力な僕でさえカーシャを殺す事が可能さ。
だからカーシャ、君は僕と出会うまでに誰にも殺されないでくれよ。
君は僕の手で殺さなくちゃ気が済まないんだから。
【伊純白秋@追放選挙】
[状態]:正常
[服装]:いつもの格好
[装備]:デリンジャー@現実、カミュの短剣@ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて
[道具]:基本支給品一色、スマホ
[首輪解除条件]:バトルロワイアルが始まる前に殺人を犯した参加者3名の殺害。
[思考・行動]
基本方針:あの(蓼宮)姉妹への復讐のために、優勝を狙う。
1:筑波しらせ、旭川姫、日向創の3人と行動を共にする。
2;旭川姫は出来るだけ苦痛を与えずに殺害する。
3:烏丸理都への警戒。
[備考]
※白秋に支給されたスマホの特殊機能は『半径3m以内にいる2人以上殺害した参加者の首輪を爆破する』です。