バトル・ロワイアル The Rebellious Memory 作:原罪
ここはC-2。
殺し合いの舞台に選ばれたエリアの中でも一際高くそびえ立つ山の頂――
ホムラの里の入り口には一際大きな鳥居が置かれ、此処へ訪れる参加者は荘厳な雰囲気に包み込まれる。
今しがたこの地は、三名の客人を出迎えたばかりではあるが、深夜帯の集落は尚も喧騒とは程遠く静寂を保っている。
「ふぅ……」
此の地に足を踏み入れた三人の来訪者――
その一人である袋井魔梨華は、里の奥の奥に位置する家屋の中で、蒸し風呂に入り一息を付いた。
里のシンボルと目されるこの沐浴施設は、バトルロワイアルの会場においても、来訪者の心身を癒すべく万全の態勢を整えている。
建物の玄関には、沐浴用の衣服が綺麗に折り畳まれ積み上げられ、その傍らにはご丁寧に「蒸し風呂には、これを着用してお入りください」と記載された看板が置かれていた。
つい先程、ずかずかと家屋に踏み込んだ魔梨華はこれを発見すると、ぶっきらぼうに衣服をふんだくりーー今はそれを身に纏って、蒸気の中で寛いでいる。
一体なぜ、魔梨華が何故独りで蒸し風呂に浸っているのだろうかーー?
その答えは単純明快――彼女はサボっているのである。
「うん。まあ調査とやらは、あいつらに任せて大丈夫だろう」
魔梨華はサボっている現状に特に悪びれることなく、蒸気浴を楽しむ。
リップルという魔法少女、そして三ツ林司と名乗る少年との邂逅後、第一目的地であるホムラの里への道中は非常に退屈なものだった。
三ツ林司の提案で、知り合いに関する情報を最低限に行ったくらいで、それ以外に会話が弾むこともなく、三人は黙々と足を進めていた。
まぁ、それに関しては無理もないか、と魔梨華は振り返る。
三ツ林司はともかく、リップルに関してはつい先程まで拳を交えていたのだ。司の介入もあり、今は互いに矛を納めてはいるが、そんな相手と和気藹々と談笑していた方がよほど不気味である。先の戦闘はこちらから先に仕掛けたという事実も尾を引いて、先方から快く思われてはいないだろう。
そういった経緯もあり、三者の間には常に重苦しい空気が流れていた。
そして目的地である里に到着するやいなやーーそれじゃあ私はあっち調べてくるから、とぷいと背を向け足早に二人の元から離れた。
背後からリップルの舌打ちが聴こえたが、特に気にすることもなかった。
果たして、魔梨華はギスギスした空気に耐えきれずに二人から離れたのだろうかーー
答えは、否だ。
元来、魔梨華は空気を読むタイプの魔法少女ではない。
魔梨華にとって耐え難かったのは、全身から湧き上がる戦闘意欲を抑え込み、大人しくせざるを得ないその状況であった。それは三度の飯より戦闘が好きな魔梨華にとってはこれ以上なく窮屈で退屈なものであった。
そのため里に入ってから、まずは抑圧から解放されるべく別行動を取った。
そこから、あわよくば強そうな参加者を見つけては、あの二人が邪魔しに来るまで戦闘を楽しもうと目論んだのだがーー
結局人っ子一人見つけることは出来ず、今はせめてもの、湯煙の中で束の間の自由を謳歌している。
魔梨華は背もたれに寄りかかり、ぼんやりと天井を見つめーー
この殺し合いにおける自身の立ち回りを改めて考えていた。
袋井魔梨華は自他共に認める戦闘狂ではある。
ただし、たとえ戦闘狂であったとしても、快楽殺人者ではない。
明らかに自分と同等かそれ以上の実力者を発見しては喜び勇んで、ぶん殴りに行くような真似はしたとしても、見るからに抵抗も出来ないような弱者を嬲り殺すような趣向は持ち合わせていない。
そんなことをしてもただ退屈なだけだ。
したがって「殺し合いに勝ち残って優勝する」という選択肢は今のところ考慮に入れていない。
この会場からの脱出手段があればそれに乗じるつもりだし、チャンスがあれば主催者をとっちめてやろうとも思っている。
しかしーーだからといって、穏やか且つ慎ましく脱出手段を模索するつもりはない。
折角この会場には多くの強者がいるのだ。
そいつらとの戦闘を楽しまないという手はない。
死んだはずのクラムベリーや魔王パムーー本当に彼女らが参加しているかは疑わしいが、仮に参加しているのであれば、願ってもないことだ。
今一度彼女たちと戦闘を楽しむことが出来る。
それにまだ見ぬ参加者達――もしかしたらクラムベリーや魔王パムに匹敵するような強者も紛れているかもしれない。
「まあクラムベリーはともかく
と独り言を漏らしつつ、思考を切り替える。
次に考えるは現在の同行者の二人――
まずは、リップル。
スノーホワイトと同じ「クラムベリーのこども」である魔法少女。
正直言うと馬が合うとは思えないがーー恩人であるスノーホワイトの友人であるというからには無碍にするわけにはいかない。
彼女の実力はまだ物足りないが、伸びしろはある。
それこそ三ツ林司が言うように、経験さえ積めば、大化けして魔梨華を満足させてくれる存在に昇華する可能性を秘めている。
そして、三ツ林司。
正真正銘、「腕力」も何も持ち合わせていないただの一般人。
恐らく自分やリップルがその気になれば、ものの数秒で首をへし折り絶命させることが出来るだろう。
かといって、彼を軽視しているわけではない。
先程披露してみせた考察から察するに、頭は中々にキレる。
与えられた情報を最大限に分析したうえで導き出す推論とそれを補完する論理
それに加えて、荒事に直面しても臆することのない度量と、リスクある局面においても前線に赴く大胆さも持ち合わせている。
かといって、先程の問答では、自分の「甘さ」をカモフラージュするように回りくどい理論付けを行うなど、自分に正直になれていない一面も見せている。
平たく言えば「不器用」なやつといったところか。
「ったく、面倒くさい連中に捕まっちたなぁ」
やれやれと大きな溜息をついて、項垂れる。
暫くは彼らとの同行を承認はしているものの、こちらの首輪解除条件
しかしながら、最終的に会場からの脱出を目論むのであれば、彼らとの協力関係は有益であることも捨て置けない。
結局のところ、ストレスが伴う彼らとのぶらり旅は続きそうだ。
「そういえば、あいつは、今頃何やってんだろうなぁ」
ふと、思い浮かべたのは純白の魔法少女。
自分の命を救ってくれた恩人でもある「彼女」は同じ夜の下、何を思い、何を為そうとしているのだろうか。
■
「やれやれ……先が思いやられますね」
そう言って、私の目の前にいるそいつ――三ツ林司は軽い溜息をついた。
私たちが訪れた集落――ホムラの里は、それなりの標高の上で佇んでいる。
里の奥へ続く道には鳥居と階段が佇んでおり、そこを先に進むとーー「ヤヤクの社」という古めかしい建物を擁する里の頂に辿り着く。
私たち二人は、「ヤヤクの社」の屋根へと登り、そこから会場の様子を観察した。
まずは東――。
あれは恐らく市街地だろう。鉄橋を跨いだ対岸からは、明らかに人工的に生成された光が目に飛び込んでくる。果たしてあの光の群体の元に、どれだけの参加者がいるのだろうか。
次に南――。
山に接する鉄道のレールが果てしなく延びる、その先に広大な海が待ち構えている。地図アプリによるとその先には孤島があり、線路の終着点ともなる駅があるはずだ。
問題は西と北――。
当初の目的通り、会場の端がどのようになっているのかを視察したかったのだが、目の前に広がるのは果てのない地平線。
魔法少女の視力を以っても、東や南のように海というものを視認することはできなかった。
光煌めく東の情景は、三ツ林司のような一般人でも視認は出来たようだが、その他の方角の様子は真夜中の暗さのため、把握は難しい。
その為、魔法少女の視力を以って観察できた各方面の情況を事細かに伝えてやりーー今に至る。
「当初は外界から隔絶された島々が舞台として選ばれていたと思っていましたが……。 過剰に強化されているリップルさんの視力でも、陸地の果てを捉えられないとなるとその説も怪しくなってきましたね。さてさて、この北と西に続くフィールドはどこまで続いているのやら……もしかしたら、無限に続いてたりしてね」
永遠に続くフィールドーー
あまりにも飛躍しすぎた発想に、思わず首を傾げた。
幾ら強化された魔法少女の視力であっても、限度はある。
無限に地の果ての果てを見据えることなどできはしない。
終わりのない陸地などありえない。それこそ、ただひたすらにエリア外の先を突き進めば、いつかは海原に辿り着けるものだと考えるのが普通ではないだろうか。
怪訝な表情を浮かべる私の様子を察したのか、三ツ林司は説明を加えた。
「半分は冗談ですが、可能性の一つとしてはなくはないですよ。 考えてみてください。 今回の運営はリップルさんや魔梨華さんといった『魔法少女』の存在と
「この会場そのものにも特殊な仕掛けが施されているということ……?」
「手段は分かりませんが、エリア内――それに僕らが目視できる範囲のエリア外においても、外界との繋がりは断ち切られていて、脱出口も存在しないかと思われます。 仮に首輪を外した人間がエリア外に出て、救援を呼び込めばゲームとしては破綻しますし」
とここで一呼吸おいて。
「少なくとも、今現在僕らが持っている情報には、それを否定する材料はないです。だからこそ僕たちは調査を続けて、発見した『事実』を纏めあげたうえで、運営への対策を考えていくしかないのですよ」
と締めてきた。
私は特に反論はしない。
反論する要素が特になかったからだ。
「それでーーこれからどうするつもり?」
「まずはいなくなった袋井さんとの合流ですね。大方その辺でぶらついていると思いますが……。 幾つか気になる点があるので、改めてお二人に共有したいと思います。その後は調査継続――ということで、次は会場の西端に行って、エリア外に出ようとするとどうなるか試してみます。まあ、どうなるかの見当はおおよそついていますが……」
「――どうなるの?」
「一応こちらの常識が通用しない仕掛けが施されている可能性も考慮しないといけませんが……この『ゲーム』が、僕が体験した『ゲーム』と類似している点から察するに、恐らく一定の警告時間を与えてからの首輪の爆破になるでしょうね。最初の会場でファヴが言っていた禁止エリアに入った場合の処理と同じようにね。まあアラームなしで即時的に爆破される可能性もありますが……ああ大丈夫ですよ、その際は僕自身が実験台になりますので」
何食わぬ顔でとんでもないことを言い出してきたので、思わず「はぁ?」と返してしまった。
「今回の運営は強大です。リスクを冒さずして彼らを出し抜くことはできない」
「いや、そうじゃなくてーー自分が実験台になるって、あんた……怖くないの?」
「怖いですよ、とっても」
即答だった。
相変わらずのポーカーフェースを浮かべ、三ツ林司は言ってのけた。
「怖がっているようには見えないけど」
「僕はただの人間として精一杯に最善のことを選択したうえで、実行しているだけです。この場合における最善の選択とは、少なくともこの場で狼狽えることではないと思いますが?」
「私にはあんたがただの一般人とは到底思えない。一度似たような修羅場を潜ってきたとは聞いているけど、それでもあんたの落ち着きぶりは異常」
だからこそ、私はこの少年に心を許せない。
何の能力も持たない一般人を自負するくせに底が見えない。
私がそう牽制すると、少年は「前にも似たようなことがあったな」とクスリと笑ってみせた。
「どういう意味だ」と突っかかる前に少年はまた口を開く。
「僕はただの人間ですよ。本当にただ死ぬのが怖く、誰かを殺すのも怖いだけの……ヒーローになれなかった臆病者です」
「ヒーロー……?」
突拍子もなく出てきた単語にまたも眉根を寄せる。
そういえば、先の袋井魔梨華との問答でも、こいつはこの単語を口にしていたような気がする。
こいつにとってヒーローとは特別な意味合いを持つ存在のようだが、果たしてそれは……。
と私が逡巡していると、此方の心の声を読み取ったかのように、三ツ林司は答えをだしてきた。
「僕の先輩が目指していたものだそうです。 先輩は言っていました。 理不尽に抗い、理不尽に晒された人を救う者――それがヒーローだと」
「……。」
三ツ林司が語った『ヒーロー』の条件――それはかつて私自身が目指していた『魔法少女』のそれに近しいものだった。
だからなのだろうかーー
「あんたはさ、ヒーローになりかったの?」
柄にもなく踏み込んだ質問をしてしまった。
私自身でも驚いているが、まさか私からそんな問いかけが来るのを予期してなかったのだろうか、三ツ林司も一瞬目を丸くした。
が、すぐに表情を整えて口を開く。
「アハハ、さぁどうなんでしょうね……でも今思い返せば、ヒーローを目指していたその先輩方に影響を受けていたのは確かだと思います」
「……。」
「それでも、先輩は……いえ、僕たちは結局ヒーローになれなかったんですよ。だからこそ僕はね、ヒーローになれなかったものとしてーーただの人間として最善の答えを探していきたいんですよ」
少年は、何か遠い記憶を懐かしむような切なげな表情を浮かべていた。
その目には感情の波が揺れ動き、哀愁を漂わせていた。
ここにきて私は三ツ林司という少年の弱弱しい素顔を目撃したのだと思う。
そして理解した。
結局のところ、こいつはその先輩とやらに無意識下で憧れていたんだ。
そしてその先輩が見据える先に、先程語ったヒーロー像があったのだ。
だからこそ、彼は結果としてその先輩と共に、ヒーローでありたいと思っていたのではないだろうか。
――何故そんなことが私に分かるのか?
だって、気付いてしまったからだ。
こいつのーー
誰かに憧れてーー
何かを目指しーー
そして、それになり得なかったその姿は、まるでーー
フラッシュバックをするのはあの光景。
あの日。
あの夜。
あの場所で。
背後から呼び止めるスノーホワイトに私はこう言ってのけた。
――私は魔法少女じゃなくていい……ただの人殺しでかまわない
――でも、魔法少女にはなりたかった……あなたに憧れていた。スノーホワイト
あの時、復讐に燃える私は『魔法少女』であることを放棄した。
自らの意志で『魔法少女』から外れた道を選んでしまった私ではあるが、今はせめてもの『魔法少女』であり続けようとする友人のサポートに徹している。
経緯は全く違うかもしれないしーーあまりにも都合が良すぎる解釈かもしれない。
だけど、私はいつの間にか目の前の少年に自分の姿を重ねてしまっていた。
「――確かにあんたの言う通りかもしれない」
「えっ?」
「掲げていた目標に達することができなかったらーーせめて、それに近づけるように足掻いて、自分が納得できる答えを見つければいい。 私はそれで良いと思う」
「……意外ですね」
「――何が?」
「リップルさんは、他人とこういう話はしない人間と踏んでいたのですが……。やっぱり僕のプロファイリングもまだまだのようだ」
やれやれと頭を抱える三ツ林司を見て、私は大きく舌打ちをした。
困惑しているのは私自身もそうだ、と言ってやりたかった。
だけど、ここにくるまで常に気丈に振舞ってきた少年のーー人間らしい側面を見て、私はこいつのことをちょっとだけ理解できたと感じた。
完全に心を許したわけではないが、同じ体験をした先駆者として、少しだけ手を差し伸べてあげても良いな、と思った。
しかし、あえてそれは口には出さない。
何となくだけど、こいつはーーかつての私がそうであったように、他人に頼ることに慣れていないと思ったからだ。
だから、それを口にしても意味はない。
せいぜい、こいつが言う最善の選択とやらができるように陰ながら手助けしてやるだけだ。
「……。」
「……。」
それ以上会話は続かなかった。
何故だが少しだけ気恥しさが感じて、なんとも微妙な空気が私たちを包み込んでいた。
「おう、お前ら! 何か見つけたかぁ!?」
そんな静寂を突き破ったのは一際甲高い声だった。
殺し合いの最中だというのに、緊張感のかけらもない能天気な掛け声に私は小さな舌打ちをした。
声のした方向へ視線を向けると案の定――
やぁやぁ、とこちらに向けて手を振り、歩いてくる袋井魔梨華の姿があった。
三ツ林司との関係性については光明が見えたかもしれないが、こいつに関しては、怪しいところだ。
■
「――とここまでが、エリア外に関する僕の考えとこれからの行動方針です」
「ヤヤクの社」の屋根から地上に降りた三ツ林司は、リップルから得たエリア外の様子とそれに対する考察を袋井真理華に披露した。その傍らにはリップルが何とも不機嫌そうな顔で佇んでいる。
そのリップルの視線の先にいる魔梨華は、ふーんといった感じで司の話を聞いていた。
「何つーか、大した収穫はなかったんだなぁ」
「単にサボっていただけのあんたには言われたくないんだけど」
「まあ私は戦闘専門ということで。こういうみみっちい仕事はお前らに任せるわ」
「お前――」
苛立ち全開で前傾姿勢を取ったリップルをまぁまぁと、司が諫める。
「それでは荒事になった際は、せいぜい頼りにさせてもらいますよ、袋井さん。 見たところ、英気も随分養われたようですし」
と皮肉を交えて、目を鋭くさせた司に対してーー
魔梨華は相変わらずの調子でおうよ、と自らの胸を叩いた。
そんな光景を前に、隻眼の魔法少女は舌打ちをしたうえで、それでーーと話を切り出す。
「こいつも戻ってきたことだし、あんたがさっき言っていた『気になっていること』を聞かせて」
「おっ何だ何だ、三ツ林の坊ちゃん。他に何か面白い発見でもしたのか?」
二人の魔法少女の視線を受けて、司は右手の上に顎を載せて腕を組み、相も変わらず落ち着いた口調でそれに応える。
「いえ、発見とか大それたものではないですよ……。ただ少し引っ掛かることがありまして。 最初の会場でファヴは言っていましたーー僕たちの首輪は殺し合いの会場から抜け出したりルール違反を犯した場合、自動的に爆発するように設定されている、と」
「それがどうかした?」
「二人にお聞きしたいのですが、ルール違反を起こした場合――恐らく各参加者に割り当てられた『〜してはいけない』といった類の失格条件がこれに該当するかと思いますがーー首輪はどうやって爆破されると思いますか?」
「……? ファヴが言うには、自動的に爆発するんだろ?」
キョトンとするリップルに、司は小さな溜息をついた。
馬鹿にされたと感じたのかリップルはムッとした表情で、舌打ちした。
「自動的に、ね。 確かに割り当てられた失格条件の中には、自動検知が出来るようなシンプルなものもあるかもしれない」
例を挙げるとすれば、リップルの条件―ー第六回放送まで、ゲーム開始以前からの知り合いに捕捉されてはならない、である。
この会場にいるリップルの知り合いはスノーホワイト、ラ・ピュセル、カラミティ・メアリ、森の音楽家クラムベリーの四人。例えば、彼女たちとの距離を正確に測れる仕掛けが首輪に施されているというのであれば、首輪爆破の自動化は可能だ。
「でも、袋井さんの条件については如何でしょうか? 袋井さんの失格条件……これを自動検知することは果たして可能なのでしょうか?」
「それは……」
リップルは言葉を詰まらせた。
当の魔梨華本人は、腕を組んだまま、実につまらなそうな顔で黙ったままだ。
魔梨華の条件――戦闘中に他の参加者に加勢したり、逆に他の参加者から加勢を受けたりすることを禁ずるものではあるが、加勢を受けた受けないを正確にジャッジするためには、魔梨華の周辺や戦況を正確に監視する必要がある。
誰が魔梨華の味方でありーー
誰が魔梨華の敵なのかーー
魔梨華や周囲が放った行動が果たして「加勢」に当たるのかーー
これらの情報から統合的に判断した上で厳粛にカウントを行っていかなければならない。
結局のところ、魔梨華の条件について正確なジャッジを行うためには、野球やサッカーでいうところの審判のようなーー機械ではなく第三者の視点による監視が不可欠となる。
そこで公正に判断されたうえで、初めて爆破というペナルティを与えなければならない。
「――つまりは、『自動的に爆破される』ってことはハッタリで、実際は運営が手動で爆破しているってこと?」
リップルからの問いに司は、あくまでも推測ですが、と前置きをしつつも肯定する。
「あー相変わらず回りくどいなぁ、お前! 運営がお前の言う通り、私たちの行動を逐一チェックしていたとしてーー結局お前はどうしたいんだよ?」
いよいよ業を煮やしたのか、これまで二人の問答をただ静観していた魔梨華が声を上げた。
司はこれに苦笑し、では端的に申し上げますね、と結論を述べた。
「これからの調査ですが、僕は首輪爆破の仕組みを中心に探っていければと考えています。僕の仮説が正しければ、運営は首輪爆破のタイミングで首輪に何かしらの信号を送ってくると思います。その仕組みを突き止めたうえで対抗手段を模索できればな、と」
司は生前、シークレットゲームと称された類似の殺人ゲームに参加していた。
シークレットゲームも今回のゲームと同じく、各参加者の首輪にそれぞれ条件が割り当てられ、首輪の解除が不可能になった瞬間に爆破されるというルールが課せられていた。
ゲームが進んでいく中で、首輪爆破の信号は電波を通じて運営から送られてくることを知った司達は、電波を遮断する電波吸収体を作製しゲームからの脱出計画を企てた。
結局、脱出計画自体は頓挫してしまったが、電波吸収体によって運営から送られてくる爆破の信号を防ぐことに成功した。
今回のゲームについても、運営から送られてくる爆破の信号を遮断できる方法がないか探るつもりではあるが、先のシークレットゲームと同じ電波吸収体が役に立つとは思えない。
今回の運営は常識外れの得体が知れない技術を保有している。
電波ではないーー別の通信技術を用いて信号を送信している可能性が高い。
したがって、まずは首輪爆破の信号をどのように送信しているか、それを探っていくしかない。
「首輪爆破の仕組みを探るつってもな。具体的にどうするつもりよ」
「さしあたり首輪のサンプルと技術者の確保ですかね」
「結局は人任せかよ」
「ええ、僕は技術者ではありませんからね」
特に反論する必要もないため、あっさり肯定すると、本当に大丈夫かよ、と魔梨華ははぁーと大きな溜息をつき、それ以上文句は言ってこなかった。
反応はいまいち芳しくないようではあるが、一応当面の行動方針には付き合ってくれるようだ、と司は胸をなでおろした。
■
その後、司は次の目的地をホテル・エテルナと定めた。
これは技術者の確保という目標に従い、他の参加者との接触を意図したものである。
ホテル・エテルナを経由した後はそのまま西端へと向かい、予定通りの調査を行うつもりだ。
その旨を司が説明するとリップルはすぐにコクリと頷き、魔梨華は渋々これを了解した。
出会った時と比べるとやけにリップルが柔和になってくれていることに、司は若干の違和感を覚えたが、悪い気はしなかった。
そしていよいよ出発しようとした矢先、三人の視界の少し先――山の麓の方で赤い閃光が走った。
「やれやれ……。本当に飽きさせないね、このゲームは」
「――どうする?」
「そりゃあ誰かあそこにいるってことだろ! だとしたら、やることは決まってんだろ!」
三者三様の反応を呼んだその赤雷は、叛逆の騎士モードレットが巴鼓太郎に対し、自らの宝具の名前と共に放った一撃であったが、その正体を三人は知る由もなかった。
暗闇の山の麓の方角で、明らかに自然発生したものとは思えないものを視認した三人の参加者。
彼らが選択する次なる行動はーー。
【C-2/ホムラの里・ヤヤクの社前/一日目 黎明】
【三ツ林司@リベリオンズ Secret Game 2nd Stage】
[状態]:健康
[装備]:グロック19@現実
[道具]:基本支給品一式、スマホ、不明支給品2個(本人確認済み)
[首輪解除条件]:不明(リップルと袋井魔梨華には伝達済み)
[状態・思考]
基本方針:ヒーローになれなかった身としては、せめて人間として最善の選択を
0:あの赤雷の発生源へ向かうべきか、向かわざるべきか対応を決める
1:他の参加者と接触するためホテル・エテルナへ行く。その後は会場西端へ向かいエリア外に出ようとするとどうなるか確認する
2:魔梨華の暴走を制止しながら、自分(と、できれば仲間)が生き延びる手段の模索
3:玲、藤堂先輩、他の知り合いとの合流(優先度は挙げた順番に同じ)。ただし瞳さん、初音、黒河には警戒した方がいいかもしれない。
(大祐は『かもしれない』どころではないため除外)
4:首輪爆破のメカニズムを探り、爆破を防ぐ方法がないか探る
5:その為には首輪のサンプル及び技術者を確保したい
[備考]
※参戦時期はCルート死亡後です
※袋井魔梨華、リップルの首輪解除条件を把握しました
※リップル、袋井魔梨華と知り合いに関する情報交換を行いました
【リップル@魔法少女育成計画シリーズ】
[状態]:背中に打撲
[装備]:忍者装束一式(手裏剣やクナイ、忍者刀はコスチューム付属のため支給品ではない)
[道具]:基本支給品一式、スマホ、不明支給品3つ(本人確認済み)
[首輪解除条件]:第六回放送まで、ゲーム開始以前からの知り合いに捕捉されてはならない。
ここで言う『捕捉』とは、間に遮蔽物がない半径二十メートル以内の距離に侵入されることを指す。
条件を満たせなかった場合、首輪は強制的に爆発する
[状態・思考]
基本方針:スノーホワイトと協力し、殺し合いを止める
0:さっきの雷――何かの魔法……?
1:三ツ林司については多少なりとも信用。袋井魔梨華はまだ信用できないが、今のところは仕方なく協力する
2:スノーホワイトと合流し連絡を取り合いたいが、首輪解除条件のことがあるので下手な接触は危険
3:クラムベリー、カラミティ・メアリには警戒。20メートル以上近寄らないようにもしないといけない
4:ヒーローか……
[備考]
※参戦時期は『魔法少女育成計画』終了後です(ピティ・フレデリカ撃破後でもあります)。
※袋井魔梨華、三ツ林司の首輪解除条件を把握しました
※三ツ林司、袋井魔梨華と知り合いに関する情報交換を行いました
【袋井魔梨華@魔法少女育成計画シリーズ】
[状態]:健康、戦闘欲求肥大中
[装備]:頭部に夜顔の花
[道具]:基本支給品一式、スマホ、不明支給品2つ(本人確認済み)
いつも使っている花の種一揃い@魔法少女育成計画
[首輪解除条件] 第四回放送まで、戦闘中に他の参加者を加勢したり、他の参加者から加勢を受けてはならない。
2人以上で他の参加者を攻撃した時点でスマホのカウントを1つ消費し、3カウント目で失格とみなし首輪を爆破する
[状態・思考]
基本方針:たくさんの強敵と命がけの戦いを味わい尽くしたい
0:赤雷の発生源に強い興味
1:我慢できるまでは、リップル、三ツ林司との同行を承諾
2:強敵と戦いたい。特に魔王パム、音楽家ともう一度戦えるというのなら、ぜひ遊びたい。
3:スノーホワイトには会いたいなぁ
[備考]
※参戦時期は『魔法少女育成計画JOKERS』終了後です(『Primula farinosa』終了後でもあります)。
※三ツ林司の首輪解除条件を把握しました
※三ツ林司、リップルと知り合いに関する情報交換を行いました