バトル・ロワイアル The Rebellious Memory 作:原罪
「はぁっ……はぁっ……!……くそぉ!」
絢雷雷神は息を荒くしながらも必死に走り続けた。
先ほど交戦した男に追いつかれでもしたら生き残れる筈が無い。
捕まれば、確実にスマホから首輪解除条件を調べられて殺害されるのが予想付く。
しばらく走り、完全に息が上がった所で茂みの中に身を隠して辺りを見渡した。
どうやら奴は自分を追いかけては来ていないらしい。
追手が来ていない事が分かると雷神はふぅっと深呼吸を数回繰り返して呼吸を整える。
それでも雷神の心には今でも動揺が続いている。
その理由は初音やジークに対して怪我を負わせる事が出来なかったからか?
違う、それもあるだろうが原因はこの島に来る前に遡る。
追放選挙
敗者はアリスランドから追放されるこの勝負の中で要と雷神は戦い。
その結果、選挙中に雷神の本心が曝け出され、狼狽える中で要はこう言い放った。
『とうとう化けの皮を剥がしたな。お前は犯罪者だ』
『少女を救いたいなんて言うのは嘘で、その本心は、自分を守りたかっただけ』
『今さら否定してなんになる?』
『お前は自分が救済されるために、犯人を救済しようとしてただけだ!』
『真に救済されるのは、過去の辛さに立ち向かい克服した時だけだ!』
記憶を消したい理由が自分の罪を忘れたいという身勝手さからなのを露呈された雷神は選挙に敗北。
追放が確定し、罪も露呈した雷神に向かい要は更に追い打ちの言葉を投げかけた。
『お前は……ただの人殺しだ』
『お前と似たような環境で育った人間が、すべてお前のようになると本気で思ってるのか?』
『すべてを周りのせい、人のせい、環境のせいにするのもいいかげんにしろ』
『お前が何者か、俺が教えてやる』
『自分の犯した過ちを認めず、罰から逃れたいだけの……責任逃れな甘ったれの極悪人だ!』
『化け物に喰われ、死ぬ瞬間まで……悔いろ。いや、その後も未来永劫、苦しみ続ければいい』
追放された雷神は自分が罪人である事を内心でひたすら否定し続けながら彷徨い、化け物に喰われた。
それで死んだ筈だった、だけど今は生きている。
もしかしてここは地獄でこれからも苦しみ続けろという意味なのか?
それでも雷神は生きたかった。
要に言われた言葉が今でも脳内で呪詛の様に繰り返され、心がぐちゃぐちゃにかき乱されるも
ゲームで勝ち残れば助かるんじゃないかと希望にすがりついた。
「俺は……被害者だ!ただここで、殺される訳にはいかねえ!」
生き残りたい一心でスマホを取り出した雷神は『特殊機能の使用』を選択して入力した。
『誰に使用しますか?』の文と共に『ジーク』と『阿刀田初音』の名前が表示された。
雷神は二人の名前を把握していなかったが片方は西洋人風の男である事から名前はジークで
女の方は明らかに女性の名前である阿刀田初音と解釈して『ジーク』の方へと入力した。
絢雷雷神に与えられた特殊機能
それは、『この機能の持ち主と直接出会った事のあるプレイヤー一人を選択して他参加者との接触状況を閲覧できる』
対象のプレイヤーが死亡するか、使用してから6時間後に閲覧機能は解除され
その後に別のプレイヤーと接触する事によって再び指定する事ができる。
『G-7現在 阿刀田初音と同行中――』
特殊機能によってジークの居場所と同行者が提示された。
現在地からしてそこまで移動していないのだろう。
雷神を追っていないのはこれで明白となった。
安心した雷神はバッグからペットボトルを取り出すと水をごくごくと飲み、渇きを癒した。
ジークから離れるように行動すれば絶対に遭遇する事は無いと思考して、立ち上がった時
ピピッと閲覧情報が更新された音が鳴り、ペットボトルをバッグに戻してスマホを確認すると。
『G-7 ジーク、阿刀田初音によって殺害される――』
「なっ!?なんの冗談だよおい!」
『対象のプレイヤーが死亡したため、この特殊機能は解除されます』
ジークに特殊機能を使ってから僅か数分、それだけの時間で死亡報告が来る。
そんな馬鹿な話がありえるか?とても信じられなかった。
しかもよりによってジークを殺したのがあの非力なガキだとは。
だが確かめずにはいられない。
もし嘘だったらこの追跡機能は全く役に立たない事になる。
奴らの間に何があったか状況を知るべく彼は来た道を戻って行った。
ジークと雷神が交戦した辺りから更に先へすすむと小さなバス停が見えた。
そこに設置されているベンチの前でうつ伏せに倒れている男を発見した。
彼こそジークで間違いなかった。特殊機能は正確に表示されていたのだ。
「なるほどな、毒さえ盛れば腕っぷしの差なんて関係無く殺せるはずだわな」
口からは血を吐いた跡があり、衣類には乱れが無く。
彼の傍には一口食べて放置されたサンドイッチが落ちていた。
この食べ物に毒が入っていて彼はそれを口にして死亡したのだろう。
「なんだよこれ……く、くくく、ははっ……ははははは!!」
笑いが止まらない。
なんだよ、普通の事じゃないか。
初音と言う女とはとんだ食わせ物だ。
虫も殺せ無さそうな人畜無害を装って、あっさりと人を殺しやがった。
そうさ、人は環境が悪ければ誰でもこうなるのは仕方が無い事なんだ。
間違ってるのは俺じゃない、要の方なんだ!
「なんだか頭にかかってたモヤが拡散して晴れ晴れとした気分だぜ」
もはや脳内に響き渡っていた要の言葉は何の苦痛も感じなくなった。
何故なら俺は間違った事はしていないから。
要は自分が人を殺さずにはいられないほど追い詰められた経験が無いから、そんな台詞を吐けたのだ。
そんな奴の言葉など軽すぎて何の説得力も無い。
殺るか殺られるか、今のこの状況こそが圧倒的現実を表している。
「少し、冷静になれたかな」
雷神はナイフを取り出すと、ジークの背中に向かって深々と突き刺した。
ナイフを抜くと刺した場所を中心に純白のシャツから赤い染みが出来ていく。
別にジークに恨みがあってこんな事をした訳ではない。
ただ死んだプレイヤーへの攻撃にも首輪解除条件の達成に繋がるかの確認をしたいだけだ。
「ちっ、未だ0人のままか。生きてる人間じゃねえと駄目みたいだな」
頭が冷えてきた雷神は次の行動へと思考を巡らせた。
反省すべき点は多い、まず初音に対しては
ナイフを持った男と出会えば相手を刺激させないように大人しく言う事を聞くだろうと考えて
パニックになって叫び声をあげる可能性を考慮してなかった。
ジークに関しても見た目が優男だったから
腕っぷしの差なら絶対に負ける訳無いだろうと考えてしまった。
見た目に反して非常識な程の強さを持った奴ならあのイカれた双子姉妹がいたじゃないか。
どれも推測出来た事だった。
だが早く首輪を解除したい一心で冷静さを欠いていた俺は
こうであってほしいという都合の良い解釈で行動していたせいで
都合良く行かなかった場合の想像すら思考停止して何も考えていなかった。
「……これを使うか。撃ったら……多分死ぬかもな」
くくっと笑みを浮かべながらバッグからもう一つの武器であるアサルトライフルM4A1を取り出した。
相手に怪我を負わせる為だけに使うとすれば明らかな過剰火力であり。
殺さずに首輪解除を狙っていた雷神は使えずに置いていた。
(そもそも、初めから相手が死のうが関係無く撃っていればこんな失態は犯さずに済んだ。
ここは殺すか殺されるかの場所だ、俺の銃で直接死のうが負傷したせいで誰かに殺されようが
負い目を感じる必要なんて全く無い、殺された奴がマヌケだっただけの話だ)
この武器なら遠距離から一方的に攻撃出来る。
ジークの様な腕の立つ奴が相手でも奇襲を仕掛ければリスクはいくらか減らせられる。
銃なんて扱った事は無いがご丁寧にスコープ付きで予備弾薬も入っていやがる。
まるで、これを使ってどんどん人を殺してくださいと言ってるみたいだ。
「それと初音って奴は邪魔だな……殺るしかねえな」
あいつは俺が敵意を持ってるのを知っている。
余計な事を他の参加者に喋られたら首輪解除が困難になってしまう。
こんな事ならジークにではなく初音に特殊機能を使えば良かったが
あの時点で初音がジークに殺意を抱いてるのを推測するのは不可能だったからそれは仕方がない。
特殊機能が切れた今は指定できる参加者は一人もいない。
解除後はもう一度参加者との接触を行わなければ使えない機能ということか。
『お前と似たような環境で育った人間が、すべてお前のようになると本気で思ってるのか?』
ふと、要の言葉が脳裏によぎる。
確かに、全ての人間がこの状況でも決して人を殺すとは限らないかもな。
少なくても足元に転がってるこの男は人を殺してはいない。
だったら要はどうなんだ?あいつはこいつの様に誰かに殺されるのを大人しく待っているのか?
それは無いだろうな、追放選挙なんて暴力を禁止にした殺し合いと同然だ。
大方、あの気持ち悪いすまし顔で無害を装って誰かに取り入ってるのかもしれねえな。
あいつが頭の回る人間だと言うのはムカつくが事実には違いない。
実際に俺は追放選挙で一条に負けたのだからな。
自分が生き残るために口八丁で誰かを利用するのも訳無いだろう。
「名簿には俺以外にも何人か知り合いがいる、一条要、それとよくつるんでいる二人もいるな、丁度いい」
こいつらは俺と同じ様に追放されてこの場所に来ているのか?
それは現時点では判明しようがない事実であり、今は重要な事ではない。
重要なのは、一条に直接、復讐してぶっ殺す機会がやって来たという事だ。
俺が追放された事で一条は俺に対しての記憶は消えているかもしれねえ。
だが俺はてめえに受けた侮辱は絶対に忘れねえ……。
俺を陥れた奴は誰だろうとぶっ殺してやる。
だが、あいつを殺す前にまずは蓬茨苺恋とノーリの二人だ。
特に蓬茨の方は、一条に相当熱を持っているぐらいに依存しているのは俺でも分かる。
一条の方もその二人の生存を優先して殺し合いに乗るだろうな。
奴は腕っぷしは大した事無いが、他者を欺く言動や手に入れた支給品を使うなど
利用出来る物は全て利用し尽くしてくるはず。
その行動目的である大事な二人を失えば……流石の一条も冷静ではいられまい。
奴のすまし顔を絶望と憎しみで苦痛に歪めさせて、最期に俺が殺してやる。
「一条要、貴様は大事な人を失い、死ぬ瞬間まで、いや……未来永劫苦しみ続けろ!!」
【G-7/一日目 深夜】
【絢雷雷神@追放選挙】
[状態]:腹部にダメージ(小)
[装備]:アーミーナイフ@現実、M4A1(30/30)@現実
[道具]:基本支給品一色、スマホ(特殊機能付き)、M4A1の予備マガジン4個
[状態・思考]
基本方針:迅速に首輪を解除して生き残る。その為なら参加者の殺害もいとわない。
1:一条要への復讐を果たす。
2:蓬茨苺恋とノーリを殺害する。
3:他の参加者を見つける。
4:絶対に首輪解除条件を他人に知られない様にする。
[備考]
絢雷雷神に支給されたスマホの特殊機能は『この機能の持ち主と直接出会った事のあるプレイヤー一人を選択して他参加者との接触状況を閲覧できる』です。
対象のプレイヤーが死亡するか、使用してから6時間後に閲覧機能は解除され
その後に別のプレイヤーと接触する事によって再び指定する事ができます。する事ができます。