ガールズ&パンツァー 独眼のメアリー   作:フリント

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第1章
第1話 再開


「我々が目指すのはこの大会での優勝だ!」

 

会長が講堂に備え付けられた画面を叩き割る勢いで……は叩かずに寸止めする。

そこには非公式戦車道大会 大口径杯の文字と超重戦車オイのイラスト。

調べたところによると公式大会よりもルールが少しばかり緩いのが非公式大会の特徴、他に戦車道連盟に加入して無くても参加できるらしいが、あまり歓迎はされないという。

 

「あのー、いきなり優勝っていうのは少し厳しいんじゃ……」

一年生の二式砲戦車チーム、車長の 暮山はる がおずおずと手を挙げて発言する。確かにこのチームは五式中戦車チームの隊長車を除いて殆どが初心者と聞いた。経験者と言えば生徒会長と射撃部やドラテク部に所属している先輩に少しいるという程度だ。

「たしかに、厳しいかもしれないね」

「なぁに、そのくらい無茶な目標な方が面白いじゃねぇか!丁と出るか半と出るか、博打といこうじゃねぇか!」

そこにセンチネルチーム車長の 吉高 悠(よしたか ゆう)が横槍をいれる。そうだそうだと、チームの三人が肯定する。

このセンチネルチームの四人は四人が全員ギャンブルや賭け事好きという変わり者達で、四者四様の個性的な服装をしている。

「ま、実際は準優勝か準々優勝くらいでいいんだけどねー。少なくとも初戦敗退だけは避けたいわけだ」

会長が補足する。

「でも、目標が高い方がいいかもね」

「ああ、それが試合へのモチベーションに繋がるだろうしな」

生徒会長の後ろ、二人の生徒会役員が言う。前者が神野ことね 後者が原野しき 前日に私を連行した二人だ。それなりに背が高い、会長とは真逆だな。

 

「ルールの方は公式大会より緩いって聞いたんだけどその辺はどうなんだ?エンジン周りの規制について聞いておきたいんだ」

クロムウェルチーム、車長の三年生でドラテク部部長の佐藤 拓海(さとう たくみ)先輩が質問すると

「公式大会と同じで、モーターだけには規制はかけられてないですよ」

ルールブックを確認していた隣の眼鏡をかけた、いかにも真面目そうな雰囲気の美少女?が質問に答える。彼女は三式中戦車チーム車長の二年生、喜多川 綾(きたがわ あや)。たしか学年トップの成績だったはずだ。

「なるほど、ありがと」

「ともかく、開催日の9月25日までまだ時間がある!それまでたっぷり練習するよー!」

その場での会話は会長が締め括り、練習に移行した。

 

一週間後 某所 大口径杯 抽選会場

会場には五式中戦車チームと生徒会チームのみが来ていた。

会場内に入ると、予想よりはるかに大勢の戦車道選手が各校から集まっているようだった。

「みてみて、大洗の制服!夏の大会の優勝校がいるよ!」

京子が抽選待ちの選手達が座る一角を指さす。見るとそこには夏にテレビで観た西住みほ、とそのメンバーがいた。

「大洗も参加するのか……これは隊長の運に期待だねぇ」

奏さんがさらっとプレッシャーをかけてくる。

「こら、そういう事を言うものではありませんわよ」

「でも運なのは確かだからなぁ」

そんなやり取りを繰り返していると、抽選の順番が回ってきた。

今回の参加校はメアリーを含め十六校、すでに六校が決まっているがまだ対戦相手が決まっている学校はない。

「できれば、初戦は弱い所がいいな……」

小声で呟きながら壇上に上がる。中学時代に一度やめているせいで、私の事を知っている人物はいないらしく会場は静かだった。一部を除いて。

抽選箱に手を入れ、カードを掴み一気に引く。

「聖メアリー女学院、8番!」

反射的にモニターを観る、舞鶴女子学園……京都に寄港地を持つ学園艦であり、うちの天敵だ。壇上から降りて舞鶴の選手達がいる席を見ると、案の定喜んでいるようだった。それもその筈、うちは弱小で毎年と言っていいほど舞鶴に負かされていた。

でもそれは去年までの話だ。今年は違うという事を見せてやる。

 

全校の抽選が終わると、私達は会場外に出て昼食を何処でとるかで揉めていた。

「肉!」

「魚!」

「焼き鳥!」

「和食を希望しますわ」

「ハンバーガーがいいねー」

「会長の発言は絶対だ!ハンバーガーを食べに行くぞ!」

「そんな絶対王政じゃないんだからしきちゃん……」

各々の食べたいもので争いを繰り広げているのを傍から見ていると、私に声を掛ける人物がいた。

 

「芽衣、久しぶり」

 

懐かしい声が聞こえた。通信機越しに、直に、何度も聞いたことのあるその声。

「え……たい、ちょう……?」

 

中学時代の、よく知る人物。隊長の池田 末子(いけだ すえこ)の姿がそこにはあった。それに……

「めーーいーーせーーんーーぱぁぁぁぁい!!」

背後から思いっきり抱き着かれた。犯人は中学時代の後輩、私を慕ってくれていた人物だ。

 

その後、昼食はファミレスでとることになった。そして何故か私と同席するのは池田隊長に……中学時代に見知ったメンバーだった。

「まさか、また芽衣が戦車道を始めてくれるなんてな」

「そ、その節はどうもお世話になりました。隊長」

どうしても萎縮してしまう。一度戦車道から逃げた身だ。一体なんて言われるか……。

「そう縮こまらないでいい、私は嬉しいんだよ。芽衣がまた始めてくれてさ」

「隊長、あの後相当落ち込んでましたもんねー」

「そうそう、私が力不足なばかりにって」

予想外の反応に少したじろいだ。てっきり責められるのかと思っていたのだが……

「やめないか、恥ずかしいだろ……とにかく、お互い順調に勝ち進めば決勝で当たることになるだろう。それを楽しみにしてるよ」

「楽しみにしてますよ!先輩!」

思わぬプレッシャーをかけられ、その後は中学時代の思いでなんかを話したり近況について話したりした。

隊長達のチームは優勝候補のバルバロッサ高校。ドイツ系の学校だった。

こうして、私には私で、負けられない理由ができた。

 

学校に戻ると、早速対戦校である舞鶴女子学園の戦力分析が始まった。

去年のデータでは、この大会の1回戦突破、2回戦で敗退している。

1回戦の相手は……聖メアリー女学院(ウチだ)

完全包囲されてからの全滅をさせられている。

敗因は練度不足もあるが、数だ。去年は最低ラインの3両のみで出場している。対して相手は予選最大参加数の10両。3倍以上の戦力に押し潰された事になる。去年の舞鶴は一式中戦車を主力とした部隊だった。今年も編成は変わらないだろうが、それでも4両差がある。油断はできない。

第1回戦は1週間後。その日は夜遅くまで作戦会議をし、翌日からは厳しい練習が始まった。

 

そして1週間、試合会場は広大な平原と森。負けられない戦いが始まった。

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