「比企谷さんは普段どこに行くにゃ?」
「まあ、大体本屋だな。てか、それ以外の場所にあまり用がない」
「ふ~ん」
とりあえず二人を探しながら施設内を歩き回ることにしたんだが……まあ、この状況は小町の仕業だろうな。あいつはたまに変な気遣いをするから困る。あと変な輩にナンパされないか、お兄ちゃん心配。
だが、あいつの目的を考えると、しばらく電話に出ることはないだろうから、今はこのままでいるしかない。
「ひ~きがやさんっ!」
「うおっ……!?」
いきなり星空の顔が目の前に現れ、つい仰け反ってしまう。彼女は何故か頬を膨らませていた。
「もうっ、話聞いてる?」
「わ、悪い……少しぼーっとしてた。何の話だっけ?」
「ラーメンの話にゃ!」
「…………」
マジでいつの間にそんな話になってた?
まあいい。ラーメンの話ならどんと来いだ。
「割と行く方だ。一人で」
「あ、わかるにゃ~。凛もかよちんと行く時と一人で行く時分けてるにゃ~!」
「そ、そうか……」
すまない。こちらにはそもそもそんな選択肢がないのだが……まあ、これは言っても仕方がない。言ったところでドン引きされるのがオチだろう。
「比企谷さんはこってり派?」
「まあ、今の気分で言えば……」
「じゃあ、凛と一緒にゃ!むぅ……こんな話してたら、お腹空いたにゃ~!よしっ、比企谷さん!ラーメン食べに行くにゃあ!!」
「……は?」
暴走するラーメン愛を目の当たりにし、キョトンとしていると、いきなり手首を掴まれた。
「たふんこっちにラーメン屋があるにゃ!」
「お、おう……」
変なスイッチ入って、やたらテンション高いんですが、あといきなりそんな事されたら、勘違いしちゃうからやめようね。それと、行くなら行くでフロアマップ見ればはやくない?
色々ツッコみたかったが、唐突なイベント発生のせいで、何も言う間もなく、俺は星空にラーメン屋へと連行されていった。
俺の手首を掴む彼女の手は、思ったよりもずっと小さくて、ひんやりとしていた。
*******
「着いたにゃ……」
「……着いたな」
施設内にあるラーメン屋なので、もちろんすぐに着いた。だが、手首にはまだ星空の細い指の感触が残っており、なんかどっと疲れていた。
「じゃ、じゃあ入るにゃっ……」
「?」
なんか星空の様子がおかしい。心なしか頬が赤いような……。
実は星空も異性は全然慣れてなくて、それで今さらながら顔を赤くしている、というのはさすがに考えすぎか。
俺はかぶりを振って、まだ熱い頬をかき、星空のあとをついて、店の中へと足を踏み入れた。