バトル・ロワイアル The Rebellious Memory   作:原罪

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心をなくしても君だけは守り抜く/シルビア、ラ・ピュセル、ミュベール・フォーリン・ルー、アカネ(反骨)

 

 

 

夜天がもたらす黒色に覆われた草原を、ふらりふらりとおぼつかない足取りで彷徨う少女の姿が一人。

 

袴姿に当世袖と籠手を付けたその姿はまるで江戸時代以前にありふれていた侍を彷彿させる。それこそ女性がそういった姿で闊歩しているのだから、当時の人間がこの光景に出くわしたのであれば、少女のことを何処の武家屋敷の姫君と判断するかもしれない。

 

右肩口は開け健康的な肌が露出しており、月の光が雪のような肌を煌めかせるのが官能的ではある。

しかし、少女の瞳は深く濁り、まるで生気を感じさせない。

 

「――音楽家ァ」

 

彼女は認識していない。自身がどういう状況に置かれているのかを。

彼女は理解していない。 自身が参加しているこの殺し合い(ゲーム)のルールのことを。

彼女は気付いていない。自身が求める『音楽家』がこの地にいるということを。

 

忌むべき復讐相手を呟き、殺し合いの会場を流浪するその姿はまさに幽鬼のごとくーー。

 

絶望に直面し理性を失くした魔法少女は、道なき道をただひたすらに歩み続けていた。

 

 

 

 

 

 

ロトゼタシアの地において、「シルビア」という旅芸人の名は、多少なりとも知れ渡っている。

 

ハンサムな顔立ちと、筋肉がつきすぎない程度で身に纏ったスタイリッシュな体躯――その背丈は高く、街中においても多くの女性の注目を集める。

 

サーカスの舞台においては、洗練された多彩な曲芸で老若男女問わず大勢の観客を魅了する。

 

人当たりも良く、どんな相手にも分け隔てなく接するお茶目な性格な美丈夫ではあるが、その実、胸の内には「世界の人を笑顔にする」という大きな志を掲げている。

 

元は最強の騎士になるため、実直に修行に明け暮れていたが、父から受け継いだ誉れある騎士道を棄て、ただ人々を笑顔にすることに己が騎士道として見出したのである。

 

彼の騎士道精神は揺るがない。

例え、魔王によって世界が滅ぼされたとしても、彼は「世助けパレード」なる活動を続け、人々に笑顔の灯を振りまいていく。

 

彼の騎士道精神は揺るがない。

例え、「バトルロワイアル」なる殺し合いの舞台に参加させられることになったとしても、彼はその調子を崩すことなく、他者と交流する。

 

「へぇ~~~ つ・ま・り! ラ・ピュセルちゃんとスノーホワイトちゃんは幼馴染で、魔法少女であるという秘密をお互いに共有しているということね~。いや~~~~ん!!! 何だかすんごくロマンチッ~クだわ~♡!」

「は、はぁ……」

 

シルビアとラ・ピュセル。

 

導きの教会を出た二人の騎士は、闇夜の道中で乙女のトーク(命名:シルビア)に花を咲かせていた。

 

乙女のトークと言っても単純にお互いの身の上話をしているだけではあるが、自分と自分の知り合い以外の参加者の情報を得るという意味では非常に有益なものとなっていた。

 

「(なるほどね……。とても純粋で、真っ直ぐな子――)」

 

シルビアは軽口を交えてラ・ピュセルと接している内に、目の前の魔法少女をそのように評価していた。

 

「(そして、この子にとってスノーホワイトちゃんは掛け替えのない、大きな存在のようね)」

 

青春を謳歌するであろう年頃の少女たちの仲睦まじさにほっこりするものの、同時に危ういな、と考える。

 

ラ・ピュセルは、魔法騎士を名乗ってはいるものの精神的には未熟であるということは、僅かな交流を以って看破した。それに加えてスノーホワイトの話に触れていると、どこか焦燥感を醸し出しているのがハッキリとわかる。

 

実直で誠実な性格が早まった行動に拍車を掛けないよう、しっかり手綱を握るようにしないと、とシルビアは留意しつつ、次への話題へと切り替える。

 

「――それで、ファヴちゃんは、ラ・ピュセルちゃん達に魔法少女の力を与えたマスコットキャラってことで良いのよね?」

「ええ……。今思えば、あいつは間接的に私達魔法少女に相争わせるように仕向けていました……! 人の心を理解できない奴だとは思っていましたが、ここまでするなんて……!」

 

ラ・ピュセルは拳を握り、悔しそうな表情を浮かべている。

 

「でも、目的は何? ラ・ピュセルちゃん達魔法少女の争いから、より大規模な殺し合いへと拡げることでファヴちゃんに何のメリットがあるって言うのよ」

「それはーーわかりません。あいつの本心なんて誰もわからないですよ。 でも一つだけハッキリしています……。この殺し合い(ゲーム)の運営には大きな魔法の力が関わっています」

「魔法の力、ね……」

 

主催者の力は得体が知れない。これだけ大きな会場を用意して、離れ離れとなった旅の仲間達を含め70名以上の参加者をこの場所へと転移させている。ロトゼタシアには、術者がお供ともに一度訪れたことのある土地に瞬間移動する「ルーラ」という呪文は存在するが、遠隔から特定の人物をピンポイントで狙い定めて、転移させるという方術は聞いたことがない。

 

魔王ウルノーガ直属のホメロスでさえも、この会場ではただの一参加者として殺し合いを強いられているという現状を鑑みても、主催者は魔王軍ですら予期できぬ程の超越した力を有していることは想像できる。それがラ・ピュセルのいう「魔法の力」になるだろうか、と思考を巡らせていたが、それは両目が捉えた飛翔体によって否応なしに中断される。

 

「シルビアさん、あれは……⁉︎」

「――鳥、ではなさそうだけど、こっちに近づいてくるわね……」

 

月明かりのみが頼りとなる暗がりの中、目を凝らす。

紫に発光する翼を有するそれは、真っ直ぐに自分達へと近づいてくる。

やがてそれが翼を持った女性であると認識した時、件の人物はゆっくりと二人の眼前へと舞い降りた。

 

「ようやく他の参加者を見つけることが出来た……」

 

それは黒い装束を身に纏った女性だった。

紫色に輝く双瞼が此方を見据えている。

 

彼女の身に纏う衣類は必要最低限の部分しかカモフラージュできておらず、所々から白い肌を露出させている。そんな官能的な姿に目を奪われたか、傍らのラ・ピュセルから「ゴクリ」と生唾を飲み込む音が聞こえた気がした。

 

だが、シルビアが気になったのは彼女の右腕、右胸、頭部から生えている夥しい翼であった。その姿はまるで人の形を保った魔族そのものであった。

 

「貴方は……?」

「私はミュベール。そういうお前は見たところ騎士のようだが、名を聞こうか」

「私は魔法騎士ラ・ピュセル、そして私の隣にいるのがーー」

「シルビアよ、ヨロシクね~ミュベールちゃん♡」

 

シルビアは、その妖艶な風貌からミュベールに対して、人間でありながら魔王傘下となったホメロスに近いものを感じつつも、それを面には出さずにいつもの調子で自己紹介を済ませる。

 

「ふむ、ラ・ピュセルにシルビアか……。お前たちに聞きたいのだが、アルーシェ……紅色の髪の少女を見掛けなかった?」

「残念だけど、アタシ達以外の人間で出会ったのは、ミュベールちゃんが初めてよ~」

「そうか……やはりそう上手くいかないな」

「ミュベールさんは誰かを見掛けたりしませんでしたか?」

「いいや、此方もお前たちが最初だ」

「そうですか……」

 

自己紹介の後に情報交換を行うが、探し人についてはお互い有益な情報を得られないようだ。更に込み入った話を切り出そうかと、ラ・ピュセルが切り出そうとしたところーー。

 

「それで、ミュベールさんはーー」

「ふむ……情報交換はここまでするか」

「えっ?」

 

会話は強制的に打ち切られ、ラ・ピュセルは戸惑いの表情を浮かべる。

 

「それではーー」

 

瞬間、ミュベールの手には禍々しい黒の長剣が出現した。

 

「愉しもうではないか」

「来るわよ、ラ・ピュセルちゃん!!!」

 

その言葉を皮切りに突風が吹き荒れ、ミュベールはとてつもない速さでラ・ピュセルとシルビアへと肉薄した。

 

シルビアが迎撃の態勢を取る前に、ラ・ピュセルが一足先に突貫し、ミュベールの前に立ちはだかり、その進撃を阻む。

 

ド派手な金属音が夜の草原地帯に木霊した。

 

 

 

 

 

 

「ラ・ピュセルちゃん!!?」

「ぐっ!!!」

「ほう……中々に良い反応だ」

 

 

シルビアの眼前では、ミュベールとラ・ピュセル。

二人の騎士の剣が交差し、鍔迫り合いの様相で睨み合っている。

 

シルビアはまだ動かない。先に戦闘に突入した二人の趨勢を観察しているようにも見受けられる。

 

「ミュベールさん、貴方は……!」

「……ああ、そうだ。私は人を喰らう妖魔だ、無論この殺し合いに乗っている。お前達の知己がこの殺し合いに参加しているのであれば、人々を護る騎士として、私を止めてみせろ! さもなくば私がお前達の友人を殺し尽くす!」

「……っ!? こんのぉっ!!!」

 

 

投げ掛けられた宣告にラ・ピュセルは目を大きく見開き、剣を思い切りに薙ぎ払う。

 

ミュベールは微笑みを張り付けたまま、半身を仰け反らし斬撃を回避。

 

更に仰け反りの態勢から身体を回転させる。

 

一連の流れから遠心力とともに、ラ・ピュセルの胴へと斬りかかる。

 

「くっ!!?」

 

ラ・ピュセルは間一髪でこれを躱す。

更には後方へ大きく跳躍し距離を取ろうとする。

 

しかし、アメジストの翼を持つ堕天使が猛追する。

 

ラ・ピュセルの呼吸が整う暇も与えることなく、彼女の五体へと剣撃を見舞う。

ラ・ピュセルは慌てて剣で受け止めていく。

 

「ぐっ!!!」

 

ミュベールが繰り出す斬撃は、まさに疾風怒濤――。

 

絶え間なく繰り出される剣の波状攻撃は、休むことなくラ・ピュセルへと襲い掛かる。

 

ラ・ピュセルは必死の形相でこれを捌いている。

対するミュベールは、そんなラ・ピュセルの反応を愉しむかのように、冷たく嗤う。

 

「ははっ……なるほど、先程の反応……。 お前にとってとても大切な人間がこの殺し合い(ゲーム)に参加しているらしいな。」

「っ!!?」

「ふふっ、図星のようだな。お前の大事な者とは誰のことだ? 親友か? 家族か? それとも恋人か? まあ誰であろうと関係ないーー」

 

その妖しい唇は悪意に満ちた言葉を綴っていく。

ラ・ピュセルはこの後どういった言葉を投げかけられるかは予測できている。

 

しかし、だからといってーー

それを告げられると感情を抑えることは出来なくなる、ということはわかっていた。

きっと自分は激昂するであろうとーー。

なぜなら、それはラ・ピュセルにとって、どうしても許せないことだからだ。

 

「お前を斬り捨てた後、そいつの命も奪いに行ってやる」

「っ!!! ミュベールーーーーーーーッ!!!」

 

見え透いた挑発であったが、捨て置くことは出来なかった。

 

辛うじて防御に専心していたラ・ピュセルは咆哮と共に、ありったけの力を腕に込め、ミュベールの一太刀は弾き返される。

 

その衝撃でミュベールの身体は半歩後ろに退く。

 

「うおおおおおおおおおおぉっっーーー!!!!」

 

その一瞬の隙を見逃さず、雄叫びと共にミュベールの身体を分断せんと、剣を振るう。

 

「成る程……。体幹が強いし、一撃一撃が重いーー」

 

が、ミュベールは蝶のようにヒラリとこれを躱す。

 

それでも怒れる魔法騎士の刃は落ち着くことはない。

怒りの刃は、尚もミュベールの体躯を追跡する。

 

「剣術も荒削りだが、悪くはないーー」

 

ミュベールは未だ余裕を保っている。

彼女にとって、ラ・ピュセルの斬撃は躱すに容易い。

 

攻撃が空振る度に、ヒュン、ヒュン、と風を切る音が辺り一面に鳴り響く。

 

「それに良い『眼』をしている……騎士としては及第点といったところだな」

 

まるでダンスでも踊っているかのように。

ミュベールは非常に軽やかな足取りで、ラ・ピュセルの攻撃を回避していく。

 

「だがーー」

 

十撃目の太刀も卒なく躱した時――

ミュベールは身を翻しざまに剣を振るう。

空を切っていたラ・ピュセルの剣を軽く弾き飛ばされた。

 

「まだまだ青い……!」

「つっ!!?」

 

そのまま焦燥したラ・ピュセルの顔面目掛けて血剣を突き立てた。

 

結論から言うと、この敗北は必然的なものであった。

そもそもラ・ピュセルは相手を「殺す」ための闘争に慣れていない。

確かに魔法少女として授かった身体能力は驚異的ではあったが、戦闘経験ーーひいては己が命を賭した殺し合いの経験値においては、ミュベールと雲泥の差があったのだ。

 

魔法さえ使用できていたのであれば、形勢は変わっていたかもしれない。

しかし、不幸な事に彼女が魔法を注ぎ込む大剣は、主催者に没収されてしまっている。

 

だからといって、殺し合いの場にそんな言い訳は通用しない。

 

 

目前へと迫りくる剣先にラ・ピュセルは死を覚悟する。

 

「(小雪、すまないっ! また僕は君にーー!)」

 

走馬灯のように脳裏に”彼女”の姿が浮かんだ。

 

悔しい!

悔しい!悔しい!

悔しい!悔しい!悔しい!

 

生への執着と彼女との約束への未練で心がいっぱいになる。

 

 

が。

 

 

ラ・ピュセルの顔面が突き破られることはなかった。

 

ミュベールの血剣は側面から唐突に現れた長剣によって、妨げられたのであった。

 

「ハァ――――イ♡ そろそろアタシも混ぜてもらうわよ!」

 

その長剣の主人は、言わずもがなーー

今まで観察に徹していたもう一人の騎士が、二人の戦闘に介入していたのである。

 

「シルビアさん!」

「ほう……」

 

同行者の割り込みによってラ・ピュセルは九死に一生を得たのであった。

 

「ラ・ピュセルちゃん、正直な子はお姐さん嫌いじゃないわよ。でもね、戦場でだけは冷静でいないと駄目よ。じゃないと、全てを失うことになるわ……守りたいものも含めてね」

「……。」

 

ねっ♡とウインクをかますシルビアに、ラ・ピュセルは黙って頷くしかなかった。

 

「うんうん、素直で宜しい! ということでーー」

「ここからアタシとラ・ピュセルちゃんの二人掛かりで貴方と戦うわよ! ミュベールちゃん!」

 

ビシッと剣先を向けられ宣戦布告されたとしても、ミュベールは特に動じる様子はなかった。

元々二対一で戦うことを前提としていたのだから、シルビアの介入に特段驚くこともない。

そのような些事はさて置き、今彼女の視線はただただシルビアが持つ一本の剣へと釘付けとなっていた。

 

「――その剣は?」

「あぁ、これ? 私の支給品よん、何の変哲もない剣のようだけど。 もしかして、見覚えのある剣なのかしらぁ~?」

「ふふふっ……あははははっ!! まさかこのような形で『お前』が立ちはだかるとはなぁ! なるほど、面白い。 実に面白いぞ!」

「……?」

「あらあら~?」

 

ミュベールの予想だにしない反応に、シルビアもラ・ピュセルも首を掲げるしかなかった。

確かにシルビアが握るその剣は、傍目から見ると「何の変哲もない」剣であった。

だがミュベールにとって、その剣は大きな意味合いを持っていた。

 

「(ああ、見間違えるはずはないとも……その剣はーー)」

 

何を隠そう、銀色に煌めくその剣は、ミュベールが探し求める半妖アルーシェ・アナトリアが騎士時代に愛用していた得物であった。

 

思わぬ形で登場した後輩の影に因縁じみたものを感じたのか、それまで不動であったミュベールの感情に大きな揺らめきが生じていた。

 

「ふふふっ……ますますお前達との死合いに興が乗ったぞ! ラ・ピュセルッ! シルビアッ!」

 

凍りの微笑みを顔に張り付かせ、ミュベールは地を蹴った。

 

「迎え撃つわよ、ラ・ピュセルちゃん! お姐さんにしっかり合わせてねん!」

「はい……!」

 

ラ・ピュセルとシルビアは剣を構え、飛来するミュベールと刃を交える。

騎士達の戦いは第二ラウンドへと突入していいた。

 

 

 

 

 

 

――音が聞こえる。

 

――鋼と鋼が激しく衝突する音だ。

 

――この音は嫌いだ。

 

――音楽家によって奏でられた■■■■のときにも聞こえた音だ。

 

――ああ、そうか。

 

――つまりは、そういうことか。

 

 

「――そこにお前がいるのだな、音楽家ァ……」

 

 

 

 

 

 

「うぉおおおおおおおーーっ!!!」

「……!」

 

吠えるラ・ピュセルの一閃をサイドステップで回避し、ミュベールは反撃に転じる。

狙いはラ・ピュセルの頸動脈――。

そこに風穴を開けんと、黒の刃を突き立てるがーー。

 

「とうっ!!」

「……むっ!」

 

何ともわざとらしい掛け声と共に、剣を振りかぶるシルビアが宙より到来する。

これを血剣で受け止める。反撃の態勢を崩される形となった状態だ。

 

そこに追い打ちを掛けるべくラ・ピュセルが剣を振るう。

 

「はぁあああああっーーー!」

「……っ!」

 

ミュベールは辛うじてこれを躱さんと後退する。

だが、ラ・ピュセルが放った斬撃を完璧に避けきることは適わない。

 

胸元に人間と妖魔の混血を示す紫色の血煙が噴き上がる。

 

傷を負ったミュベールは、二人の騎士の追撃から逃れるため、紫陽花色の翼を大きく拡げ、空へと跳躍する。

 

「(傷は浅い……。だがーー)」

「逃がさないわよん、ミュベールちゃん♡ バギマッ!」

「何っ!!?」

 

シルビアが天に向け手を翳したかと思えば、轟音と共に小規模の竜巻が発生する。

真空の刃がミュベールを飲み込まんと迫りくる。

 

この日初めて驚愕の表情を浮かべたミュベール。

高度五十メートル圏で大きく旋回し、刃の直撃を避ける。

 

「(二人掛かりとはいえ、ここまで追い込まれるとはな……少々甘く見すぎていたか)」

 

シルビアが本格的に戦闘介入を果たしてから形勢は完全に逆転していた。

シルビアの騎士としての力量もさることながら、即興とはいえラ・ピュセルとの互いの攻守を補完し合う連携は、ミュベールに一切の隙を与えなかった。

 

そしてミュベールにとって、何より厄介なのがーー

 

「(あれは、魔術の類か……)」

 

戦闘の最中、シルビアが「ピオリム」と口を紡ぎ、二人の身体が黄金色の光に包まれたのを皮切りに二人のスピードが各段に上昇したように感じ取れた。

更に「バイキルト」と呟き二人の身体から赤いオーラが発光したかと思えばーー剣と剣が交差した際に、その重みが格段に増したことを実感した。

 

先程の戦闘では軽くあしらうことが出来ていたラ・ピュセル単騎でも大きな脅威となってしまう始末である。

恐らく自己改造系の魔術を利用したのだろうか。

 

そして極めつけは、先程の暴風による攻撃である。

シルビアが次々に繰り出す魔術めいたものに翻弄される現状はーー圧倒的な劣勢と捉えるべきである。

 

「(さてさて、どうしたものか……)」

 

ミュベールは空中でピタリと静止し、此方を見上げる二人を一瞥する。

ラ・ピュセルもシルビアも、両の瞳には溢れんばかりの闘志を宿しているのが見て取れる。

 

「(ふむ……。ここは一旦退いて、仕切り直すべきか。だがーー)」

 

戦場からの撤退も視野に入れ始めたその瞬間、「おや」と声を漏らした。自分が今相対している二人にゆっくりと接近する影を見つけたからである。こちらの反応を見て気付いたのか、ラ・ピュセルとシルビアも注意をその人影へと向けた。

 

 

 

 

 

 

ラ・ピュセルとシルビアは、宙に浮かび対峙するミュベールの視線につられる様な形で自分達へと接近する第三者の存在を認識した。

 

「シルビアさん……」

「ええ……どちら様かしらね。私たちの知り合いであれば良いのだけど……」

 

果たして、敵か味方かーー闇夜の中、ゆっくりとした歩調で此方へ向かってくる人物を前に、二人は緊張した面持ちで待ち構える。と同時に、空中で静止しているミュベールに対しての警戒も怠らない。

 

だがミュベールも新たな登場人物の正体に興味があるようで、今は様子見を決め込んでいるようだ。

 

近づいてくるにあたり、暗がりの中その人物のシルエットが明らかとなってくる。

 

「――女の子……?」

 

それは侍のような出で立ちをした少女であった。

 

とてつもなく綺麗な顔立ちに白い肌。和装美女とはこういう女の子のことを指すのだろうが……その目は濁りを含み、足取りは朧げなものであった。

抜き身の刀を右手にぶら下げているあたり、剣呑な雰囲気を漂わせている。

 

この少女は危険だ、とラ・ピュセルは本能的に感じ取る。

横目でチラリとシルビアを一瞥したが、シルビアも同じ考えのようでその表情は強張ったものとなっていた。

 

やがて、その少女が目と鼻の先の距離まで近づいたとき、生気を一切感じさせない瞳をラ二人へと向け、問いかけた。

 

「――音楽家か?」

 

突拍子のない質問に二人はほぼ同時に「はぁ?」と声を漏らす。

 

だがそのような反応など意に介さず少女は再び訊ねる。

 

「――音楽家か?」、と。

 

ラ・ピュセルは、再度訊ねられた「音楽家」という単語を反芻し、ある可能性へと行き着く。その可能性が真実であるか確かめるため、眼前の侍少女に問いただそうとしたがーーそれより先にシルビアが口を開いた。

 

「うーん、まぁ……音楽家とも言えなくもないわよね、アタシは旅芸人だし。 時には音楽を奏でることもあるわよん♡」

 

その瞬間、正体不明の少女を囲う空気がグニャリと歪んだ。

ラ・ピュセルは身震いした。それまで無表情で固められた少女の表情が一変し、見るものをゾッとさせるような笑みを浮かべたからだ。

死んだ魚のように濁っていた瞳には狂気が宿り、和装の少女は手に持つ刀を振りかぶった。

 

「……ッ!?」

 

そのまま、振りかぶった刀をシルビアに向けて、振り下ろそうとした矢先。ラ・ピュセルの魔剣クラレントが割って入る。

 

カキン、という金属音とともに二本の刀剣が交錯し、ラ・ピュセルと少女は刀越しに睨み合う。

 

「……お前はーー」

「うおおおおおおおおおおおおおおーーー!!!」

 

少女が何かを言い終える前に、ラ・ピュセルは唸り声とともに少女の身体ごと、少女の刀を押し返した。バイキルトによって強化されたラ・ピュセルの腕力は少女の身体を遥か後方へと弾き飛ばした。

 

闇夜の空間へと投げ出された少女は空中でクルリと体勢を立て直し、難なく地上へと着地する。

 

尚も「音楽家ァ」と呻き声を上げながら、ラ・ピュセルを両の眼で捉える。

そのまま前傾姿勢を取り、刀を身構える。

 

そんな彼女にラ・ピュセルも臨戦態勢を取りつつ、語り掛けた。

 

 

「お前は…『魔法少女』だな?」

 

ラ・ピュセルの言葉に少女の動きはピクリと止まった。

 

やはりか、とラ・ピュセルは心の中で納得する。彼女の浮世離れした美しさや特徴的な風貌はどことなく自分が知っている魔法少女達のそれに近かった。それにあの刀を振り下ろそうとしたあの瞬間――彼女の身体は青く発光していた。恐らく何かしらの魔法を行使しようとしていたのではないだろうか。

 

彼女は静止したまま、ラ・ピュセルの様子を窺っている。ねばっこい視線だ、とラ・ピュセルは思った。予断を許せない状況に変わりはないが、一応こちらの話すことに聞く耳は立ててはくれていることに安堵し、最も気になることを尋ねることにした。

 

それは出会った当初から彼女が口にしている単語について――。

 

「もしかすると『音楽家』というのは、森の音楽家クラムベリーのことなのか?」

 

N市の魔法少女たちにとって「音楽家」とはこれすなわちクラムベリーのことを指す。クラムベリーはN市の最古参の魔法少女と聞く。もしかすると、その名は他の都市の魔法少女に響いているかもしれないし、執拗に音楽家と呟くその様子から、浅はかならぬ因縁があるようにも見受けられる。

 

共通の知己の名前を出すことで眼前の侍風の少女とのコミュニケーションにおける突破口となりえるかもしれないし、上手くいけばクラムベリーについても何か有益な情報を得られるかもしれないと期待して、ラ・ピュセルはその名を口にしたのだがーー

 

「くっ……ぅぅううううあああああぁーー!!!」

 

侍風の少女はその名を聞いた途端、目を大きく見開き一際大きな呻き声を上げた。

 

「音楽家ァッ!」

 

少女は興奮気味にその名を叫び、ラ・ピュセルに向けて刀を大きく振り上げる。「不味い」とラ・ピュセルが焦燥した表情を浮かべた途端――

 

「バギマッ!!!」

 

シルビアが放った真空の刃が侍風の魔法少女の視界を覆った。

 

だがーー

 

「……ッ!」

 

侍風の魔法少女が刀を振り下ろした瞬間、少女に襲い掛かる真空の刃は綺麗に真っ二つに分断された。分断されたシルビアの呪文攻撃は少女の両脇へと逸れていく。

 

「(シルビアさんの呪文が、斬られた……! こいつの魔法はーー)」

「音楽家ァ!」

 

視界が晴れた後も侍風の魔法少女はラ・ピュセルを睨みつけ、再び刀を振り下ろされる。瞬間、ラ・ピュセルは真横へと跳び斬撃を回避するーー

 

「ぐっ……!!!」

 

だが、迫り来る斬撃を完全に回避することは叶わず、斬撃は脇腹を掠め、切り口からは赤い鮮血が飛び散った。幸い内臓に達してはおらず、肉の部分を斬られただけに留まったが、

肉を削られる痛みと身体から紅色の液体が吹き出る不快感に、ラ・ピュセルは顔をしかめる。

 

間一髪だったーーピオリムによる身体速度の強化がなければ、今頃胴体は分断されることになっていたことだろう。

 

「音楽家ァ!!」

 

侍風の少女は執拗にラ・ピュセルをつけ狙い、刀を振り下ろしていく。

 

ラ・ピュセルは休息を求める身体に鞭を入れ、押し寄せる斬撃の波を懸命に躱しつつ、西に位置する丘陵地帯へと退避していく。

 

侍の姿をした死神は逃すまいと、斬撃を放ちつつ追走する。

 

「ラ・ピュセルちゃんっ!」

 

二人を追いかけるシルビアは侍風の少女にバギマを唱え、ラ・ピュセルを援護するが、その悉くは標的に達する寸前で叩き斬られてしまう。

 

このままではラ・ピュセルが危ない、とシルビアが地を蹴るその脚に力を込めたその瞬間、天より振りかかる風圧を感知しーーすかさず上空に剣を薙ぎ払う。

 

次の瞬間、激しい衝突音とともに、シルビアは剣を握る両手に猛烈な重圧がのしかかった。

 

先の衝突によって周囲に土煙が発生しようが、剣で受け止めた重圧により自身の骨が軋もうが、シルビアは一切動じることなく、ただ天を仰いでいた。

 

その視線の先には、妖艶な微笑みを浮かべシルビアと刃を交えている妖魔がいた。

 

「ほぉ…良き反応だ、流石はシルビア……」

「――しつこい女は嫌われるわよ、ミュベールちゃん……」

「生憎と私は妖魔だ。今更人の子と仲良くできるとは思わんよ」

「……今アナタに構っている暇はないのだけど」

 

それは焦燥感と苛立ちによる明白な拒絶の意志――。

 

鍔迫り合いの最中、ミュベールを睨みつけるシルビアの眼差しは嫌悪感に満ちていた。

シルビアはチラリと魔法少女たちがいた方向を一瞥するが、二人の姿は既に遥か遠くーー視認できるのが難しくなっており、シルビアはより一層険しい顔をする。

 

だが、その反応ですら愉しむかのようにミュベールは語り続ける。

 

「ふふっ…折角盛り上がってきたのだ。釣れないことを言うなよ、シルビア。 確かにラ・ピュセルは良き剣士だ、刀を振り回しているあの東洋人にも興味はある……。奴らとの死合いもまたさぞ愉しいものになるだろう……だがなーー」

 

鍔迫り合いを解き、ミュベールは後方の地面に着地し、剣を構え前傾の姿勢を取る。

シルビアもまた迎え撃たんと剣を構える。

 

「私は、誰よりも先ずお前に勝ちたいのだよ、シルビアッ!」

「知ったことじゃないわよ、そんなものーーーっ!」

 

雄叫びと共に両者は地を蹴り、瞬く間に肉薄する。

 

闇夜に木霊する剣と剣の激突音が、騎士たちの闘争の第三幕の始まりを告げた。

 

 

 

 

 

 

――ようやく見つけた。

 

――やはり音楽家はそこにいた。

 

――ならば、やることはただ一つ。

 

――今こそお前を斬り殺す。

 

 

「逃さないぞ、音楽家ァ……」

 

 

 

 

 

丘陵地帯―ー平原から少し登ったその場所には、大小問わず無数の岩が彼方此方に点在していた。

 

「音楽家ァ…」

 

忌むべき仇敵の通称を呟き、彷徨うアカネの姿がそこにはあった。

狂気と憤怒によって目をギラつかせて、辺り一帯を捜索する。アカネが今現在執心しているのは、魔法騎士ラ・ピュセルである。

 

魔法少女アカネが探し求めている「音楽家」は、ラ・ピュセルが放った言葉の中に確かに存在していた。だがそれは言の葉の中の存在であって、実際にクラムベリーと遭遇したということにはならない。

 

しかし、精神が崩壊し思考がままならない状態のアカネにとって、「クラムベリー」の名を聞かせるのは、あまりに刺激が強すぎた。「クラムベリー」の名を聞いた瞬間に、感情が昂り、その名を口にしたラ・ピュセルへと猛然と襲い掛かったのであった。

最早それを留める理性などアカネの中には欠片も存在しない。

 

「ハァハァ……」

 

ラ・ピュセルは、アカネから少し離れた一際大きな岩陰に隠れて、呼吸を整えていた。

幾らシルビアの呪文によって身体強化しているとはいえ、アカネの魔法を鑑みるに、平原地帯での戦闘はあまりにも分が悪かった。

 

したがって、多くの遮蔽物が分布している丘陵地帯へと移動して、今こうして岩に匿われてアカネの様子を窺っている。

 

シルビアが此方に来る様子はない。

恐らくあのままミュベールと一対一の戦闘に突入したのであろう、とラ・ピュセルは推測する。

 

「音楽家ァ……」

「(やっぱり立ち去る気はないか……。それならーー)」

 

アカネが一向に諦める気配がないことを悟ると、ラ・ピュセルは岩陰から飛び出した。

 

「音楽家ァ!!!」

 

アカネは即座に反応し、ラ・ピュセルへと刀を振り下ろすが、振り降ろされる寸前でラ・ピュセルは別の岩陰へと潜り込む。

結果として岩が両断されることとなるが、粉砕された岩場に獲物は存在しない。

 

「そこだ……」

 

左耳の聴覚から地面を駆ける音と少女の息遣いを認識すると、振り向けざまに刀を下ろすがそれも岩石に阻まれる。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおーーー!!!」

「……!」

 

岩石の破壊音と同時に、アカネの背後より剣を構えたラ・ピュセルが突貫してきた。

アカネもそちらへ振り返り、獲物へ向けて刀を勢いよく振りかざそうとするが、迫りくるラ・ピュセルはあまりにも疾かったーー

 

 

 

鮮血が闇夜に舞った。

 

 

 

 

 

 

夜の闇に埋もれた平原に、繰り返し響き渡る剣戟の音。

その剣戟の音が、ミュベールとシルビアの決闘が現在進行形で行われている証だった。

 

「はははっ……愉しい、愉しいなぁっ! シルビアッ!」

「本っっっ当にしつこいわね、アンタッ!」

 

熟練した剣士達により高速の斬り合いは、百五十合を軽く超えており、今尚、一進一退の攻防が展開されている。

 

情勢は完全に互角であるものの、両者の表情は極めて対照的であった。

ミュベールは嬉々として剣技を繰り出すが、シルビアは苦虫を噛み潰したような表情で、これに応対する。

 

シルビアは焦っていた。

原因は他でもないラ・ピュセルにある。侍風の少女と対峙した挙句、劣勢のまま追いかけられた彼女のことを想うと気が気ではない。

 

更に先程シルビアに掛けられたピオリムとバイキルトの効果が切れた。

慌てて再度呪文を唱え、事なきを得たが、同じ時期に呪文を掛けたラ・ピュセルは今頃、恐らくはーー、と考えを巡らせてしまう。

 

「(速攻で決めるしかないわね……!)」

 

意を決したシルビアは息を大きく吸い込み、剣撃を放たんとするミュベールに向けて、息を吐きだした。

 

その瞬間、シルビアの口からはおびただしい量の炎が呼吸と同時に噴出し、ミュベールに襲い掛かった。

 

「な、何っ!!?」

 

これぞ、シルビアが誇る曲芸スキル「火吹き芸」。

ミュベールは唐突に顕現した炎に怯み、仰け反る。

 

その隙を、シルビアは逃さない。

 

「バギマッ!!!」

 

掛け声とともに、竜巻が発生する。それは無数の風の刃を内に孕む。

猛烈な勢いそのまま、ミュベールの五体を飲み込まんと襲い掛かる。

 

「ぬぅ……!」

 

回避が間に合わない、と判断したミュベール。

咄嗟に両腕で胸元を庇うかのような防御姿勢を取る。

 

 

竜巻は、吹き上がる土煙をそこへと被せ、ミュベールの細い肢体に直撃する。

 

「これで終わりよ、ミュベールちゃん!」

 

シルビアは一気に駆け出した。

 

剣を突き出したその先には、土砂を伴う竜巻の中心。

狙いは無論――ミュベールの胸部があった場所である。

 

「……!」

 

しかし剣を突き刺したその瞬間、シルビアは違和感を覚えた。

 

確かに、竜巻の中にはミュベールがいたはずだ。

竜巻に飲み込まれるのを見届けたし、其処から脱出する姿は確認していない。

本来であれば、無数の刃で身体の彼方此方を削り取られているはずだ。

だが突き出した剣に、肉を突き破る手応えはない。

 

代わりにフワリとした感触が剣の進行を妨げたように感じた。

シルビアの表情が曇ると同時に、土煙と竜巻が晴れる。

そして違和感の正体が判明する。

 

「傘……?」

 

それは大きな傘であった。

人一人をすっぽり覆い隠すことができるほどの大きさのーー。

シルビアの剣はその傘に優しく包み込まれていた。

 

「――見事な連撃だったぞ、シルビア」

 

傘より一筋の影が飛び出した。

 

その影は一瞬でシルビアとの間合いに近づく。

 

シルビアは剣を即座に引き抜き、これに備えようとするが、この場は影の疾さが勝った。

 

「この傘が無ければ、私は敗けていた」

 

直ぐに身体を捻らせ回避行動を取ろうとするが、これも間に合わずーー

 

戦場に血の雨が降り注いだ。

 

 

 

 

 

 

「――ここは……?」

 

気が付くとアタシは、晴天の下、緑豊かな草原の上に立っていた。

陽射しがポカポカと暖かく、頬を伝う微風がまた心地良い。

 

「おーい、シルビアさーん!」

「えっ…?」

 

振り返ると其処には、此方に向けて手を振るうイレブンちゃんの姿があった。

 

「イレブンちゃん……?」

 

驚きとともに、相変わらずの無垢で眩しい笑顔に思わずホッコリとしてしまう。

 

イレブンちゃんの後ろには、桃色の花を咲かせる樹々の下、たくさんの人がいた。

全員が見知った顔であった。

 

「皆……」

 

また小さな諍いを起こしたのだろうか、カミュちゃんがベロニカちゃんを追いかけている。

 

セーニャちゃんは木漏れ日の照明を浴びつつ、ハープを奏でている。

 

マルティナちゃんは樹木へともたれ掛かれ、セーニャちゃんの演奏に耳を傾けている。

 

ロウちゃんは近隣のお花見グループの輪に加わり、お酒を楽しんでいる。

 

花弁が舞い散る中、世助けパレードの同士となったオネエたちは、楽しそうに踊っている。

 

「よぉ……」

 

急にポンと肩を叩かれ、振り向くと其処にはーー

 

「パパ……」

 

喧嘩別れしたパパと執事のセザールがいた。

呆然とするアタシに、パパは静かな声で問いかけてくる。

 

「息子よ。この光景が、お前が目指した騎士道か?」

 

パパは、ただ真っ直ぐアタシの瞳を見つめている。

全てを見透かすような凛とした瞳だった。

 

正直まだ何が何だか理解が追いついていない。

だけど、パパの問いかけに対する答えは既に持っていた。

 

「ええ、そうよーー」

 

胸を張って宣言する。

アタシが求める騎士道は、家を飛び出したあの時から、全く変わっていない。

 

「これがアタシのやりたかったこと、よ」

「そうか……中々に悪くねえ騎士道だ」

 

パパは私の返答に穏やかな笑みを浮かべた。

 

そう、間違いない。

これが、アタシが目指した世界。

 

 

だってーー

 

 

イレブンちゃんもーー

 

カミュちゃんもーー

 

ベロニカちゃんもーー

 

セーニャちゃんもーー

 

ロウちゃんもーー

 

マルティナちゃんもーー

 

パパでさえもーー

 

 

皆、笑顔なのだから。

 

この場所は、皆が心からの笑顔を浮かべている。

ここは、まさに私が夢見た理想の世界。

出来るならこの場所で、皆と共に笑って過ごしたい。

 

だけどーー

 

「だったらよぉーー」

 

パパは先程までの柔和な表情から一転、真顔となり一際大きな声を発した。

 

「こんな場所で呆けているわけにはいかねえよなぁ、我が息子ゴリアテよっ! お前は“こいつ”を実現するために家出たんだろうがぁっ!」

「勿論よ、パパ。騎士に二言はないーーアタシは最期までアタシの騎士道を貫き通すわ。 “夢”を夢のまま終わらせないっ!」

 

アタシの言葉を聞くと、パパはニヤリと笑い、思い切り肩を叩いてきた。

 

「行ってこい、バカ息子っ!!!」

 

分かっている。

 

この世界は束の間の夢。

 

恐らく死出への旅の前に、神様がくれたアタシにくれたご褒美のようなもの。

 

だけど、まだアタシはこの夢を実現できていない。

 

この夢を現実とするために、アタシはーー

 

アタシはーー

 

「アタシはーー」

 

 

 

「アタシは、世界に笑顔を取り戻~~~~すっ!!!」

 

大声で叫んだその瞬間、夢の光景はガラス片のように砕け散りーー

緑と白で彩られた風景は、蒼と黒で塗りたくられた殺風景へと移り変わりーー

 

アタシを取り巻く世界は反転した。

 

 

 

 

 

 

「アタシは、世界に笑顔を取り戻~~~~すっ!!!」

 

瀕死のシルビアの瞳は再び生気を宿し、叫び声を上げた。

 

前のめりに倒れかけていたが、両脚に力を込め、踏みとどまる。

胴に刻まれた複数の斬傷からは、止めどなく血が溢れ出ているが、歯を食いしばる。

既に足場に深紅の血だまりが出ている。

 

どう見ても致死量の出血となっている。

 

だが、シルビアは闘志を絶やすことなく、眼前の敵を凝視する。

 

「ほぉ…まだ立っていられるか、大した男だ」

 

ミュベールは、致命傷を負っても未だ倒れぬシルビアに対し、賛辞を送る。

普段のシルビアであれば、意趣返しとして何かしらの皮肉を述べていたかもしれないが、今はそのような余裕は持ち合わせていない。

 

「まだ……アタシは倒れるわけにはいかないの、よん!」

 

シルビアは剣を構え宿敵へ向け、駆け出す。

 

そう。シルビアにはやるべきことはたくさんある。

まずは目下ミュベールを撃退し、ラ・ピュセルへの救援へ急ぐ。

ラ・ピュセルを救出した後、イレブン達と合流し、主催者を懲らしめる。

このゲームから元の世界に帰還した後は、魔王を倒し世界中の人々に笑顔を取り戻さなければならない。

 

 

間もなくシルビアがミュベールへと肉薄する。

シルビアは剣を大きく振り上げるが、ダメージだらけの身体であるため、そのモーションは先程よりも遥かに遅いものであった。

 

「遅いっ!!!」

 

ミュベールは持ち前の俊敏な動きで、カウンター気味に刃を振るうがーー

 

「とーうっ!!」

「何っ!!?」

 

剣のモーションはただのフェイント。

シルビアはミュベールが血剣を振るおうとしたその瞬間に、後方へと大きく宙返りをする。

結果として、ミュベールの刃は空を切る。

 

「目に焼き付けなさい、ミュベールちゃん!」

 

夜空の中、シルビアは自身を見上げる妖魔に向けて叫ぶ。

 

「これが……アタシのジャスティス!! ウーッ ハアーッ!!」

 

奇妙な掛け声とともに、シルビアが空中で華麗なポーズを決めたその瞬間。

 

「な、何だとっ!?」

 

ピンク色の大爆発が轟音を伴い発生し、驚愕するミュベールを飲み込む。

 

これぞ騎士道を極めし者による究極奥義「ジャスティス」。

これはシルビアが、致命傷により動きが鈍くなった手前、剣技ではミュベールに遅れを取ると分析した結果、ありったけの魔力を込めて駆使した切り札でもあった。

 

「ハァハァ……上手く、いったかしら……」

 

地面に着地したシルビアは爆発地点の様子を窺う。

この爆発により数十メートル規模のクレーターが、草原の地に出来上がっていることから、その威力が窺い知れる。

 

だが、そこにミュベールの姿は見えずーー

 

「――見事だ、シルビア。ここまでやるとは予想外だったぞ」

「っ!?」

 

視界の外、側面からの声に、シルビアは身体をそちらへと向け、応酬せんとするが。

それよりも疾く、ミュベールの袈裟斬りが降りかかる。

 

その結果、満身創痍のシルビアの身体から大量の血が噴出される。

決定的な一太刀であった。

 

「ガッ……! アタシはーーまだーー」

「もう良い、いい加減に眠れ」

 

全身を返り血で彩られたミュベールは、尚も冷徹に斬撃を浴びせ続ける。

 

滅多斬り、とはこの事をいうのだろうか。

止めどなく襲い掛かる刃の冷たさと、傷口から漏れる血の熱を肌で感じながら、シルビアは今まさに自分の命が刈り取られているのだと悟る。

 

 

――ただ皆の笑顔を見るのが好きだった。

 

――誰もが笑顔を浮かべる愉快な世界。

 

――それを実現するために剣を振るった。

 

けれども、その志も道半ばで潰えることとなる。

 

「(パパ、ごめんね……!)」

 

最期に彼の脳裏に浮かんだのは、彼に騎士道を叩きこんだ師でもある父の顔であった。

 

 

【シルビア@ドラゴンクエストⅩⅠ 過ぎ去りし時をもとめて  死亡】

 

 

 

 

 

 

「お前が見せた不屈の闘志、しかと胸に刻んだぞ、シルビア」

 

ミュベールは、物言わず倒れ伏せるシルビアの骸を見下ろし、敬意を示す。

騎士道を棄て、魔の道に堕ちたミュベールにとって、シルビアが最期に披露した生命の輝きは、彼女の中で忘れ去られた「何か」を想起させかけていた。

 

そんな彼女の身体は返り血で赤黒く染め上げられている。

まるで汗のように返り血が頬を伝うが、ミュベールはこれを舌で舐めとる。

 

「ふむ……こちらも多少なりとも手傷を負ったか」

 

ゲーム開始より数時間が経過して、ようやく参加者の一人を仕留めるに至ったが、その代償は大きかった。

改めて自身の状態を省みると、右半身の至る所から出血をしており、肉の焦げた臭いが鼻をつく。

 

これらの傷跡は、シルビアが最期に放った奥義「ジャスティス」が残したものである。

あの爆発が生じた瞬間、ミュベールは咄嗟に「アンブレンの傘」を取り出し、身を庇おうとした。

だが魔法の傘が全身を覆うには間に合わずーー結果としてこのような有様となっている。

 

「(まだ近くに参加者は二人いるはず……。さて、どうするべきか……)」

 

ミュベールの目標はあくまでも優勝である。

 

本来は、ここで暫しの休息を取りたいところではあるがーー

まだ近場にいるであろう、ラ・ピュセルと刀を振り回す少女を捨て置くことは出来ない。

それに、自身に課せられた首輪条件「第四回放送までに同エリアに4時間以上留まらない。条件を満たせなかった場合、首輪は強制的に爆発する」も気がかりだ。

残りのエリア滞在可能時間を鑑みるに、あの二人とも早期に決着をつけるべきである。

 

「(だとすれば、早急な治癒が必要だな)」

 

ミュベールはゆっくりとシルビアの亡骸へと近づいていく。

 

妖魔にとっての迅速な回復手段は一つしかない。

生き血ではないにしろ、それはまだ新鮮であるはずだ。

 

ミュベールは、シルビアの亡骸を起こし、そしてーー

 

「(お前の血肉、糧とさせてもらうぞ、シルビア)」

 

その首筋へと牙を立てた。

 

 

 

 

 

 

戦場は移り変わり、此処は丘陵地帯。

この地における死闘もまた、終焉を迎えようとしていた。

 

「ハァハァ……クソっ!!」

 

ラ・ピュセルは、岩と岩の狭間に潜り込み傷口を抑え込んでいる。

付近の岩場には、ラ・ピュセルの血液が撒き散らされている。

 

先の戦闘において、確かにラ・ピュセルはスピードにおいてアカネを圧倒していた。しかし、それはシルビアによって齎された「ピオリム」の呪文あってこそのものであった。

 

アカネの背後より突貫し、討ち取れると確信したあの瞬間――ラ・ピュセルを覆っていたピオリムの加護はタイミング悪く消失した。

その影響で本来であればアカネの胴元に届いていたはずの刃は届く前に、アカネが刀を振り降ろしきってしまう。

 

ピオリムの効果が途切れてしまった察知したラ・ピュセルは直ぐにサイドステップで回避を試みるが、迫りくる斬撃の魔法を躱しきれずーー

彼女のトレードマークの一つでもある尻尾の半分と左足の甲の一部を切り取られてしまう。

悲鳴と同時にラ・ピュセルの鮮血が闇夜に舞う結果となったが、ラ・ピュセルには身体の一部を欠損した痛みに悶絶する猶予は与えられなかった。

 

そこから魔法の斬撃を執拗に連発するアカネから、命からがら逃げ果て、今の状態へと至っている。

 

片足に深手を負いスピードを殺されてしまった手前、当然無傷で逃げることも叶わず、ラ・ピュセル身体は悲惨なことになっていった。

左足一部のみならず、右耳は削ぎ落され、至る所に刻まれた切傷からは断続的に血が流れ続けている。

 

もはや趨勢は完全に決していた。

 

魔法も使えず。

呪文の効果も切れ。

足を殺され。

聴覚も定かではなく。

出血多量で視界もぼやけているこの状況で。

 

ラ・ピュセルがアカネに勝つ見込みは万が一にもあり得なかった。

 

今は辛うじて振り切ってはいるが、アカネは諦める事なく近辺をうろついている。

辺り一面に付着している血痕から、この場所に辿り着くのは時間の問題だ。

 

 

――泣かないで、スノーホワイト

 

――例えこの身が滅びようと、貴方の剣となることを誓いましょう、我が盟友スノーホワイト

 

死という絶望を目前にして、ラ・ピュセルの頭を過ったのは「彼女」と交わした誓いであった。

 

「い、嫌だ……僕は死にたくない」

 

またスノーホワイトに逢いたい。

彼女の側で、彼女を護る騎士であり続けたい。

 

ラ・ピュセルは唇を大きく震わせ、迫りくる死を拒絶する。

それから頭をフル回転させ、如何にしてこのピンチを乗り切るか、手段を模索する。

 

「そ、そういえば……」

 

そして、思い出す。

自分の支給品に『プレミアム幸子の契約書』という何とも胡散臭いものが含まれていたことを。

もしその効果が本当であれば、使いどころは考えるべきだと温存していたが、死んでしまっては元も子もない。

崖っぷちの今こそが使いどころではないだろうか。

 

何もしないよりかはマシだ、と。

藁にも縋る勢いで契約書を取り出し、そのチェック欄一つ一つにチェックを入れていく。

サインをするためのペンを持ち合わせていないため、指に自らの血液を滲ませ、ペンの代わりとしていた。

 

やっとのことで全てのチェック欄を埋めて、最後に自分の名前を書き記したその直後――

 

「っ!!?」

 

片側のみとなった耳が、小石を弾く音を捉えた。

慌てて契約書を仕舞いこんだ矢先、ラ・ピュセルの視界は此方に迫りくる黒い人影を捉えた。

 

「随分とひどい有様じゃないか、ラ・ピュセル」

「ミュベール……!」

 

何が『一時的にラッキーになれます』だ、最悪な展開じゃないか、とラ・ピュセルは心の中で毒づいた。

ラ・ピュセルにとっては、アカネではないにしろ、この状態で敵と遭遇することは「死」に直結することと同意義となる。

 

そして、ミュベールがこの場所に現れたということは、もう一つ重大なことを意味していた。

 

「――シルビアさんは?」

 

座ったまま鋭い眼差しで睨みつけてくるラ・ピュセルに対し、ミュベールは支給品袋からあるものを取り出し、彼女の前にチラつかせた。

それはーーシルビアが手にしていた支給品の剣であった。

 

「立派な最期だったぞ」

「お、お前ッ――――!!!」

 

激昂したラ・ピュセルが剣を片手に地を蹴り、飛び掛かる。

 

だが傷だらけの状態で振るわれた刃など、ミュベールに届くはずもなく。

ミュベールは冷めた表情のまま、これを難なくいなしてーー

 

返す刀で、手に握る剣でラ・ピュセルの胸部へと突き刺した。

 

「遅すぎるぞ、ラ・ピュセル」

「グハッ……!!!」

 

ミュベールは無慈悲に剣を引き抜く。

胸元から大量の血液を噴出させ、ラ・ピュセルは自らが創り出した血の池の上に倒れ伏せた。

 

「つまらない幕引きだな、ラ・ピュセルよ」

 

血に沈んだラ・ピュセルの姿を一瞥すると、ミュベールはどことなく寂しそうな表情を浮かべる。

そして、残る一人の獲物を探さんと踵を返した。

 

だが。

 

その脚は血だまりの中から伸びてきた腕によって掴まれる。

 

「なっ!!?」

「ま、待て……」

 

ラ・ピュセルは例え血塗れになろうと、地で這いつくばったとしても、それでも気力で意識を繋ぎ合わせ、ミュベールへの敵対心を絶やさなかった。

 

「お前を、行かせはしない!!!」

「そうか……」

 

ラ・ピュセルの悲壮なる覚悟を見届けたミュベールは、驚愕した表情から一変し、口角を吊り上げる。

そして掴まれていない方の足で、ラ・ピュセルを顎先からボールのように蹴り上げた。

 

カハッ、と呻き声をあげラ・ピュセルは後方の地面へと転がる。

血を吐く口からは砕けた歯が零れ落ちた。

ミュベールは、苦しそうに呼吸するラ・ピュセルの頭を容赦なく踏みつけ、言葉を投げかけた。

 

「ラ・ピュセルよ、何故お前はそこまで奮起する? 何のためにお前は戦っているのだ?」

 

それは心の底から湧き上がる疑問であった。

先のシルビアといい、このラ・ピュセルといい、何故ズタボロの状態になっても屈することなく抗い続けるのか。

清廉たる騎士の道を、延いては人の道を忘却したミュベールにとっては理解の範疇を超えたものであった。

 

「私は……私の護りたい人の為に剣を振るうだけだッ!」

「――その護りたい人というのは、自分の命を賭すに足りうる人物なのか?」

「ああ、そうだ! 私は約束したんだ! 絶対に彼女を護るとッ! だから、ミュベールッ!!! 彼女を護るため、お前や……クラムベリーみたいなやつを野放しにすることはできないッ!!!」

 

血を吐きながら叫ぶラ・ピュセルに、ミュベールは無機質な声で「成程な」と呟く。

そして懐より、とある支給品を取り出す。

 

「興が乗ったぞ、ラ・ピュセル。 ならば、お前のその“想い“がどれほどのものか、確かめさせて貰おう」

「な、何をする気だ……!」

 

取り出された支給品は「ロジエクロック」。

当初はシルビアに支給されたものではあるが、今はミュベールが手中に収めている。

 

「これは『ロジエクロック』という魔法具だ。私も実物を見るのは初めてだがーーこいつは、妖魔や邪妖が流した蒼い血を溜め込むことが出来る。逆に言えば、こいつから溜め込んでいる蒼い血を垂れ流すことも出来る」

「妖魔? 邪妖? 何を言っているんだ?」

「まあ、黙って聞け。都合の良いことにこいつには既に大量の蒼い血が溜め込まれているようだ。 運営も気前の良いところがある」

「だから、それが何だって言うんーーガハッ!!!」

 

会話の途中でミュベールはラ・ピュセルの脇腹を蹴り上げ、乱雑に転がす。

仰向けの姿勢で、苦しそうに悶えるラ・ピュセルの眼に飛び込んできたのは、「ロジエクロック」なるものを逆さに向けるミュベールの姿であった。

 

「――こうするのさ」

「っ!!? がごっ!! ぼ、ごぼぼが、ごゔゔゔゔゔううううぅう!!」

 

「ロジエクロック」の先端から、大量の蒼い液体がラ・ピュセルの顔面に、滝のように降り注いだ。

満身創痍のラ・ピュセルにはそれを避ける術もなく、蒼い雨に溺れることになる。

 

「ただの人間にとって蒼い血は猛毒だ……。 浴びる量にも依存するが、下手をすれば死ぬこともある。まぁ死を回避したとしても、心を失くした獣“邪妖”となるのだがなーー」

「ごぼっ!! が、ごゔゔゔゔゔううううぅう!!!!」

 

蒼の血に溺れるラ・ピュセルは為すがまま、血を浴び続ける。

 

ラ・ピュセルに襲い掛かるのは、内側から湧き上がる形容しがたいほどの激痛。

血を浴びせられる顔面からは湯気が絶え間なく立ち昇り、血濡れた手と脚はビクビクと凄まじい痙攣を引き起こしている。

 

「だが、稀に邪妖になっても自我を保つ者たちがいる……それが“半妖”と呼ばれる者だ」

「ぐごぉっ!!? ぐがあぁ、あぁあぁ! い゛ぁあ゛ぁい゛っ! ぁあぁあ゛あっあっあああああ!!!!! 」

 

浴びせるポイントを顔面からずらし、更に首筋、胸部、腕、腰部、脚とくまなく蒼の血を降らし続ける。

開放された顔面から尚も湯気が立ち昇り、その表情を窺うことはできないが、ラ・ピュセルの獣のような大絶叫は絶え間なく木霊する。

 

「ラ・ピュセルよ……。お前が行き着く道は死か。『約束』とやらを全て忘れさり、ただ生き血を求める邪妖となるのか。 それとも護るべきものとやらのために見事に理性を保ち、新たな境地に足を踏み入れることが出来るか。しかと見届けさせて貰おうか」

 

そう言うと、ミュベールはロジエクロックからの血の投入を止め、ラ・ピュセルの様子を観察する。

 

ラ・ピュセルは尚も叫び声を上げ続け、全身が沸騰する灼熱の熱さに悶絶する。

と同時に、身体に侵入した異物が、自分の内にあるものを作り替えていくおぞましさを感じていた。

 

 

――例えこ■■が滅びようと、貴方の■とな■ことを誓いましょう、■が盟友ス■ーホ■イト

 

薄れていく。

彼女との記憶がーー。

 

「(嫌だ、嫌だ、嫌だ。お願いだ、僕からあの『約束』をっ! 『彼女』を奪わないでくれ!)」

 

異物に侵される苦しみに悶えながらも、ラ・ピュセルは心のうちで嘆願する。

 

 

――■えこ■■が■■ようと、■方の■とな■こ■を■■■しょう、■が■友■■■■■イト

 

消えていく。

彼女と交わしたあの言葉がーー。

 

 

「(僕は……僕はーーー)」

 

 

――■■■■■が■■よ■■、■■の■■■■■■を■■■し■う、■■■友■■■■■イ■

 

 

浸食されていく異物の感覚に抗い続け、ラ・ピュセルの意識は闇へと落ちた。

 

 

 

「ふむ……息絶えたか、それとも気を失っただけか……?」

 

ピクリとも動かなくなったラ・ピュセルを見て、ミュベールは呟く。

ラ・ピュセルを侵した蒼い血のボリュームは、一般人からすれば致死量のものとなっていたので、その可能性も少なくはない。

まあ例え、蒼い血に耐え切れず事切れていたとしても、少し期待が外れたという程度だ。自分が見込んだラ・ピュセルという騎士はその程度の存在であったということになる。

 

ミュベールはそのように結論づけ、彼女の身体に触れようとするがーー

 

「ようやくお出ましか、遅かったではないか……」

 

背後より忍び寄る黒い影に反応し、そちらへと振り向く。

 

「……。」

 

復讐に取り憑かれた少女が月明かりに照らされていた。

少女の濁った瞳は、動かなくなったラ・ピュセルを一瞥した後、ミュベールの姿を捉える。

 

「なぁ、お前も興味はないか? こいつが心を持たない化け物に成り下がるか、それともこのまま朽ち果てるかーー」

「……音楽家か?」

 

ははっ、と思わずミュベールは嗤う。やはり会話はまるで通じないようだ、と認識する。

 

先程まで追い回していたラ・ピュセルについては、死んでいるものと判断したのであろうか。アカネは其方には目もくれない。

 

今は眼前のミュベールにしか興味がないようだ。

 

「……音楽家か?」

「――だとしたら、どうするつもりだ?」

 

ミュベールが挑発気味に口角を吊り上げたとほぼ同時に、アカネは刀を振り下ろした。

しかし、俊敏なミュベールは風切り音を立て、狂刃を回避。

 

「遅いぞ、東洋人」

 

アカネの視界の範囲外より、ミュベールは一気に肉薄する。

勢いそのまま、首を刎ねんと剣が振りかざされる。

 

「!!?」

 

アカネは回避のために上体を大きく反らす。

 

だが血剣の魔の手から逃れる事叶わず。

左肩口が斬りつけられ、血飛沫が生じる。

しかし、アカネの顔が苦痛に歪むことはない。

 

無機質な表情を張り付けたまま、刀を振るわんとする。

 

だが、次に気付いた時に、ミュベールの姿は視界に存在せず。

頭上の宙からは、ミュベールが繰り出す連続突きが襲来する。

 

アカネはこれを間一髪バックステップで躱す。

 

その代わりとして足場の岩が連続突きの餌食となる。

岩石の断末魔ともいえる粉砕音と共に辺りには土煙が立ち込める。

 

更に息つく間もなく、土煙から回転蹴りが伸びる。

ミュベールの遠心力を利かしたその蹴りは、アカネの右脇腹を捉える。

 

「……ゴフッ!」

 

掠れた呻き声を上げて、アカネの身体は右方面へと蹴り飛ばされる。

 

だが狂気に憑りつかれた魔法少女は、これしきのことで地に伏せることはない。

空中で器用に一回転し、そのまま地面へと着地する。

 

そして、まるで何事もなかったかのように周囲を見渡し、相対する敵を索敵する。

 

「中々に愉しませてくれる」

 

見つけた。

 

まるで、鳥が翼を休ませているかのように。

ミュベールは一際大きな岩の上に佇んでいる。

相も変わらず好戦的な笑みを零し、アカネを見下ろしている。

 

そしてアカネが剣を構えたその刹那、翼を羽ばたかせ弾丸のように飛来した。

瞬く間に肉薄するが、アカネは特に動じる事なく、剣を振らんとする。

 

両者の死闘は今まさに第二幕へと突入しようとしていた。

 

 

だが。

 

 

終焉は唐突に訪れた。

 

 

ピ――――……というアラームの音が、ミュベールの首元から聴こえた。

 

「「っ!?」」

 

思わず、戦いの手を止め静止する二人。

そこへ無機質な音声による警告が首輪から告げられる。

 

『後五分で、首輪の解除が不可能となります。速やかにご対応ください。繰り返します。後五分で、首輪の解除が不可能となります。速やかにご対応くださいーー』

 

ミュベールに与えられた首輪解除条件『第四回放送までに同エリアに4時間以上留まらない。条件を満たせなかった場合、首輪は強制的に爆発する。』

ミュベールがこのエリアに留まれる時間は五分を切っていた。

 

「少し熱くなりすぎたか…」

 

この警告が無ければ、アカネとの闘争に没頭し続けた挙句、首が吹き飛んでいたかもしれない。

早急に別エリアへ移動を開始しなければならない。

 

ミュベールは、チラリとアカネと倒れ伏せ動かないラ・ピュセルの姿を一瞥する。

 

「名残惜しいが、致し方ないか…東洋の剣士よ、勝負は預けたぞ」

 

ミュベールはアメジストの翼を発現させ、戦場から去ろうとするがーー

 

「逃さないぞ、音楽家ァッ!」

 

アカネがそれを赦すはずもなく、ミュベールに照準を合わせ、刀を振り下ろそうとする。

 

「まぁ、落ち着け」

 

このアカネの行動は予測できていたのだろう、ミュベールは迅速に反応する。

咄嗟に懐から布袋を取り出し、振り向けざまにアカネへと投げる。

 

アカネの視界に布袋が飛び込んできた段階で、刀は振り下ろされる。

両断されたのは、ミュベールの胴ではなく、布袋となったがーー

 

「……ぅがッ!!」

 

袋から飛び出てきたのは「どくがのこな」。

光り輝く鱗粉がアカネの全身を覆った直後、アカネの身体は麻痺状態へと陥る。

 

「また会おう、東洋の剣士」

 

全身が痺れ膝をつくアカネを尻目に、ミュベールは翼を広げ、戦場より離脱した。

取り残されたアカネは「音楽家ァ…」と呟きながら、恨めしそうにミュベールの後ろ姿を見届けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

「ふむ、どうにか事なきを得たようだな」

 

 

南西方向へ飛行を続けること数分。

耳障りなアラーム音が鳴り止んだことから、ミュベールは自身が別エリアに到達したことを察した。

 

ホッと胸を撫で下ろすと同時に、先程までの戦いを振り返る。

 

この場所は本当に面白い。

シルビアといい、ラ・ピュセルといい、東洋の剣士といいーー

心躍る戦いに興じさせてくれる。

 

このゲームには七十人以上の人間がいると聞いている。

今後も未知なる参加者との死闘が続くと思うと、胸が高鳴ってくる

中でもーー

 

 

「森の音楽家クラムベリーか……」

 

 

あのラ・ピュセルや東洋の剣士が、度々口にしていた一参加者の名前。

彼女らがあれほど執着していたのだから、それ相応の存在であることは間違いないだろう。

 

できれば、直接相まみえて手合わせを願いたいところだ。

 

 

そして、もう一つ気がかりなのはーー

 

「さて、お前は試練を乗り越えることが出来るかな、ラ・ピュセルよ」

 

敵としてただ斬り捨てればよかったもののーー

 

騎士として未熟ながらも、がむしゃらに我を通そうとする実直さーー

彼女の誰かを護らんとする強い意志――

 

そういったところに、アルーシェと姿を重ねてしまっていた。

 

だからこそ、試してみたかった。

彼女の強さを。蒼い血を使って。

 

もしも彼女がこの試練を乗り越えて、再び目の前に立ちはだかることがあれば、その時は決着をつけるとしよう。

 

そこでミュベールは一旦思考を打ち切り、溜息をついた。

 

「私にも且つてあったのだろうか、あいつらのように、命を賭して護りたいと思う“何か”がーー」

 

 

シルビアが最期までみせた不屈の闘志。

傷だらけになっても抗い続けた、ラ・ピュセルの覚悟。

 

シルビアとラ・ピュセルとの邂逅は、妖魔へと墜ちたミュベールの心に小さな変化をもたらそうとしていた。

 

 

 

 

 

【B-6/平原/一日目 黎明】

【ミュベール・フォーリン・ルー@よるのないくにシリーズ】

[状態]疲労(中)、右半身火傷(ある程度回復)、胸元に切り傷(回復)

[服装]いつもの服装

[装備]

[道具] 基本支給品一色、スマホ、アンブレンの傘@魔法少女育成計画、シークレットメモ集@アイドルデスゲームTV、アルーシェの剣@よるのないくに2、ロジエクロック(蒼い血残量1/2)@よるのないくに、不明支給品1つ

[首輪解除条件] 第四回放送までに同エリアに4時間以上留まらない。条件を満たせなかった場合、首輪は強制的に爆発する。

[思考・行動]

基本方針:全員殺して優勝する

1:近隣の施設を回り、目につく人間を殺す

2:ラ・ピュセルのその後が気になる。出来れば再戦したい。

3:アルーシェは私が殺してあげないとな

4:東洋の少女(アカネ)とも決着をつけたい

5:「森の音楽家クラムベリー」に強い興味

6:シルビアの騎士道精神に感服

※参戦時期はよるのないくに2 第3章、学園内でアルーシェと交戦した直後からとなります。

※シルビアの支給品を回収いたしました。尚、スマホについては回収していません。

※シルビアの死体から吸血を行い、ダメージの回復を行いました。それ以外の影響については後続の書き手にお任せします。

※ミュベールの首輪は、首輪爆破の5分前になると、アラームが鳴るよう仕掛けが施されています。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……っ! 音楽家ァ……」

 

 

ミュベールが戦場から離脱し、数刻が経過した頃。

アカネを蝕んでいた「どくがのこな」の効果は徐々に薄らいでいた。

 

まだ若干のぎこちなさはあるが、ようやく手足を動かせるようになり、アカネはよろめきながらも足を立たせる。

 

 

「音楽家ァ……」

 

アカネが見据えるはミュベールが飛び去った方角。

彼女を追跡せんと、ゆっくりと歩み始めたその刹那――。

 

 

「ゔごがあ゛ぁぁぁぁぁあああああああッーーーーー!!!!!!」

 

彼女の背後より、鼓膜を突き破るようなけたまましい咆哮が響いた。

 

予期せぬ出来事にアカネが振り返ると、そこには一匹の怪物が立っていた。

 

 

「ゔが、ゔあ゛ぁぁぁぁッーーー!!!」

 

それは且つて「ラ・ピュセル」と呼ばれていた魔法少女の成れの果て。

 

これも蒼い血による影響だろうか。

肌の色が且つてのような健康的な白ではなく、病人の青白くなっている。

右の瞳はかつてと同じ黄金色に煌めかせてはいるが、左の瞳はサファイアのような蒼い輝きを放っている。

 

妖しくも、異様な雰囲気を醸し出して彼女ではあったが、今は両手を頭に抱え、何かにもがき苦しんでいる。

 

 

「ゔあ゛ががががががが、ゔあ゛ぁぁぁぁッーーー!!!」

 

且つて清廉潔白な魔法騎士であった少女は、今や口からは涎を垂れ流し、獣のような咆哮を上げ続けている。目の焦点も定まっていない。

 

そんな彼女の様子をただひたすらにアカネは凝視していたが、やがて彼女の視線とアカネの視線は交差した。

彼女がアカネという存在を認識した、その瞬間――。

 

 

「があ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁぁああッーーー!!!!!!」

「っ……!!?」

 

 

突如、怪物の右手に禍々しい剣が発現した。

 

怪物の手に宿るは血剣――。

蒼い血を浴び、人ならざるものへと転生したものだけに許される武器である。

 

アカネは一瞬だけ戸惑いを見せるも、血剣を見るやいなや、それに呼応するかのように刀を抜く。

 

だがアカネを真の意味で驚かせたのは、次の瞬間であった。

 

 

「あ゛あ゛あ゛ああぁぁぁッーーーーー!!!!」

「っ!?」

 

怪物がより一層大きな叫び声をあげたかと思うと、振り回された剣が巨大化し、アカネに迫ったのである。

 

この攻撃はラ・ピュセルが保有していた魔法「剣の大きさを自由に変えられるよ」によるものである。

元来ラ・ピュセルの魔法は、自身が召喚した大剣にしか対象とならない。

 

ラ・ピュセルの魔法の受け口となる武器については、彼女のリソースを割いて作製された装置である必要があったのだ。

 

しかし、このバトルロワイアルにおいては、主催者からの嫌がらせなのか、その大剣は没収されてしまっており、どういう訳か召喚することも出来ない。

したがって、ラ・ピュセルはゲーム開始時において、他の魔法少女と比べると理不尽なまでに制約を受けることとなっていた。

 

だが。

 

もしも、だ。

 

もしも、別の方法で彼女が、何らかの手段で自身のリソースを割いて、剣を作製することが出来るのであれば、話は変わってくる。

 

蒼い血を浴びたもの達が使える血剣とは、まさに自身の(リソース)を割いて顕現する武器。

まさに、彼女の魔法の注ぎ口としてはこの上ない装置になるのではないだろうか。

 

 

しかし、今のラ・ピュセルには上述のような思考は持ち合わせていない。

今や獣と変わらない彼女は、無意識下で血剣を作製し、魔法を注ぎこんでいた。

 

 

その行動の根本にあるのは、動物的な本能――。

 

“食料”を狩るための欲求によるものである。

 

 

 

「音楽家ァッ……!!!」

 

予想だにしなかった攻撃を前にしても、アカネは冷徹のままでいた。

差し迫る巨大な剣に対し、刀を振り下ろす。

 

結果として、アカネの魔法により巨大剣は真っ二つに割れ、霧散した。

 

だが、怪物はそれを意に介さず。

 

 

「ゔがががががががあ゛ぁぁぁぁッーーー!!!」

 

刀を振り降ろした格好のアカネを目指しーー

怪物は地を蹴り上げ、信じられない速度で肉薄した。

 

アカネが何か反抗する前に、その首根っこを掴み、地面へと押し倒す。

 

「――カハッ!!」

 

アカネは岩の地面に思い切り叩きつけられる。

その衝撃で岩場に大きなくぼみが生じる。

 

 

「は、放せ、音楽家ァ……」

 

アカネは苦しそうにジタバタと足掻く。

そんな彼女の首筋に、怪物はその牙を容赦なく突き立てた。

 

 

 

 

 

 

ここは何処だろうか。

真っ暗な闇の世界に僕は横たわっていた。

 

前後左右360度、何もない無の空間で、僕はただ眠っていた。

 

今は、ただ眠い。

 

「違う、こいつは音楽家じゃない……」

 

誰かの声が小さく聴こえた。

どこかで聴いたことがある声だし、言っていることもどことなく引っ掛かる部分がある。

 

そればかりか、僕には何か大事なことを成し遂げる使命があった気がする。

 

――駄目だ、思い出せない。

 

僕は何を為すべきだったのだろうか。

 

 

また声が聴こえた。

 

今度は一段と鮮明に聞こえた。

 

「音 楽 家 は 、 こ ん な 化 け 物 で は な い……」

「えっ!?」

 

その瞬間、僕の意識は覚醒した。

 

 

 

「此処は……?」

 

気が付くと僕は、夜の岩場の風景の中にいた。

 

そうだーー僕はミュベールに斬られた後に、「蒼い血」とかいうよく分からないものを浴びせられたんだ。

 

「っ!!?」

 

意識を失う前の記憶が、徐々に蘇ってくる中、やがて今僕が、先程まで争っていた和装束の少女に馬乗りになっていることに気付いた。

此方を突き上げるような視線を浴びせてくるが、どことなくその視線は依然と比べると弱弱しかった。

 

身体の上に跨っている僕が脱力したのを感じ取ると、少女は僕を押しのけた。

倒された僕は、すぐに立ち上がろうとするがーー

 

「ガハッ!?」

 

侍風の魔法少女を腰にぶら下げている鞘で思い切り、僕の顔面を殴打してきた。

鼻血がポタポタと顔から滴り落ちている。

 

少女はそんな僕の様子を一瞥すると、明後日の方向へと歩きだしていく。

 

「ま、待って……」

 

僕は手を伸ばして彼女を引き留めようとするが、

 

「化け物に用はない……」

「……っ!?」

 

蔑んだ瞳と共に「化け物」という痛烈な単語に唖然とする。

彼女は僕に見向きもせず、闇夜の中へと歩を進めていく。

 

「僕がーー化け物…?」

 

僕は呆然としたまま、彼女を見送ることしかできなかった。

そして彼女の姿が闇夜の中に溶けていった頃に、ふと気付いた。

 

ポタポタと地面に滴る鼻血の色。

それは、限りなく「蒼」に近い紫色であった。

 

慌てて自分の鼻を手で拭うと、手の平が紫色に染まり上がっていた。

 

「な、何だよ、これッ!」

 

この紫色の血液が僕自身から滴り落ちているという事実に愕然としたと同時に、湧き上がってくるのは強烈な喉の渇きであった。

 

ふと辺りを見回すと、先程の魔法少女が残したものなのか、赤い血が地面に撒き散らされていた。

 

身体が自然とその血液に吸い寄せられていく。

 

「クハッ……! 僕は、僕はッ……!!!」

 

何故だろうか。

この血を飲んで、渇きを潤したいと僕は思った。

だけど、それは人間のやる行動ではない。

 

何とかして理性がブレーキを掛けようとするが、僕の身体から湧き出る欲求を抑え込むことは出来なかった。

 

僕は無我夢中になって、その血を啜った。

 

 

 

【A-7/一日目/黎明】

【ラ・ピュセル@魔法少女育成計画シリーズ】

[状態]:半妖化、意識混濁、激しい喉の渇き(吸血衝動)、全身切り傷(蒼い血により回復)、右耳欠損、左足甲一部欠損、尻尾一部欠損

[服装]:魔法少女姿

[装備]:魔剣クラレント@Fate/Apocrypha

[道具]:基本支給品一式、スマホ、不明支給品1つ

[状態・思考]

基本方針:???

1:血が……血が飲みたい……

2:スノーホワイト……

※プレミアム幸子の契約書を消化しました。

※蒼い血を浴びて半妖化しました。但し意識はかなり混濁しており、いつ暴走してもおかしくない状況となっております。

※血剣を顕現させることができます。また血剣に対して魔法を使うことも出来るようになっております。

※アカネから多少の吸血を行いました。影響については、今後の書き手さんにお任せします。

※シルビアの死体はA-7エリア中央部に、スマートフォンとともに放置されております。

 

 

 

 

 

 

 

――結局アテは外れた。

 

――無駄足だった。

 

――あの場所に音楽家はいなかった。

 

――私は知っている。

 

――音楽家はあんな化け物ではない。

 

「では、お前は一体どこにいるというのだ、音楽家」

 

 

ミュベールから負わされた肩口の切り傷を抑え込みながら、復讐鬼は尚も戦場を渡り歩く。

 

 

 

 

【B-7/一日目/黎明】

【アカネ@魔法少女育成計画シリーズ】

[状態]:精神崩壊、『音楽家』への異常な執着、全身ダメージ(中)、肩口に切り傷、右脇腹打撲、首筋に吸血痕

[服装]:魔法少女姿

[装備]:アカネの刀@魔法少女育成計画シリーズ

[道具]:基本支給品一色、スマホ、不明支給品2つ

[首輪解除条件]:ゲーム終了時まで森の音楽家クラムベリーを直接殺してはならない。もし直接殺した場合、この首輪は爆発する

[思考]

基本:音楽家ァ……

1:どこにいる、音楽家

2:あんなの(ラ・ピュセル)は音楽家ではない。化け物だ

3:……また、やらされるのか。終わったのではなかったのか

4:終わったのではなかったのか。なぁ、音楽家

[備考]

※restart本編開始前からの参戦です

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