バトル・ロワイアル The Rebellious Memory 作:原罪
ホテル・エテルナ二階、個室にて蓬茨苺恋はジャックの手を借りて治療を行っていた。
と言っても傷口はそれほど深くはない、他者に襲われたように見せかける為に自ら付けた傷であり
行動に支障をきたす程の傷は付けていない。
「これで大丈夫、手伝ってくれてありがと。ジャック」
「えへへ、おかあさんに褒められちゃった♪」
無邪気に笑うその少女、ジャックは顔や体の傷さえ無ければ普通の女の子の様な無邪気な笑顔を見せる。
ふいにジャックは苺恋の耳元に近づいて来て、こうささやいた。
「あの人、わたしたちの事を警戒しているみたい。おかあさんの事はまだ大丈夫だと思うけど……殺しちゃおうか?」
「……もう少し様子を見ましょう。まだ利用出来るかもしれない」
「うん、わかった」
苺恋には要の様に嘘を見破る能力は無いがジャックの言葉は嘘とは思えない。
この子は息を吸う様に人の命を奪う事が出来てしまう。
まともな人間ならジャックの存在に恐怖するのだろう。
私もこの子が恐ろしい、だけど……。
「……んっ」
「どうしたの?ジャック」
「おかあさん、なんかとってもいい匂いがする」
苺恋の体に抱き着いて甘えてくるジャックの姿は、時折とても愛おしく思えてくる。
冷酷な殺人鬼と幼い少女の二つの顔が同居しているようでとても不思議な子だった。
♢
「怪我の方は大丈夫か?」
「はい、傷口はもう塞がりました」
「そうか。大事にならなくて何よりだ」
苺恋とジャックが降りてきた所でカミラは二人との情報の共有と今後の方針に付いて語る事にした。
ファヴという主催者の存在とそれに話しかけていた白い少女の情報。
それは二人とも知り得なかったので次は参加者名簿に知り合いがいるか聞いてみると。
苺恋は『一条要』と『ノーリ』の二人が知人だと言い、ジャックの方は特に知り合いがいないという。
私は『アルーシェ・アルトリア』『ルーエンハイド・アリアロド』『ミュベール・フォーリン・ルー』『アーナス』『クリストフォロス』との合流。
そして直接の面識は無いが現在行方不明になっている筈の『リュリーティス』の保護を方針に捉えている旨を伝えた。
「それと気になっている事があるんだがジャック、君の名前は名簿に載っていないが何故なんだ?」
「名簿にはわたしたちの名前は『黒のアサシン』って載っているからね」
「アサシン?暗殺者とはどういう事だ」
「聖杯戦争でアサシンとして召喚されたサーヴァントがわたしたちなんだ。
今は聖杯戦争じゃないのに何故かこんな所で召喚されたんだけどね」
「召喚? まずその聖杯戦争というのを教えてくれないか」
「んーとねー。7人のマスターが願いを賭けてそれぞれサーヴァントを召喚して殺し合う儀式、それが聖杯戦争で。
あれ?今回は7人対7人のマスターが戦うから14人の聖杯戦争なんだっけ?でもここは聖杯戦争とは違うから、うーん」
ジャックの説明からは中々要領を得ないが、願いを賭けて殺し合うという部分はこのバトルロワイアルに似た部分を感じさせられた。
名簿に載っている黒のライダー、赤のセイバー、赤のアサシン、赤のアーチャーもジャックと同じサーヴァントという存在なのだろう。
赤と黒の二色に分かれている所からしてその二色の陣営で戦っているという事なのか。
「という事は黒のライダーは君の味方で赤の三人は敵という事になるのか?」
「んっと……まだわたしたちは誰とも出会ってないし、どうなるかは分からないかな。
今は聖杯戦争とは状況が違っているから、全員敵かもしれないし」
ジャックの言ってる事は半場信じがたいが、それなら彼女が人ならざる気配を発している理由もそれなりに納得は付く。
だが、その場合なぜ彼女がアサシン【暗殺者】という呼び名を付けられているのか。
その名の通り、多数の命を奪っている存在であるなら危険人物では無いかと言う疑惑が浮かび上がってくる。
今は蓬茨苺恋という少女に懐いているが、要注意するべきだろう。
サーヴァント、聖杯戦争、どの文献でも見慣れないような単語が出てきている。
これもファヴや白い少女同様、調べる価値がありそうだ。
今後の方針に付いての話題になった所で苺恋は口を開いた。
「私はすぐにでも要やノーリを探そうと思います」
「そうか、私も協力しよう。ただし今はまだ外が暗い、もう少し明るくなるのを待つべきだ」
見慣れない場所で暗闇の中の捜索は例え妖魔がいなくても危険が大きい。
日が出るまでの間はこのホテルで待機するよう説得したら彼女はすぐに納得してくれた。
二人には外に出る前の間は旅支度の準備や休息に専念するように伝えると
彼女達は納得して客室へと戻って行った。
「さて、私も準備を整えるとしよう」
メンテナンスルーム。
そこは半妖となったアルーシェの肉体の調整をする場所であるが
エテルナに滞在中は私の研究室としても利用している。
「設備も器具も変わらないな……まるでホテルそのままこの世界に移動させられたかのようだ」
乱雑に放置されてる道具も完全に再現されている。
それを使っていたのは私自身であるのだから間違いない。
設備の動力も生きている、この場所でもアルーシェの調整は可能だった。
「ここは、いつも通りに使えそうだな……これは?」
メンテナンスルームに置かれている器具たちの中に紛れてそれは見つかった。
『葉を隠すなら森の中』というが、その小さな小さな機器は多数の器具の中に混ぜられており
全ての器具の位置を完全に把握しているカミラで無ければ見逃してしまいそうな位置にあった。
♢
その頃――。
「お~、見えてきた見えてきた!いや~すっげえ立派なホテルじゃん!」
「一々はしゃぐんじゃねーよバカ」
「でもよぉ、せっかくのゲームなんだし愉しまなきゃ損じゃん?」
「まぁ……それは言えてるかもな」
このバトルロワイアルの舞台において、まるで観光に来たかの様に楽しむ男、伊藤大祐。
生前で参加していたシークレットゲームとは大違いの豪華な建造物の数々に胸を躍らせていた。
彼は昔から自分の本能に忠実ではあったが、自身の快楽の為に他者を犯し、傷付け、殺害を繰り返した事で
その歪んだ欲望は肥大化し、更なる獲物を求めて、ついつい速足になっている。
「ようやく着いたぜ。おい大祐、お前はゲスな本性がバレやすいから大人しくしていろよ」
「オッケー!ちゃんとやるから心配しなくていいぜ茉莉絵ちゃん!」
(ほんっとうに分かってるんだろうな?この男……)
大祐のその軽薄で軽い態度にウィキッドは若干の不安を感じつつ
二人はホテル・エテルナの扉を開いた。
「おっじゃましまーっす!!誰かいませんかー!?」
(こら大祐ぇ!!大人しくしろって言ったじゃねーかよぉぉぉ!!)
玄関に入るなり大声を出す大祐に、水口さんモードのウィキッドは思わずブチ切れそうになった。
感情を必死に押し殺して、表情を崩さずに堪えてる所で
大祐の声を聞いてフロントに顔を出す三人の姿があった。
「君達も参加者としてここに連れてこられた様だな」
「どーも、伊藤大祐っす。ヨロシク」
「はじめまして、水口茉莉絵といいます」
「蓬茨苺恋です」
「ジャックだよ」
「私はカミラ・有角、二人ともよろしく頼む」
「カミラさんに苺恋ちゃんにジャックちゃんだね。厄介な事に巻き込まれちゃったけど元気出していこうぜ!」
新たに二人の参加者がホテル・エテルナに集った事で
もう一度、情報の整理も含めて二人にも色々話を聞く事となった。
「所で苺恋の腕の傷はどうしたの?誰かに襲われたとか?」
「それは、藤堂悠奈という人に襲われて……」
「えっ?藤堂悠奈ぁ?」
「知っているのか?伊藤君」
「あー……藤堂悠奈か、んん~、話しておいた方がいいか……」
カミラの問いに大祐はちょっと考え事をした後で、納得したような表情を見せた。
その後に苺恋に向かって真剣な表情で語り始めた。
「苺恋ちゃん、本当に危なかったぜ。藤堂悠奈という女はマジでやべえ奴だからな」
「やはり藤堂悠奈は危険人物なのか」
「ああ、あいつとは過去にも出会った事がある。その時は殺し合いを止めたいとか言っててさ。
俺は仲間だと思って信じていたのに、それを……いきなり裏切って俺達を殺そうとしてきやがったんだ!」
「そうだったん……ですか」
(……何言ってんだ大祐)
自分の過去話を辛そうに語る大祐。
複数からの意見の一致により藤堂悠奈の危険性を再確認したカミラ。
嘘の悪評を広めるつもりだった筈なのに本当に危険人物だったのかと内心困惑する苺恋。
こっそり詳細名簿に目を通して大祐の嘘に気付いて呆れるウィキッド。
ひたすら苺恋の指示待ちなジャック。
その後も大祐の話は止まらず続いていた。
「俺が悠奈の本性にいち早く気づいていれば結衣ちゃんやまり子も死なずに済んだんだ!
今でも自分の不甲斐なさが悔しくてしょうがないぜ」
「あまり自分を責めるな。世の中は誰も彼も救う事など出来ないんだ」
「ありがとうカミラさん、実は他にも俺の知ってる危険人物が参加者に呼ばれているんだ。
まずは三ツ林司、あいつは口が達者で狡賢い性格をしているから気を付けてほしい。
蒔岡玲、体は小さいが刀の使い手で辻斬りの様に人に斬りかかってくる人斬りだ。
阿刀田初音、アイドル稼業で培った演技力で弱者を装って騙し討ちをする油断できない女だ。
黒河正規、気に入らない物は全て暴力で従わせようとする凶暴な奴だ。
そして粕谷瞳、何故かメイド服を着ているおかしな女だがチェンソーを軽々と振り回して弾丸を見切る恐ろしい女だった。
そいつらに出会ったら絶対信用しないでくれ。何人もの人間が彼らに殺されてるんだ」
「わかった、君から貰った貴重な情報は絶対に無駄にしない」
「大変だけど皆で力を合わせて生き残ろうぜ」
(いつまで続くんだよ、大祐の茶番は)
「実は私の首輪解除条件を達成するには君達の協力が必要なんだ。聞いてほしい」
「ああ、俺に出来る事があるなら協力するぜ、なぁ茉莉絵ちゃん」
「はい、もちろんです」
「助かる、苺恋達も聞いてほしい。私の首輪を解除するには三つ以上のスマホにこのケーブルを繋いで
私のスマホに読みこませなければならないんだ。それをお願いしたい」
「それなら是非俺のスマホを使ってくれ」
「私のも使ってください」
「私のもどうぞ」
ケーブルを使って大祐、ウィキッド、苺恋の順にスマホをカミラのスマホへと読みこませた。
するとピロリ、ピロリと電子音声が流れた後に
『首輪の解除条件が達成されました。おめでとうございます』
とアナウンスが流れ、カミラの首輪がカシャリと音を立てて外れていった。
「君達の協力のおかげで私の首輪を外す事は出来た。本当にありがとう」
「いやーよかったよかった!これでカミラさんの首輪が爆発する事は無くなった訳だ」
礼を言った後、カミラは表情一つ変える事無く、落ちた首輪を拾い、じっくりと観察を始めて行った。
その首輪を見て、ある考えがよぎったからだ。
それはこの首輪を解析すれば、他の参加者の首輪を解除、または爆破機能の無力化が実現出来るのでは無いかと。
「あっ!首輪解除と言えば思い出した。茉莉絵ちゃんの首輪解除条件を満たすのに必要な物がこのホテルにあるんだよな」
「こいつ……」
周りに誰もいなければ今すぐ大祐の顔面が凹む勢いでぶん殴っていた所だった。
他人に弱みを握られかねない情報を何も考えずに喋るこの男の無神経さは本当に腹ただしい。
「探し物というのはもしかして、コレか」
カミラは荷物の中から先ほどメンテナンスルームで見つけた機器を取り出して見せた。
それはウィキッドにとって探し求めていたUSBメモリであった。
想像以上に容易く目当ての物を見つけられた功績を評して
先ほど大祐がやらかした迂闊な発言の件は水に流す事にした。
「はい!きっとそれだと思います」
「では君にこれを渡そう。使ってみてくれ」
USBメモリを受け取ったウィキッドは早速、自分のスマホにそれを挿入して読みこませた。
するとカミラの時と同様に電子音声が流れ。
『首輪の解除条件が達成されました。おめでとうございます』
同じアナウンスの元に首輪が外れて行った。
ウィキッドはほっと胸をなで下ろして安心した表情を見せる。
内心では歪んだ笑みで高笑いを繰り返している事を悟らせずに。
「なんかすげー良い感じだな。この調子ならどんどん首輪を外せそうだな!」
「それは私も賛成だ。よかったら君達の首輪解除条件を教えてほしい。私も出来る限り協力したい」
「いやー……それは……」
「私のは、ちょっと……」
カミラの提案に大祐や苺恋は煮え切らない反応を見せた。
二人の反応を見て察したカミラはなだめる様にこう答えた。
「誰かの命を奪わなければ外せない条件を与えられているなら心配しなくてもいい。
それで君達を切り捨てるような行動は取らない。約束する」
「俺はカミラさんを信じてるけどさ。もう少し情報の価値を考えた方がいいと思うぜ。
『身内でも連帯保証人にはなるな』って言うしさ。
信用出来る相手だとしても、裏切られても代償を払える範囲だけで行動するべきだぜ」
「ふむ、伊藤君。君は意外としっかりしているようだな。
確かにここでの情報の価値はきわめて高いだろう、その用心深さは大切だ。
これから私はこの外れた首輪を解析して他の首輪も無力化出来るか調べる予定だ。
だから他者の殺害が解除条件だとしても決して早まらないでほしい」
「ああ、分かったぜ」
「もちろん、誰の命も奪う気はありません」
「おかあさんが言うならわたしたちも従うよ」
「ん?ジャックちゃんって苺恋ちゃんの娘さんなの?」
ジャックの発言を聞いて不思議に思った大祐はジャックに尋ねる。
するとジャックは苺恋に甘えるように抱きしめながら答えた。
「そうだよ。わたしたちのおかあさんなんだ」
「大祐くん、きっとあの子は一人ぼっちでこんな所に連れてこられて……」
「ああ、そういうことか。じゃあさジャックちゃん。俺の事は『お父さん』と呼んで甘えて良いぜ」
「……っ!」
周りに誰もいなければ今すぐ大祐の首を鎖で絞め殺してやりたくなった。
苺恋にとって夫となるべき男は一条要、それ以外にはありえないのだから。
馴れ馴れしく夫婦になったような発言をする大祐の無神経さははらわたが煮えくり返って来る。
「大祐がお父さん?……それは絶対嫌かな」
「あらら、手厳しいなジャックちゃんは、何なら『お兄ちゃん』でもいいぜ♪」
「……それも嫌」
周りに誰もいなければ今すぐ大祐の体をナイフで解体してやりたい。
だけどおかあさんの迷惑になるから今は我慢しなきゃ。
おかあさんの許可が出たらすぐにでも解体してあげる。
「所で二人は今後の方針はあるのか?」
「いえ、私達の目的はもう済みましたので特に予定は無いです」
「それなら、苺恋達の仲間の捜索に協力してはくれないだろうか?私は首輪の解析でここから離れられなくてな」
「勿論お手伝いします。大祐君も良いわよね?」
「おう、困っている女の子達を見過ごすなんて男が廃るからな」
「女の子だけじゃなくて困っている男の子も見過ごしてはダメですよ」
「おっとそうだったな。茉莉絵ちゃんには一本取られたぜ」
そんな大祐とウィキッドのやり取りを見て、フロント内に笑いが起こった。
その様子を眺めながらカミラは皆を救うのに最善となる方法を模索し続けていた。
始めは知り合いを探す方針を考えていたが
彼女達は自身の身を守れるほどの強さを持っている。
私は銃を扱えるため、戦闘もこなせるが戦いは本業では無い。
それなら私は自分の知識を生かして行動するべきだと考えた。
ホテル・エテルナでは私の愛用している設備や器具が揃っており、解析に必要な首輪も入手出来た。
もしかしたら私や苺恋達の知り合いがここに立ち寄るかもしれない。
最初は置手紙による連絡で自分達の行動を伝えようと思ったが
危険人物にも情報を知られるリスクもある、私自身が残るべきだ。
「つまり苺恋ちゃんは一条要という男とノーリという小さな女の子を探しに行くって訳ね」
「はい、まずはアリスランドに向かおうかと思います」
「アリスランドか、それならここから東北にある駅に乗って移動すれば早く着けるな」
「探し人、見つかるといいですね」
「もしかしたら入れ替わりでエテルナに来るかもしれない。発見の有無に関わらずアリスランドに辿り着いた後は
もう一度駅に乗って、ここに戻ってきてほしい、その後でもう一度情報を整理しよう」
今後の方針を一通り話終り、外が明るくなるまでの間は大祐とウィキッドは開いた客室で休息を取る事になった。
部屋に入った途端、ウィキッドは大祐の体を掴んでベッドに顔面を押し付けた。
「おぶっ、ちょっとどうしたの茉莉絵ちゃん、今ここで俺とシたくなっちゃった?」
「おい馬鹿、俺はお前に大人しくしろって言っただろ?なに次から次へといらねえ事くっちゃっべってんだよ」
「えー、普通の好青年って感じに上手く演じれてただろ?何かおかしい所あったか?」
「悠奈だの司だの詳細名簿に書かれてる所と全然違う嘘付きまくってただろ」
「いやーあれはさ、あいつら俺の事をすっげー悪印象持っててそうだからさ。
逆にあいつらの方が悪い奴だって印象与えておいた方が俺に都合良いかなってさ。はははっ」
「笑いごとじゃねえよ。必要以上に嘘を付いた所でボロが出やすくなるだろうが。
てめえがバレて死ぬのは勝手だ。だけどよそのお前と組んでる俺だって疑われる事になるんだぞ。
そこんところはどう責任を取るつもりだ。」
「あー……本当わりぃ、俺ってつい調子に乗っちゃう所があってさ。俺マジで反省してるからさ。
どうか許してくれよ。ほんっと、この通りだからさ」
大祐は両手を合わせて深々と頭を下げた。
それを見てウィキッドはため息を付きながら今回だけだぞ、と許す事にした。
あまりギスギスした関係になっても裏切りのリスクが増えるからと考えての温情だ。
「それと大祐、さっきから苺恋の事をちらちら見てただろ。下心丸出しなのが伝わってくるんだよ」
「え?マジ?まぁジャックちゃんは可愛いけど子供過ぎるし、カミラさんは美人だけどちょっと歳を取り過ぎだしで
この中なら苺恋ちゃんが一番美味そうだなぁっておもってさぁ。うへへへぇ……」
「はぁ……呆れた。お前はそんな事を考えながら話し合ってたのか。
そうだなぁ。これからはちゃんと大人しくしていられたら、その苺恋って女。
お前の好き放題にヤらせてやるよ。誰の邪魔も入らない様に俺が状況を作ってやる」
「本当かよ!嘘だったら俺マジで泣くからな!」
「ああ、嘘じゃねえぜ。だから人前ではそのゲスな本性はしっかり隠して大人しくしていろよ」
「おっけーおっけー!さぁて苺恋ちゃんとどうやって遊ぼうかなぁ。
何故か別の首輪も付けてるしペット願望あるんじゃね?なら望み通りしっかり調教してあげなきゃなぁ」
「その前に苺恋には一条要との絆をぶっ壊してからになるぜ。
二人には強固な愛で繋がってるみたいだからよ~それを引き千切って苦しみ悶えさせてやるぜ」
「容赦ねえな茉莉絵ちゃんは、まっそこは傷心状態の苺恋ちゃんを俺が男として身体で優しく慰めてあげなきゃな」
これでいい、大祐にはご馳走をぶら下げて手懐ければ従順に従うだろう。
見ろよ大祐の顔を、まるで高級肉を見せられてよだれを垂らしながら待っている犬その物じゃないか。
取りあえずこれで首輪のうざったい束縛からは解放された。
今の俺ならメビウスにいる頃と全く同じで、フルパワーで能力を行使する事が出来る。
俺の邪魔をする奴は全部爆弾で消し飛ばしてやる。愛だの仲間だのくだらねえ事を言ってる連中の絆なんて
全てグチャグチャに破壊してやるよ。ああ、想像しただけでゾクゾクしてきた。
「ねえ、茉莉絵ちゃんも名簿で気付いてると思うけど苺恋ちゃんは絶対殺し合いに乗ってるぜ」
「そうだな悠奈という女はどうも正義だの仲間だのくだらねえ絆を大切にしたがる部類の様だしな」
「ああ、ゲームでもあいつは非力な連中を保護して守ってたからな。その守ってた奴は俺が殺した訳だけどさ
それを知った時の悠奈の顔と言ったら傑作だったぜ。助ける言いながら全然救えてねえでやんのってね。
しかも仇を取る事も出来ずに俺に返り討ちにされて死ぬとか無駄死にもほどがあるっつーの」
「殺した?現に悠奈は生きてるじゃねーか?」
「生き返ったんじゃねーの?実際俺も死んだわけだし、そう考えたら修平の奴もここに来ていれば自分の仇取れたのになぁ」
「つまりここの主催者は死者を蘇らせられるって訳か。何でもありだな」
「まぁ、だから悠奈の奴が殺し合いに乗ってるのは100%違うって訳、でもどうせならさ。
苺恋ちゃんに騙された振りを続けて、俺らが騙し返した方が面白くねって思ったわけよ」
「なるほど、ただ一条要という奴は注意した方がいいぞ」
「どれどれ……うわっずるい能力持ってるな」
名簿を見る限り、一条要は嘘が分かる力を持っているらしい。
他にスノーホワイト、天川夏彦も似た類の能力で他人の心が分かると来た。
そいつらと出会った時はもう、水口茉莉絵の体裁を取っ払って
ウィキッドとして大暴れさせてもらうとするか。
「二人とも、飲み物を用意した。よかったら飲んでいってくれ」
カミラは二人のいる部屋にノックをしてバーへと呼びだした。
続いて苺恋とジャックの部屋にも同様にノックをしていった。
バーのカウンターには湯気の立つ4つのコップが置かれており甘い匂いを漂わせている。
「めぼしき食料は無かったが唯一チョコレートドリンクだけは置いてあった。
味はもう見ているので毒の心配は無い、出かける前にと思ってね」
「おお、すげー美味そう。頂きまーす……んん、うめ~」
「本当、とっても美味しいです」
「なんだが心が落ち着きます」
「美味しいね。おかあさん」
「喜んでくれたようで何よりだ。では私は首輪の解析に戻る、4人とも気を付けて行ってくれ」
メンテナンスルームへと戻ったカミラは椅子に座り首輪の解析を続けた。
徐々に分解していき、中の構造を露わにしていく。
専門では無いが機械工学の知識は全く無い訳ではない。
自分の持つ知識を総動員する勢いで首輪に秘められし秘密を解き明かす。
今でもどこかで殺し合いが起きているのだろう。
ゆっくりしている時間は無い。
一刻も早く首輪の技術を理解しなくては。
♢
「……よし、そろそろかな」
温かいチョコレートドリンクを飲み終え、部屋に戻り支度を整えた所で
大祐とウィキッドは玄関へと集合した。
「待ったかな?」
「いえ、私達も今来た所ですよ」
「それじゃあカミラさん!行ってきまーす!!」
「ちょっと大祐さん、カミラさんは今首輪の解析で忙しいから大きい声は……」
「おっと、すまんすまん」
苺恋とジャックも合流し、四人はアリスランドへ向かう為に北東の駅へと向かう事となった。
「この中では俺が唯一の男だしな。どーんっと頼ってくれ!」
「大祐だと不安だな」
「お兄さんちょっと傷付いちゃったよジャックちゃん」
大祐と言う男はこう考えている。
世の中というのは個人の力では変えようの出来ない大きな流れという物がある。
その流れに逆らって泳ごうとすれば痛い目を見る。
上手い事流れに乗って進めば逆に楽な人生を歩む事が出来る。
生前でも強制されたシークレットゲームにおいて
モニタールームを発見した大祐は人よりも広い視野で会場を眺める事が可能となり
その中の流れを見つけて上手い事終盤まで生き残る事が出来た。
だけどこのゲームはその流れは今までとは桁違いに荒々しい流れの様だ。
例えモニタールームによって会場全体を見渡せる目を持っていたとしても
危険な海域を躱しながら泳ぐのは不可能だと理解した。
でも今は一つの強力な波が自分の味方をしている。
自分の本性を知りながらも協力関係になった茉莉絵ちゃんは間違い無く強運を持っている人物だ。
その証拠にこんな早い段階で首輪の解除に成功している。
彼女に寄生して上手い事突き進めば、このバトルロワイアルも生き続けられるだろう。
もし茉莉絵ちゃんが敗れるとしたら、その時は急いで手を切らせてもらう。
それは裏切って俺が悪い訳じゃない。敗北した茉莉絵ちゃんの責任だ。
いざとなったら茉莉絵ちゃんに脅迫されて無理やり従わされたとでも言えば同情してもらえるはずだ。
それでカミラさんが皆の首輪を外せる時が俺も便乗して一緒に脱出すればいい。
俺にはその流れを見切るだけの強運がある。
このゲームがどう転ぼうが生き残ってやるぜ。
【D-1 平原/一日目/早朝】
【ウィキッド@Caligula -カリギュラ-】
[状態]:健康、軽い興奮状態
[装備]:プキンの短剣@魔法少女育成計画シリーズ
[道具]:基本支給品一色、スマホ、スマホ(セーニャ)、不明支給品1つ、透明マント@魔法少女育成計画、詳細名簿@オリジナル
[状態・思考]
基本方針:自分の欲望のままに殺し合いに乗る
1:愛や仲間と言った絆を信じる参加者を徹底的にいたぶって殺害する。
2:大祐を上手く利用する。裏切るような素振りを見せれば殺す
3:帰宅部の連中はなんとかしねぇとな
4:あの女(セーニャ)を助けに来た奴らの末路に期待
5:一条要、スノーホワイト、天川夏彦と遭遇した場合はステルスマーダーをやめる。
[備考]
※参戦時期は劇場グランギニョールで帰宅部に敗北した直後です
※首輪が解除されました。
【伊藤大祐@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
[状態]:顔面打撲(小)、全身ダメージ(小)、右手にダメージ(中)、股間にダメージ(小)、足に刺し傷
[装備]:ルーラ@魔法少女育成計画
[道具]:支給品一色、スマホ、不明支給品1つ(本人確認済み)
[首輪解除条件]: 自分から半径10m以内で死亡した参加者の数が合計5人を超える
[状態・思考]
基本方針:せっかくなのでこのロワで好き勝手やらせてもらう
1:暫くは、茉莉絵ちゃんに協力する
2:苺恋ちゃんとのお楽しみタイムが待ち遠しいなぁ
3:セーニャちゃんかぁ…勿体ねえなぁ
4:あのフード野郎(シャドウナイフ)は絶対殺す
♢
「上手く出来た?ジャック」
「うん、おかあさんの言い付け通りにわたしたちやったよ」
大祐とウィキッドには聞こえない程度の小さな声で話をしている苺恋とジャック。
苺恋の言いつけを守った証拠としてジャックは血に濡れた金色の瞳の眼球を二つ、手のひらから見せた。
♢
ホテル・エテルナ
四人が去った後のメンテナンスルームでは……。
「ヒュー、ヒュー、ヒュー、ヒュー、ヒュー、ヒュー、ヒュー、ヒュー、ヒュー、ヒュー」
血とアンモニアの匂いが充満した悪臭の中で
両手、両足を破壊され、声と光を失い。
虫の息の状態でひたすら呼吸を繰り返す事しか出来ないカミラの姿があった。
【D-1/ホテル・エテルナ内メンテナンスルーム/一日目/早朝】
【カミラ・有角@よるのないくにシリーズ】
[状態]:ダメージ(極大)、激しい衰弱、意識混濁、声帯破壊、両目眼球喪失、両腕粉砕骨折、両足粉砕骨折、失禁
[服装]:いつもの服装(自身の血と尿によりずぶ濡れ)
[装備]:無し
[道具]:無し
[状態・思考]
基本方針:思考不能
1:思考不能
[備考]
※支給品や装備及び解析中の首輪はメンテナンスルームに放置されています。
※出血が止まらず第一放送終了後、10分以内に致死量の血液を失います。
♢
この出来事を説明するには4人の行動方針を決めた後の時間へと巻き戻す事になる。
部屋へと戻った苺恋はある不安を胸に抱いていた。
このまま首輪がどんどん解除されて行ったら要達との脱出が不可能になるんじゃないかと。
首輪を外した参加者による叛逆が始まったら怒った主催者による参加者の皆殺しが行われ
要が殺されてしまうのではないかと。
苺恋にとって一番大切なのは要の命、その為なら自分が犠牲になっても構わない。
顔もしらないような他人の命なら尚更犠牲になっても痛くは無い。
不必要な首輪の解除は要の優勝の邪魔になる。
もっと長く利用するつもりでいたがカミラはここで退場してもらう事にした。
だけど自分達の犯行と知られては後々厄介になる。
疑いの可能性をある程度下げる手段を取った方がいい。
そこで私はジャックと相談した。
『第一放送までは息が続くように殺せるか?』と
ジャックは答えた「わたしたちなら出来るよ」と
素早く静かに、そして正確に死ぬ時間を調整して殺せると答えた。
カミラがチョコレートドリンクを振る舞った後にそれは実行された。
彼女に気付かれる事無く、メンテナンスルームへと侵入し
背後からの一撃で昏倒させて動きを封じる。
叫ばないように喉の声帯を潰す。
激痛によりカミラの意識が覚醒するがもう遅い。
鈍器を用いてカミラの両腕の肘、両足の膝を粉々に破壊する。
その激痛に思わず叫ぼうとするが声帯を破壊された彼女の口からは声を発する事が出来ない。
身体が痙攣を繰り返す。鈍器で打ち砕かれた衝撃で
全身の水分が穴という穴から噴出される勢いで垂れ流された。
涙と鼻水と涎で顔がぐしゃぐしゃにぬれ、大量の発汗が流れて、尿が垂れ流しになる。
カミラの頭脳でも何が起きているのか理解できなかった。
理解するよりも早く次から次へと激痛が襲ってくるのだ。
最後にメスを取り出したジャックは手際よくカミラの眼球を抉り出すと。
それを持ち出して去って行った。
大祐やウィキッドにも気付かれる事無く、返り血も一切浴びずに。
僅か5分足らずの時間で、これだけの作業をこなしたのは苺恋も予想外だった。
おかげで苺恋が二人と会話をして出発までの時間を引き延ばす策も使う必要が無くなった。
あとは何も知らぬ顔をして4人でアリスランドへ向かえばいいだけ。
カミラは一人になった所を誰かに襲われて殺されたと考えるだろう。
なにせ第一放送までの間は生きているのだから。
「偉いわよジャック」
「えへへ、おかあさんに褒められちゃった」
まるでキャンディを頬張るかのようにカミラの眼球を口に入れて咀嚼するジャック。
幼いように見えて彼女は立派な暗殺者であるのを苺恋は否応にも理解した。
【蓬茨苺恋@追放選挙】
[状態]:右腕に軽い切り傷(治療済み)
[服装]:いつもの服装
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、スマホ、不明支給品3つ
[首輪解除条件]:「藤堂悠奈」「結城友奈」「ジャンヌ・ダルク」「天河夏彦」「笠鷺渡瀬」「イレブン」の死亡。なお第四回放送終了までに条件を達成した場合、条件達成者の首輪だけでなく、任意の参加者から一人を指名し、その参加者の首輪を解除することが出来る
[状態・思考]
基本方針:要を見つける。要とノーリ以外は最終的に皆殺し
1:首輪解除条件の達成
2:要とノーリとの合流
3:伊藤大祐、水口茉莉絵を利用する。邪魔になりそうなら二人とも殺害する。
4:この子(黒のアサシン)は……今は使えそうだけど……
【黒のアサシン@Fate/Apocrypha】
[状態]:健康
[服装]:いつもの服装
[装備]:医療用メス×6@Fate/Apocrypha
[道具]:基本支給品、スマホ、不明支給品2つ
[首輪解除条件]:???
[状態・思考]
基本方針:お母さんの胎内なかに帰りたい
1:お母さん(蓬茨苺恋)のためならなんでもするよ
※参戦時期は本編開始前です